フェンリル学園組曲   作:かか雄

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ついに二桁に突入です。今回はシリアスな話がメインです。


第10話~別離~

それはただの任務のはずだった。

「まずいな…、こっちも囲まれてやがる…。」

ソーマが忌々しげに呟いた。周りは新種のアラガミに囲まれており、逃げ場はない。

「ウワァァ‼」

「‼」

コウタがアラガミによって教会に続く通路へと吹き飛ばされる。

「早くしろ‼囲まれるぞ‼」

ソーマが早く来いと叫ぶ。すると、教会の内部にいたリンドウさんが、

「命令だ‼アリサを連れて、学園に戻れ。」

と指示をした。するとサクヤ先生が、

「でも‼」

「聞こえないのか‼アリサを連れてとっとと学園に戻れ‼サクヤ‼全員を統率‼ソーマ、退路を開け‼」

そんなサクヤ先生の抗議を無視してリンドウさんは周りに指示をとばす。リューズとサクヤ先生が連携で通路のアラガミを撃退し、ソーマとコウタも連携して通路の入り口にいたアラガミを撃退し、退路を開けた。

「パパ…、ママ…、そんな…つもりじゃ…。」

「アリサ…‼」

そんな中、アリサだけは座り込み茫然自失で呟いている。リューズはそんなアリサを見て傍へと駆け寄っていく。

「リンドウも早く‼」

サクヤ先生が教会の内部に向けて叫ぶが、

「わりぃが、俺はちょっとこいつらの相手して帰るわ。…配給ビールとっておいてくれよ。」

リンドウさんはあくまでここに残る気のようだ。

「ダメよ‼…私も残って戦うわ‼」

「サクヤ…、これは命令だ‼全員必ず生きて帰れ‼」

「イヤああああ‼」

サクヤ先生は取り乱し叫ぶがどうしようもない。

「サクヤさん‼行こう。このままじゃ全員共倒れだよ‼」

「いやよ‼リンドウうううう‼」

コウタがサクヤ先生を説得しているがサクヤ先生は聞こうとしない。

「サクヤさん‼コウタの言う通りです。ここは一端撤退しましょう。」

アリサを背負ったリューズが一緒にサクヤ先生を説得し、なんとかその場から撤退することができた。

「どうしてこんなことに…。」

帰りのヘリでリューズが呟いた。どうしてこんなことになったのかはこの週の火曜日まで遡る…。

「次の任務の相手はあのヴァジュラだ。」

「ヴァジュラ…?」

火曜日のお昼休み、リューズたちは突如リンドウさんに呼び出された。内容は近隣にヴァジュラの反応が出たので、こちらに来る前に叩く、といういたってシンプルな内容だ。

「あの、質問あるんですがいいですか…?」

アイリが手を挙げてリンドウさんに質問をする。

「どうした、アイリ?」

「『あの』ヴァジュラと言いましたが、そのヴァジュラというアラガミは何か特別なアラガミなんでしょうか?」

アイリの質問にリンドウさんは、

「ああ、ヴァジュラってのは神機使いの登竜門と言われているアラガミだ。コイツを倒せればまあ一人前の神機使いって事だな。」

「とうりゅうもんって何だ?」

ハヤトが首を傾げつつ呟く。

「登竜門って言うのはね、それを越えれば立身出世、つまり、周りから認めてもらえるってことよ。」

「なるほど。つまりそのヴァジュラってのをブッ飛ばせれば、強さの証明が出来るんだな。」

「まあ、そういうことよ。」

サクヤ先生がハヤトに説明する。ハヤトにとってはヴァジュラより言葉の意味の方が気になるらしい。

「んで、他になんか質問はあるか?特に無いならメンバー編成の発表をするぞ。」

リンドウさんが周りの面子を見渡しながら聞く。周りは特に質問はないようで黙っていると、

「無いようだから、今からメンバーの指示をするぞ。」

(ま、私が入ることはないわね。)

リューズはそんなことを考えながら、リンドウさんの話を聞いていた。

(リンドウさん、ソーマ、サクヤ先生が確定として、後はハヤトかハジメのどっちかかしら…?)

