「う、うぅ・・・お、俺は」
意識をなくしていた日向が目を覚ます。日向は左腕と両足の痛みを堪えながらゆっくりと上体を起こす。
「ッ⁉︎そうだ。俺はあいつを殴り倒して、そのまま意識を失ったんだ。ここは・・・病室か?それに俺はあれからどれだけ寝てたんだ?」
七海はどうなったのか気になった日向は七海の安否の確認に行こうとベッドから降りようとすると、ベッドの上に頭を乗せて規則正しく寝息する七海がいた。
「無事だったのか、良かった」
ホッとした日向は一息吐く。病室のドアを誰かがノックし開け、部屋の中に入って来たのは看護師。
「あっ、気がついたんのね。良かったわ」
「あのー俺って、どれぐらい寝てましたか?」
「日向くんは3日間寝込んでいるわ」
(3日も寝てたのか)
「七海ちゃんが起きたらお礼を言って上げた方が良いわよ」
「えっ、どうゆう事ですか?」
「彼女、学校を休んであなたの事をずっと看病してたのよ。もう朝から病院にいられる時間までずっと」
「七海が」
「私はこれから日向くんが目を覚ました事を報告しに行くので、待っていて下さいね」
看護師は部屋から退出し、報告に向かって行った。
「ん、ん〜・・・」
「おっ、起きたか七海」
「ひな、たくん?」
寝ていた七海が目を覚ますと目元を擦りながら起き上がる。寝ぼけてあやふやとなっていた意識が徐々に戻ると七海は日向の名を呟く。
「心配させて悪いな。でももう大丈夫だから」
「うん。でももう無茶な事はしないで」
日向の手を握り締めながら七海は目で強く訴える。
「ん〜出来れば俺もそうしたいよ。でも無茶しないと守れないなら俺は何度でも無茶する」
「心配する人がいても?」
「その人を心配させてしまうのは悪いと思う。でも手を伸ばせば守れるのに伸ばせなかったら俺は一生後悔する。それが大切な人なら尚更な」
「・・・わかったよ。でもこれだけは約束して。どんなに無茶しても無事の姿を見せて」
「善良するよ」
善良はする。けど多分見せるのはボロボロの姿だと思うが許してくれと心の中でひっそりと告げる。病室のドアがまたも叩かれる。先生と看護師かと思ったが、入って来たのは剣崎と鷹村さんたちだった。
「あ––––っ!目ェ覚ましてやがる‼︎」
「病院なんだから静かにして下さいよ」
「よぉ、具合はどうだ?」
「良かったッ!目が覚めたんだな日向」
「皆、来てくれたんですか」
それは嬉しいな。
「まぁ、千堂は次の日に大阪に帰ったけどな。他の奴等は今日は用事があって来れないみたいだけどね。それよりも体調はどうなんだよ創」
「まだ体中が痛みが走りますが大丈夫です。ご心配かけました」
「皆、日向のお見舞いに毎日来てたんだよ」
「そうなのか?」
七海たちは兎も角として、あの鷹村さんが毎日見舞いに来てくれたなんて意外だ。俺は鷹村さんたちにお礼を言ようとした時、鷹村さんたちが何やらボソボソ、と話している。
「検診の時間はまだか?」
「そろそろっスよ」
「あっ!来ましたよ鷹村さん」
青木の視線に日向も向けると先程の看護師がいつの間にか戻って来ていた。
「ごめんなさい日向くん。先生は今手が離せなくてすぐには来れないの」
「大丈夫ですよ(つうか鷹村さんたち、さっきから看護師さんにニタニタしてるけど。見舞いよりも看護師さんが目当てだったんじゃないか?)」
看護師の背後でニタニタと笑う鷹村たちに日向は目を細めて少し呆れる。
「そう言ってくれると助かるわ。先生が来るまで少し時間があるから、尿を取りましょうか?」
手に持っていた尿瓶を取り出す。
「ええッ⁉︎今まで看護師さんがやってくれたんですか?てっ、えっ、ちょっと鷹村さんたち何やってんですか?」
木村が毛布を退かし、鷹村は日向の背後に回り込むと体を動かない様に両手で抑えつけ出す。
「下がっててください。貴女にこんな物を触らせる訳にはいけない」
「よーし青木‼︎いつものように絞り取ってやれ‼︎」
「へいっ!」
「ええええッ⁉︎い、いつものようにって、今まで青木さんがずっと・・・」
木村にズボンを下された日向は顎を大きく開けながら呆然とする。
