「新入りだからって調子こいてんじゃねーぞ‼」
「………。」
「なんか言えよ‼1年生さんよ~‼」
(どうしてこうなったのかしら…。)
今日もいつも通りの昼休みになるはずだった。任務も特になく、普段通りの1日になるはずだった。ただ、天気が良かったので普段と違って食堂ではなく購買で買ったパンを持って屋上へと向かっただけだったのだが、
「オイ、1年が何しに来たんだ?。」
「…チッ…。」
「アァ?何舌打ちしてんだ?1年が調子こいてんじゃねーぞ‼」
(スゴいのに出くわしてしまった…‼」
そこには、見るからに不良といった雰囲気の生徒数人が誰かを取り囲んでいるという、マンガじゃないと見れないような光景があった。
(こんなマンガみたいな展開を見ることになるなんて…‼)
取り囲まれている生徒は後ろ姿しか見えないので、誰かは判別ができない。だが、状況を鑑みて明らかにヤバイ状況なのは一目見て分かる。リューズはどうするべきかと考えていると、不良の1人がこちらに気づいた。
(マズイ‼早く逃げないと…。)
だが、時すでに遅く、
「何見てんだ‼テメェ‼」
こうしてリューズの貴重な昼休みが潰れることが決まってしまった。
そして、冒頭の場面に戻る。
不良どもはリューズに気がつくとこちらにやってきて、今度はこっちに絡みだした。
「テメェ、どっから見てた?」
「…1年が何しに来たんだ、とか言ってる辺りからです。」
「なるほどな。いいか?ぜってーチクるなよ?チクったらぶっ殺すからな。」
「ハイ…。」
(こんなやつらに絡まれるなんて…。)
とりあえず、相手の言うことに従うことにした。こうすればとりあえず解放はされるとリューズは思ったのだが、
「にしても、お前見ない顔だな。もしかして噂の新型か?」
「あ、ハイ…。そうですけど…。」
「新型神機使いとかいうからどんなやつかと思ったが、中々可愛いじゃねーか。どうよ?俺らと遊ばない?」
なんと、不良どもはリューズを口説きに来たのだ。リューズはこの場から逃げ出したくなったが、取り囲まれているのでそうも行かない。
「…………。」
(コイツらウザイ…。)
「なんか言えよ。新型さんよ~。」
「大丈夫。悪いようにはしないからさ~。」
「お前ら止めろよ。ゴメンね?こんなやつらで。お詫びに俺らとお茶しない?」
(マジでウザイ…‼)
典型的なマッチポンプが始まったのだが、正直な話をすると興味ない。何とかしてこの場を切り抜ける方法がないかと考え出したとき、
「オイ、リューズ一体何してんだ?」
ハヤトがやって来た。
(チャンス‼)
するとリューズはハヤトに助けを求めることにした。
「ゴメンね~、ハヤト。せっかく2人でご飯食べよって約束したのに…。」
「ハッ?お前急になに言って…」
ハヤトは反論しようとしたのだが、時すでに遅し。不良どもは今度はハヤトを取り囲んで、
「なにお前?あの娘の彼氏?」
「ハァ?そんなんじゃねーよ。」
「いまさぁ、俺らがさぁ、彼女といいことしようって話してんだよ。だからテメエは帰れ。」
「ふざけんな。俺はリューズに用事があるんだよ。」
「テメェ…。調子こいてんじゃねーぞ。さてはテメェも新型だな?」
「アァ?それがどうしたってんだよ?」
「新型の癖に調子こいてんじゃねーぞ‼」
唐突に不良の1人が殴ってきた。不意打ち的にハヤトはそれを喰らってしまった。
「仕方ねぇ。コイツボコって半殺しくらいにしようぜ。」
不良の誰かがそう言うと他の不良どもも殴りかかろうとしたのだが、ハヤトが突然喋りだした。
「いいか?人ってのは意外と脆いんだぞ?」
