俺と彼女の学園生活   作:杉坂 響夜

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新学期のはじまりとトラブルの予感

「・・・・朝から最悪の気分だ。何だって新学期初日なんて憂鬱な朝に思い出したくもない昔の夢なんて見るんだか・・・もう今日学校休もうかな・・・あの日の夢見た日ってたいてい面倒なことが起こるし・・・うん、今決めた。もう決めた。こんな最悪な朝は春のすがすがしい朝の空気に身を委ねて二度寝をするに限る・・・って、俺思うんだけどそこんとこどう思う?北斗」

 

そう言って二段ベッドの上層に寝そべっているであろう弟に話しかける。

 

「兄さんがそう思うのは勝手だけど、その場合僕は母さんに兄さんは今月のお小遣い1割カットでいいって言ってたってメール送らなくちゃ言えなくなるけどいい?」

 

・・・そうだった。そういえば母さんから休んだ回数に応じて小遣い減らすって言われてるんだった。しかもその辺の裁定を俺ではなく1つ下の弟に任せるあたりに俺と弟に対する信頼の差を感じるのは何となく兄として情けない気がする。

 

・・・まぁ、せいぜい今回起こるのもどっかの婚約者(仮)と登校中に鉢合わせて小言いわれるくらいだろ。それか抜き打ちテストとか・・・アクの強い転校生とか・・・どっかの従妹に無茶ぶりされるとか・・・・・考えるだけ憂鬱になりそうだ。やっぱり起きよう。

 

「わかった。今すぐ起きて朝飯作るからその送信ボタンを押す体制の指を下してくれ」

 

「・・・・見てないのによく僕が送信画面を開いて準備してるってわかるね。あと出来れば今日の朝ごはんのおかずは焼き魚をお願い」

 

「そりゃ、たった一人の弟だしな。あとリクエストするならたまには自分で作れ」

 

そういって寝巻のTシャツにハーフパンツといった格好のまま起き上がる

 

「兄さんよりも料理が上手になったら考えるよ」

 

「そういうことはせめて簡単なものでも自分から飯を作るようになってから言え」

 

そう言って俺は部屋から出ていき、扉を閉めると扉の向こうから『は~い』という間の抜けた声がした。・・・どうやら自分からやる気はないらしい。

 

 

30分後・・・

 

「で、何で我が家の朝食時にお前は我が物顔で当然のように座って飯食ってるわけ?明日香」

 

そう言って俺は隣の家に住む笹野宮家次女の明日香で俺との関係性は従妹にあたる少女に自分の分のご飯を茶碗によそいながら訪ねる。

 

「ん?そんなのこの家に仕掛けてある盗聴器から七河が今日飯作るって知ったからにご相伴に預かってあげようと思っただけよ?あとおかわり」

 

「はぁ!?「ま、冗談だけどね」・・・前科があるお前が言うと冗談に聞こえないんだよ。・・・で、本当は何の用で来たんだよ?」

 

「あぁ、それはね。今日から二週間ウチの両親居ないから私一人になるわけよ。で、困ったことに知っての通り私には料理の才能がこれっぽっちもない」

 

「料理以前に家事の才能の間違いですよね」

 

「細かいことはいいのよ北斗君。で七河、そこでアンタの出番っていうわけ「断る」って、まだ何も言ってないんだけど!?「どうせ飯作ってくれとでも言うつもりだろ?」いや、まぁそうなんだけど!!「だって、お前半年前に同じ状況になったときに買い出しも手伝わず、家のアイスは勝手に食う、挙句に飯のリクエストするくせに時間かかると文句つけたろ」・・・いや、そうなんだけど・・・今回は手伝うから!!お願いします!!卑しい私めにご飯を作ってくださらないでしょうか!!本当に今度は喜んで買い出しも手伝いますので!!」

 

「・・・・ズズゥーーー。うん、我ながら今回の味噌汁は上出来だな」

 

そう言いつつ椅子の上で器用に土下座している明日香を見ないようにしてテレビのニュースに視線を向ける

 

瞳に映る明日香の見た目は炎のような赤い長髪のポニーテールでスタイルに関しては胸こそそこそこ出てはいるが全体的にカモシカの脚を彷彿とさせる脚線美に釣り合うように全身の筋肉が引き締まっているスレンダー体系の168cmとそこそこデカい部類で端正な顔立ちから偶に演劇部からスカウトされることもある・・・・ただし王子様役で。それが本人のとある思い込みにつながっていたりする。

 

 

「・・・兄さん、明日香さんもこう言ってるんだし許してあげたら?今丁度紗季おばさんから今メールが届いたんだけど、もし今回前回みたいにワガママ言ったら2ヶ月お小遣い全額カットしてくれるらし「えぇーーーーーーーーーーー!!?ちょ、お母様それはあんまりだ!!横暴だーーー!!「明日香やかましい」・・・はい。」あと兄さんにもメッセージがあるよ」

 

「何だって?」

 

「初孫きた「北斗、今晩おかず抜きな」ごめん・・・ふざけ過ぎた。「ん、許す」本当は明日香さんだけだと家のキッチンが帰って来た時使い物にならなそうだから迷惑だろうけどよろしくねってさ。あと父さんたちの了承は既に得てるらしい・・・まぁ、そういうことだから兄さん頑張ってね」

