堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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前話、前前話と燻っていた暗い気持ちを吐き出すことに熱中しすぎてしまって御免なさいでした。

活動報告にも書きました通り、しばらくの間は日常回メインで書くため、今話も日常パートとなっております。
時間軸的にはサブタイトル通り原作6巻の最終章「New Life.」の辺りだけがメインとなっております。
ツッコミネタをあくまでギャグとしてのみ採用した内容になってますのでご了承のほどを。

尚、最近は更新スピードが速すぎてたので作風が日常に戻ったのと合わせて穏やかなスピードに戻させていただきいます。ご了承ください。最近マジで眠いので・・・。


29話「New ライヒ!な日常」

 タッタッタッタ・・・。

 

 私は走っていた。ディオドラ・アスタロトが建てさせた神殿内にある廊下を、息を切らせて全力疾走で逃亡している。

 逃げたのだ。この正当なる魔王の血を引く誇り高い血統の後継者シャルバ・ベルゼブブが!

 

 あまりの屈辱と恥辱に頭を混乱させながらも、私は足を止めようとはしなかった。

 まだ私の背後から、銀髪の小娘が喚びだした軍隊が追ってきているのではないか・・・? そんな恐怖に突き動かされ、私は足を止めての転移さえ使う暇を惜しんで全速力で脇目も振らずに逃げ出しまくっていた。

 

「なんだあれは!?なんだあれは!?なんだあれは!?なんだあれは!?

 あんな物は知らない!聞いたこともない!あんな化け物を相手にするなんて聞いてないぞオーフィス!」

 

 私は私に力を与えた蛇に向かって、有らん限りの呪いの声を叫びたてる。

 

 ーーあの小娘が軍勢を召喚した瞬間。私は確かに見たのだ。背後に広がる城門の中を。永遠に終わらぬ夜を。果てなく続く無限の虚空を。そこに瞬く星の数ほどいる大艦隊を・・・。

 

 あれら一隻一隻が私を一瞬にして消滅させられることを本能的に感じ取った私は即座に逃げ出し、今もこうして逃げ回っている。恥も外聞もない。

 当然だろう。命あっての物種なのだから。

 

「冗談ではないぞ・・・。私は勝てる戦争しかしたくないのだ! 一方的に殺せる戦争がやりたかったのだ! 命など懸けたくない!懸けさせたい! 私は勝利と栄光が約束されている戦争しかしたくなーーほげぇへぇらぁっ!?」

 

 

 どっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっん!!!!!

 

『おお、申し訳ない主殿。この反り返った逞しいボディと、他者を圧倒する太ましさを見せつける為そそり立つような登場の仕方をねらってみたところ場所を間違えてしもうたようじゃ。陛下はあっちじゃ、あっち。あっちの小部屋』

「にょ!にょ!にょ!(ぺち!ぺち!ぺち!)」

『うっひょっひょ! ・・・面目ない。

 されど主殿よ。ワシの大事な人間には持ち得ぬ逸品に、いくら幼子の小さき手とは言えぺちぺちするのは止めて貰えませぬかな? 変な癖が付いてしまいそうですぞ』

「にょっ!(ぴょんっ)」

『む? ご自身で陛下たちをお迎えにあがりたいとな? なんとご立派な御心掛けじゃ。ワシも主殿に召喚された悪魔らしく、帰りの際の乗り物としてゆっくりお帰りをお待ちしておりますぞ!いってらっしゃられよ!』

「にょーっ!(ビューーーッン!)」

『・・・ふぅむ。あのネチっこいまでの忠誠心。相変わらず、人間の身にしておくのは勿体なき御仁じゃな。ーーん?』

 

『こ、これはイカン!? お主、萎えておるではないか! しかも何じゃ、そのお粗末すぎるサイズのモノは! 全く以てなっとらん! これだから最近の若人はまったく・・・』

 

『・・・止むえんな。今は勤務時間中故モノを鍛えてやれる余裕がない。先にドリームランドへ送ってやろう。コクマの塔と言う名をつけたワシの寝床を建設してある。十分に修行をしておくがよい。ワシも後から追いつくでな。グワッハッハッハ!』