「アァ?急になんだテメェ?」
「俺はゴッドイーターだから普通の人よりはだいぶ頑丈に出来てる。けどよ、アンタらもゴッドイーターなんだ。つまりどっちも同じ土俵にいるんだよ。」
「それがどうした?アァ?」
「それがこんな人数で殴りかかってきたら、半殺しじゃあすまねえだろ?」
「知るか。そんなこと。」
「つまりよ、アンタらは俺を殺す気なんだよな?」
徐々にハヤトの言葉が怒気を孕んできた。不良どもはそれに気にすることなく、ハヤトに止めの言葉を放った。
「そんなにお望みならぶっ殺してやるよ‼」
ブチッ‼
そんな音が聞こえた気がした。そして、
「つまりよぉ、ここでぶっ殺されても文句は言えねーよなぁ‼」
「!?グェッ‼」
ハヤトの怒号とともに不良が1人宙を舞った。どうやら、アッパーを喰らわせたらしい。そこからは早かった。ハヤトは不良を1人ずつ殴り、蹴り、投げ飛ばし、不良が殴りかかればそれをギリギリで避け、カウンターの拳を鳩尾に入れ、後ろから来た不良には回し蹴りをいれて吹っ飛ばし、2人がかりで来ても臆することなく頭を掴んでぶつけさせ、飛び掛かってきた不良は、腕を伸ばして掴み、振りかぶって地面に叩き付け踏みつけた。最後の1人に至っては、襟首を掴んで片手で持ち上げると、思いっきり頭突きを喰らわせた。鈍い音が響き、最後の1人が倒れこんだ。そんな某大乱闘の組手を彷彿とさせる圧倒的な暴力によって、ハヤトは不良どもをあっという間に叩きのめしてしまった。
「チッ…、俺に暴力を振るわせやがって…。」
ハヤトはそうぼやきながら、リューズに近づいてきた。
「オイ、リューズ。テメェなんで、こんなときに屋上にいんだよ。」
「気まぐれよ。私だって好きで絡まれたわけじゃないんだからね。それで用事って?」
「あぁ、それか。実はよ…」
「危ない‼」
「アッ?」
ガツッ‼
倒したはずの不良がどこからか持ってきた鉄パイプでハヤトの後頭部を殴り付けた。ハヤトは後頭部を押さえ、うずくまった。よく見ると血が流れている。
「やったか…?へへっ、ザマーみろ。」
不良そう言って再び殴り付けようとしたそのとき、
「お前今頭殴ったよな?」
ハヤトがゆっくりと立ちあがり、不良を睨み付けた。睨まれた不良はまるで蛇に睨まれた蛙のようにその場で動けなくなってしまった。
「鉄パイプで頭なんか殴ったらよ、当たりどころが悪かったら死んじまうんだぞ?つまりお前は今俺を殺そうとしたんだよな?」
「ちっ…違…俺は…そ、そんな…」
不良は恐怖で呂律が回らなくなっており、もはや何を言っているのかよく分からない。ハヤトはそれに構わず続けた。
「殺そうとしてたんだよなあ?だったら何されてもよぉ、文句はねぇよな!?」
ハヤトはそう言って不良の襟首を掴み、屋上の金網めがけて思いっきり投げ飛ばした。野球ボールのように飛んでいった不良は金網にめり込み気絶してしまった。ハヤトはそのまま、止めを刺すために近づこうとしたのだが、
「そうだ、ハヤト。チョココロネあるけど食べる?」
「……………食う。」
これ以上は危険だと判断したリューズの機転により、ハヤトが纏っていた殺気は一瞬でなくなり、リューズがくれたチョココロネを頬張り始めた。
(良かった……。収まったようね。)
「とりあえず医務室行きましょ?血まだ止まらないみたいだし。」
ハヤトは無言で頷いた。こうして、取り合えずはこの場から離れることにした。リューズは辺りを見回すと、先ほど絡まれていた生徒はどこにもいなくなっていた。
(あのゴタゴタのうちに逃げたのかしら?)
