maverick-マーヴェリック-   作:流星の瞳

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第6話 culture-訓練-

「はぁぁぁぁ!」

「甘いっ! 攻撃に気を取られて防御がおろそかになっているぞ!」

 

 蓮達との戦いから約二週間ほどすぎ、暑い夏の晴れの日が増え始めた為、そろそろ梅雨明けの発表が近そうと誰にでも感じさせられる快晴の土曜日。

 そんな雲ひとつない空に二人の声が響く。

 ──蓮達と戦ったあの町外れの廃校の校庭で、棗と斗真は戦っていた。

 正確には、訓練である。ここ最近、梅雨の為雨が多かったができるだけ雨の降ってない日を見つけるとよく二人で集まってこうして戦っているのだ。

 こうして棗は戦闘技術を高めるための模擬戦と評してよく戦っている。

 ぶっちゃけ棗は実は訓練をする意義がいまいち分かっていない。しかし、戦い自体はスリルと興奮がありなかなか楽しいものだし、また桃とやる時は連勝したい為に訓練自体は楽しみつつも結構真面目に取り組んでいた。

 

「はぁはぁ……」

「それで終わりか?」

 

 だんだんと時間とともに経験の差からか劣勢になりはじめた棗に、斗真は容赦なく魔力で創り出した棒を叩きつける。

 

「くっ!」

 

 棗は咄嗟に自身の腕をクロスするように挙げて頭ガードする。

 が、斗真の猛攻は止まらない。ガードされると即座に今度はがら空きになった腹を蹴飛ばした。

 

「かはっ!」

 

 棗はゴロゴロと校庭の上を無様に転がる。

 素早く起き上がろうとしたが、それより早く眼前に大剣を突きつけられる。

 

「今回も俺の勝ちだな」

「……くそっ……また負けた」

 

 『これで何回目だっけな……』悔しさの中でそんな事を思う。まぁ、何回負けたという回数以前に今のところ全戦全敗なのだが……

 斗真はゆっくりと大剣を引くと消滅させる。

 棗はその様子を見た後、立ち上がる。

 

「あっつ……ちょっと日陰行くか」

「はい」

 

 もう七月である。時刻的にも太陽は一番空高く登っており燦々と照りつける日差しのせいか気温も高い。このまま日向にずっといたら熱中症になりかねない。

 

『いや……棗も俺も能力者だし熱中症はないか。けど流石に暑い……』

 

 二人は校舎の陰になっている所を見つけるとそこに腰を下ろした。

 日陰はひんやりとして気持ちがいい。

 

「……そういえば、今更なんですけど師匠の能力って何なんですか? なんか大剣とか棒とかよく創ってますけど」

 

 しばらく日陰で涼んでいるとふと気づいたような感じで棗は聞いた。

 

「ん? そういえばまだ話してなかったっけ? この能力は別に壁を創り出せる能力ってわけでもなく、大剣を創り出せる能力ってわけでもなく、棒を創り出せるでもなくて俺が頭で思い描いた物を創り出せる。そんな能力だ。思考の物体化と言ったところかな?」

 

 あっ、ネーセンないとか中二病とか言わないでね、そう軽く笑い付け加えながらも斗真はあっさりと能力をバラす。

 それを聞いた棗は──

 

「えっ……チートじゃん……」

 

 素直に思ったことを口から出していた。素で言っていたのか普段は斗真には敬語使っていたはずだが思いっきりタメ口になっていた。

 

「チートってわけでもないよ」

「いや、どう考えてもこちらの能力より派手で強いですよね」

 

 それを聞くと斗真は再び軽く笑う。否定されなかったために棗は自分の能力に少しガッカリした。

 そんな棗の様子を見たのか、いや違う違うと斗真は手を振りながらも自分の能力について説明を続ける。

 

「まぁ、棗の能力より派手なのは否定しないけど、けっして棗の能力が弱いってわけでもないし、この能力だって欠点が多い。別にチートってわけではないさ」

「いや、でも……」

「じゃあ具体的に説明するか……ごめん、さっきの説明はちょっと誇張入ってたかな? 正確には頭で思い描いた物を創り出せる能力じゃなくて、頭で思い描いた物と同じ形の物を魔力を固めて創り出す能力なんだ」

「?」

 