 

 ズルズルと。いきなりの奇襲で睾丸を打たれ、悶絶していて声も出せなくなっていた私は気持ち悪すぎる形状をした謎の生物によって生きたまま地獄へと連れ去られていく。・・・私にとってのイキ地獄は、ここから始まる・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーとある国の隅っこに♪ おっぱい大好きドラゴンが住んでいる♪

 お天気の日はおっぱい探してお散歩だ☆

 ドラゴン、ドラゴン、おっぱいドラゴン♪

 もみもみ、ちゅーちゅー、ぱふんぱふん♪

 

 おっぱい大好きドラゴンは♪ 嵐の日でもおっぱい押すと元気になれる☆

 ポチッとポチッと、ずむずむ、いやーん♪

 おっぱいドラゴン、今日も押す♪」

 

 

『『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』』

 

 

 

 こ、これは・・・。

 

「・・・・・・えっとその・・・いくら冥界が日本の民主主義とは隔絶した貴族制を敷く封建国家とは言え、ご自身のおっぱい自慢を子供向け番組で流されるのは如何なものかと・・・」

「なんで私の顔をチラ見しながら言うのよ異住セレニア・ショート!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・名門グレモリー家の誇り・・・・・・・・・・・・・・・」

「言わないで! それは言わないで! それだけは言わないでちょうだい異住セレニア!」

「ーーあ! そっか! これはもしかしなくてもアレですよセレニア様!

 グレモリー家の誇り=リアスが誇る『私のデッカいおっぱい見て見て、イヤ~ン恥ずかしい~☆ まいっちんぐ♡』的なセックスアピールなんですよ!」

「違うわよ!? いや、確かに自慢ではあるけども! でも、それとは全然違うからね!?」

「・・・国内にある反主流派勢力を武力討伐した後で生き残った現魔王による政権が、勝利を喧伝する政治的プロパカンダに実の妹のオッパイネタを子供向け番組で・・・末期だな、現魔王の政権。ようやく本格的に始動したばかりだと言うのに・・・」

「不吉すぎるわよ!? ようやく国内が安定したばかりなのに、いきなり亡国の予言なんかしないで頂けません!?」

「・・・私が最初にイッセー君と出会ったばかりの頃、あなたに関して、高貴な雰囲気に夢中だ美しすぎる。見てると少しだけ怖く感じてしまい、心の隅で畏怖していたと聞かされたような気が・・・まさに人生五十年、夢幻の如く成りですね。

 サンバ衣装着て腰振りたくってる姫君なんかに高貴な雰囲気とかwww」

「小声で言っても聞こえてるわよ! 登場当初は私よりもエロキャラだったはずの堕天使レイナーレ!

 破廉恥きわまる格好でイッセーの前に現れたあなたよりも墜ちた我が身の惨めさは、自分が一番よく分かっているから他人は口出ししないで貰えるかしら!? 不愉快だわ!」

「・・・・・・・・・おっぱいドラゴン専用パワーアップアイテム『スイッチ姫のグレモリー』・・・ぷぷぷ」

「あ~~~け~~~~の~~~~!!!!! 今日という今日は決着つけてやるわよ、あなたとだけはねーーーーーーっ!!!!!」

 

 

 ドガバキズガガキンッ!!!!

 

 

 

 

「・・・ま、そう言うわけで久しぶりに駒王学園放課後のミステリー研究会部室に参集しているわけなのですが」

「・・・??? おい、セレニア。お前、誰に向かって説明してるんだ? そっちは窓しかないだろう?」

 

 大人の事情ですよ兵藤さん。

 あるいは大人になりたくても成れてない子供たちが主役の事情と言うべきですかね。

 どっちでも結果は同じなので、どっちでもいいっちゃ良いのですが。

 

 

 

 

 ーーディオドラさんとこで開催される予定だったレーディングゲームが破綻してから数日後。人間界に戻ってきていた私たちは久しぶりに日常のありがたみを全身で満喫しておりました。