顔が見れなかったことは少し気になったがすぐに忘れ、ハヤトとともに医務室に向かうことにした。
医務室に向かうと、保険医が適切に処置をしてくれた。怪我の理由を深くは聞いてこなかったので、適当に誤魔化してその場を後にし、2人は教室に向かった。
「そういえば、用事ってなんなの?」
教室に戻りリューズはハヤトに尋ねた。
「え~と、何だったかな…。」
ハヤトは少しの間考え込み思い出したのか手をポンっと叩いた。
「そうだ、そうだ、思い出した。来週の火曜日に任務だってよ。」
「任務?ずいぶんと唐突ね。」
「俺だってさっき聞いたよ。んでよ、今回の任務はソーマ?だったかな、そいつとの合同任務らしい。」
「ソーマ…。どこかで聞いた名前ね…。」
「まあ、そういうことだから。よろしく。後、チョココロネありがとな。」
ハヤトはそう言って自分の席に戻っていた。
ハヤトが戻ったあと、リューズはソーマという人物に心当たりが合ったので少し考え、思い出したの。
(そうだわ‼配属の時にリンドウさんたちが言っていたわね。)
おそらくはそのソーマという人物と今回の任務に行くのだろう。
(顔合わせをサボるくらいの不良なら実はあの中にいた、なんてことはないわよね…?)
リューズはつい先ほどあった大乱闘を思い出し、その可能性を考えたがすぐさま否定した。
(ソーマって人は強いらしいし、そんな人がハヤトにアッサリやられるとは思えないから、さすがにそんなことは無いわよね。)
そう思いながら、取り合えず購買で買ったパンを食べつつ、午後からの授業に備えることにした。
そして放課後、部屋に戻ろうと準備しているとハヤトが声をかけてきた。
「オイ、リューズ。お前今から用事あるか?」
「特に無いけど何で?」
「いや、今から訓練場に行こうと思ってよ。どうせならお前との連携の練習も兼ねようかと思ってよ。」
「?何でアンタと連携の練習しなきゃならないのよ?」
当然の疑問をぶつけるとハヤトは意外そうだと言わんばかりの顔をして、
「なんだ、知らねぇのか?今回の任務は俺とお前とソーマと、あと1人は誰だったかな…。まあ、取り合えず4人で行くからよ、今のうちにお前との連携くらいは練習しなきゃマズイと思ってよ。」
「…なにそれ。初耳なんだけど…。」
「あれ?言ってなかったか…。まあいいや。そういうわけだからお前も来い。」
「嫌って言ったらどうするの?」
断る理由は特に無いのだが素直に了承するのもシャクなので、試しに聞いてみると、ハヤトは少しだけ考えた様子を見せ、
「…任務の時にお前の背中に散弾を撃つとか?」
と、まさかの誤射する宣言。予想よりもずっと嫌な回答だったのでリューズは観念して、
「…わかった。私も行くわ…。」
しぶしぶながらついていくことにした。しかし向かう途中で疑問が浮かんだのでハヤトに尋ねた。
「練習は構わないけど、いったい誰が機械を動かすのよ?」
訓練場の機械は誰かが上で操作する必要がある。しかし自分とハヤトの2人だけではどちらかが機械を操作することになるので、連携の練習が出来なくなる。
(まさかコイツ、そこまで考えてなかったなんてことはないわよね?)