 すると、斗真は手の上に拳銃を作り上げるとそれを棗に放り投げる。

 棗はそれを受け取ると丹念に観察し始める。

 今までたいして意識してなかったが、それは今までに斗真が創り出した壁や棒と同じく黒一色だった。……まぁ、もともと拳銃は黒一色だからたいして目立たないし棗は本物の拳銃なんて見たことないが……それでも丹念に眺めていると現実世界にあるような黒色ではないなと棗は感じる。まるで吸い込まれるような漆黒とでも言うのだろうか、そんな色だった。

 それによく出来ているのだが形もところどころ少し(いびつ)に感じる。

 『師匠の思い描いたイメージが完璧ではないからかな?」と、棗は勝手に理由を想像する。

 

「撃ってみろ」

 

 そう、まじまじと観察していた棗に斗真から声がかかる。

 

「えっ?」

「大丈夫だ。引き金を引くだけでいい」

 

 本当に大丈夫なのかと少し心配になったが、棗は恐る恐る引き金に手をかけると引いた。

 ──弾は出なかった。いや、引き金を引くことすらできてない。

 

「あれ?」

 

 もう一回強く引き金を引き直してみるが、結果は変わらなかった。何回試すうちに棗もなんとなくわかってくる。

 

「何回引いても無駄だぞ」

「えっと……これって、銃の形をしてるだけって事ですか?」

「そゆこと。これが欠点の一つだな。イメージとしては魔力を粘土みたいにこねて固めてる感じ。ただ固めただけだから今みたいに銃の引き金が引けるとかそんな仕掛けは作れない。形だけなんだよ。まぁ、これは別にしっかり理解した上で使えばたいして困る事はないんだけどね……あと大きな欠点というか弱点がもう一つ、これは棗なら案外分かってくれると思うんだけど、こうやって何か物を創ってる間ずっと創ってる物をイメージしないといけない」

「えっと……」

「棗も自分の能力で篭手とか色々手に装備する系の武具防具を創り出せるだろ?」

「うん」

「けど、一回創ってしまえば、そのままでいいはずだ。たぶんイメージして創るとしても創り出す時だけ。けど、俺の能力は違う。一回創り出したら消すまでずっと創った物をイメージしないといけない。じゃないとほら」

 

 そう言いつつ、今度は斗真は手から大剣を創り出す。棗も今までによく見たやつである。

 しかし、大剣の形を保っていたのは一瞬でだんだんと形が崩れ始める。だんだん形が歪になっていき、最終的にはただの黒い塊のようになった後に消えてしまった。

 

「まぁ、こういう事だ。だから基本的にこだわった形とかは作れない。大剣は上の空でもイメージできるくらい叩き込んであるからこれだけはなんとかなるが、あとは壁とかそういう塊みたいなやつしか無理だな」

「なるほど。一見便利に見えてもそれ相応の弱点や欠点があると」

「まぁ、そゆこと」

 

 『実は他にも魔力消費量がやばかったり、創り出せる射程が短いとかの欠点もあるけどな』、そう斗真は心でつぶやくが口には出さない。

 理由は簡単。まだ斗真自身は棗を信用しきってないからである。昔色々あり斗真自身は結構人間不信なところがある。そのため、いまだに棗が裏切った時や自分が裏切るような時を考えそれらの弱点は言わなかった。

 それに能力者が能力をバラすこと自体結構リスクがある。『ん? そういえばまだ話してなかったけ?』ととぼけていたが、ほんとにとぼけたわけではなく、自身の能力を話すに値するか用心深く値踏みしていたから話すのが遅くなっただけである。

 『まぁ、こっちの能力も言っていいか……』そう、思うと斗真は口を開く。

 

「ちなみに俺にはもう一つ能力がある」

「えっ?」

 

 棗は思わず聞き返した。棗自身の能力は一つだったため、どの能力者も能力は一つだと思っていたからだ。

 

「だから二つ能力を持ってるんだよ。こういう能力者は二重能力者()と呼ばれてるな。ちなみに全能力者で二重能力者になるのはの二、三割程度らしい」

「えっと……なら俺が二重能力者になる可能性も……」

「ゼロではないな。実際にあとから二つ目の能力が覚醒する場合も多いらしいし」

 

 それを聞くと棗は心の中でガッツポーズする。実を言うと自身の能力にそろそろ愛着も出てきたのだが、そこまで派手でもないしそれに前の桃との戦いを見ればわかるように遠距離に弱い。先ほどの斗真の能力を聞くといくら弱点を聞いたとしてもわりと勝てるか不安たったのでもしかしてもう一つ能力があったらと期待したのもある。