 あ~、平和ってやっぱりいいなーって感じでね。

 

 ーーあれからの事は正直よく覚えていないのです。気がついた時にはイゼルローンにある自室で寝かされていて、起きたら起きたでベッドの上に正座させられお説教タイムがはじまって、御夕飯頃まで延々と懇々と切々と説かれ続けた私には気力も反骨心も反発心も欠片すら残っているはずがありませんでした・・・。

 

 それからは、言われるがままに駒王学園に連れてこられてミス研の部室で冥界初の庶民向けテレビ番組『おっぱいドラゴン』の初放送を視聴していた訳で、それを観た上での感想が上記のない様なわけでもあるのですが。

 

 

『お茶の間の子供たちに自分のおっぱいはデカいと自慢する歌を流すとは・・・。

 さすがは冥界の姫君にして誇りある名門の次期当主・・・王者の貫禄ですね《おっぱい公爵》さま・・・』

 

 

「なにその不名誉きわまる称号!? 凄まじく要らないんですけども!?」

「・・・まぁ、そんな些細なことは置いといて、だ」

 

 おっぱいの王者グレモリーさんの抗議を『些細なこと』として一言の元に切って捨てたゼノヴィアさんが、兵藤さんに顔を向けて声もかけてます。

 

「兵藤一誠。貴様は崩れた神殿の中で言っていたな。『自分には越えたい』と。あの言葉に嘘はないか?」

 

 ・・・へ? ーー何のこと?

 

「ああ、あの時にヴァーリが話してくれた夢の話と関連付いてる奴な。もちろん本気だぜ! 俺はヴァーリも木場もサジも、当然お前だって越えてやるんだって決めているんだからな!

 

 ・・・・・・???

 

「そうか。なら丁度いい。以前した勝負の続きといこう。それを以て今回の件で私がお前たちに感じた負い目への返済とさせて頂く」

「「・・・へ?」」

 

 おう、今度は私と兵藤さんがハモりましたね。なか~ま。

 ・・・でも実際には何も知らされてない分だけ私が下。今日は何だかついてないです・・・。

 

「お前は強い。中々のものだ。既に悪魔内に限ってであれば単純なステータス勝負でお前の上をいく者はいても、遙かに超越している存在は多くないだろうと私は確信しているほどに、だ。無論、数値だけなら私を上回る日も近いだろうと思っているぞ?」

「い、いやぁ~。そこまで手放しに賞賛されると照れちまいそうだなぁ~」

 

 いや、照れてるでしょ完全に。むしろ、デレていると言っても過言ではないのではと。

 

「だが、お前では私に勝てない。勝てない理由があるからだ。それを教え、叩き込み。いずれは私に敗北を味あわせられる程度には成ってもらわないと、私の方が困る。

 それ故お前に自分自身の抱えている致命的な欠陥についてレクチャーしてやろうというのだよ」

「・・・・・・俺が弱いって言いたいのかよ?」

「いいや? むしろ強いと賞したはずだし、ステータス上の数値では私を上回る日も近いだろうと絶賛した記憶がある程だが?」

「だけど俺はお前に勝てないんだろ?」

「ああ、勝てない。今のまま、何も知らないで自分の欠点を知らずに進めばどんなに強くなっても私の敵には成り得ないだろうな。だからこそ、それは困るから鍛えてやろうと言っているのだよ兵藤一誠。

 ーーこの勝負、受けて立つ勇気が貴様には御有りかな?」

「上等! 掛かって来いやぁぁぁっ!」

「結構。では、グラウンドへ行くぞ。我々の因縁の場だ。決着をつけるのには相応しかろうよ」

 

 と、そんな感じになったところでゾロゾロと部室を出ていく原作勢の皆様方。ある程度は事情を知っているって便利ですよね、羨ましいです。

 

 ・・・・・・そして取り残される事情を知らない私が一人・・・。くすん・・・。

 

「ーーまって~・・・・・・置いてかないでくださ~い・・・」

 

