サブタイトルはHERO1話目「体育館裏のホーリー」と、終物語「おうぎダーク」から来ています。
・・・どうでもいいですが、いい加減ギャグ書きたいですね。
ぱーん! ぱーん! 空砲の音と花火を花火が打ち上げる音が秋の青空に響きわたり、プログラムを告げる放送案内がグラウンドにこだまする。
今日、人間界へと戻ってきていた俺たちグレモリー眷属は、駒王学園体育祭に参加していた。
『次の競技は二人三脚です。参加する生徒はグラウンドに集まってください』
うわっ! ちょうど始まるところじゃねぇか! 間に合って良かった~。
「アーシアー!」
「イッセーさん・・・! 来てくれた・・・っ」
涙ぐみながら迎えてくれたアーシアへの愛しさに胸が満たされるものを感じながら、俺は自分の回復っぷりをアピールするため腕まくりをして力こぶを作ってみせたりする。
ーーー上級悪魔ディオドラ・アスタロトからアーシアへの求婚から始まった戦いは、自分で自分の心臓を抉りだしたディオドラの自殺から狂い初めた。
途中で乱入してきた魔王ベルゼブブに目の前でアーシアを殺され、悪し様に罵られまでされた俺が怒りに我を忘れてジャガーノートドライブと一体化してしまい暴走しまくったらしいんだが、俺には正直その時のことで覚えている事が少ない。
気がついた時には部長たちに抱きしめられながら倒れていて、殺されたと思っていたアーシアが俺の前でちゃんと息をして声をかけてくれていた。
その後に空を行く最強のドラゴン『グレート・レッド』を見たり、ヴァーリの奴と再選を誓い合ったり、オーフィスっていう小さな女の子がドラゴンだって教えられたり・・・・・・そしてセレニアたちの姿が煙のように消えてなくなっていた。
アイツ等に関しては、その場にいる全員が言葉を濁して言いよみ誰も詳しくは語りたくなさそうだったから無理して聞かなかったけど、つくづく謎めいた連中だと思う。味方でないのは確かなのに、敵なのかどうかがいまいちハッキリしてくれない。
「決まってんだろ。俺はアーシアとの約束は必ず守るって」
「・・・う、うぅぅ・・・」
「ああ、おいおい泣かなくても・・・」
「すみません、つい嬉しくて・・・」
泣いていながらも満面の笑顔で応えてくれるアーシアを見た俺は、改めて決意する。
こいつの笑顔を二度と悲しみで曇らせたりしない。絶対に守り抜いてみせると。
「アーシア、ずっと俺の側にいろ。もう離れちゃダメだ!」
「はいっ!」
そうだ。あのとき俺は誓ったんだ。この子を俺の家族にするんだって。もう一生、離されて泣かせたりする悲しい目にはあわせたりしないって。
そのために俺は、もっともっと強くなる!
ヴァーリよりも木場よりもダチの匙も越えて、誰よりも強くなることで皆を守れる強い男になってやるんだって!
そのためにも俺には越えたいものがたくさんあるんだ。ジャガーノートドライブ状態になってたせいで体力が削られたからって寝込んでばっかいられるかっての! 男はいつだって気合いと根性で無理するのが一番なんだよ!
「一等、ゲットー! しゃあぁぁぁぁっ!!!
やった! アーシアやったぞ! ・・・はぁ、はぁ・・・」
「はい! やりましたイッセーさん! ・・・イッセーさん? 大丈夫ですか?」
・・・くそ、やっぱ病み上がりの体で全力疾走は無理があったか・・・。体がまだ怠いや・・・。
「あ、部長さん・・・」
「アーシア、セイクリッド・ギアで回復してあげて。体育館裏なら人目に付かないわ」
「あ、はい」
どうやら部長が気を利かせてくれたらしい。守るって言ったばっかりの女の子に助けて貰うのは格好つかないけど正直助かるかも・・・マジでしんどい・・・。
「イッセーさん。私に掴まってください」
「すまねぇ、アーシア・・・・・・」
アーシアが肩を貸してくれて俺が掴まり、部長がアーシアに何か言おうと耳元に唇を寄せた瞬間。“ソイツ”はいきなりやってきた。
「あ~・・・。申し訳ありませんが、その能力を安易に使いまくる回復手段は控えていただけると嬉しいのですが?
