堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

1 / 61
折角なので意外性のあるキャラをヒロインにしてキャラ崩壊させました。
セレニアの家族設定を「IS学園の言霊少女」とは多少変更しました。
妹は出ません。


プロローグ「非日常に惚れられた常識人」

 私には、常々疑問に思っていたことがあります。

 それは、「なぜ現代学園バトルファンタジーの主人公は、あからさまに怪しい町中で気絶している少女を自宅に連れ帰るのか」です。

 

 だって、そうでしょう?

 自分に医療知識も自宅に医療器具があるでもなく、学生が居候を養える甲斐性があるはずもなく、家主たる父親に相談もせず、身元不明、経歴不明、前科の有無も不明。そもそも氏名すらもわからない。挙げ句の果てに普通の見た目で平凡な町の一角に気絶して倒れている絶世の美少女。

 

 ・・・これでトラブルに巻き込まれなければ奇跡でしょう? 普通に考えて。しかも、言うに事欠いて「厄介事はごめんだ」ですよ? アンタが自分で厄介事を家に連れ込んで、家族友人丸ごと全部巻き込んだんだと言いたいです。

 

 

 ーーいえ、訂正します。“言いたかった”です。過去形です。

 

 だって・・・・・・現実に不可能ですからね、目の前で倒れてる女の子を見捨てるなんてーー

 

 

「やだ、なんであの子の目の前に女の子が倒れてるの?」

「突然、空から落ちてきたのよ。怖いわねー、事故かしら。あの子も助けてあげればいいのに・・・」

「見て、倒れてる子は怪我してるのに、あの子は見てるだけよ。なんて薄情なのかしら・・・最低」

「倒れてる子は病院になんか連れてかれたら警察に色々聞かれるんだろうな。最近の警察は質が悪い奴も多いから大変だろう。せめて落ち着くまで面倒見てやれよな」

「まったく・・・最近の若いモンは、まったく」

 

 ・・・・・・いくらでも自分勝手な倫理的人道的性善説を唱える事が可能な、無関係で無責任な聴衆の方々。できれば黙るか自殺して下さい。それか、せめて携帯をしまっていただきたいです。

 

 

 ーー主人公は倒れている女の子を連れ帰るのではなく、連れ帰らざるをえなくされるのです。人畜無害を自称する一般大衆の暴君たちによって・・・・・・

 

 ・・・・・・誰ですか、民衆の民衆による政治だの基本的人権だのと言って、最弱の民衆を最強にしたのは?

 おかげで、真の最弱である“部外者の転生者”つまりは私が関わり合いたくもない“原作”に参加するためのフラグが建ってしまったじゃないですか・・・・・・

 

 勘弁して下さいよ、本当に・・・・・・ああ、なんだか胃が痛い・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーいきなりでなんですが、私には現代日本で男子高校生をしていた前世がある女子高生です。いわゆる転生者という奴ですね。

 

 もっとも、よくある異世界転生と違い私にはなにも特典は与えられていません。異能にも目覚めないでしょうし、目覚めたくありません。

 ええ、絶対にいりませんよ、そんなモノ。厨二バトルに巻き込まれる事に憧れなんて微塵も感じません。

 上条さんみたいに毎度死にかかってたら、一般人の身体は持ちません。普通に死にます。俺たちの戦いはこれからだ!は、戦い続けられる強者だけが言える言葉です。

 

 だからこそ、私はこの歳まで原作『ハイスクールD×D』にはいっさい関わらないよう注意してきました。

 舞台となる高校と違う学校に入学し、同じ市内に住んでいても極力近づかずに過ごして、原作キャラの名前を聞いたら即逃亡。

 逃亡中の犯罪者みたいな生活でしたが、別に不便はなかったので気にはしませんでした。厨二バトルに巻き込まれる可能性を思えば格安の安全商品ですよ。

 

 

 ーーそうやって、学園ラブコメバトルファンタジー世界に転生してからずっと“原作とは関わらない”をモットーに生きてきた私だったのですが・・・・・・

 

 

 ・・・・・・どうやらそれは、今では過去形で語らねばならなくなった様ですーーー

 

