「嘘よ。嘘に決まってるわ…。何でこんな…、こんなことに…。」
嘆いても意味がない事は分かっているが、それでもこの状況で嘆く以外の選択肢は自分には浮かばない。
「どうしてよ‼どうしてこうなるの‼」
いくら嘆いても、誰も答えを教えてはくれない。きっと教えてもらったところで、納得はできないだろう。
「最悪だわ…。」
この状況は自分にとって最悪と言っても過言ではない。この学園に入ってからというもの、とにかく驚きの連続だったが、これはそれらを上回るほどにタチが悪い。
(とはいっても、まだ入学して1ヶ月もたっていないが。)
「何でアンタがここにいるのよ‼」
もはや、嘆きを通り越して怒りが込み上げてきた。ただ彼女は自らの感情に従って叫ぶことしかできなかった………。
なぜリューズがこんなにも怒っているのかというと、それは今日の朝までさかのぼる。
「部隊配属ねぇ。どこの部隊に入るのかしら。」
朝、黒板の貼り紙を見たリューズは取り敢えず指示通りにフェンリル制服に着替え、自分の席に座っていた。
「リューズさんは新型ですし、もしかしたら、リンドウさんの部隊かもしれませんね。」
近くの席にいたカノンが話しかけてきた。
「リンドウさん?スゴイ人なの?」
カノンに訪ねると、
「ハイッ‼リンドウさんは凄腕のゴッドイーターで、リンドウさんの率いる第1部隊の生還率は90%を越えるんですよ。」
「90%?それはスゴいことなの?」
ゴッドイーターが過酷な仕事であることは知っているつもりだが、その数字にイマイチ実感がわかないので、訪ねると、
「スゴいことなんですよ‼私も詳しいことは分かりませんが、一般的な部隊ではだいたい50%前後だと聞いたので。」
「なるほど…。確かにそうなるとスゴイわね。」
「それに第1部隊はリンドウさん以外にもスゴい人達がいるんです。私達の担任のサクヤ先生も所属ですし、同じ学年のソーマさんも私達と同じ年なのにとっても強いんです。」
「へぇ。そうなんだ。そういえば、カノンはどこかの部隊に所属しているの?」
「はい。私は第2部隊に所属しています。第2部隊は防衛班でもあるんですよ。」
「防衛班?いったい何を守るの?」
「防衛班は、この学園と、極東支部周辺の居住区を守るんですよ。そこにいる人達を避難させたり、アラガミを撃退したりしているんですよ。」
「そうなのね。そうなるとカノンも充分スゴいじゃない。」
「そんなことはありませんよ…。2年目なのに誤射も多いですし、シュンさんに固定砲台って言われたりもしましたし…。」
「そ、そうなのね。でも防衛班の仕事に誇りを持ってるんでしょ?なら大丈夫よ。」
「…そうですよね。大事なのは気持ちですよね‼」
慰めとしては単純な気もするがどうやら効果はあったようだ。
(それにしても固定砲台ってなかなかにひどいあだ名ね……。冗談とは思えないし…。)
この時はカノンの誤射がどれ程恐ろしいものなのか分からなかったが、後にこのあだ名の意味を身をもって理解することになるが、これはまた別のお話…。
「第1部隊になるかは分からないけど、とにかく頑張るしかないわね。」
しばらくすると、サクヤ先生が教室に入ってきた。
「じゃあ、ゴッドイーター科の部隊配属を発表するわ。とはいっても、今部隊に所属している子はそのまま同じ部隊よ。」
(なるほど…。ということは、1度入ったらよほどがない限り、ずっと同じ部隊ということね。)
となると、ここがある種の分かれ道ということになる。ここで入った部隊によってはアッサリ死ぬことも考えられるし、嫌なヤツがいれば、それだけで毎日が嫌になる。
(できれば、知り合いが1人くらいいれば気が楽なのに…。)
そんなことを考えたがそんなに都合よくはいかないだろう。だが、
「リューズさんと、ハヤト君は、第1部隊よ。」
「えっ⁉」
思わずハヤトの方を見るが彼は特にリアクションすることなく、聞いていた。
(確かに知り合いがいれば、とは思ったけど、よりによってコイツか…‼)
だが、理由には察しがついた。おそらくは新型だからとかそんな理由だろう。タメ息をつきたくなるが、もうどうしようもない。
(これから、3年間コイツと同じ部隊なのね…。なんだか泣きたくなってきた…。)
