ディオドラと「ペルソナ」の神取鷹久コラボ回です。
もしかしたら原作設定では公式で否定されてるのかもしれませんが、オリジナル設定の末によりディオドラは
『政略結婚の末に生まれたけど、力だけを息子に求めた男尊女卑思想の父親にとって正妻の子である必要性は微塵もなく、母体として優秀だったら自分が魔王の座を奪い取るときに使い捨ての駒として役に立つかもと割り切って誰かの間に産ませた可能性も捨てきれない子供のために母親からの愛情に飢えていて、聖女アーシアに固執したのも純真無垢な聖女に会ったこともない母のイメージを重ねて救いを求めたからだった』
――と言う、重すぎる過去設定をこじつけたキャラクターとなっております。それを踏まえたうえでお読みください。
「なんだセレニア。また、クラスメイトの子を泣かしてしまったのか?」
懐かしき母の言葉。
前世ではなく今生のではありますが、それでもお腹を痛めて生んでくれたことに感謝は尽きない私の身体の生みの母。
その人から何度窘められ、傷ついたような瞳を向けられても揺らがなかった小学校時代のかつての私。
「ええ、結果的にはそうなったみたいです」
不貞不貞しいと、過剰なまでに自分を持ち上げて表現するならそう言えるのかもしれませんが、ぶっちゃけクソ生意気なガキの口調と表情で当時の私はそう返したと記憶しております。
まぁ、表情も口調も変えられない身体に生まれ変わった以上、これは完全に私の錯覚であり願望にすぎないのですが。
それでも当時の私が人の心をを傷つけやすかったのは揺るがぬ事実。それは決して忘れられない、忘れてはいけない思い出です。
「なるほど。・・・で? おまえは相手を傷つけてしまったことには罪悪感を感じているんだな?」
「無論です。その意図があるにせよ無かったにせよ、相手が私の言葉で傷ついて泣いてしまったのなら、その責任は私にあります。罪人が罰を受けさせられるのは当然のことでしょう?」
この時、母がどんな表情で私の言葉を受け止めていたか上手く思い出すことが出来ません。理不尽な話です、思い出せるはずの情景が一部分だけ曖昧で朧気で正確に思い出すことが出来ない『罪の意識から目を背けるための』現実逃避というものは。
「・・・気持ちや動機なんてどうでも良くて、結果に対してのみ人は責任と義務を負うべきだと?」
然り。気持ちも動機も人個人の中で始まり終わるものです。自分の中で完結していて他人との間で循環できない感情などは自己満足に類するもの。
自身が尊重するのは正しくて尊いと思いますが、他人が理解してくれない受け入れてもらえなかったから理不尽だ等と言い出すのは、それこそ理不尽であり悪であり思想の自由に対しての侵害です。日本人として見過ごせません。
「そんな生き方は周囲の人たちから、人だと思ってもらえなくなるかもしれないぞ?」
それでも構いません。
自分の価値観が歪んで間違ったモノであることなど、承知の上で選んで始めたことなのですから。
もとより私が人である必要性など存在せず、また、その資格を失った者でもあります。罪人はただ、罰せられればそれでいい。
「尊敬している」と他人をほめることで自画自賛して。
「あの人はこう言っていた」と自分の考えを補填するために利用して。
ちっぽけなプライドを維持するために提督を利用した私は。
正当性を持たない自分を正当化するために提督を利用した私は。
他人を貶めて自分を正当化するためだけに提督の存在を利用したエゴイストな屑である私は。
一生をかけてもまだ足りぬ時間を、提督のためだけに捧げ続ける義務を自らに課したのですから。
私の悲願は、ヤン提督の傀儡になること。
出来損ないの模造品になるために生きること。
劣化コピーのゴミ屑以下の人間もどきとして人生を使い捨てること。
ヤン提督の良い部分だけを見て勝手に憧れているだけの人間からドロップアウトした、不良品で欠陥品のコピー機となること。
与えてくれた物を、教えてくれた様々な物事を何一つとして理解しようともしないまま『理解した、分かっている』と勝手に決めつけて都合よく利用してきた自分自身の為には生きないこと。そんなのは勿体なさすぎるから。
私の命は、ヤン提督に成ろうと無駄に足掻くことで使い捨てる。
そうしたいと、そうなりたいと。自分自身で選んだ決めたあの時あの瞬間から、ずっと変わらず願い続けている不純でくだらないゴミみたいな罪悪感情。
ーーこんな物で他人を傷つけて、本当に良いのでしょうか・・・・・・?
