篠ノ之家の長男は正義の味方   作:優雅

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第7話 インフィニット・ストラトス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之家にある、地下倉庫に俺と束、父さん、千冬の4人は来ている。母さんがいないのは、箒と一夏の面倒を見ているからだ。

 束は色々な研究のために、この部屋を借りて使っている。

 大きさは、ざっと60m2位の正方形のサイズで1部屋だけだった……はずだった。

 

「これはこれは…」

「なんで倉庫に部屋がこんなに増えてるんだよ…」

「私が最後来たときよりも増えているな…」

 

 そう本来の部屋の大きさに加え、さらに部屋の個数も増えていた。

 

「ふっふ~ん♪束さんにかかれば、部屋を新しく増築するくらい夕御飯前なのさ~!あ、安心してお兄ちゃん、お父さん。お家が崩れないように、ちゃ~んと計算して増築してあるから!ささ、こっちこっち!」

 

 束の案内の元、増築された地下倉庫の中を歩いてく。

 歩いてる途中に、何かファンシーで魔法少女が使いそうな腐れステッキのような物が見えた気もするが、全力でスルーしながら進んでいく。

 そうすると、厳重に封鎖された扉のある部屋に辿りついた。

 

「束、ここは一体なんなんだい?」

「ここは、束さんのラボだよ、お父さん。この中に、皆に見て欲しいものがあるんだ」

 

 何時に無く真剣な目を向けてくる束。

 手馴れた手つきで、扉のロックを解いていく。というか、ただ何重に鍵を付けるだけじゃなくて、パスワードや指紋照合って…どんだけ厳重なんだよ…

 

「ささ、開いたよ。皆入ってきて」

 

 束を先頭に、父さん、千冬、俺の順に中に入っていくと、まず視界に映ったのが、二つの大きな白い機械と赤い機械。

 まるで、人を乗せて動くかのように見える形をしている…これが、束の見せたかった物なのか?

 

「束、これは一体なんなのさ?」

「これはね…インフィニット・ストラトス。束さんが、丹精こめて作り上げた最強にして最高のパワードスーツだよ」

「インフィニット・ストラトス…」

 

 誰が呟いたのかは、判らない。

 だが、俺も千冬も父さんでさえも、目の前の機械、インフィニット・ストラトスに眼を奪われてしまっている。

 実際、俺もこれを解析魔術で見たときの、あまりのスペックに呆然としてしまったからな。

 もしもこれが兵器とし使うのならば、世界相手に喧嘩売っても勝てる見込みがあるほど、現代兵器を馬鹿にした性能を持っているからだ。

 俺がインフィニット・ストラトスに乗った相手に、生身で勝てるか?

 少なくとも、魔術をフル活用し、もっと体が出来上がってなければこれには勝つ見込みは無いだろうな…

 

「それじゃあ、説明入りまーす!まずは、こっちの白い機体の方。コアのナンバー002。世界で2番目のインフィニット・ストラトス!その名も【白騎士】!!この子は、基本ちーちゃんに合わせて作ってあるんだよ!」

「わ、私にか!?」

「うん♪この子は、装備されてる荷電粒子砲以外は、近接ブレードのみ!まさに、ちーちゃんにあった白兵戦として戦えるんだよ!もちろん、ブレードの大きさはちーちゃん愛用の木刀に合わせてあるよ」

「束。では、こっちの赤いほうはどうなっているんだい?」

「さっすがお父さん、いい質問だね。こっちの子はコアナンバー001!世界初のインフィニット・ストラトス!その名も【錬鉄の騎士】だよ!」

「錬鉄の…騎士…」

「そう。お兄ちゃんの投影魔術を見て思いついたんだ~♪」

 

 ただでさえ性能が、他の兵器よりも抜き出ているのに、ここまで改造するか…

 まるで、戦う事を前提とした性能じゃないか。束は一体…これで何をする気なんだ?

 

「…束、お前がこれを見せたいことは解った。だけど、お前はこれで何がしたいんだ?」

「お兄ちゃん…束さんは…私は、この子達で世界を変えたいんだ」

「世界を…これはまた大きく出たね、束は」

「うん…お兄ちゃんが教えてくれた。世界は、人が思ってるほど優しくなんかない、って。今でも、この世界で人は死んでるし、そのせい前世の頃のお兄ちゃんも殺された、って」

「ッ!?なんで束がその事を…父さんと母さんにしか話してないのに!」

 

 束が話した、俺の前世である衛宮士郎が殺された、という話は父さんと母さんにしか話したことはない。事実、千冬はその事でかなり驚いている。束と千冬には、こんな話を聞かせないために、病気で死んだ、と嘘を教えておいたからだ。