リューズがメンバーの予想をしていると、まるで予想外のことが起きた。

「任務は木曜日なんだが、ちょうどその日は俺とアリサと別の任務が入っているんでパスだ。んで、メンバーはソーマとサクヤ、後の2人はリューズとコウタの合わせて4人だ。」

「ふん…。」

「あら。」

「マジで⁉」

リューズを除く3人がそれぞれのリアクションをとる。

「へっ…?」

それから遅れてリューズが間抜けな声を出した。

「というわけだから、各自ちゃんと訓練や準備をするように。分かったな?じゃ、解散だ。」

リンドウさんはそう言ってさっさと出ていった。ソーマとアリサとサクヤ先生もそれに続いて出ていく。だが、リューズだけは呆然と立っていた。

「おい、リューズ。大丈夫か?」

ハジメが声をかけると、

「あら、ハジメどうしたの?私は大丈夫よ。じゃあ今度の任務頑張ってね。」

「リューズさん⁉しっかりしてください‼」

「大丈夫よ。アイリちゃん。私は大丈夫。」

「テメエ、上の空でなに言ってやがる。起きろ。」

パンッ‼

「ハッ‼⁉あれ⁉」

ハヤトがリューズの顔の前で柏手を打つと、リューズはハッとして何度かまばたきをすると、今度は、

「…何で私なのよ…。」

と、ガックリと項垂れてしまった。

「リューズって時々感情の起伏がスゴいよな。」

コウタが言うとリューズは、

「アイリちゃんはともかく、アンタらは適応力高すぎなのよ…。私が普通なのよ…。」

「お前も結構適応してる方だと俺は思うんだがなあ…。」

リューズの発言にハヤトが呆れたように呟いた。リューズはそんなハヤトの言葉を無視してぼやく。

「普通はハヤトかハジメじゃないの?戦闘力的に。」

「戦闘力だけで選んでないんだよ。多分だけど、連携が出来るとか、視野が広いとかさ、なんかあるんじゃないの?リンドウさんなりの選考基準がさ。」

ハジメがそう言う。確かにそれで納得できないわけではないが、やはり相手が強敵ならば普通は強い奴を出すのが普通じゃないのだろうか?そんなことをリューズは思っていると、