ハヤトの性格的にそこまで考えているのか怪しく感じたからこそ出た疑問だったが、
「それなら大丈夫だ。もうリッカに頼んである。」
と、ハヤトはアッサリと答えた。
「なるほどね…。でも、リッカって誰よ?」
新たな疑問が出てきたが、ハヤトに尋ねると、
「リッカは神機の整備士でよ。色んなやつの神機のメンテをしてるらしい。まあ、とにかく、信頼できるやつだから心配するな。」
ハヤトがここまで言うならおそらく大丈夫だと感じたのでそれ以上は特に聞かず、訓練場へと向かった。
訓練場に着くと、既に1人の少女が待っており、2人が来たのを確認すると、こちらに手をふってきた。ハヤトが手をふりかえしたので、どうやらあの少女がリッカという人物らしい。
「よう、リッカ。遅くなった。」
ハヤトがそう言うと、
「気にしなくていいよ。それより、君は?」
リッカが尋ねてきたので、リューズは
「私はリューズ。コイツのクラスメイトよ。よろしくね、リッカちゃん。」
そう言うとリッカは
「うん。こちらこそよろしくね。」
と笑顔で返してくれた。
「んじゃ、早速だけど特訓がしたいから機械の操作よろしく頼むぜ。」
ハヤトがリッカに言うと、リッカは、
「了解。じゃあ、さっそく準備するからここで待っててね。」
リッカはそう言って上に上がり機械の準備を始めた。
「アンタ、いつあんな娘と知り合ったの?」
リューズが尋ねると、ハヤトは、
「神機決めるときだよ。お前が行った後、色々考えているときに会った。そういや、神機を鎌にしたキッカケもリッカに頼まれたからだな。」
「へぇ、なにそのエピソード。すごい聞きたいんだけど…。」
「大したもんじゃねーよ。ただ…「準備できたよー。」
ハヤトが言おうとした直前にリッカの声が響き、ハヤトの声をかき消した。
「了解。んじゃ、頼んだぜ。」
ハヤトがそう言うと、少ししてダミーが出てきた。それを確認すると、
「よしリューズ、遅れんなよ。」
「言われるまでも無いわ。」
こうして2人の特訓が始まった。2人は任務の前日まで毎日放課後に特訓を行った。
そして任務当日。リューズたちはヘリで今回の任務を行う鉄塔の森に向かっていた。
「つうかよ、なんでお前しかいないんだ?ソーマはサボったのか?」
ハヤトがぼやくとリューズは、
「知らないの?ソーマは先に鉄塔の森に向かったらしいわよ。」
「そうなのか?一緒でもよかっただろ。」
「そんなこと、私に言わないでよ。あっちはベテランなんだし、なんか準備してるんじゃないの?」
「あぁ~、なるほどな。」
ハヤトはそれで納得したようで、後は外を眺めていた。しかし、リューズは口ではあんなことを言ったものの、内心は不安で一杯だった。
(ただ単に、私たちと一緒はイヤとかそんな理由だったらどうしよう。)
そんな不安をかかえながら、ヘリは鉄塔の森へと向かっていった。
鉄塔の森に着くと、ゴッドイーターとおぼしき人物が2人いた。赤い髪とサングラスが特徴的な男とフードを被った長身の白髪の男だ。2人はこちらに気づいたようで、赤い髪の男がこちらに手を振りながら、近づいてきた。
(この人がソーマって人なのかしら?イメージとだいぶ違うけど。)
リューズがそんなことを考えていると、赤い髪の男が話し掛けてきた。
「お?君達が例の新人クンだね?噂は聞いているよ。僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。君達もせいぜい僕を見習って人類のために華麗に戦ってくれたまえよ。」
((何なんだ…この人?))
リューズとハヤトがそんなことを思っていると、突然、
「エリック、上だ‼」
フードの男が突然叫んだ。つられて上を見るとオウガテイルがエリックに飛び掛かってきていた。
「え?オワァァ~‼」
飛び掛かってきたオウガテイルはそのままエリックに噛みつこうとしたが、ギリギリのところで頭は避け、最悪の事態だけは免れたのだが、腕に噛みつかれてしまった。それを見たフードの男は、
「ボーッとするな‼」
そう言ってバスターを振るうと、オウガテイルを一撃で沈めてしまった。
エリックが負傷してしまい任務が行えなくなったので近くの物陰へと運んだあと、フードを被った長身の男が名乗った。
「…ようこそ。クソッタレな職場へ。俺は『ソーマ』…別に覚えなくてもいい。…言っとくが、ここではこんなことは日常茶飯事だ。」
そう言った後、ソーマは突然バスターをこちらに突きつけ、
「お前らはどんな覚悟を持って『ここ』に来た?」
ソーマの問い掛けに2人は、
「わ、私は、…」「………。」
何も答えなかった。いや、少なくともリューズは何も言えなかった。言おうとしても何も出てこなかったのである。
(半強制的なのに覚悟なんてそんなものあるわけないでしょ‼)
リューズは内心でそう叫んだが、彼には通用しないと一瞬で悟っていた。その様子を見たソーマは、一瞬だけ口許を緩め、
「なんてな…。時間だ。行くぞルーキー。…とにかく死にたくなければ、俺には関わらないことだな。」
そう言ってソーマはさっさと行ってしまった。
(『なんてな…』って、冗談⁉冗談だったの!?)