一応うちの元帥閣下がその能力を手にするために躍起になって暗躍して、大切な仲間たちをあなた方に殺されて独りぼっちになってしまった後ですのでね。
できればトラウマを刺激して傷つけたくないと思ってしまうんですよ、身内心理としては、ですけどね」
誰かに対して気を使っている言葉なのに、氷のように冷たくて寒さを感じさせてくる、痛いくらいに正しさをまとっている声。
少なくとも俺の知り合いで、これと同じ声を持ってる奴には他にあったことがない。
「セレニア・・・・・・っ! テメェ・・・!」
事の部外者にして当事者以上に関わってくる場合もある、悪魔でも天使でも堕天使でもない人間の少女、異住セレニア・ショート。
人だかりの中だと目立ちにくいチッコいなりが、今は目の前まで来てくれているからハッキリと目にすることが出来てるぜ!
「どうも、兵藤さん。お怪我が回復されたようでなによりです」
「なにしやがったんだよ・・・っ、今日はお前等とやり合うつもりは俺にはねぇぞ・・・っ!」
意識してやってる訳じゃないんだが、ついついキツい言い方になってしまう自分が少しだけ不思議に感じる。
理由はわからないが先日のディオドラとの一件以来、オレはこいつに苦手意識を持たされてしまっていて対応するときに刺々しくなってしまっているのだ。
会うのは久しぶりのはずなのに、なぜだかオレはこいつから徹底的に痛めつけられたような気がしてしまってる。それが敗北感となってオレの心をささくれ立たせているとしたなら我ながら小さい男だとは思ってしまう。
アーシアのためにもデッカい男に鳴らなきゃいけないって時に情けない。反省。
「それに何より、その能力を多用するのはあなた方全員の為にもならないのではないですか? 先の一件で私が一番に感じたことがそれなのですけれど」
「どういう事なのかしら? 異住セレニア、貴女まさか私のアーシアにイチャモンをつけるためにわざわざ自分の通っている別の学校から駒王学園の体育祭にまで足を運んできたんじゃないでしょうね?」
部長の言葉にセレニアは「まさか」とわずかながら苦笑の気配を見せてから、片手に下げてきた紙袋を部長に手渡す。
「お見舞いですよ。兵藤さんと、アルジェントさんへの共同名義でね。助かったとは言え死にかけたのは事実なのですから、知人としてお見舞いぐらいには訪れますよ。・・・ダメでしたか?」
「ダメ・・・と言うわけではないんだけどね・・・」
予想外に答えに部長が返答を出せずにいる隙に、セレニアは袋を開けて小瓶を取り出し優しい手つきでオレに手渡してくれた。
「これは・・・?」
「回復薬なんだそうです。うちで造っている物の方が効果あるんですけど、悪魔さん相手に効くのかどうか実験してないそうでしたのでね。冥界の奥地にまで人を派遣して取ってこさせたものです。エリクサーと言うそうなのですが、グレモリーさんはご存じで?」
「エリクサーって・・・まさか万能の妙薬!? 超高級品じゃないの! 受け取れないわよ、そんな高価なものなんて!」
「お気になさらず。別段、私がポケットマネーで身銭切って買ってきた物でもないですしね。ーーああ、忘れてました。アルジェントさんにはこちらをどうぞ。プランターに入っている小型の観賞用植物です。
デパートで買ってきた既製品ですけど、一応はこちらも高級品なんですよ?」
「え、あ、そのあの・・・・・・ありがとうございます・・・?
ーーーうわ~、綺麗・・・・・・」
あっさりとアーシアの警戒心を打ち砕いてしまえるセレニアの壷を押さえたプレゼント攻撃。オレも見習いたいこと山の如しだぞ?
「くれるというならありがたく貰っておくけど・・・・・・あなたはエリクサーをイッセーに渡して何をさせたかったのかしら? あなたが無償で人に施しを与える人だとは到底考えられそうにもない事態よね? あなたもそう思わないかしら? 異住セレニア・ショート」
部長が少し嫌みっぽくセレニアを責める。こちらも先日の出来事を引きずっているのかな?