 後から一人で追いかけざるを得ない、混沌帝国皇帝異住セレニア・ショート16歳。現在の身分、お仕置きされ中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、まず最初は基本中の基本からだが・・・」

 

 俺の目の前でゼノヴィアは黒く染まった聖剣の切っ先を地面に突き刺し、戦闘衣に着替える事すらしないまま私服姿で俺と向き合う。

 

 余裕綽々と言うよりも泰然自若と言った印象で、こいつが既に木場を超える剣の達人の域に達している事が伺い知れる。

 くそ、負けて堪るか! 俺だって今まで死ぬ気で特訓してきたんだ! 絶対に勝つ!

 

「兵藤一誠、とりあえず私に全力でブーステッドギアでの一撃を叩き込んでこい。私は動かずそれを対処してみせるから、それを観た上で次の攻撃に役立てるといい」

「・・・へ?」

 

 今、コイツなんて・・・。

 

「あ、ああそうか駆け引きか。セレニアと同じに言葉で惑わそうたって、そうはいかねぇぞーー」

「阿呆。あれは陛下ならではの持ち味だ。私がやっても可愛く映るまい。可愛くないなら女にとって、やる意味は些かもない」

「う・・・。じゃ、じゃあどうする気なんだよ?」

「最初に言ったとおりだ。お前が放った全力のブーステッド・ギアでの一撃を、この場から一歩も動かずに対処する。それだけでお前の敗北は確定するのだからな。それ以外のことをやる必要性がどこにある?」

「・・・・・・むか」

 

 なんか上から目線なのがムカつくなコイツ・・・。

 

 ーーよっし! やっていいって言うんだからやってやる! 怪我させるなんて以ての外だけど、服をビリビリに破くぐらいだったら許されるよね!? 挑発された側だもんね! いくよ?やっちゃうよ? それじゃあ・・・いっただっきまーす!

 

 

「・・・イッセー先輩が、またエッチなこと考えてます・・・」

「うふふ・・・後でキツークお仕置きですわね・・・」

「ーーこわ」

 

 

 外野の声はさておいて、いざ行かん!桃色肌色桃源郷へ!

 

「ブーステッド・ギア!」

『ブースト!』

 

 おおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!! 高鳴ってきたぜーーーーっ!!!!

 

『ブースト! ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!』

 

 おっしゃ臨界! ゼノヴィアの服を吹っ飛ばして、おまけに優しく介抱できちゃう程度の威力は溜まったぜ! やるぞ必殺!

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」

 

 俺の全力が込められた右ストレートを、ゼノヴィアは本当に避けもしないし躱しもしない。

 いったい何をする気なのかと一瞬だけ迷った俺だが、そんな迷いは信じる心に綻びを生む! 俺はただ、自分で鍛えたこの拳を信じるのみ! うおりゃああああああああああああああ!

 

「ふんっ!」

 

 回し蹴り!? でも、遠い!

 その距離からなら俺の顔面には届かないぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 あまりの事態に俺は意味不明な叫び声を上げてしまった。

 なんと!この女! 回し蹴りを俺の顔じゃなくて俺の拳に、ブーステッド・ギアに当ててきやがった!

 しかも破壊が目的じゃなくて、ただ単に方向を逸らしたいだけの一撃だ! 真っ直ぐ進みたい俺に、横に逸れろと横合いから圧力かけてきやがった!

 

 でも、俺は止まらない!止まれば奴の思うつぼ!

 止まったら負ける!攻めろ! うおおおおおおおおおおおおぐほぉうほっ!?」

 

「二段蹴りぐらい警戒しておけ、ド素人」

 

 こ、コイツ・・・最初の回し蹴りはフェイントかよ! はじめから俺に真っ直ぐ進ませることだけに専念させるためのフェイントだったのかよ! なんだよそれ! 人体構造無視しすぎだろ! 軟体動物のタコかお前は!