リューズはツッコミをやりかけだが、もうソーマは先に行っており、ハヤトもそれについてさっさと行ってしまったのでリューズもその2人に急いでついていった。
いざ、任務が始まると、噂通りソーマは確かに強かった。アラガミとの戦いかたを熟知しており、無理な力は込めず的確にアラガミを仕留めていった。
(噂以上に強いわね。コレは…)
リューズはそんなことを考えながらも、同時にハヤトの動きにも注目していた。
(訓練の時から思っていたけどコイツも中々のものね。)
ハヤトの戦いはかなり豪快なものだった。大振りに鎌を振り回す他に、空中での振り下ろしや先端を突き刺して投げ飛ばすなどといったパワー重視の戦闘スタイルだ。そしてハヤトの戦いにはもう1つ大きな特徴があった。
(ショットガンは飾りね…。)
銃形態にすることはほとんどなく、銃形態にするときは攻撃ではなく、受け渡し用と移動用の2つに割りきっていた。確かに銃形態はガードが出来ず、被弾のリスクがつきまとう前線においてはむしろ、変形しない方がよいのだろう。だが、これでは旧型と大差はない。
(エリックもいないし、私が後方支援するしかないわね。)
リューズはそう考え、今回は銃撃を重視することにした。訓練も含めればそれなりの数の戦闘は経験してきている。その成果だろうか、今回は誤射することもなく、無事に任務を終えることができた。
任務終了後、ソーマは負傷したエリックをヘリに乗せ、先に行ってしまった。リューズたちも後から来たヘリに乗り、鉄塔の森を離れた。帰りの道中、ハヤトはリューズに聞いてきた。
「なあ、リューズ。お前はなんで神機使いになったんだ?」
「…えらく真面目な質問ね。私は適正があったから、ただそれだけよ。アンタはどうなの?」
「俺か…、俺もだな。俺も別になりたくてなった訳じゃあないな。」
「どうしてそんなことを聞くのよ?」
「いや、ソーマの奴に言われた事がずっと気になっててな。覚悟が有るかって言われたときによ、何にも言えなくてさ。改めて考えてみただけだよ。」
「そう…。まあ、時間はたくさんあるし、ゆっくり戦う理由を考えましょ?」
「そうだな…。変なことを聞いて悪かったな。」
ハヤトはそう言って後はただ窓の外を眺めていた。リューズも何も言わずにただ外を眺めていた。
帰投後、医務室に向かうとソーマが出てきた。リューズはソーマに尋ねた。
「エリックは大丈夫なの?」
「まだ、生きてるよ。後は本人から聞け…。」
ソーマはそう言ってさっさと出ていってしまった。
「なんなの!?アイツ。アッサリしすぎじゃない!?」
リューズはそんなソーマの発言に怒りを覚えたが、ハヤトは、
「アイツなりにきっと色々思うことがあるんだよ。」
そんなことを言うので、
「そうかしら?あんな不良と一緒の部隊なんてほんとサイアク‼」
リューズがそう言うとハヤトは少しだけ嫌そうな顔をして
「…それは俺にも言ってるのか…?」
と、呟いた。
「あんなヤツに比べればアンタの方が幾分かマシよ。」
「…誉め言葉として受け取っておくよ。」
「それより早くエリックのお見舞いに行きましょ。いくら大丈夫だと言われても不安だわ。」
「確かにそうだな。さっさと入るか。」
そんなやり取りを終え、2人は医務室へと入っていった。
医務室に入り、辺りに目をやるとすぐにベッドで横になっているエリックを見つけた。
「エリック、大丈夫?さっきの任務では気づけなくてごめんなさい…。」
リューズがそう謝ると、エリックは、
「安心したまえ。見ての通り僕は生きている。まあ、さっきのは華麗に油断しただけさ。決して君達が気に病む必要はない。華麗な僕はこれくらいの事は覚悟していたからね。」