「そんなに不服ならリンドウさんに直談判しろよ。ここでウジウジ言ってねえでよ。」

ハヤトがイライラした調子で言う。確かにここでウジウジ言っていても仕方がない。リューズは、

「そうね。放課後にリンドウさんに直接聞きに行くわ。」

そう言って部屋を出ていった。それに続いて他のメンバーもぞろぞろと部屋を出ていったのだった。

そして放課後、リューズは職員室へと向かった。そして、

「失礼します。リューズです。リンドウ先生はいますか?」

「おう、リューズか。どうした?」

「その、次の任務についていくつか質問がありまして…、」

「おう、そうか。んで、なにが聞きたいんだ?」

「あの…、できればここじゃない場所でいいでしょうか?」

「なんだ?ここじゃダメなのか?」

「その…、色々と込み入った話もありまして…、」

「…よし分かった。進路指導室でいいか?」

「あ、ハイ‼ぜひお願いします。」

リューズからのお願いをリンドウさんは承諾すると机の中から進路指導室の鍵をとり出し、リューズと共に進路指導室へと向かった。

進路指導室の中に入ると、リンドウさんが椅子に座るように勧めて来たので椅子に座るとリンドウさんは向かいの椅子に座った。

「さて、何か不満があるのか?」

「…分かりますか?」

「まあな。これでも結構長いこと生徒の面談はしてるんだよ。」

そうリンドウさんが言うと、リューズは観念したように大きく息を吐きだし改めてリンドウさんに、向き合い話を始めた。

「なるほどな。何故ハヤトやハジメじゃなくて自分が選ばれたのか、か。」

リューズの話を聞いたリンドウさんは少しだけ考える様子を見せたあと、ゆっくりと話し出した。

「確かに単純な戦闘能力だけならハヤトやハジメの方がお前よりもずっと上だな。」

「じゃあ、何で私なんですか?」

「ヴァジュラは今までのアラガミと違って力押しだけでどうにか出来るほどお前らにとって楽な相手じゃない。だからアイツらみたいに単純な戦闘能力だけじゃあ駄目なんだ。」

「じゃあなにが必要なんでしょうか?」

「まずは視野の広さだな。変化していく戦場では常に周りに気を配り、次に自分がとるべき行動を決めたり、周りに指示をしなくちゃならない。お前は前にシユウとやりあったときにアイリとアリサに指示をしていただろ?ああいう能力が今回は必要なんだ。」

「そ、そうですか…。」

リューズは素直に褒められて嬉しかった。あの時は咄嗟に思いついて指示をしただけだが、どうやらそれが良かったらしい。

「後は連携能力の高さだな。さっきの視野の広さの話とも繋がるが、そうした状況判断から自分と仲間の能力を活かしていくことがこれからは必要なんだ。例えばコウタのやつはバーストすると大分強くなるだろ?だから積極的にコウタに受け渡しを行うとかな。」

「なるほど…。」

リューズは感心していた。なんとなくだがリューズはリンドウさんが隊長に選ばれた理由が分かった気がした。

「ま、とにかく俺はお前さんならヴァジュラが相手でもいけるだろうと判断したから任務のメンバーに選んだんだ。だから自信をもっていけ。」

「ハイ‼分かりました‼」

「よし、いい返事だ。」

リンドウさんはそう言って笑った。リューズは自分の中の不安が解消されるのを感じていた。これならきっと任務もなんとかなるだろうとリンドウさんは感じていた。

それからリューズはリンドウさんに任務についていくつかの質問をし、それら全てに納得したところで進路指導室を出ていった。そして翌日からリューズは任務当日に向けて毎日放課後に訓練を行っていったのだった。

そして任務当日の木曜日、リューズたちはヴァジュラが現れる贖罪の街へと来ていた。出発地点から降りて、広いエリアに出ると早速コクーンメイデンに出くわした。

「ヴァジュラと戦うときにジャマになるわね…。みんな‼早く片付けておきましょう。」

サクヤ先生はそう言ってスナイパーを構えると手近なコクーンメイデンに攻撃を始めた。

「私たちも行きましょう‼」

「おうよ‼」

「ふん…。」

リューズの掛声と共にコウタとソーマもコクーンメイデンに向けて攻撃を始める。ここまでくればコクーンメイデンは大したことがない相手だ。何事もなく全てのコクーンメイデンを殺すとサクヤ先生はマップを確認し、ヴァジュラの位置を調べると周りのメンバーに指示をした。

「ヴァジュラをこのエリアに誘き寄せるわ。ソーマ、リューズ、ヴァジュラをこのエリアまで誘き寄せてちょうだい。コウタはここで私と待機よ。」

「分かりました。」

「了解だ…。」

リューズとソーマは了解するとヴァジュラのいるエリアへと向かった。

「ヴァジュラを見つけたらお前がブラストで牽制しろ。そしたらお前はすぐにサクヤたちのエリアに向かえ。後は俺が引き付ける。」

「分かったわ。」

軽い作戦会議の後、すぐにヴァジュラを見つけることができた。リューズは作戦通りブラストでヴァジュラを攻撃した。ブラストの発射音に気づいたヴァジュラの顔面にブラストが当たるとヴァジュラはこちらに向けて威嚇してきた。