分からない分からない。
分からないのかどうかすら、間違っている私にはどうしても理解できないまま今も私は間違いだらけの道を爆走し続けていますーーーーー。
ーー巨大な円形の装置が壁に埋め込まれている巨大な装置の真ん中で磔にしたアーシア・アルジェントが、僕を見下ろしている。
その装置は一度しか使えないが、絶対に一度は使わない限り停止は出来ない結界系セイクリッド・ギア『ディメンション・ロスト』を、ロンギヌス本来の持ち主でもない僕たち悪魔が無理矢理にでも発動するため、あちらこちらに宝玉を埋め込んだ装置を作って、それでも足りないからと様々な術式による文様と文字まで刻みつける始末だ。そうまでして僕に力を分け与えた蛇は、赤龍帝に更なるパワーアップを促したいらしい。
この装置を僕に与えた父たちの狙いは大方「性能テストのため死んでこい」その程度のモノでしかないのだろうと、事の始めから僕には理解できていた。
だからこそ僕は、それを指摘されて激高して当たり散らして撤退してきてから熱が退き、やる気も起きないままに日本から購入してきた最高級掛け軸を眺めながらもお猪口に酒をついで暇潰しをしていた。
もうじき赤龍帝がーー僕の“死”がやってくる。
それで終わりだ。その先はない。与えられた物だけで形作られていた空っぽの僕の人生も、そこで終わりだ。勝っても負けても先なんて無い。そんなものは生まれたその時から一度だって与えてもらえた事なんてない。
僕は装置の中のアーシアを見る。
かつて、無知であり無垢であり人形じみた潔癖さを持った聖女という名の人を癒す機械だった少女は、恋を知って大人になり羽化して女になろうとしている過渡期にあるため目が眩むほどに美しく感じるが、それだけだった。
綺麗なだけの女ならいくらでもいる。恋を知って女になった女なら巷を歩けば直ぐ見つかる。平凡でふつうの女をいたぶって得られる快感なんて、味わい尽くして久しい。
だからアーシアには手を出していない。指一本触れる気になんてならない。それほどの性的欲求なんて今のアーシアには微塵も感じられはしない。
「まだかな・・・」
僕は扉の方に視線を向けて、赤龍帝たちの遅い到着を待ちわびている。
死がやってくるのを待っている。世界にとっての捨て駒である僕を蹴散らし、先へと進むための階梯として踏みにじられ踏みつぶされる瞬間の到来を待ちわびている。
だって、僕の人生はーー先へ行くための犠牲になるため用意された物だったのでしょう? お父様・・・・・・。
ドガァンッ!
「アーシアァァァァアアアッ!」
俺たちがたどり着いた神殿の最深部。そこで怪しげな装置に磔にされているアーシアを見つけて、俺は怒りのあまり大絶叫して叫び声をあげていた。
「・・・やっと来たんだね」
装置の横に座り込んで酒飲んでたのはディオドラ・アスタロトだった。
自分以外すべてを見下したようなゾッとする笑みが俺の怒りをさらに高めてくれる!
「・・・・・・イッセーさん?」
バランス・ブレイカーのカウントダウンヲを始めていた俺にアーシアが声をかけてきて、そちらを見たら目元が腫れ上がっていた。泣いていたんだ。それも尋常じゃない量の涙を流したと思えるほど、目が赤くなっている。俺はそれを見て、嫌な結論に至ってしまった。
「ディオドラ、おまえ、アーシアに事の顛末を話したのか?」
先ほど、セレニアたちが介入してくる前にフリードが。絶対にアーシアに聞かせてはいけないものだ。
だがディオドラは、俺の問いを「ふんっ」とくだらなそうに嗤い飛ばして来やがった。
「無論、すべてを教えたさ。当然だろう? あるいは、フリードから聞かされていないのかな?
僕は彼女を最低辺まで堕としてから掬い上げて犯すことを狙ってたんだよ? 今その事実を伝えないで何時伝えるべきだと君は言うんだい?」
「黙れ」
「いやだ、黙らない。敵の言うことなんか聞いてやらない。これは僕の意志であり決定だ。邪魔したいなら、阻止したいなら力づくで黙らせればいい。簡単だろう?
だって君たちは今までずっとそうやって来たんだから、これからもそれを繰り返せばいいじゃないか。何度でも何度でも味方を浚われて取り戻す度に強くなればいいじゃないか。それが君たちのーー正義の味方の生き方のはずだ。違うか? 赤龍帝、兵藤一誠」
嫌に静かな声で語られる内容が、俺の怒りをわずかに押さえさせた。
なんだ、こいつのこの静けさは? さっきまでとはまるで別人みたいじゃねぇか・・・。
リアス部長も俺と似たものを感じたのか、さっきまでより少しだけ落ち着いた口調でディオドラ相手に問いただす。
「アーシアをどうする気なの? ディオドラ・アスタロト。事と次第によっては私はあなたをこの場でころーー」
「・・・心配いらない。これ以上のことは何もする気がなくなった。・・・もう、どうでもいいんだ」
『『『・・・・・・はい?』』』
図らずも俺たちオカ研とセレニアの声がかぶって響き、見てみると非常に珍しいことにセレニアの表情が大きく崩れて年相応の女の子なかわいらしい感情が浮かんでいた。
場所が場所であるにも関わらず、ちょっとだけ萌えたのは部長にだって話せない俺の秘密だ。
「ど、どうしたんですか? なんだか急にやる気がなくなちゃった様ですけど・・・」
「う、うん・・・なんだか今までの彼とでは雰囲気が違って見えるね・・・。何か悪い物にでも当たったのかもしれないな・・・」
ギャスパーのつぶやきに木場が応じて、ディオドラの足下においてある酒の瓶に目をやりながら続きを言っていた。・・・悪魔って、日本酒を飲むと当たる生き物だったのかな・・・?