「何かして欲しいのではなくて、する必要性をなくしたい・・・つまりはアルジェントさんの力の乱用を防止することこそが私のもくろみですよ。その能力は危険すぎますからね」
「それは、リバースのことかしら? それとも敵に能力に関するデータが渡っていて逆用されやすいから?」
いいえ、と部長からの問いかけにセレニアは静かな声で応じてから顔を上げた俺の目を見据え、しっかりとした声音でオレの心臓を掴み取ろうとでもするかのような切れ味鋭い言葉を発した。
「その能力があなたがたを今後も死なせ続けるかもしれないからです。他の悪魔にはない、あなたがただけのアドバンテージ回復能力。
天野さんが手段を選ばずに欲した力をあなたたちは妙に過小評価しているきらいがありますのでね。知人としては、多少なりとも危惧ぐらい覚えますよ。
なぜならその能力はか弱い少女を生け贄に差し出させてまで、至高の堕天使様が手に入れたいと欲した狂気の力なのですから」
「「・・・・・・・・・・・・」」
顔色が一気に悪化したアーシアを背後にかばいながら、オレと部長の二人は前にでる。やっぱりこいつは危険だった。俺たちの心に致命傷とも呼ぶべき一撃を言葉だけで刺しまくって来やがる。言葉の魔術師みたいな奴だよ、本当に。
「あれは貴女の所の駄ガラスが軽挙をやらかしただけだわ。アーシアにも、セイクリッド・ギアにも一切責任は存在してはいない。それを能力のせいだと言いきるのはこじつけでしかないとは思わなかったの? 異住セレニア」
「思いましたよ、もちろんね。ですが、そもそも其れが存在しなければ起こりようがなかった事件であり、愛憎で狂うことの無かった堕天使様であることを鑑みるとするならば、責任がないから無関係と決めつけてしまうのは逆の意味でこじつけではないかと思い直した次第です」
「それは・・・」
部長の反論にさっきまでの勢いを無くさせられる。相変わらずセレニアの言い分は正しくて、俺たちの思いもしてこなかった方角からの視点に基づいて展開されている。
でも。ーーその考え方はどこまで行っても、俺たちの今を否定する可能性に満ちあふれているものだ。
アーシアに能力がなかったら、アーシアはレイナーレにもディオドラにも会わなくていい代わりにオレとも出会わず俺たちの仲間になってもいない。アーシアがいなくてレイナーレが彼女を悪用しようがなかった場合、オレは殺されることなく人間のままで部長とも朱乃さんとも子猫ちゃんとも無関係なままだったろう。
そう考えていくと怖くなる。
オレは今までのことを不幸だなんてこれっぽっちも思ったことはないけれど、単なる偶然が降り重なって得られただけの幸運だとも思っていなかった。みんなが望んだからこそ得られている今なんだって、ずっとそう思い信じてきたんだ。
けど。根本的にオレがレイナーレに殺される切っ掛けになったアーシアの能力騒動。あれがもし起きていなかった場合、オレは、俺たちは今どうなっていたんだ?
ドライグは確かに生まれたときからオレに宿っていた。だから誰かがどこかでオレを転生悪魔として生まれ変わらせにきてたと思うけど、その時にオレの側ではアーシアが笑顔で見上げていてくれるだろうか? 家でに帰ったときに「おかえりなさい、イッセーさん」とはにかみながら迎えてくれたりするんだろうか?
アーシアに能力がなくてもオレは転生悪魔になっていた。
アーシアに能力がなかったら・・・おれはきっと、今の家族と思える仲間たちと出会えていない。
この考えを認めることは事実上、今のオレと俺たちとが無関係なまま進んでいった未来があり得たことを証明することであり、俺たちの今が偶然の産物の結果論にすぎないかもしれない可能性を認めることになるのだから・・・・・・。
「その能力は確かに戦力としてきわめて有効です。他の悪魔たちが使える回復魔法では今ほどの超回復を望むことは不可能ですからね。
ーーですが、本来であるなら其れが正しい。
ビショップの駒という言葉がもつ表面上のイメージだけで捉えた場合には回復が役割と決めつけてしまうことは可能ですが、しかし。
悪魔はあくまで悪魔であり、種族が持つ固有の特殊能力も攻撃系か攻撃支援系がほぼすべてのはずです。
そう言う意味ではアルジェントさんと他のビショップの駒は役職名だけ同じだけの別物と言うことになり、他の方の持つビショップよりも大事にしているとはいえ、大事にする理由が人格面への評価に傾きすぎな能力ガン無視であった場合の危険度は天野さんの時とは比べものになりません」
「ハッキリ言いましょう。あなた方は自覚もせぬままアルジェントさんの能力に頼り切ってた部分が大きすぎます。
今まで死人が一人も出なかったから、守り抜けてこられたから等という結果論から逆算して次の戦場に彼女を連れていくならば、それは先の失敗から何も学べていない証拠でしょうよ。
ーーー戦場においてザコを先に殺すのはセオリーであり、テロ組織にとっての戦場とは正々堂々とした決闘場ではない。市街地でしかける不意打ちのテロ攻撃こそが、彼らにとっての最良手だとは思われませんか?