エリックはそう言うが、喰われた腕の辺りは包帯が巻かれており、非常に痛々しい。それに微かに震えており、先ほどの恐怖が相当なものであった事は容易に想像できる。
「その…、腕は大丈夫なのか…?」
今度はハヤトが尋ねた。
「あぁ、これかい?心配ないさ。僕だってゴッドイーターなんだ。これくらいの傷だったらすぐに治るさ。それより君達こそ大きな怪我は無いのかい?」
「いや、俺たちは大丈夫だ。」
エリックの問いにハヤトがそう答えると、エリックは心底安堵した表情を見せ
「そうか…、君達が無事で安心したよ。この僕が華麗に活躍できていれば、もっと楽に任務が完了出来たと思うと心苦しくてね…。」
そんな冗談とも本気ともとれるエリックの発言を聞いて、2人は少しは気が楽になった。
「大丈夫ですよ。私たちだってそう簡単には負けませんよ。」
リューズはそう言うと、ハヤトも、
「そうだな。アラガミなんぞにそう簡単には負けられねえな。」
と、言った。
「じゃあ、私たちは戻りますね。エリックお大事にね。」
「じゃ、また。」
リューズとハヤトはそう言って医務室を出ていった。
2人が帰った後、エリックは保険医に尋ねた。
「先生、僕はまだ、華麗に戦うことができますか?」
エリックの問いに保険医は、
「思いのほか怪我が酷いな。これでは完治までおそらくだが数週間はかかるだろうな。」
「そうですか…。」
エリックは少し沈んだ調子で言うと保険医は、
「まあ、生きていただけありがたく思うんだな。お前には戦う理由があるんだろう?」
そう保険医が言うと、エリックは
「そうだ。僕はエリナのためにゴッドイーターになったんだ。エリナが安心して眠ることが出来る世界を創るために、僕はこんな所でくたばるわけにはいかないんだ。」
エリックはそう言った後、静かに天井を見ていた。彼の顔にはある決意がみてとれた。
医務室を出た後、リューズとハヤトは1人の裕福そうな少女に会った。裕福そうな少女は2人を見ると、こちらに近づいてきた。
「どこの子かしら?」
「見た感じ、初等部だろ。だとしたら何の用なんだ?」
2人が裕福そうな少女に声をかける前に裕福そうな少女は2人に尋ねてきた。
「ねぇ、お兄ちゃん知りませんか?」
「お兄ちゃん?あなた誰の妹さんなの?」
リューズがそう聞き返すと、裕福そうな少女は、
「お兄ちゃんはエリックだよ。今日はエリックとお買い物に行く約束してたのに…。」
裕福そうな少女はそう言うと、改めて尋ねた。
「ねぇ、エリックはどこなの?エリックは私に嘘ついたの…?」
この質問には正直答えたくなかった。エリックは今は医務室にいる。しかし理由を言わないわけにはいかない。リューズが、誤魔化すべきか悩んでいると、
「エリックなら医務室だ。」
ハヤトが答えた。それに驚いたリューズは
「!?アンタなに馬鹿正直にこたえてんのよ!?」
「うるせーよ。誤魔化したって意味ねえだろうが。」
「だからって、こんな小さい子に言わなくても良いでしょ?」
2人のやり取りを聞いた少女は、心配そうに尋ねてきた。
「お兄ちゃんに何かあったんですか?」
「えぇーとね、エリックはね、ちょっと…ね?」
リューズが適当に誤魔化そうとすると、ハヤトがまた、
「エリックは腕を怪我してな。今は医務室で診てもらっているんだよ。
「アンタ馬鹿ぁ!?この子が可哀想でしょ?なんでそこら辺の気遣いがアンタはできないのよ!?」
ハヤトの言葉を聞いた少女は心底不安そうな表情をを見せさらに聞いてきた。
「エリックが怪我!?なんで!?」
「エリックは任務中にアラガミに不意打ちされたんだ。」
ハヤトが事実を淡々と告げると裕福そうな少女は、
「4人で任務に行ってたんでしょ!?なんで誰もエリックを庇ってくれなかったのよ‼‼」