「これから、新しい部隊でオリエンテーションがあるわ。みんなそれぞれの場所に集まってね。」
サクヤ先生はそう言いながら、ゴッドイーター科の生徒に紙を配った。それに目を通すと、各部隊の集まる場所が書いてあった。
(第1部隊はと……。なるほど、別館の第4教室ね。)
この時間が終わるとすぐに別館の第4教室に向かうことにした。
「ハヤト、アンタも行くんでしょ。早く来なさいよ。」
「何で、テメェに指図されなきゃならねーんだよ。」
「同じクラスで、同じ部隊だからよ。アンタが呑気に構えてて遅れたら、私の印象まで悪くなりそうじゃない。」
「あぁ?そんなこと知るかよ。第一俺ら以外にいるってのか?第1部隊に入るヤツがよ。」
「確証はないけど、あと二人は確実にいるハズだわ。他にいるかは知らないけど。それよりも早く来なさい。こういうのは早く行くのが大事なのよ。」
「ちっ…、分かったよ。」
そう言ってハヤトは私の後からついてきた。
そして、2人で別館の第4教室に向かう途中、ハヤトが尋ねてきた。
「おいリューズ、お前さっき俺ら以外に確実に二人はいるって言ったよな。いるとしたら誰なんだ?」
「メディカルチェックの時に会ったコウタ以外の2人よ。確か、あの2人も新型のハズだから。」
「新型だから第1部隊?なんだそりゃ?根拠はあんのか?」
「私だって確証はないけど、新型は貴重な戦力らしいのよ。第1部隊の生還率は、とても高いらしいから、きっと新型の私達はなるべく死なせたくないハズ。だから、生還率の高い部隊にまとめるハズよ。」
「なるほどな。理屈は分かった。俺も第1部隊の事は少しは聞いてたしな。なら納得だ。」
ハヤトの中での疑問は解決したのか、それ以降は特に喋ることなく、別館の第4教室に向かった。そして、第4教室の前で立ち止まり、一呼吸ついてから、教室に入った。すると中に完全に予想外の人がいたので、驚いてしまった。
「嘘…。何で…。どうして…?」
「あっ、お前は…、確かあのときの…。」
「何で、お前らは俺を見てそんなに驚くんだよ…。」
そこにはコウタがいたのだった。
そして、冒頭の続きから…。
「どうして、コウタがいるのよ‼」
「いや、怒らないでくれよ。ていうか、何で俺は怒られなきゃならないんだよ‼」
「予想が外れたからよ‼」
「そんなこと知るかよ‼」
二人のこんなやり取りを余所に、ハヤトが呟いた。
「リューズのヤツが新型は第1部隊のハズとか言うからよ。てっきりこいつらだけかと思ったんだがな…。」
ハヤトの疑問に答えたのは、コウタ本人ではなく、教室にいた茶髪の女性だった。
「今年は新人が少ないらしくて、第1部隊にまとめることにしたそうですよ。」
「なるほどね…。そういえばあのとき名前聞きそびれちゃったけど、あなたの名前は何なの?」
リューズが茶髪の女性に質問すると、
「あっ、はい。私は花月アイリって言います。リューズさん達と同じ新型です。よろしくお願いします。」
「アイリっていうのね。よろしくね、アイリちゃん。」
「ハイ。こちらこそよろしくお願いします。リューズさん。」
二人が軽い挨拶をかわした後、アイリはハヤトの方に向きなおって、
「あなたの名前は何ですか?」
「…俺は九頭竜ハヤト。アイリだったか?まあ、よろしく。」
「こちらこそよろしくお願いします。ハヤトさん。」
軽い挨拶をかわすと、ちょうどその時、教室にサクヤ先生ともう1人、男性が入ってきた。
「自己紹介はすんだかしら?まあ、はじめましての人はいないでしょう?」
「サクヤ先生‼それと、もう1人の方は…。」
皆の注目はもう1人の男性の方に向いていた。
「?…あぁ、そうか。お前らとは初対面だったな。俺は雨宮リンドウ。お前さん達第1部隊の隊長だ。ま、普段は進路指導の担当だがな。」
「あなたが雨宮リンドウさんなんですか?」
「オイオイ、このタイミングで別の人がくるってか?」
リンドウが苦笑いしながら答える。生還率90%の部隊を率いる隊長なのだから、きっとすごくゴツくて、見るからに強そうな人なのではと思っていたので、何だか拍子抜けしてしまった。
(何だか、ひょうひょうとしていて掴み所が無さそうな人ね…。本当にスゴい人なのかしら?)