 

「なんだったら身体中すべての間接を外して、即座に戻して見せても構わんが?」

「あ、別にいいです。ボクそこまで人間やめた肉体構造欲しくないので」

 

 こいつ、悪魔に転生してもいないのに肉体改造レベルが悪魔を越えてやがりました。マジ怖い。

 

「ほら、さっさと立って次を打ってこい。次は私も足は使わん」

「ほ、ホントだな? 約束だな? 嘘つかないな?」

「・・・戦場で敵に向かって言う台詞ではないのだろうが・・・ここは学校で、今は試合中だからな。郷に入っては郷に従うが筋と言うもの。

 わかった、了解した。約束は守ろう」

「よ、よーし。それならばぁ・・・」

『ブースト! ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!』

 

 うおっしゃ!

 

「でぇりゃあああああああああああああああっ!!!!!!」

 

 ーーよっし! 今度は間合いに入れた! この距離なら外さないし避けられもしな☆▲○×□!?」

 

 

「ちょっと、イッセー!? どうしたの! 突然お腹を押さえだして、腹痛でも起こしたの!? だからあれほど拾い食いは体に良くないから駄目だと言っておいたのに!」

「・・・お母さん?」

「誰が母乳が出そうなオッパイよ失礼な! まだ出ないんだからね!」

「まだなんだって言うか、誰もそんなこと言ってないんですが・・・」

「すっかりオッパイキャラが定着したみたいで何よりですなぁ~♪ リアス・グレモ乳~?」

「誰よ!? その牛型悪魔みたいな名前の私は!」

「・・・自分で遠回しに認めちゃってるし・・・」

 

 

 ちょっとあの・・・みなさん? もう少しだけでいいんで、俺の身のこと心配して? 今の俺、結構ヤバい状態なんですけども? 特に重要な一部局所が重点的に・・・・・・。

 

 

「ふん。突撃して行って、今度こそ当てることばかりに集中しすぎるから相手の些細な変化を『大したことない』と見過ごしてしまう。

 相手が地面に指していた剣を抜いて、ダラリと下に提げていた。その変化をもっと重要視していれば、今の一撃は予測できて当然だというのに・・・」

「い、いや・・・今のはちょっと・・・む・・・り・・・」

「??? 何故だ? ただ単にお前の突撃してくる軌道上に剣を置いて峰打ちさせただけの小細工なのだぞ? 

 突撃すること当てることに集中しすぎて視野が狭まり、当てられると思いこんだ瞬間には完全な死角になっていただけで本来ならば誰もが通る位置と高さに柄頭を設置しておけば済む簡単なトラップだ。取るに足らないと思うのだがな・・・」

「そいうんじゃなくてだ、ね・・・?」

 

 主に当てられた場所が重要でね? 軌道上に置いて置かれた鉄の塊に金の玉が全速力でぶつかっちゃったら死ぬほど痛すぎる事実をどうかわかって・・・。

 

「ふむ。よく分からないが問題ない。すぐに救護班が呼べる位置にいる。

 衛生兵! ・・・いいや、歩いて付いてくる自動回復ポイント聖女アーシア・アルジェント! 貴様の出番だ! 治療してやれ!」

「誰が、歩く回復ポイントなんですかゼノヴィアさん!?」

 

 元教会所属で聖剣使いだったゼノヴィアによる、聖女アーシア評=歩いて付いてくる自動回復ポイント。・・・神様の奇跡RPGに格下げされちゃってるよ・・・こいつの信仰心の捨て具合がマジで怖すぎる件について。

 

 

 

「はぁはぁ・・・し、死ぬかと思った・・・」

「ふむ。つまりは死なずに生きて生還できた訳だな、おめでとう。

 では次を始めるから早く構えろ。人間の生は生き続けている限りずっと戦いなのだから」

「鬼かお前は!?」

「堕ちた聖剣使いだが?」

「鬼より悪魔より酷い暴君だった!?」

 

 驚愕の真実! 悪魔になった俺より悪魔な聖剣使いが存在していた! 神様、背教者です! 罰しちゃってください!