 

「・・・・仕方ないか。お隣で火事起こされるよりマシか」

 

・・・同時にこのとき思った。

(なるほど、今朝の夢の今回の面倒ごとの正体はこれか・・)

 

「いや~、七河ありがとね」

 

「兄さん、頑張ってね」

 

「お前ら、今日の放課後開けとけよ。今日の帰り買い出しして帰るから」

 

「それじゃ、兄さん。僕そろそろ学校行くね」(買い出しか~面倒だな~)

 

「じゃあ七河、私も」(せっかく今日は初日で早く終わるから早く帰って寝たいんだけどな~)

 

「ちなみにサボったら今晩の晩飯と明日の朝飯と昼の弁当抜きにするから」

 

「「や、やだな~兄さん(七河)サボるわけないじゃないですか~」」

 

----------まぁ、こんな感じで新学期の朝が始まった。

 

 

 

「ふぁ~・・・ねむ」

 

「兄さん、ダラシナイよ?」

 

あのあと程なくして家を出た俺たち三人は曇天の空の下白を基調とした青いラインの入ったブレザーの制服と昔から親しまれている黒革の通学カバン・・・ちなみにこの制服、1年は赤,二年は青,三年は緑と学年ごとにライン色が違っていたりする。

 

「まぁ、七河は昔から雨の日弱いもんね~。私としてはその日の朝に雨が降るってわかって天気予報いらずで助かってるけど。で、今日はいつくらいに降りそう?」

 

「・・・片頭痛の痛さと匂いからして多分昼間くらいから土砂降り。だから今の登校中は大丈夫だけど帰りは雨だな」

 

「なら傘持ってきてて良かったね。買い出しはどうする?」

 

「どうせ今日は部活ないんだろ?一応テスト前だし部長成績ヤバいから帰って勉強するだろうし」

 

「梨緒ちゃんか~・・・何というかあの子も大変だよね~。常に赤点ギリギリの私はともかく七河教えてあげれば?」

 

「無理。というか俺も一部の得意科目除いて教えられるほど成績よくないし」

 

「梨緒ちゃんは理数系壊滅的だからね」

 

「そして化学はともかく数学は俺も苦手だ」

 

「私は常に全教科赤点ギリギリだし、この話はなかったことにしようか」

 

「それ以前に俺には仮にも許嫁のいる身なんだから爺さんのいる学園内で不用意な真似なんて出来ないって・・・何よりも他人の評価第一の由利亜の奴が従妹のお前ならともかく『女子と二人で』とか『何組の何々さんと俺が抱き合って』なんて単語聞いてみろ・・・どうせ、放送か担任の紅藤先生あたりから生徒会室に呼び出された挙句『貴方、私の許嫁のくせにまた問題を起こしたそうね?』とか言って誰かと話していたのだったり、よろけてた子を支えたら、さも不純異性交遊をしていたかのように拡大解釈して言ってくるんだぞ?挙句口を開けば『形だけのこととはいえ、仮にもあなたは会長である私の許嫁なんだから、それに相応しい行いをーーー』とか言われるに決ってる。本当にいい迷惑だよ。昔自分から許嫁の関係をアイツの方が一方的に解消したくせに」

 

なんて昔のことを今朝の夢と合わせて思い出し、ただでさえ頭痛で痛む頭にモヤモヤした感覚が苛立ちとして思考を刺激する。・・・昔からこういったところが原因で由利亜と売り言葉に買い言葉で口喧嘩をして度々衝突するがどうにも治る気がしない。

 

「兄さん、そろそろ時間なくなってきたよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

・・・本当に新学期早々からこんな気分になるなんて厄日だ。やっぱり雨の日には碌なことがない。

 

 

***

 

 

「やぁ七河、今日も死相が出てそうな顔つきだね~。あぁ~雨の日は本当に気分がいい」

 

朝から教室に入ると同じクラスの残念な天才『豊坂 樹(とよさか いつき)』が話しかけてきた

 

「樹、雨の日で頭痛堪えてる俺に対して新学期の朝からその挑発って病院送りがお望みか?」

 

「まぁ、冗談だけどね・・・本当に大丈夫かい?」

 

「だろうな・・・正直に言うと朝っぱらから面倒ごとしつけられて余計に頭が痛くなった」

 

「新学期早々災難だね~・・で?その面倒ごとって?」

 

「両親不在の家でお隣さん兼従妹の明日香の面倒見る羽目になった」

 

「2週間くらい両親が海外に行くから七河の家にお世話になることになったわ」

 

なんて明日香が調子で明日香が会話に参加してきた

 

「・・・七河」

 

「なんだ?」

 

「殴っていいかい?」

 

「断る」

 

そういうことを爽やかな笑顔で言うなっての・・・そこまで羨むようなことじゃないから

 

「あ~。アーちゃん家事全般壊滅的だからね~」

 

「そういうこと。あと水樹おはよ」

 