何だか、カノンに騙された様な気がしてきたが、彼女が嘘をつけるような人には見えないので、この人が雨宮リンドウだろう。
「なあ、サクヤ。コイツら俺のこと疑ってないか…?」
「皆安心して。彼は普段はこんな感じだけど、これでも隊長だから。任務時は頼って大丈夫よ。」
「そうですか…。」
釈然としないが、サクヤ先生がそう言うならおそらくは頼れる人なのだろう。
「そういや、ソーマがいないな。どこに行ったんだ?サクヤ、知ってるか?」
「いいえ。知らないわ。ソーマのことなんだからいつも通りサボりでしょ。」
「やっぱサボりか。」
「ソーマ?」
リンドウさんが見渡しながらぼやく。そういえばカノンが第1部隊にはソーマという強い人がいると聞いた。おそらくはその人のことだろう。
(サボりだとしたら、相当ヤバイやつなんじゃ…。)
サクヤ先生と、リンドウさんにサボりだと思われている人となると、相当ヤバイ気がする。いくら強いといっても協調性がない人となると部隊としては致命的な気がする。
「まあ、いないなら仕方ないか。そのうち一緒に任務にでも行くだろうから、その時でいいか。」
「そんな、アバウトな感じで大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。アイツは何だかんだいっても根は良いヤツだからな。」
「そうですか…。」
この様子からするとソーマという人物はよほど気難しいのだろうか、はたまた、単にリンドウさんとの付き合いが長いからこそいえるものなのか、今はよく分からないが、どうしようもないので、考えないことにした。
「さてと、自己紹介はすんだし、後は何か言うことはあったけか?サクヤ。」
「特にないハズよ。任務の予定は入っているの?」
「いや、まだないな。まあ、いつ急に入って来るかは分からんから何とも言えないが。」
「そう。じゃあ、顔合わせは取り敢えずこれでおしまいね。じゃあ、皆教室に戻って良いわよ。」
「「「「「分かりました。」」」」」
そう言ってリンドウさんとサクヤ先生は戻って行った。それに続いて私達も自分の教室へと戻っていった。
お昼になって食堂に向かうと、コウタ達が既に座っていた。どこにも座るあてもなかったので彼らがいたところに、一緒に座ることにした。
「リューズたちのクラスは良いよな~~。」
座るとすぐにコウタが話しかけてきた。
「良いってなにがよ?」
「サクヤ先生だっけ?メチャクチャ美人じゃんか。あの人が担任なら俺は嬉しいけどな。ハジメもそう思うだろ?」
コウタは隣に座っていたハジメに話を振ると、
「やる気が出るかは別として、確かに綺麗な先生だよね。」
「だろ‼ハジメもそう思うよな‼クソ~!ハヤトが羨ましいぜ。」
「…お前ら、いったい何の話をしてるんだ?」
そこにちょうどハヤトがご飯を大盛にしてやって来た。
「サクヤ先生はスゲー美人だよなって話。」
「ふーん。」
「聞いといてその反応かよ‼」
「んなこと言われてもよ。じゃあ、お前らのクラスの担任は誰なんだよ?」
「俺たちのクラスの担任はタツミ先生っていうんだけどさ。いい人なんだけど、暑苦しくてさ。それにしょっちゅう隣のクラスの担任のヒバリ先生をさ、口説いてるんだぜ?毎度フラれるのにさ。」
「ほぉ。なんか面白そうだな。その光景。」
「そうかね~。にしても、あのメディカルチェックの時にいた奴らが同じ部隊ってなんかスゴいな。」
コウタが呟いた。確かにコウタは違う部隊でも不思議ではないが、それでも新型が4人も固まるなどさすがにあり得ない気もする。
