堕天使に愛された言霊少女   作:ひきがやもとまち

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先日に一旦停止したバケモノの後で『初代言霊IS』を見直してから書いたお話です。
コカビエルを倒したころのバカっぽいノリで京都修学旅行編を書いてみました。
楽しんで笑い飛ばしていただけたら幸いです。


?話「京都修学旅行編に魔王(笑)降臨」

 ―――これは、有り得ない展開でのお話。

 本編3話目みたいなノリで修学旅行編が進んでしまった場合の、トンデモストーリーです。

 

 

修学旅行初日、イッセー・ルート。旅立つ前の東京駅で。

 

「はい、これが人数分の認証よ」

 

 部長が旅に出る俺たち二年生にカードらしき物を渡してくれた。全員手に取って確認する。

「これが噂の?」

「ええ、これが、悪魔が京都修学旅行を楽しむときに必要な『フリーパス券』よ。京都の名所はお寺や神社が多いから、私たち悪魔が歩き回るには不都合なことが目立つのよ」

 

 普通の悪魔は寺とかには近づかない。聖なる力とかは相性悪いのだ。

 

「だけど、きちんとした形式のある悪魔にならこのパスを渡してくれる。今度の修学旅行はカオス・ブリゲードの脅威に対抗するため、京都を裏から守ってきた妖怪勢力との同盟を強固なものにする意味もあるのだから当然よね。グレモリー眷属、シトリー眷属、あなたたちは後ろ盾があって幸せ者なのよ?」

 

 部長がウインクをくれて、俺は歓喜の声を上げて皆も喜ぶ。

 やがて新幹線の発車時間が迫ってきたから、皆は車内へ移動して残る羽織れと部長の二人だけ。

 

「襟元、きちんとなさい。京都でも駒王学園の生徒であることを忘れてはダメよ?」

「は、はい!」

「・・・本当はね。強がってみたけど、私も朱乃と同じで、あなたがいない間は寂しいわ。これでも随分とマシになったのだけど・・・チュ」

「ぶ、ぶ、部長っ」

「いってらっしゃいのキスよ。私はこれで、あなたが京都に行っても寂しさに耐えられるわ。だから、いってらっしゃい、イッセー。楽しんでくるのよ」

「は、はい! 行ってきます!」

 

 部長のキス! 最高だった! なんだか幸先がいいぞ! いい旅になりそうだ!

 こうして俺の修学旅行は始まりを迎えた。

 サイオラーグさんのこととか色々心配事は山積みしてるけど、今だけは目一杯京都を満喫して英気を養おうと思う。

 

 行くぜ、京都!

 

 

 

 

 

修学旅行初日、セレニア・ルート。出発した新幹線の車内で。

 

「・・・まぁ、京都奈良なんて修学旅行先の定番ですし、同じ時期に別の学校に通っている知り合いと鉢合わせするのはラブコメの王道展開でもあるから構わないのですが・・・」

 

 窓外に映る田園風景を眺めながら、一人『車窓に映る景色から』ゴッコを堪能することで現実から目を逸らしてきた私もそろそろ限界なので、振り向いて“彼女たち”に声をかけます。

 

「・・・・・・なんで同じ電車に乗ってきてるんですか? 貴女たち・・・。私たちの学校は貴女たちが乗った電車の前に出発していたはずなんですけども・・・・・・」

「大丈夫ですわ、セレニア様。乗ってから悪夢の世界を通って来ただけですから、問題ありません。到着前におこなう点呼の時に戻っていれば済む話ですもの」

 

 にこやかに微笑んで、隣の座席に座っている天野さんが説明してくれました。時も時空も操る邪神たちの使役者たちにとって距離の防壁は、小さな防衛戦よりも尚意味を成さない紙の城壁以下みたいで何よりですね。

 