少女の叫びがリューズの胸に突き刺さる。そしてリューズの中に再びエリックの怪我に対する責任が込み上げてくる。
(自分がもっと周辺に気を配っていればあんなことは回避できたかもしれない…。)
過ぎた時が戻るということはない。あの時もっとこういう風にしていれば…、という考えは終わった後にずっと後悔の念として当事者の中に残り続けるのである。どうしようもないと分かっていても感じる後悔の念にリューズは押し潰されそうになってしまっていた。
リューズは何か言おうと口を動かすよりも早くハヤトが、
「すまなかった。」
と裕福そうな少女に対して頭を下げた。
「俺がもっとしっかりしてれば、エリックが怪我なんてこともなかったかもしれない。本当にすまなかった‼」
ハヤトの謝罪に裕福そうな少女は、
「もういいよ‼謝んないでよ‼エリックを庇えなかったアンタなんてアラガミに喰われちゃえばいいんだ‼」
「あっ‼待って‼」
裕福そうな少女はそう言って泣きながら医務室に向け走っていった。リューズは止めようとしたが、ハヤトがそれを制した。
「どうして本当のこと言ったのよ‼」
リューズがハヤトに怒りをぶつけると、
「じゃあ、適当に誤魔化せってのか‼そっちの方がずっとよくねえことだろうが‼それにあの子の怒りは至極全うだ。それを俺らはちゃんと受け止めなきゃならねえんだよ‼」
リューズはハヤトの返しに何も言い返せなかった。
「確かに、あの時庇えばエリックは無傷だったかもしれない。でもよ、もう過ぎたことなんだよ。」
「アッサリしすぎじゃない。そんなの‼」
「じゃあ、後悔すればエリックの怪我が治るのか?だったらいくらでも後悔するぞ‼俺は。」
「後悔したってエリックの怪我が治るとかそんな話じゃないでしょ…。」
「出来ねぇんだからせめてあの子にちゃんと謝るしかねぇだろ。例え許されなくても。それを避けようとするのはスジが通らねぇ‼」
ハヤトの言うことは確かに正しい。リューズもそれは理解できた。だが、リューズにはそれが本当に正しい事なのかは理解出来なかった。
「これが絶対正しいとは俺も思ってねえ。だけどな、俺は通すべきスジはキチンと通すもんだと思うんだよ。」
ハヤトはそう言って去っていった。
残されたリューズは先程のハヤトの言葉と、ソーマに言われた覚悟の事を改めて考えた。
(…ハヤトの言うことは正しいとは思うけど、それだけが正解とは思えない。けど、生半可な気持ちで『ここ』にいることはたぶん一番の間違いなのよね…。)
部屋に戻った後もリューズは、その事について考えたがその日の内に結論が出ることはなかった…………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~次回予告~
hazime
「今回はなかなかシリアスだったな。」
air
「覚悟ですか…。やっぱり生半可な気持ちではゴッドイーターなんてやれないですよね…。」
eriku
「それよりもどうだった?華麗なる僕の華麗な活躍。なかなかに華麗なモノだったろう?」
hayato
「今出てくんな‼このシリアスブレイカー‼」
RyuZU
「でも、死人が出なくてホントよかったわ…。」
hazime
「ハヤトに〆られた連中もまだ生きてたんだね。」
hayato
「俺は暴力が嫌いなんだよ。」
air
「あまり説得力はありませんね…。」
RyuZU
「ぶっちゃけ私もアイリちゃんと同じ意見ね…。そんなわけで次回第6話『最強の敵SUIMA(仮)』こうご期待ください。」
hazime
「SUIMAって一体何者なんだ…?」
ゴッドイーターもオンラインやら3やらいろいろ作るらしいので呑気に期待します。