フェンリル学園組曲   作:かか雄

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8話にしてようやく、ロシアが誇る下乳が学園に来ました。ますます賑やか?になるリューズたちの学園生活をお楽しみください


第8話~嵐を呼ぶ転校生~

「なあなあ、あのウワサ聞いたか?」

 寮内の食堂で誰かが言った。

「どうせ、転校生のことだろ?」

「そうそう、今度の月曜日にこの学園に来るらしいぜ。」

「聞いた話じゃ、校長がロシアから連れて来たんだろ?いったいどんなヤツなんだろうな?」

「さあ…。そこまではな。」

 そこかしこでこんな内容の話が聞こえてくる。ウロヴォロスが討伐された日の朝、寮の食堂はこの話で持ちきりだった。

 そんな中、花月アイリは周りから聞こえてくるウワサに耳を傾けつつ朝食を食べていた。

(なんだか、ざわついてますね…。確かに転校生が誰なのか気になりますね。)

 そんなことを考えていると不意に頭上から声がした。

「おい、アイリ。」

「ひゃっ‼」

 驚いて顔を上げると、目の前に大盛りのトレーを持った九頭竜ハヤトがいた。

「ここ、座ってもいいか?」

「あ、あぁ、ハ、ハヤトさんでしたか。だ、大丈夫ですよ。」

「これでも脅かす気は無いんだがな…。」

 ハヤトは軽くため息をついてから席につき、早速朝食を食べ始めた。

「すみません…。気が抜けてて…。」

「安心しろ。別に怒ってる訳じゃねーよ。」

「そ、そうですか…。すみません…。」

「いちいち謝んなくていい。」

 ハヤトにそう言われアイリは黙ってしまった。

(こ、こわい…。でも、何か話しないと…。)

 アイリは恐怖心と戦いつつ何とか話題を探し、思い付いたところでハヤトに話し掛けた。

「ハ、ハヤトさん、転校生の噂はご存じですか?」

「転校生?あ~、この間コウタが何か言ってたな。ロシアから来るだの、新型だの確かそんなこと言ってたな…。」

「そうなんですか。(し、知ってましたか…。)」

「俺は来ようが、来まいが、どうでもいいけどよ、もし本当だったらいったいどの部隊に配属なんだろうな?」

「ウワサ通りの新型だとしたらやっぱり第1部隊に配属なんでしょうけど、1つの部隊に新人が6人いるっていうのは、さすがに多い気もしますから、もしかしたら別の部隊っていうのも考えられますよね?」

「確かにな。ま、ウワサ通りに月曜に来るなら全部ハッキリするだろ。」

「そうですね。」

「そういや、お前今日ヒマか?」

 唐突な話題の転換に少し驚いたが、アイリは少し考えた後、答えた。

「はい。今日は特に予定は無いですけど、どうかしましたか?」

「そうか。だったら、午後からでいいから訓練に付き合え。」

「えっ?」

 予想外の提案に思わず聞き返すと、

「だから、午後からでいいから訓練に付き合えって言ってんだよ。」

「わ、私がですか⁉ハジメさんとかではなくてですか?」

「ハジメはダメだ。休日のアイツは寝てるからな。」

「でしたら、コウタさんは?」

「アイツは今日は任務だ。ちなみにリューズもな。」

「そ、そんな…。」

 アイリが露骨に嫌そうな顔をするとハヤトは、

「なんだ?お前はそんなに俺とやるのが嫌なのか?」

「い、いえ…。そんなことは…。」

 過去にハヤトを思いっきり誤射した記憶が頭をよぎり、アイリにハヤトとの訓練を躊躇わせる。だが、ハヤトは、

「どうせ前の誤射を気にしてるとか、そんなもんだろ?だったら、特訓して誤射を減らせ。」

 予想以上の正論をぶつけてきた。驚いたアイリは思わず尋ねた。

「前の誤射のこと、怒ってないんですか?」

 すると、ハヤトはため息をつきながら返した。

「そんなわけねえだろ。むしろお前が申し訳ないって思ってんなら、早く俺に言えよ。誤射を減らす特訓くらいならいつでも付き合ってやる。」

「ハヤトさん…。」

 アイリは内心でハヤトへの印象を改めた。アイリはハヤトのことをずっとただの不良だと思っていたが、どうやら任務に対しては非常に真面目なようだ。そんなことを思っているとハヤトは改めて尋ねた。

「で、どうする?やんのか?やんないのか?」

「分かりました。私で良ければお付き合いします。」

「よっしゃ‼んじゃ、午後からな。遅くなるなよ。」

「分かりました。では、訓練場で。」

 こうして2人は約束を取り付け、午後から訓練を行った。が、アイリはハヤトのスパルタですっかり参ってしまうのだった…

 そして月曜日、ウワサ通りなら転校生が来る日なのだが、ウワサの転校生はリューズ達1組ではなく、コウタ達がいる隣の2組に入ってきたので、リューズ達は誰が転校したのかは知らなかった。