 

 

 

 

 

「お母様、お皿はこれで宜しいでしょうか?」

「ああ、ありがとう。ついでに冷蔵庫から昨日作り置きしたビーフシチューも取り出しておいてくれるか。セレニア用のおかずだ」

「ふふ、お母様はほんとうにセレニアさんのことが大好きなんですね。・・・・・・気持ちはすっごく分かりますけど・・・・・・」

「ん? なんならセレニアと同じでうちの子になるか? アイツも歓迎すると思うぞ、はじめての嫁ができるんだからな」

「よ、嫁って・・・!? お、お義母様なにを・・・! は、はわわわ・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 ーーなに、このラブコメにありがちな、主人公の母親と居候の美少女との間で交わされる頭の悪い会話。主人公役の私も一応、女の子なんですけど・・・。

 

 ・・・いえ、そもそも主人公じゃないですけどね?

 

「・・・・・・なにをバカなことを言ってるんですか貴女たちは。

 特に母さん、娘に嫁の貰い手がなさそうだからって居候に押しつけないで下さい。相手が迷惑するでしょうが。

 ーーそれと、天野さん。先ほどの「お母様」の発音が少しおかしく聞こえたんですけど、あれはどういうーー」

「ひどいです、セレニアさん! 名前で呼んで欲しいって昨日あんなにお願いしたのに!」

 

 ・・・・・・こいつ、人の話を聞く気がありませんね・・・・・・

 

「確かに私は自分の名前さえ思い出せず、身分すら定かではない不束な女ですけど・・・それは今だけです!

 将来は絶対にセレニアさんの奥さんに相応しい女性になって見せますから、まずはお付き合いを始める前に「夕麻」と名前で呼んでくーー」

「謹んでご遠慮させて頂きます」

「ぐはっ!」

 

 盛大に吐血して仰け反る天野さん。

 

 ・・・あれ、なんかデジャブが・・・? 気のせいですかね?

 

「すみません、私ぼっち生活が長いものでそういうのに慣れてなくて。名前で呼ぶのはハードルが高いのでまずは知り合いから始めませんか?」

「くっ・・・千里の道も一歩からと言うことですね・・・!

 いいでしょう、受けて立ちます。そして、いつか必ずセレニアさんに私の愛を受け入れさせて見せます! 覚悟しておくことですね!」

「・・・・・・告白するか脅迫するかどっちかにして下さいよ・・・・・・」

 

 美人ほど頭が悪いのはバトルラノベの特徴なんですか・・・? だからいつも人質になって味方をピンチに陥らせるような人がメインヒロインになったりするのかもしれませんねぇ・・・。・・・いえ、どの作品がとは言いませんが。

 

 

 ーーまぁ、今の会話で分かったと思いますが、この残念な居候さんがこの前私が拾わざるを得なくなった、空から落ちてきた不審者の美少女、『天野夕麻』さんです。

 

 正確には、この名前には(仮)が付きます。

 本人の言葉通り自分の名前も思い出せないそうなので、着ていた服に貼られていたプリクラ写真に書いてあった名前の一つを拝借しました。

 

 写真には彼女の他に、金髪ツインテールで目つきの悪いゴスロリさんや美人で背の高い露出狂さん、不審者という単語が服を着たような男性が写っていましたが、どれも見覚えがないそうです。

 

 

 ・・・それにしても、「ドーナシーク」、「カラワーナ」、「ミッテルト」って・・・どれも、すごい名前ですよね。一緒に写っている方々に書かれていたので、おそらく彼らの氏名なんでしょうけど・・・厨二感が凄まじすぎます。

 その上、「天野夕麻=至高の堕天使レイナーレ様」とわざわざ“=”付きで紹介されていますし・・・。どんだけ自己顕示欲が強いんですか、この人・・・マジ引きます。

 

 ・・・とりあえず、この写真一枚で彼女が原作関係者であることは確定しました。

 なぜなら「ハイスクールD×D」の世界は、悪魔と天使と堕天使が争いあっている地球が舞台だそうですから。堕天使と書かれている以上、彼女は堕天使なんでしょう、たぶん。

 