話しかけて来た焦げ茶色の髪の三つ編み眼鏡の少女は高校に入ってからの友人で明日香の親友の小日向水樹(こひなた みずき)ある。地味そうな風貌からそんな風に見えないがなんでも結構デカい会社の社長令嬢らしく偶に会社の試作品であったり、面倒ごとを持ってくることから問題児の多いといわれる内のクラスでも2番目の(・・・・)問題児である。(過去に起こした最大の事件は何かと嫌味を言ってくることの多かった前生徒会長(男)と副会長(男)のネットリとした絡みを描いた同人誌を文化祭で配布したことだと言えばどのような人物であるかわかると思う)・・・不定期ながら同人誌の作成をしているらしい

 

「うん、ナナっちおはよ~今日も苦労人のオーラがガンガンに出てるね~」

 

「そんな面倒ごと引き寄せそうなオーラなんか樹に叩きつけたいとこだけどね」

 

「俺様も要らないよそんな物騒なもの」

 

「意外と困ってる女性に遭遇することあるぞ?」

 

「さぁ、七河!そのオーラ今すぐ俺様に叩きこんでくれたまえ!!」

 

「・・・・いや、そんなことガチで言われても困るんだけど。言葉の綾で実際無理だし」

 

「まぁ、それはそれとして家事が壊滅的なアーちゃんの面倒を見ることになったから朝から疲れてたの?ナナっち」

 

「それだけじゃないけど、だいたいそんな感じ」

 

「水樹、七河。壊滅的じゃない。少し・・・苦手なだけよ」

 

流石に一応苦手な意識はあるらしい

 

「いい?七河、水樹。料理が苦手っていうのは必ずしも欠点というわけではないのよ?」

 

「お鍋を爆発させたり、油を使ってないのにフランベみたいな火柱起こしたり、食べたら卒倒するような料理しか作れないっていうのは、ある意味でラノベやらエロゲの神様から与えられた才能だと私は思うわけよ」

 

「・・・で?」

結局何が言いたいのかわからないのでとりあえず続きを促してみる

 

「一見、クールビューティで完璧超人なこの私・・・」

 

「欠片もその要素が見当たらないけどな」

確かに運動神経は2年で陸上部のエース兼副部長張るだけあって凄まじい。だが、勉強に関しては常に補修室行かギリギリセーフを分ける超低空飛行であったりする。ついでに言うと宿題はほぼ他人の写し、授業中の居眠りは当たり前・・・・どう考えても完璧超人とは程遠い。

 

 

まぁ、彼女にもいい点が無いわけではない。自分よりも他人を優先し、後輩に対しての面倒見がよく、イベント事でのリーダーシップのようなものを持っている明るい性格の人物なのだ。・・・はっきり言って本人が思い込んでいるクールビューティとは間反対なのだこの笹野宮明日香という少女は。

 

 

「というよりも料理が苦手ってどう取り繕っても欠点なんじゃー?ってみーちゃん思ってみたり?」

 

「そうだね。俺様も色んな女子と弁当食べるけど料理が苦手なことを自慢する子は見たことないし」

 

「う”」

 

「だから明日香もいい加減家事の練習した方がいいってことだよ」

 

「・・・やだ。そんなことやってるのお母さんが見たら『好きな人できた?』『相手は七河君?』とか言って絶対赤飯炊くもん」

 

そう言って恥ずかしそうに顔を赤らめて顔を逸らす明日香・・・チラチラ見るんじゃない。余計な誤解をされるだろう

 

「やっぱり殴っていいかい?天に届くほど音高く」

 

「・・・地の底まで沈む拳が欲しいならどうぞご自由に」

 

こうなった樹は適当に流して迎撃の意思を伝えるのが上策だ。というか明日香の両親が海外旅行に行くたびにこれだからいい加減断るのも面倒なのだ。

 

「天野君、豊坂君、笹野宮さん、小日向さん。そろそろHRの時間だから席について」

 

「あ、委員長。了解、今すぐ席に着くよ」

 

「心ちゃん、心ちゃんそんなことより今度の休み俺様とデートでもしないかい?」

 

「しない。というか近寄らないで」

 

「はい、予想通りの瞬殺いただきました~」

 

「まぁ、チャラいいっくんじゃ無理だよね~」

 

「はいはい、樹も気が済んだろ?さっさと席に座ろうぜ」

 

「仕方ないね。俺様の魅力じゃまだまだ届かないみたいだ。けれど今日でダメなら明日の進化した俺様の魅力で落とすだけさ」

 

「フラレた直後にそう言えるお前のポジティブさで対象を一人だけに向ければ落ちる奴もいるのにな」

 

「何を言ってるんだい七河?男に生まれたからにはハーレムを目指すのが男として当然の在り方に決まっているじゃないか!!」

 

・・・間違いなくイケメンに分類される側の人間なのにそこはかとなく残念な奴である。

 

「馬鹿」

 

「馬鹿ね」

 

「馬鹿だね~」

 

「うん、馬鹿だ。仮にも許嫁のいる立場の俺に言うことじゃないな」

 

そういって席に着いたと同時に始業の鐘が鳴り、新学期が始まった。

 

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