 それに棗は結構少年漫画好きなので覚醒とかの展開が好きである。

 

「で、もう一つの方も説明していいか?」

「あっ、はい。大丈夫です」

「もう一つの方は結構能力自体は単純だ。有名なやつ」

 

 そう言うと斗真は近くに落ちていた小石を拾うと放り投げる。

 投げられた小石は放射線を描きながら、重力に従って落ち始めるが、地面に着く前に止まった。

 浮いていた。

 小石だけ重力に逆らって浮いていた。

 その様子に棗は目を見張る。

 

「物体浮遊ってところかな。まぁ、内容は所謂超能力のテレキネシスだ。この前のレンの攻撃をお前から守ったのもこの能力のおかげだ」

「あの木のやつですか?」

「そう。他にも、俺があっちの能力で創った大剣を軽々振り回せるのもこっちの能力のおかげだな」

「……能力の併せ技とかもできるんですね」

「ああ。……にしても暑いな……なんか飲み物買ってくる。なんかリクエストある?」

 

 そう言うと、斗真はスクっと立ち上がった。どうも近くの自販機にでも買いにいくらしい。

 

「んー、じゃあ炭酸系で……というかわざわざありがとうございます」

「別にいいって、これくらい。じゃあ、しばらく戻らないと思うから、適当に休憩するか練習でもしといて」

 

 前述したが、この廃校はかなり町外れにある。周りに民家の数は少ないし、そんな数少ない民家も殆どが家主が消え廃屋になってしまっている。この街の将来が不安になるような現状であるが、だからこそこんな場所で模擬戦したり出来ていると言える。

 少し話がズレたがそんな町外れに自販機などほとんどない。よって自販機にジュースでも買いに行こうとすると斗真が言った通りそこそこ時間がかかるのだ。

 

「……」

 

 斗真が視界から消えた後も棗はしばらく無言で座っていた。

 さっき斗真が話した内容を一語一句逃さず頭で繰り返す。

 強いとそれ相応の弱点があるとか言っていたが、それは嘘だと思う。弱点は確かにあってもその程度ではこちらの持つ能力との差はたいして縮まっていないように感じる。

 それに今までに言っていた能力が本当なら今までの訓練ではかなり斗真は自信の能力に制限を掛けて戦っていたということではないか。

 もちろん経験の差は圧倒的にある。しかしもしも棗と斗真が同じくらいの経験を積んでいたと考えても斗真に勝てるとは思えなかった。

 一つでもかなり強力なのにさらに二つである。

 別にどちらか一つくらいこちらとk──

 

「あーもう、やめだ! やめ!」

 

 棗は誰もいない校庭で叫んで、強引に思考をやめると立ち上がる。

 別に悲観しても何も変わらないのだから、今の現状でなんとか変えなければいけない。少なくともちゃんと戦える能力なんだからそれで頑張るべき。

 そうポジティブな思考を切り替えると、涼しい日陰を出て運動場へ向かう。

 せっかくの空き時間だし、今から師匠に追いつくためにも何か練習しようと思う。それが今の棗に出来ることだろう。

 ──しかしそれは叶わなかった。

 校庭へ向かっていた棗を塞ぐように二人の男が立っていたからだ。

 

『……ん? さっきまで俺と師匠以外だれもいないと思ってたけどいつの間に……というかこの二人は──』

 

 二人のうち片方は無言で長剣を創り出すとそれを握り構える。

 

『やっぱ、あの時の二人だよな……』

「……いい加減何が目的で襲ってきてるか教えてくれない? 二回目だよね? こっちはせっかく色々とやる気出てたのにそれが削がれてちょっとイラッときたんだけど」

 

 そう言いつつも棗も構える。前回のような失敗をするつもりはさらさらない。

 

「……お前ならわかるはずだ」

「?」

 

 しばらくの沈黙の後、そう剣を持つ方はポツリとつぶやいた。

 棗には意味がわからなかった。

 

 ──が、その意味を考える暇も与えずに二人は襲いかかってくる。

 

『ちっ、やるしかないか』

 

 自身の能力を使い、既に構えている腕に篭手を着けると棗は二人に立ち向かった。




だいぶ投稿が遅くなりました
すいません

修学旅行楽しんでました……
まぁ次話はもうある程度書いたので次の投稿はそこそこ早いかと思います……たぶん
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