泣いている子供が人間爆弾だったとしても助けに走りたがり、自分を殺すために吹き飛ばされた子供のことを忘れられそうにない心優しき聖女さまの心身どちらかを死なせるためには有効な手段であると私には思われるのですが?」
「あなたがた異種族は、勘違いしすぎだ。
敗けを知らない最強なんて、ただ単に自分よりも強い存在と出会わずに済んできた強運の持ち主であるに過ぎず、何度か敗ける中で一人の欠員も出したことがないのは偶然と幸運と奇跡の産物であって、思いも絆も切っ掛けでこそあれ死者を出さずにすむ手段になり得るはずがありません。
人も悪魔も天使も堕天使もドラゴンも神も魔王もすべて、最後に生死を分かつのは運の善し悪し、ただそれだけです。
絶対であるはずの神は今どこにおられますか?
最強であるはずの初代魔王様の後継者争いはなぜ勃発する必要があったのですか?
ーーこの疑問が私たちの命も、あなた方の命にも『絶対に死なせない』なんてことは『絶対にあり得ない』のだという事実を証明してくれていると思うのですけどね」
「敢えて言いましょう、兵藤さん。
アルジェントさんを守り抜くため貴男に足りていない物があるとするならば、それは貴男の中にある心の問題。
『アーシア・アルジェントが生きている限り、必ず死ぬ存在なのだ』という事実から目を逸らそうとする弱さに立ち向かえる勇気ですよ、きっとね。
それさえ承知しておけるようになったなら、今までより少しだけでも不意打ちに対処する能力が身につく様になると思いますよ。
あなた方には『強くなりさえすれば』と言う甘えこそあれ、自分の価値基準から見て否定すべき対象を侮って軽蔑し、格下相手に後れをとることへの恐怖心ーー俗に言う『危機感』が足り無すぎていましたからね。それを助長する最強回復能力はしばらく封印した方がいいと思ったまでです。では、失礼。帰りのバスに乗り遅れてしまいそうなので」
「おーい、イッセー。お前の順番がきたって先生が呼んで・・・うおわっ!? な、なんだこりゃ!? 吐血の池地獄に一人の美女と一人の美少女と、おまけの土左衛門が一体浮かんでいるぜ・・・」
「ふーむ、これは面白いな。ネタになる。早速帝都流通センターに連絡して、作品の題材を変更する旨を通達しなければ!」
「帝国最大規模の同人誌即売会『コミック・レッツ・パーティー』・・・そこはオタクたちの戦場! 死して屍拾うもの無き修羅の土地!
・・・イッセー! 俺たちはお前の犠牲を無駄にはしない! なんとしても美女美少女二人の体操着姿ならぬブルマ姿を題材に使い、帝国一のブルマ漫画家になってみせるぜ!」
「「エロマンガ大王に、俺たちはなる!!!!」」
つづく
セレニアが戦場に立ち続けている理由
「言うまでもありません。私がこの場にいる他の誰よりも弱いからです。
誰よりも脆弱でひ弱な私が最強の軍隊の指揮権を握り、指先一本ふっただけで大勢の強者を殺させることが出来てしまう・・・。
もしも私が危険だからと戦場に立たず、絶対安全が大勢の強者によって保証されてしまっている要塞内から人殺しの指示を出し続ければ、いつか必ず私は今の世界すべてを壊すよう命令してしまうようになる。
・・・自分が守られるしか脳のない弱者であることを忘れてしまうこと・・・それは私にとって他のなにより恐ろしい物・・・。
己の内側だけで世界を完結させてしまおうとする感情なんですよ・・・」