 

「ああもう、いちいち面倒くさい奴だなー。だったら今度は攻守交代だ。

 お前が全力をこめて対処できる状態が整うまで待っていてやるから、私はその後に真っ正面から剣での突撃を慣行する。それで良いな?」

「む。それなら俺でも余裕で勝てるな・・・よっしゃ来いや!」

 

 

「・・・イッセー先輩の思考が後ろ向きです・・・」

「さっきの一撃がよっぽど効いたんでしょうねぇ・・・すっごく痛そうでしたし・・・」

「相手に合わせてもらっておいて勝てるもなにも無いでしょうにねぇ~、うふふ。イッセー君たら惨めですわ~」

「・・・・・・(意外とヒロイン勢からの評価が低いハーレムラノベの主人公だったんですね、兵藤さんって)」

 

 

「それじゃあ行くぜ!」

『ブースト! ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!』

「充填完了! バッチこーっい!」

「ではーーーハァッ!!!」

 

 !! さすがに速い! 木場と同じか、それ以上か!

 だが真っ正面から来ると判ってさえいれば追えないって程には速くない! これならギリギリのタイミングを測ればーー消えたっ!? 横・・・・・・いや、上だ!

 

 

「チェストーーーーーっ!!!!」

「てぇりゃああああああああ!!!!!」

 

 ガギィィィィィィィィィィィッン!!!!!

 

 

 よし!噛み合った! これなら後は力勝ちしてから、空を飛べない人間形態のゼノヴィアが空にいるのを利用して逆げきぃぃぃっん!?」

「・・・・・・パワー負けしていると分かり切っている相手には、そのパワーを逆用して受け流しての反撃が基本だ。

 柔よく剛を制すの精神を生んだ偉大な祖国の出身者が、何故に欧州人が如きパワー馬鹿になっているのだ・・・?

 あと、二度目の足なしルールは攻守交代で無効になってるのは言うまでもないよな?」

 

 ・・・いえ、出来れば採用したままでいて欲しかったデス。

 

 弾いた剣を手放しながらサマーソルトキックを放ってきたゼノヴィアは、後ろへ飛んでく俺と同じく逆方向の後方へと飛んでいって着地する。俺も頭から着地する。「ぐべっ!?」とね。

 

 

「ほら、アーシア。じゃなくって、自動回復ポイント。出番だぞ」

「アーシアですよ!? アーシアで合ってますからねゼノヴィアさん!? わざとふざけてるだけなのは判ってますけど、本気でイヤなので止めてください!」

「わかった。次から気をつけるから早く治して帰ってくれ、アーシア・回復エント。兵藤一誠がヘバったままでは修行が進まんのだ」

「ゼノヴィアさーーーん!?」

 

 

「ふっふっふ・・・来たぜヌルリと・・・」

「何かおかしなモノに憑依されかけてる気がするのだが・・・まぁいい。今度は私は足も使わん。剣だけを使った一撃を放つから受け止めて見せろ」

「・・・ふっふっふ。今の俺は誰にも倒せねぇ・・・俺は虎だ。虎になるのだ」

「いや、そこは龍になれよ。自分一人の中で竜虎合い討たせてどうするつもりなんだ貴様は・・・」

 

 ふっひっひ・・・もう俺に痛みはねぇ。全力で殴る。殴れればいい。殴れさえすれば負けてねぇ。負けたことにはならねぇはずだ・・・。

 

《もはや完全に思考が負け犬の遠吠えになってるな・・・》

 

 くっくっく・・・ドライグがなんか言ってる気がするが気にしないよ俺は、俺様は、俺様ちゃんは!

 今よりこの俺兵藤一誠は、負けないためなら勝ちの目を捨てる修羅に・・・なる!

 

《ずいぶんと弱気な修羅も居たもんだなおい・・・あとで阿修羅に土下座してこい》

 

 

 知らん! アブラカタブラなんて名前の人を、俺は存じていない! 知らない人は今この場で関係なーい!

 

「ーーとぉ、言うわけで!」

『ブースト! ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!』

「今度こそ全力全開! いつでも来いやーーーっ!」

「では、行くぞ。・・・・・・射ーーーーーーっ!!!!」

 

 投げたーーーーーっ!? 聖剣エクスカリバーを投ーげーてーキタ━(・∀・)━!!!!