 

「お兄ちゃんは…ううん、衛宮士郎は見知らぬ人でも自分の命をかけてでも救おうとする。それが、衛宮士郎と言う人間の在り方。その魂は、篠ノ之士郎にも宿ってる。だから、お兄ちゃんはきっと、大きくなったら世界を旅する正義の味方になろうとする、違う?」

「それは…」

 

 違う、とハッキリ言い切れない。

 元々俺は、さっき束が言った通りの人間だ。誰かを救う為に、自分の命ですら投げ出せる。

 正直、俺の将来も前世の衛宮士郎と同じ道を歩くんじゃないかって、考えていた。

 

「士郎が、正義の味方になるなら、私が世界を変える。争いが生まれないような世界に…正義の味方がいなくても平気な世界に。その為の力が、このインフィニット・ストラトスだよ。本来は、宇宙空間での活動を目的にしたこの子達を、戦闘用にしたのもその為。この子達の力があれば、現代兵器は意味がない。この子たちが広まれば、世界は大きく変わる。だから私は!この子達で、お兄ちゃんを助けたいの!」

 

 すべては俺の為…か。

 束は、ただそれだけの目的でインフィニット・ストラトスを造ったのか…

 

「だが束。それ程の性能を持つのであれば、このインフィニット・ストラトスを悪用する輩が出てくるのではないか?」

「だいじょーぶだよ、ちーちゃん。そんな奴等が出ても、束さんがとっちめてやるから!」

「さて、どうするんだい士郎?束の決意は、そう簡単に崩せないよ」

 

 はぁ…どうやら父さんは、束に賛成のようだな。

 千冬も、束に反論的な発言も告げてるけど、その眼は束に賛成してるって告げてる。

 母さんはきっと、父さんたちに賛成だろうしな…

 

「束」

「何かな、士郎?」

「インフィニット・ストラトスだけど、兵器にだけは絶対にするな」

「ッ!で、でも!!」

「束は、自分の作った子たちが人を殺すところなんて、見たくないだろ?」

「…そしたら士郎が……お兄ちゃんが…死んじゃう…………私は、そんなの…耐えられないよ!」

 

 束が話している内に、その眼には涙がこぼれ始める。

 今まで見たことも無い束の涙。束はどんな時だって、泣く事はしなかった。

 昔、誘拐された時だって束は恐怖に震えていたが、決して泣く事はなかった。

 だけど、今の束は俺のために泣いてくれている。その事実が、嬉しくもあった。

 

「俺のことは大丈夫…とは、言い切れないか。でも、死なないように最大限努力するさ」

「はぁ…士郎?それでは、束も納得はしないよ」

「少なくとも、まずは怪我をする事が前提である所を何とかしてください、士郎さん」

「けど、俺だって譲れないさ。この思いだけは」

 

 そうだ。どんな事があっても、この思いだけは譲れない。

 正義の味方になる、これだけが俺の全てだから。どんなに否定されたって、どんなに傷ついたって譲る事はできはしない。

 

「う~ん、これは困ったね。束は、士郎に死んで欲しくない。けれど、士郎は自分から危ない道を歩こうとする…どちらも譲る事ができないから平行線だ」

「父さんはいいのか…俺が、息子が自分から死地に行こうとしてるのに…」

「勿論よくはないさ。でもね、士郎がどんな人生を歩もうとも、僕が口出しする権利なんか無いよ。たとえ、今は違くても束に辛い思いをさせて、士郎を息子のように考えなかった僕に、『親』として口出すことは出来ないさ…」

 

 父さんの手は、爪が皮膚に食い込み血が流れそうな位に真っ赤になっている。

 それだけ、俺たちを止めたいのに何を言う事が出来ずに悔しいんだな、父さんは…

 

「私も…士郎さんに危険な目にあって欲しくありませんし、束にも危険な事をやって欲しくない…」

「千冬も…」

「私は、束のような頭脳を持っていないし…士郎さんのような魔術という神秘も無い……私には、何も出来ない。それが、とても悔しいんです!!」

 

 千冬も今に見泣き出しそうに叫んでいる…

 束と千冬の泣き顔を見るたびに、胸の奥が何故か痛み出す…

 

「けど、俺は…」

「もういい!!お兄ちゃんがそこまで言うんだったら、私は私で勝手にやるから!」

「た、束!」

「お兄ちゃんは出てって!今は、お兄ちゃんの顔を見たくないの…」

 

 こうして、束が造ったインフィニット・ストラトスは、世界に向けて発表された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と束の仲は、改善されないまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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