「まあ、アイリちゃんが言ってたけど、今年は新人が少ないんでしょ?なら、同じ部隊に全員固まってても不思議ではないんじゃないの?」
「確かにそうだね。後はリンドウさんか、あの人本当にスゴい人なのか?」
「生還率90%の部隊を率いる隊長なんでしょ?普段がああでも、きっと任務中はスゴい人なんじゃないの?サクヤ先生もそう言ってたし。」
「やっぱ任務に行かないと分からないか~。俺らはいつ初任務なんだろうな?」
「知らないわよ。意外と来週にでも入ったりするんじゃない?」
「かもなぁ。あぁ~、俺神機どうすっかな~。」
「そうね。そろそろ真面目に考えないとね。あんた達は考えてるの?」
ハヤトとハジメに話を振ると、ハヤトは、
「う~ん。バスターかな、刀身は。銃身はまだ考え中だな。装甲はどれでも良いや。」
「俺は銃身はアサルトかな?刀身と、装甲は考え中。」
「あら、意外とちゃんと考えてるのね。」
「まあな。コロコロ変えるのもアレだし、ちゃんと考えないとな。」
「そうそう。一生の付き合いになるんだしね。」
どうやら彼らなりに考え中のようだ。確かに彼らの言う通り、神機とは一生の付き合いになるのだから、真剣に考えるべきだろう。そんなことを考えながら、昼御飯を食べてると、突然、
「あの~、皆さんちょっと良いですか?」
「ん?」←コウタ
「?」←ハジメ
「あぁ?」←ハヤト
「なに?」←リューズ
呼ばれて振り向くとアイリが立っていた。
「あぁ、ようやく反応してくれましたね。私、さっきからずっと皆さんのこと呼んでたんですよ!?」
「ごめんなさい…。色々考えていて全然気づかなかったわ。」
「うぅ…。」
「で、どうしたの?私達に話があるんでしょ?」
「そうでした。実はさっきリンドウさんに会いまして、来週の週末に任務に行くことになりまして…。」
「へっ?」←コウタ
「へぇ。」←ハジメ
「ほう…。」←ハヤト
「…………。」←リューズ
「…もう一回言ってくれるかしら…?」
「ですから、来週の週末に任務に行くことになりまして…。」
「ウソでしょ?」
「…嘘じゃないですよ?」
「本当に?」
「本当ですよ。」
「そんな…。」
冗談で言ったつもりが本当になるとは思いもよらなかったので、驚きの言葉すら出ずにいたが、
「あの~、リューズさん?」
「もう最悪‼」
そんなリューズの叫びはその日の食堂中に響き、その場にいた人たちを全員驚かせてしまったのだった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~次回予告~
RyuZU
「冗談で言ったつもりが本当になるなんて‼」
hazime
「瓢箪から出た独楽ってやつだね。」
hayato
「まあ、これでリンドウさんがどんくらい強いのか分かるんだな。」
kouta
「それにここでバシッと決めれば、サクヤ先生からの評価も一気に上がるハズ‼」
air
「でもまだ神機が…。」
kouta
「その時までに決めれば大丈夫っしょ‼」
hayato
「そんなノリで大丈夫か?」
hazime
「大丈夫だ。問題ない。」
RyuZU
「大丈夫なわけないでしょ…。あぁもう‼本当に最悪‼」
hazime
「そんなわけで、次回、第4話~命令はいくつ?(仮)~こうご期待ください。」
kouta
「ゴッドイーターに俺はなる‼」
air
「私達、もうゴッドイーター、ですよね…?」
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