「ダイジョーブですよセレニア様! いざとなったらアタシが記憶改ざんしますから! この神より分捕った聖なる蛇聖剣のお力とやらで!」

「・・・犯罪に悪用しないよう自粛してくださいね? 紫藤さん・・・」

「ご安心をセレニア様。いざという時には私の聖剣で一切合切を綺麗さっぱり吹き飛ばして草木一本残らぬ焦土と化し、証拠も証人の存在も無価値で無意味な物へと変えて見せますので」

「あなたのはもうテロですね! 犯罪でさえありませんねゼノヴィアさん! 本番まで隠れてやってるカオス・ブリゲードの方がまだマシに思えてきましたよ!」

「誤解です、セレニア様。私がやるのは何時でもどこでも只一つ・・・・・・戦争だけです」

「自覚ありですか! 一番ダメなタイプですね!」

 

 風誘う~、敵よりも尚、部下の方が世界の危機だ。字余り過ぎ。セレニアでした。

 ・・・お願いですから、修学旅行の時ぐらい戦争忘れてくださいよ・・・。

 

「そう言えばセレニア様。私たち混沌帝国勢が妖怪たちの勢力圏内である京都へ勝手に入ってしまってもよろしいのでしょうか? 後々外交問題に発展する恐れがあるのでは?」

「あー・・・」

 

 天野さんが今更過ぎることを今更になって口にしたので、私もその一件について思い出させられました。

 

「確か、多種族が京都に入るときにはパス券がいるんでしたっけ? 京都の妖怪さんたちを束ねている、八坂さんちの真尋とか何とか言う組織が発行してる奴」

 

 天野さんたち堕天使や天使さんが悪魔さんと敵対しているこの世界『ハイスクールD×D』では、意外と言うべきなのか当然と言うべきなのか部外者で人間の私にはわかりませんが、悪魔とか妖怪とか竜とかでも敵対し合っていてアクエリアン・エイジに出てくる『ダークロア』みたいに化け物連合軍みたいな一大勢力を形成できてはいないようなのです。

 まったく、『敵の敵は味方』の方便ぐらいは上手に使いなさいよね。本気で戦争に勝ちたいとするならば。

 

 貴族社会故なのか、どうにも教条主義者めいた民族主義が鼻について好きにはなれない世界観。そんなだから戦に負けるのです、とか帝国軍提督みたいな口調で言ってみたくて仕方がありません。

 

「真尋さんとは誰のことなのかは存じませんが、仰るとおりです。手順を踏まないで密入国すると面倒事に巻き込まれるかも知れませんが?」

 

 彼女の言い分も一理あります。こちらに戦闘する気がないからと言って、外国の最高戦力三人が決められた入国手順を無視して密入国してきたら、どんな平和国家だって危険視して過敏な反応するに決まっているからです。

 ―――しかし・・・・・・。

 

「修学旅行は学校行事です。所属する生徒として参加しない訳にはいきません。

 親に学費を払ってもらっている学校よりも、内緒でやってるアルバイトの事情を優先する方が本来はおかしいのですからね。

 文句があるなら学校の方にどうぞと言ってお上げなさい」

「・・・セレニア様のそう言い切れるところ、私は大好きで仕方がありませんわ。片時も離れることなく守って差しあげたくなるほどに・・・・・・」

 

 慈愛に満ちた天野さんによる優しい微笑み。

 ただし。

 

「―――で、今この電車にも来ちゃったと?」

「はい☆」

 

 私のボディーガードの愛が恐すぎる件について。

 

 まぁ、そんな訳で私たちも兵藤さんたちと同じで京都奈良での修学旅行です。

 何事も起きないといいですね~。・・・面子から見て望み薄すぎるから、儚い望みなんでしょうけれども。

 

 『幻』を『想う』と書いて『幻想』と読む。

 バトルファンタジーの世界だろうと現実は過酷なものなのでした・・・。

 

 

 

 

修学旅行初日、イッセー・ルート。京都到着、観光中。

 

「余所者め! よくも・・・母上を返してもらうぞ! かかれ!」

「おおっと! なんだなんだ! か、カラスの、て、天狗・・・? 狐?」

 

 自由時間に班の皆を連れて京都の街中を見て回ってる途中で立ち寄った千本鳥居の先で見つけた古ぼけたお社。

 そこで手を合わせて願い事をして帰ろうとしたら、突然おかしな連中に絡まれちまった!