「・・・君たちは何のために強くなる? 何をしたくて強さを求めて敵に挑む続けているんだ?」
だらしなく片膝をたてて座り込みながらディオドラは、先ほどとは違って俺だけでなく俺たち全員に問いかけるように質問してくる。してくる。
これに対する俺たちの答えは決まっている。
“仲間のため、仲間たちを守るために強くなりたいと願っている”、だ。
当たり前のことだし考えるまでもないことだったから即答で返したけど、相手は納得し切れていない。「そうか」と頷いた後に続けてこう問いかけてきたんだ。
「ならばその願いーーカオス・ブリゲードが現れなくても、抱いた目標だったのかい?」
『・・・・・・』
この質問に、俺たちは即答できなかった。
考えてもなかったことだし、考える機会なんて一度もなかった質問だったから俺たちは少しの間だけ頭を悩ませていたけど、部長の一言で俺たちの思いは一致する。
「当然よ。だって私たちグレモリー派がレーディングゲームに参加するのは必然の未来であり、参加するからには優勝を目指すのが私たちなのだから」
ーーそうだ! その通りだ! やっぱり部長は正しくて俺たちを率いるリーダーなんだ!
「そうかな? たとえばリアス・グレモリー。君も一度は夢をあきらめ、兄の言うとおりに余所の男の元へ転嫁しようとした身だ。あのとき兵藤一誠に助け出されることがなかったら、果たして君はここまでたどり着けてだろうか?」
「そ、それは・・・」
一瞬口ごもってから部長は、
「ーーいいえ、イッセーが助けにきてくれなかった可能性なんてありえない! だから彼が私の眷属である以上、この未来は必然による既決よ! 決して変わるはずのない未来だわ!」
ぶちょーーーーーっ!!! 俺は今、モーレツに感動しております! 一生ついて参ります!
「そうだね、兵藤一誠がリアス・グレモリーに命を救われた瞬間から君を寝取るまでの一連の流れは運命の一言で関連づけて片づけるのは可能だろう。
だが、兵藤一誠。果たして君はリアスと正式に恋人関係になった後で、今ほど熱心に力を追い求めて努力したりはしたんだろうか? 休みたいしサボりたいと願って嘆いた夜はなかっただろうか? 僕はそれを聞いてみたい」
「う・・・ぐ・・・」
ディオドラの野郎、精神攻撃のつもりか? なんて嫌なところを突いてきやがるんだ! やっぱりコイツは腐ってやがる!
「もっと言うなら、君は悪魔に転生するまで勤勉さとは無縁な人生を送ってたんじゃないのかい? 怠惰な毎日を送り、日々を浪費し続けるだけの人生を。
力なんてないのに望みは高くて、知恵もないのに夢ばかり見てて、いつだって口先ばっかりで、なにが出来るわけでもないのに偉そうで、自分では何もしないくせに文句を言うときだけは一人前な、平凡で普通で一般的なただの人間の若者。
時間と自由が売るほどあって何だって出来たはずなのに何もせず、悪魔になるまで何もしてこなかった人生を送ってきてはいなかったかい?
もしそうだとしたならばーーやはり君は僕と似ている。おんなじだ。無力で弱くて他人にすがって分け与えてもらえなければ何も出来ないし、しようとさえ思わない怠惰で無能で臆病でプライドだけが無駄に高い私欲まみれでコンプレックスまみれの平凡な若者。それが君と僕の正体だ赤龍帝。
違っているとしたら、ただの一カ所だけ。
君は選ばれた主人公で、僕は前へと進む君たちの踏み台にされて使い捨てられるだけの『未来に進むためには不要で邪魔な過去』であり、今ある現在を未来の自分になるために『間違っていた過去の自分』として否定されるために、ただそれだけの為に存在している『少年が正義の味方になるために必要な使い捨ての悪役』そういう配役を与えられてこの世に生を受けた出来損ないのガラクタだったこと。その一点だけだよ」
今までになくシリアスに続きます。