 もちろん、たんなる厨二病看者である可能性も否定できませんが、こんな残念な厨二病は正直イヤすぎるので堕天使だと仮定します。

 

 全国の厨二病看者を敵に回したくはありませんからね・・・。

 

「さぁ、ご飯の準備ができましたし、頂きましょうセレニアさん。

 あ、私の作ったひじきとレバニラのお味は如何ですか? 鉄分豊富で嬉しいですよね。このおうちに住まわせて頂いてから不足気味になっている私にとっては、命を繋ぐ健康食品なんですよ♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・なぜ鉄分不足に陥っているかは聞きませんが、今後私は貴女が入浴した後に一度お湯を抜き、改めて入れ直してからでないとお風呂には入らないことにします」

「そ、そんな・・・何故ですかっ!?」

「気分です」

 

 言わずとも分かりなさい、変態。

 

 今のを見れば分かるでしょうが、天野さんは奥ゆかしそうに見えるだけで実体は肉食系です。

 黒髪ロングで巨乳なお淑やかそうに見える大和撫子の皮を被った、完全無欠のビッチです。きっと、記憶を失う前は酷い性格だったに違いありません。ボンテージとか着てそうですよね、きめぇ。

 

 そんなビッチで肉食系で男を誑かすのに長けていそうな典型的悪女な彼女ですが、厨二作品のお約束通りに記憶を失って倒れているところを助けて介抱した私に惚れました。

 

 ベタ惚れではありません、ヤンデレです。

 ナイスボートしても可笑しくないレベルの酷い状態です。キモいし怖いです。

 

 なにせ、回復したんだから早く出て行けと遠回しに言ってみたら全く伝わらず、逆に気を使ってくれたと解釈されて、その晩にはベッドに忍び込んできた程ですからね。日本語は難しいです。

 

 ちなみに、二階の窓から突き落としました。堕天使なら怪我もしないのでしょう。

 

 原作知識によると、堕天使とは元は神に仕えていた天使が邪な感情を持った結果、地獄に堕ちた存在だそうですが・・・・・・愛情=欲情は邪な感情に入れても良いのでしょうか?

 入れて良いのなら、彼女は二度堕天したことになります。この場合はなんと呼べばいいのでしょうか? 堕堕天使? 堕天使改?

 

 ・・・・・・・・・・・・ダメです、私に厨二ネーミングセンスはありませんでした。発想が貧相すぎます。なんですか“改”って。ザクですよ、それは。

 

「ああ、そう言えばセレニア。夕麻ちゃんの入学手続きが済んだから、明日彼女を学校まで案内してやってくれ。道筋はおまえも知ってる場所だ」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい? 今なんて言いました?」

「ん? 夕麻ちゃんを学校に入学させたと言ったが・・・なにか変か?」

「変でしょ。むしろ、異常事態ですよそれ」

 

 厨二にありがちな展開ですが、だからと言って易々と納得できる内容ではありません。断固抗議します。

 

「いいですか? 彼女には学校入学に必須の身分証明書も親族も戸籍も住所録もないんですよ? それらを入手するには役所での手続きが必要で、うちと養子縁組みをするにしても、最低数ヶ月の時間がかかります。まだ、彼女を拾って一ヶ月ですよ? いくらなんでも早すぎるでしょ。どんだけ優秀なんですかお役人様は」

 

 お役所仕事がエリート営業マンを超えてどうするんですか、市役所じゃなくて大手上場企業に就職すべきでしょ。むしろ、ヘッドハンティングしなさいよ。

 

「しかも、身元保証人になろうにも、うちは彼女と無関係で親御さんと会ったこともなく、委託されることもできません。

 なによりも、今の彼女は国家の庇護下にない完全なアウトローです。歩く法律無法地帯です。存在していない存在です。これでどうやって、学校入学なんて言う大量の書類が必要な行為を行ったんですか?」

 

 隣の椅子に座っている天野さんが「歩く法律無法地帯って・・・」とショックを受けていますが、堕天使なら立て直すでしょう。否定されるのは慣れているでしょうからね。

 