「ソーマ‼後は任せるわよ。」

リューズはそう言ってすぐにその場をソーマに預け、リューズはすぐに後退した。

「サクヤさん、ソーマがヴァジュラを今からそちらに誘き寄せます‼」

後退の最中リューズはサクヤ先生に向けて通信をした。

『分かったわ。くれぐれも無理はしないようソーマに言っといてね。』

「了解です。」

リューズが後ろを確認すると、ソーマはヴァジュラを相手取りながら着実にこちらに向かっていた。

「スゴいわね…。」

リューズはソーマの動きに感心して呟くがあまり悠長にしていられないのですぐ前に向き直ると、急いでサクヤ先生たちがいるエリアに向かった。

リューズがサクヤ先生たちが待つエリアに入ってすぐにソーマから通信が来た。

『もうすぐそこに行く。準備はいいな?』

「こっちはOKよ。ソーマ‼」

『分かった。』

そして通信が切れるのと同時にソーマがヴァジュラを連れて皆が待つエリアに入ってきた。こうしてヴァジュラとの戦いが、ここ贖罪の街で始まった。

「ヴァジュラが活性化したら気をつけろよ…。」

戦闘中ソーマがコウタとリューズに警告した。

「活性化すると何かあるのか?」

コウタが質問するとサクヤ先生が、

「活性化したヴァジュラの攻撃を喰らうと麻痺することがあるの。そうなったら戦闘不能は免れないわよ。」

と警告した。

「りょ、了解です‼ヴァジュラが活性化したら慎重に行きます。」

リューズはそう言って改めてヴァジュラに向き直る。

「これがヴァジュラ…‼」

(今までとは圧が違うわね…‼)

それは、今まで見たアラガミのどれよりも大きい体躯、口から覗く鋭い牙、手足の鋭い爪、どれをとってもかなり恐ろしい風貌だ。加えて電撃による攻撃も繰り出してくるのだからたまったものではない。油断すればあっという間に戦闘不能、最悪死ぬこともあるだろう。そう思わせるだけの威圧感をヴァジュラは確かに放っている。

「確かにこいつを倒せれば一人前って名乗れそうね。」

だが、リューズはイマイチ攻めきれずにいた。ヴァジュラはその体躯からは想像できないほどに素早く、そして縦横無尽に動きまわる。追いかけてもすぐに引っ掻きや体当たりを繰り出してくるので距離が詰めづらい。加えて、上手く張り付けても放電してくるので長時間張り付くのは難しい。リューズは張り付くのはソーマに任せ、自分は周りの仲間の援護を重視することにした。隙をついて捕食を決めては、周囲の仲間に受け渡しをする。そうすることによって少しでも周りが戦いやすくなるように徹した。ヴァジュラが一際大きく吠えた。

「活性化するぞ‼注意しろ‼」

ソーマが警告する。活性化したヴァジュラは先程よりも速い動きでこちらに詰めてくる。

「全部回避は無理そうね。」

リューズはあまり無理せず、ガードで凌ぐことにした。

「ッ‼」

だが、ヴァジュラの攻撃は重く、バックラーで凌ぐのはさすがにつらい。

「当たれぇ‼」

ヴァジュラがリューズを攻撃しているうちに、コウタがヴァジュラに攻撃をする。アサルトの弾丸を喰らったヴァジュラは怯むと、今度はコウタ目掛けて体当たりしてきた。

「オワァァァ‼」

コウタは派手に吹き飛ばされ、起き上がるときに違和感を感じた。

「やべ…、痺れて動けねえ…。」

「チッ‼あのバカ、言ったそばから…。」

どうやらスタンしてしまったようだ。ソーマがコウタのカバーに向かおうとするが、それよりも早くヴァジュラの爪がコウタを襲った。

「マズイ…‼グァ‼」

「コウタ‼‼‼」

リューズが叫ぶがヴァジュラの攻撃は止まらず、鋭い爪がコウタを切り裂いた。

爪で切り裂かれたコウタが宙を舞う。もう戦闘不能は確定だろう。リューズがそう思ったその時、

「回復弾よ‼」

サクヤ先生がコウタ目掛けて緑色をしたレーザーを撃ち出した。

「サクヤさん⁉」

「大丈夫よ。」

リューズは驚いて声をあげたが、サクヤ先生が落ち着いた調子で言う。そうこうしている内にレーザーがコウタを貫くと戦闘不能だと思われたコウタが立ち上がった。

「あれ?俺生きてる…?」

どうやらコウタもなにがあったか分からないようだ。

「回復弾よ。当たると少しだけバイタルが回復するの。」

サクヤ先生が2人に説明する。

「ただし、無駄撃ちは出来ないわ。2人ともこれに頼りすぎないでね。」

「了解です。」

「すみません。サクヤさん。」

「お前ら、無駄話の時間はないぞ…‼」

そんなやり取りをしているとソーマが割り込んできた。ソーマの方を見るとソーマが1人でヴァジュラ相手に戦っている。よく見ると尾が結合崩壊しており、内部がむき出しになっている。