「転校生のウワサは本当だったのね。」

 リューズは授業の合間の休み時間にカノンに話し掛けた。

「そうですね。でも、いったい誰が来たんでしょうかね?」

「さあね。誰かいないの?隣のクラスに知り合いの人?」

 リューズが聞くと、カノンは、

「えぇ~と、いるにはいるんですけど…、」

「ん?どうしたの?歯切れ悪いけど。」

「いえ、担任のタツミ先生が第2部隊の隊長なので、知り合いといえば知り合いにはなるんですけど…。」

「あぁ~、それだとね…。」

 さすがに先生にはどんな生徒が来たのか直接は聞けない。それに転校生が女の子だった場合、タツミ先生だと最終的にヒバリ先生が1番だとか言い出しそうなので、あまり期待出来ない。

「リューズさんにはいないんですか?隣のクラスに知り合いの人が。」

「そういえば、コウタとかがいたわね…。忘れてたわ。」

「リューズさん…。」

 カノンがあきれたように呟いたが、あまり気にせず、

「となると、昼休みにでも聞いてみようかしら。」

「どんな人だったか後で私にも教えてくださいね。」

「分かったわ、カノンちゃん。」

 と、やり取りをしたところで、チャイムがなったので席につき、授業を始めた。

 そして昼休み、早速コウタ達を呼びに隣のクラスに行こうと、廊下に出ると隣のクラスの前に人だかりが出来ていた。

(何なのよ、この人だかり?)

 見ると大半は男子であり、隣の教室を必死で覗いている。

「おい、転校生はどれだよ?」

「人が多くて見えねえよ‼」

「クソ‼これじゃあ、顔が見えねえじゃねえか‼」

 どうやら、転校生の顔を見るために集まったようだ。

(こんなに男子がいるってことは転校生は女の子?)

 そんなことを思いつつ、何とかして人混みを掻き分けていく方法を考えていると、

「なんだ?この人だかり?」

「あら、いいところに来たわね。」

 ちょうどそこにハヤトがやって来た。ハヤトもこの人だかりを見て驚いているようだった。

「お願いがあるんだけど、この人だかりをどうにかしてくれないかしら?」

「ハア?お前はなに言ってんだ?」

「やってくれたら、後でなにかしらおごるから、ね?」

「…言ったな?財布の中身、ちゃんと確認しとけよ?」

(チョロい…‼)