 そんな事よりも今は母さんの答えです。

 なんと答えるのかと思っているとーー

 

「ああ、だから私立校にした。学園長が昔の知り合いだから融通を利かせてもらって書類を偽造させたのさ」

 

 何のことはありません。たんなる犯罪計画の自供でしたよ。

 

「・・・・・・犯罪では?」

「裏口入学だってバレなきゃそのまま卒業して資格をもらえる。学校によっては収入源の一つにしてるってニュースで言ってたぞ」

「マスゴミの話を真に受けないでください。ちゃんとしたマスコミの意見を聞きなさい」

「どうせ、どこも営利目的だ。大した違いはないさ」

 

 ・・・どうしましょう、うちの母が反社会思想家です。

 

「役所も学校も国民に快適な生活を提供するための場所という建前のもと造られてるんだ。国民のために利用されるのはむしろ本望だろう」

「戸籍と住所録のない天野さんは、日本国民にカウントされませんよ?」

「日本で生まれた子供たちは、すべからく日本国民としての権利を与えられてしかるべきなのさ」

 

 辞めてください、そういう時事ネタは。巻き込まれたくないので。

 

 ・・・それと、そう言う話を実の娘にするのは親としてどうなんでしょう? 子供に悪い影響を及ぼすとは考えないんですかね。私、まだ十七歳の高校二年生なんですが・・・。

 

 影響を受けやすい年頃なので、もう少し配慮してください。

 

「しかし、学校側は受け入れられるんですか? 教育現場にいない学園長個人はともかく、担任になる教員が難色を示すと思いますが。

 身元不明で空から落ちてきた美少女なんて、騒動の元ですからね。いわば時計が見えない人間時限爆弾です。何時爆発するともしれない危険物を押しつけられて喜ぶ人間はいないのでは?」

「最近は学校教員の不祥事が多いからな。あいつのとこにも怪しいのがいるらしい。多少のリスクを負ってでも炙り出したいんだそうだ」

「なるほど・・・生き餌ですか。仮に何かあっても存在しない者には危害は加えられない。つまり、トカゲの尻尾切りが容易と言うことですね。

 いざという時には生け贄にするつもりで天野さんを受け入れた、と」

「うがった見方だが、それもまた真実の一端。違法も癒着も使い方次第で毒にも薬にもなるさ。

 暴力と正義の境目なんて曖昧極まりないんだから」

「納得しました。そう言うことでしたら、私は構いません。明日は休日ですし、水先案内人を務めさせていただきます。

 ーーそう言うわけですので、明日はよろしくお願いしますね、天野さん・・・天野さん?」

 

 先ほどから妙に静かだった彼女は、自らが作った血反吐の池に沈んでいました。

 右手の人差し指が書き記した文字は「マイハニー」。

 

 ・・・・・・ふむ。

 

「まぁ、存在しない人間が死んでも誰も咎められないので、被害は軽微ですね」

 

 せいぜいが床とテーブルを拭く手間が掛かる程度です。

 

 私は特に気にはせず食事を再開しましたが、このことを翌日には深く後悔する事になりました。

 

 天野夕麻さんが入学することになった学校の名は『私立駒王学園』。

 『ハイスクールD×D』お主な舞台であり、主人公『兵藤一誠』が通っている学校であり、メインキャラクターの殆どが関係者として出入りしている『オカルト研究会』がある場所です。

 

 

 

 

 最悪の出会いを予想できない無能力者の私には、未来を気にせず普通に食事を楽しむことしかできません。

 願わくば、原作との出会いが予想したものとは違う、友好的な形で終わる綺麗な未来であるといいんですが・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・しかしーー

 

「天野さん、ひじきとレバニラ役に立って良かったですね。鉄分補給による血液増量は今の貴女にとって急務ですよ」

 

 食事療法はやはり偉大です。

 みんなを満腹にさせられる正義こそが、真の正義です。

 力で押しつける正義は悪と同義。明日も、なるべく平和な一日でありますように・・・・・・

 

つづく




セレニアの性格は前世と母親の影響です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。