「攻撃はちゃんと効いているようね。皆‼このままいくわよ‼」

「了解です‼」

「もう油断しね―ぞ‼」

サクヤ先生が改めて指示をする。リューズとコウタは改めて神機を構え直す。

「ここからは一気にいくわよ‼」

リューズが思いきって切り込む。事前に調べた結果、まだ前足と頭の結合崩壊が狙える。リューズはショートの突きでヴァジュラの前足を積極的に攻撃した。

「これでどう‼」

リューズが一際強く突くと、ヴァジュラの前足は結合崩壊を起こし、ヴァジュラはたまらずダウンした。

「ソーマ、今よ‼」

「上出来だ…‼」

ソーマはダウンしているヴァジュラの顔面目掛けて渾身のチャージクラッシュを決めた。ヴァジュラの頭は結合崩壊を起こし、ヴァジュラは痛みからか大きな声で叫んだ。そして、リューズたちはそのスキを見逃さず銃撃をヴァジュラに喰らわせる。そしてリューズの放った弾丸がヴァジュラの顔面で爆発するとヴァジュラはその場で力なく崩れ落ちた。

「終わった…?」

「どうやらそのようね。」

「オッシャー‼勝ったぜ―‼」

「終わったか…。」

こうして初のヴァジュラ討伐任務は1人の犠牲も出ることなく終わりを告げたのだった。

リューズたちがヴァジュラを討伐したちょうどその頃、リンドウさんとアリサは贖罪の街に来ていた。

「これは、いよいよキナ臭くなってきたな。」

リンドウさんが呟く。なぜかエリアにアラガミの姿がない。とりあえず周囲を警戒しながら進んでいくと、前からリューズたちが出てきた。

「何⁉」

「エッ⁉どうして?」

「あれ?リンドウさん、何でここに⁉」

「どうして同一区画に2つのチームが…、どういうこと?」

各々が疑問を口にするとリンドウさんが

「考えるのは後にしよう。さっさと仕事を終わらせて帰るぞ。俺たちは中を確認。お前たちは外を警戒。いいな?」

と、素早く指示をした。そしてリンドウさんとアリサが教会の内部へと進むと一頭のアラガミが現れた。見たことのないアラガミだが、体格からヴァジュラ種であることが予想ができた。

「下がれ‼後方支援を頼む‼」

リンドウさんがアリサに指示をし、新種のヴァジュラ相手に果敢に斬りかかる。

(パパ…⁉ママ…⁉…やめて…食べないで…。)

アリサは銃こそ構えているものの、撃つ気配がない。

「アリサぁ‼どうしたあ‼」

リンドウさんがアリサに呼び掛けるがアリサはアサルトを構えたまま動かない。アリサが銃口の定まらないアサルトを撃とうとしたその時、

『混乱しちまったときはな、空を見るんだ。』

「いやあああああああ‼やめてぇぇぇぇえええ‼」

リンドウさんの言葉を思い出したアリサは咄嗟にアサルトを上に向けて撃った。弾丸は天井のヒビを撃ち抜き、それが原因で天井は崩落した。それによってリンドウさんは他のメンバーと分断されてしまった。

「あなた…‼いったい何を‼」

「違う…違うの…パパ…ママ…私、そんなつもりじゃ…。」

サクヤ先生が轟音を聞き付けて現れ、アリサに状況を聞こうとするがアリサは上の空で何かを呟いている。アリサがあてにならないと悟ったサクヤ先生はスナイパーで崩落した天井の残骸の破壊を試みるが、貫通しかないスナイパーでは穴を開ける事が出来ても破壊は出来ない。一方外では、