 

 え、嘘、間に合わーーこんちくしょぉぉぉぉぉっ!!!! 防ぎ切れれば負けてない!負けてなければ俺にとっての勝ちなんだから溜めに溜めたブーステッド・ギアを防御に消費し尽くしてもぜんぜん俺の腹は痛まないもんね!(血涙の滝)

 

「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 ーーえ。

 

「ふん!」

 

 ずどどどどどどどどどどどどどん!!

 

 

 連続パンチによるコンボ百連撃以上。

 その姿はまさに『るろ剣』の斉藤一のラッシュ攻撃の様でした。

 そして俺は同じく『るろ剣』の相良左ノ助のように殴られっぱなしでした。

 

 ーーだが! それでも俺の耐久力はドラゴン級! 人間の左ノ助よりも頑丈何だからこの程度はーー

 

「ふんぬっ!」

 

 ボガン!

 

「最後にくる、アッパー・・・カットを、忘れていまし・・・た・・・」

 

 がっくり。

 

 YUA-Win! Perfect!

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まぁ、先ほどのを見て貰えれば一目瞭然すぎるのだが・・・」

「いえ、ごめんなさい。全くなにが言いたかったんだか判らない私たちが居るんだけど・・・」

 

 部室に戻って教師口調で説教しようとしているゼノヴィアさんに、グレモリーさんが片手を上げながら控えめに異を唱えてます。

 

「なんだ? 判らなかったのか? あれだけ判りやすく見せてやったのに?」

「・・・少なくとも、あなたがヒトデナシだと言うことだけはハッキリしたのだけれどね・・・」

 

 グレモリーさんの尤もな言い分にゼノヴィアさんは「やれやれ」と肩を竦めてみせるだけ。苛立つ空気が室内に充満しますが、空気呼んで黙ってくれる良い人は帝国軍人には向いていません。なので無理です。

 

「つまりは、だ。・・・お前ら悪魔のくせに真面目すぎるだろう。なんで私が決めたルールばかりに従って戦いを挑んできてたんだ? もっと自分たちのやり方を押しつけてこいよ。

 不意打ちも騙し討ちも正当化しまくり出来まくりで、途中から言い訳を考える方が手間に感じてきたじゃないか。そんなだからセレニア様に負かされてばかりなんだよ。少しは敗北から学べ馬鹿ども」

 

 あ、それ私も思ってました。・・・ずっと前から・・・。

 

「貴様等は日常だとルール無用にやってるのに、なぜだか肝心の戦争になるとルール尊重で相手に合わせようとする。

 ・・・適用する場所と状況が完全に反転しまくってるじゃないか・・・だから前回もアーシア・アルジェントを浚われたあげく殺されるんだよ間抜けども」

『『『・・・う、ぐ、ぐぬぬぬぅぅぅぅ・・・』』』

「敢えて言わせてもらうが、お前らは阿呆で間抜けで馬鹿だ。そんなお前等が今まで負けなかった理由について少しは考えて過去を振り返れ。後ろ向きな思考も前に進むために使うなら偶には良しだ。がんばれ」

『『『うぬぬぬぬ・・・教会の元聖職者による説教なんてぇ・・・・・・』』』

 

 いや、それ普通じゃね?

 

「では、本日の講義を終了する。

 帰りますよ、セレニア様ー」

「あ、はーい。・・・それではアルジェントさん。兵藤さんはお任せして私は帰りますね」

「はい、セレニアさん。今日は介抱をお手伝いいただきありがとうございました」

「いえいえ、それほどでも。ではでは~」

 

 本日の私のお役目。

 怪我は治ったけど気絶したまま「うー、うー・・・」唸ってる兵藤さんに蒸しタオル載せたり団扇で扇いだりしているだけ。・・・これって転生者の果たすべき仕事なんですかね?

 今更すぎますけど、私の立ち位置っていったい・・・謎です。

 

和やかムードで続く


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