 リューズは心の中でガッツポーズをし、ハヤトを見送った。ハヤトは人混みの中に入っていくと、

「ちょっと通してくんねえか?」

「アァ?」

「通してくんねえかなぁ…?」

「ア…、ドウゾ。」

 といった調子で人混みを脅しながら掻き分けていった。周りもハヤトの存在に気づいたようで、絡まれてはならないと、あっという間に散り散りになってしまった。

「さすがね、ハヤト。助かったわ。」

「…約束はちゃんと守れよ?」

「分かってるわよ。」

 こうして隣のクラスに入るとすぐにコウタ達を見つけることができた。

「よお、リューズ。いったいどうしたんだ?」

「アンタに話があるんだけどいいかしら?」

「どうせ転校生のことだろ?」

 コウタが何か言う前にハジメが聞いてきた。

「そうそれ。いったいどの娘が転校生なの?」

「あぁ~、転校生ね。ほら、あそこだよ。」

 コウタが指を指した先に人だかりが出来ており、肝心の転校生はよく見えない。

「なによ。全然見えないじゃない。」

「仕方ないだろ。めちゃめちゃ可愛かったもん。男子も女子も集まって大変なんだよ。」

「そうそう。それに教室の前に人だかりが出来るから教室から出づらくて大変だったんだよ。」

 ハジメとコウタが今朝からの出来事を思い出すようにしみじみと言った。

「確かにあんなに集まってたら出ようにも出れないわね…。」

 リューズも先程の人混みを思いだしつつ言った。

「で?お前は行かなくていいのか、コウタ?」

 ハヤトがコウタに聞くと、コウタではなくハジメが、

「コウタは出遅れちゃったからね。ここで眺めることぐらいしか出来てないよ。」

「なんだよ。そんなもんか。」

「仕方ないだろ‼思いのほか周りの動きが早かったんだから。」

 コウタが抗議するがスルーしつつ、リューズは、

「じゃあ、仕方ないわね。戻りましょうか。」

 そう言って戻ろうとすると、ハジメが、

「でも、第1部隊に配属されるらしいから今日の放課後の顔合わせで顔見れるでしょ。」

「それを早く言いなさいよ‼」

 リューズは振り返り、ハジメに掴みかかろうとしたが、

「何も聞いてないの?昨日の夜にメールがターミナルに届いていたハズでしよ?」

「えっ?それ本当?」

「そういや、何かメール来てたな。すっかり確認するの忘れてたな。」

 ハヤトが思い出したように言うと、リューズは、

「…そういえばメールが来てたような…。」

 思えば確かに通知はあったような気がする。

 だが、リューズは昨日の夜は勉強をしていて確認しておらず、今朝は少し寝坊したので慌てて準備していたせいか、ターミナルの確認を忘れていた。

「2人ともメール見てないみたいだから、改めて言うけど、今日の放課後に転校生との顔合わせをするらしいから放課後になったら、別館の第4教室に来てだってさ。」

「分かったわ…。」

「へいへい…、めんどくせえなあ。」

 リューズとハヤトは、返事をしたあと教室を後にしていった。

 そして放課後、リューズとハヤトは別館の第4教室に行くと、すでにコウタ達は来ており、転校生が来るのを待っていた。それからしばらくして、リンドウさんとツバキさんが、1人の女の子を連れてきた。

「紹介するぞ。今日から、お前たちの仲間になる新型の適合者だ。」

 ツバキさんがそう言うと、連れてきた女の子は、

「はじめまして。『アリサ・イリーニチナ・アミエーラ』と申します。本日付けで、ロシアの学園から、こちらの学園に転校になりました。よろしくお願いします。」

 と、自己紹介をした。

「女の子ならいつでも大歓迎だよ‼」

 コウタがハイテンションで言った。すると、

「よく、そんな浮わついた考えでここまで生きながらえてきましたね…。」

「えっ?」

 冷やかな視線とともに、冷たい言葉がコウタにぶつけられた。コウタにとっては予想外の返答だったのだろう。彼は大いに動揺した。

「彼女は実践経験こそ少ないが、演習では抜群の成績を残している…。追い抜かれないよう精進するんだな。」

 ツバキさんがコウタを見つつ言った。おそらく彼女の自信はその成績から来ているのだろう。

「…了解です。」

 コウタがへこんだように言った。予想外の返答と、ツバキさんの追撃がだいぶ答えているらしい。

「アリサは以後、リンドウについて行動するように、いいな?」

「了解しました。」

「リンドウ、資料等の引き継ぎをするので私と来るように。その他のものは後は自由だ。以上。」

 ツバキさんが周りに指示をする。

「ね、ねえ君ロシアから来たの?あそこってすげえ寒いんでしょ?あ、でも最近異常気象で、温度が高くなってきたとか言ってたっけ…。」

 コウタがめげずに再チャレンジするが、やはりアリサは取り合わない。ソーマや、ハヤト、ハジメは興味なさそうにしている。この調子では彼女から話は聞けないだろう。

 一方そのころ、リンドウさんとツバキさんが職員室に向かう最中、リンドウさんがツバキさんに話し掛けた。

「期待の新人ですねえ…。レア物の新型がこんなにも揃ってる所なんて、ここぐらいじゃないですか?」

 リンドウさんが尋ねると、ツバキさんは、

「ああ、そうだな。だが本部の意向で、今後は新型の適合者発掘が優先されていくらしい。」

 と言った。そしてツバキさんは一呼吸置いてから話し出した。

「…ただ彼女の場合、適合はしているものの、若干精神的に不安定なようでな…。定期的に主治医によるメンタルケアのプログラムを組まれているようだ。…まあ、とにかく注意を払ってやってくれ。」

 要は彼女は危なっかしい奴だからからちゃんと見てろ、ということなのだろう。リンドウさんは

「了解です、姉上。」

「リンドウ、二度とここで姉上と呼ぶな。いいな?」

 と、リンドウさんの軽口(?)にツバキさんが注意すると、リンドウさんはばつが悪そうに頭をかいていた…。

 このときはまだ誰も分かっていなかった。あの転校生が呼ぶ波瀾を。そしてこれから待ち受ける悲しい別れをまだこのときは誰も気づいていなかったのだった…。

 

 

 

 

~次回予告~

 hayato

「アイツが転校生か。気に入らねえな。」

 hazime

「喧嘩とかはやめてよ。ハヤト手加減しなさそうだし。」

 RyoZU

「そうよ。アンタ、女の子に後まで残る傷つけたら私がアンタをブラストで撃ち抜くわよ。」

 hayato

「俺には残る傷つけていいのか…。」

 kouta

「すでに頬傷があるから大丈夫でしょ?」

 air

「そういうわけではないと思うんですけどね。とりあえず、私はアリサさんとの任務が不安です…。」

 hazime

「そうだね。いくら演習が優秀でも結局は実戦だからね。」

 RyoZU

「実戦派なら、良いってもんでもないでしょ。そんな訳で次回『第9話~精神安定の秘訣(仮)~』こうご期待ください。」

 hayato

「そんなに俺は信用ないのな…。」

 air

「普段が普段ですからね…。」

 

 




この頃のアリサは正直言うと嫌い
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