「まずいな…、こっちも囲まれてやがる…。」

ソーマが忌々しげに呟いた。周りは新種のアラガミに囲まれており、逃げ場はない。

「ウワァァ‼」

「‼」

コウタがアラガミによって教会に続く通路へと吹き飛ばされる。

「早くしろ‼囲まれるぞ‼」

ソーマが早く来いと叫ぶ。すると、教会の内部にいたリンドウさんが、

「命令だ‼アリサを連れて、学園に戻れ。」

と指示をした。するとサクヤ先生が、

「でも‼」

「聞こえないのか‼アリサを連れてとっとと学園に戻れ‼サクヤ‼全員を統率‼ソーマ、退路を開け‼」

そんなサクヤ先生の抗議を無視してリンドウさんは周りに指示をとばす。リューズとサクヤ先生が連携で通路のアラガミを撃退し、ソーマとコウタも連携して通路の入り口にいたアラガミを撃退し、退路を開けた。

「パパ…、ママ…、そんな…つもりじゃ…。」

「アリサ…‼」

そんな中、アリサだけは座り込み茫然自失で呟いている。リューズはそんなアリサを見て傍へと駆け寄っていく。

「リンドウも早く‼」

サクヤ先生が教会の内部に向けて叫ぶが、

「わりぃが、俺はちょっとこいつらの相手して帰るわ。…配給ビールとっておいてくれよ。」

リンドウさんはあくまでここに残る気のようだ。

「ダメよ‼…私も残って戦うわ‼」

「サクヤ…、これは命令だ‼全員必ず生きて帰れ‼」

「イヤああああ‼」

サクヤ先生は取り乱し叫ぶがどうしようもない。

「サクヤさん‼行こう。このままじゃ全員共倒れだよ‼」

「いやよ‼リンドウうううう‼」

コウタがサクヤ先生を説得しているがサクヤ先生は聞こうとしない。

「サクヤさん‼コウタの言う通りです。ここは一時撤退しましょう。」

アリサを背負ったリューズが一緒にサクヤ先生を説得し、なんとかその場から撤退することができた。

「どうしてこんなことに…。」

帰りのヘリでリューズが呟いた。それほどまでに今回の任務は不可解な事の連続だった。

「行ったか…。」

リューズたちが行ったのを感じたリンドウさんは、閉ざされた教会の中でタバコを吸っていた。その傍らには新種のヴァジュラの残骸が転がっていた。すると見計らったかのように新たなアラガミが教会内部に現れた。その姿はヴァジュラに似ているが、その顔はまるで人間の顔のようになっていた。

「はあ…、ちょっとぐらい休憩させてくれよ…。体がもたないぜ…。」

リンドウさんはそう言って一服するとゆっくりと立ち上り、吸っていたタバコを投げ捨てた。そして新種のヴァジュラとの戦いにたった1人で赴いたのだった。

 

 

 

~次回予告~

Ryoze

「もう今日は一体なんなのよ‼」

air

「リンドウさんは無事なんでしょうか…。」

hazime

「リンドウさんならきっと大丈夫だと信じたいが…。」

hayato

「………気に食わねえな…。」

air

「こういう時って一体どうなるのでしょうか…。」

Ryoze

「確か…、捜索部隊が編成されて行方不明者の捜索をするはずよ。」

hazime

「俺たちはそれに期待することしか出来ないのか…。そういうわけで次回第11話『~リンドウ死す(仮)~』頼むリンドウさん…、無事でいてくれ…。」

hayato

「アア‼クソ‼何がなんだかさっぱり分からねえがすげぇイライラする‼‼」

ドンッ‼‼

Ryoze

「気持ちは分かるけど、壁に八つ当たりは止めなさいよ…。」

 




ブラッドサージの属性を思うとリンドウさんはよくマータを倒せたなぁとしみじみ思います。
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