「初めはあんまりも大きいから怖かったけど」
両手をわきわきとさせながらゆっくりと日向の股間に近づけて来る。
「すっかりと慣れちゃったよぉ〜」
「も、も、もう目が覚めたんで自分でやってきますッ⁉︎」
ほっといたら何をされるかわからないと判断した日向は慌てて鷹村の拘束から抜け出し、トイレに向かって一人病室から飛び出す。
「なんでえ、あのヤロォ。折角俺様たちがやってやろうとしてるのに。感謝の気持ちが足りねぇぞ」
(ショックだろうなぁ、日向の奴)
日向に同情する剣崎はただ日向がいなくなった後を見ていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ああああッ⁉︎」
日向はトイレの中で絶叫を上げていた。
「あ、あの人達がタダで親切するんなんて思わなかったけど・・・人のチン◯に落書きするなよッ⁉︎」
パンツの中からチン◯を取り出して見るとマジックでイタズラ書きをされていたのだ。しかも書かれていた文字は––––鷹村参上‼︎
「くそ〜っ、人が寝ている事を良いことに弄びやがって」
尿を出し終え、溜息を吐きながらトイレから出る。
(でも、まぁ、鷹村さんたちのお陰で七海が救えたんだし。今回は良いか)
「あれ?もう起きて平気なのかい?」
病室に戻ろうと足を運ばせようとした時、声を掛けられる。声がした方に目を向ける。向けた先にいたのは七海と同じクラスメートの狛枝だった。狛枝は色々な種類のジュース缶を持っていた。
「お前は狛枝。何でお前がこんな所にいるんだよ?」
「偶々、君が入院している病院に来たんだよ」
「偶々、ね。まぁ、それよりもあの時、爆弾の解除してくれてありがとな。お前がいなかったら大変な事態になっていたよ」
「気にすることはないよ。僕は偶々見つけて、偶々解除しただけだからね」
「それって、お前の才能か?」
「そうだよ。僕の才能は『超高校級の幸運』。と言っても僕の才能なんて七海さんの才能と比べたら取るに足らない物だよ」
「爆弾を見つけるに加え、解除まで幸運でやり遂げるお前の才能も凄えよ」
それにしても前に話していた時は予備学科ってだけで冷たい態度を取っていたのに、今は普通に話しているけど何でだろう。
「まぁ、でもあの場にいたのは偶々じゃないけどね」
「どうゆう意味だよ?」
「実は君達が七海さんの家の前で話しているのを聞いて、君の後を追ったんだ。爆弾の入ったケースもその途中で見つけたんだよ」
日向は狛枝の話を聞いて驚く。周りに注意していたのだが、まさか後をつけられていたなんて思いもしなかったからだ。
「それにしても君は凄いよ。あの絶望的状況で心を折れずに七海さんを守り抜いた」
「あれは皆が来てくれたお陰だ。皆がいなかったら俺はあいつらに殺されて、七海も酷い目に遭わされていた」
「それでも何の才能もない君が、絶望的状況の中で七海さんという希望を守り続けた。いつ仲間が来るかもわからない状況でだ。どうして君は心が折れずにいたんだい?」
狛枝に詰め寄られた日向は後退りしながら狛枝の答えに悩む。
「彼が言っていた才能よりも凄い物を持っているいうことなのだろうか」
彼とは恐らく千堂の事を言っているのだろう。
「僕は君にとても興味が湧いたよ。これから僕は君を観察させてもらうよ。才能よりも凄い物とは何なのか・・・ふっふっふ、楽しみで仕方ないよ」
狛枝の薄気味悪い笑みにゾッとし、背筋が震える。
「それじゃあ僕は帰らせてもらうよ。また会おう––––日向くん」
日向は狛枝が自分の名を呼んだ事に目を見開かせ驚く。狛枝は才能のない者を差別する所がある。その狛枝が才能のないと見なした日向の名を呼んだのだ。狛枝は日向の前から立ち去っていく。
「なんか、大変な奴に目をつけられた気がする・・・病室に戻るか」
狛枝に興味を持たれた日向はこれからの学園生活に嵐が起きそうな予感がした。
ごめんなさい––––っ‼︎早く投稿すると言ったのに遅くなってしまいました。大学やバイトなど色々と忙しく手がつけられないでいました。
これからも遅くなるかも知れませんが、ご容赦していただけるとありがたいです