 見たところ京都の妖怪みたいだが、どうしてフリーパス持ってる俺たちに襲いかかってくるんだ!?

 くそっ、部長が好きだと言っていた京都の町も人も風景もできるだけ傷つけたくないってのに!

 

「アーシア! 部長から例の物を受け取ってるな?」

「はい!」

 

 俺に言われてアーシアがスカートのポケットから取り出した、グレモリーの紋章が入カード。

 京都で有事の際には、その場にいない部長の代わりに俺とプロモーションできる代理認証カードを修学旅行の間だけアーシアは託されたんだ。

 アーシアが選ばれた理由は、俺と常に一緒にいるであろう者に持たせた方が、互いが互いを守り合えるから。

 

「行くぜアーシア! 『ナイト』でプロモーション!!」

 

 いちおう、ブーステッド・ギアを三十秒だけ溜めて力を増幅させてから戦闘開始。

 

 ・・・ったく、なんだってんだよ! 意味不明で理不尽な襲撃に俺は困惑を強めてしまう。

 平和に楽しむはずだった京都旅行。起こって欲しくなかった何かが起こりそうな予感がして、俺は我知らず拳を強く握りしめていた・・・・・・。

 

 

 

 

修学旅行初日、セレニア・ルート。京都観光中、外国人に道案内してます。

 

「あ! ねぇねぇ見てよ、あの石像。あれって君をモチーフにして作った物なんじゃない?」

「え、嘘? 本当に・・・いやいやいや、あれは無い。無いよ、流石にあれは無い。あそこまでボク、格好良くないって。おでこのコレが似ているだけで絶対別人だよきっと」

「えー? そうかなー。でも、この京都の街は仏教を中心に作られたらしいし、仏教って言ったら君が一番スゴい宗教でしょ? だったらこの街で今一番イケてるモテる男は間違いなく君だよブッダ」

「え。え、え~・・・そ、そうかなぁ? イエスは本当にそう思ってくれるのかい?」

「もちろんだよ、当然じゃないか~。

 だって、商店街の福引きで偶然当たった京都旅行の初日から、こんなにカワイイ女子高生たちが四人もボクたちの案内を買って出てくれているんだよ? コレが京都の地元パワーで底上げされた君の格好良さが理由じゃなくて何だって言うのさ~」

「え、え~。いやー、参ったなー本当にもう。どうしよう・・・あは、アハハハハ」

 

 

(い、胃がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! 今までになく途轍もないレベルの痛みで即死寸前の胃痛が凄まじすぎて死にそうですぅぅぅぅぅぅっ!!!!!

 世界観的に一番出会わせちゃいけない人たちと出会っちまったせいで、私が死ぬ! 作品世界と主人公よりも先に私の方が死ぬ!

 間違ってもニアミスさせちゃいけない人たちが主な原因で死にそうですぅぅぅぅっ!!!

 ・・・・・・だ、誰か助け・・・て・・・・・・)

 

 

「あ、華厳の滝だ。あれはなかなか苦しい修行だったよ-。でも、それを乗り越えたからこそ今のボクがあるんだと思えば、どんな苦しみも無駄ではないんだと理解できてスゴく嬉しくなるよね?」

「わかりますわ、そのお気持ち。スゴくよく分かります。やはり人は試練を乗り越えた数程強くなり、困難に直面したときにも負けず挫けず諦めることなく人生を走破しようという気持ちになれる存在なんですものね!」

「おお! 君若いのによく分かってるね! スゴいな~日本の若者たちは・・・。ボクなんか君くらいの歳の頃には羊を追いかけるだけで文字の読み書きさすらできなかったのに・・・。やっぱり人は向上心と諦めない気持ちさえあれば環境や生まれなんかに囚われることなく学んでいけるスゴい存在だってことなんだね・・・」

「ええ・・・本当に・・・人類とはこの世の何よりも・・・・・・」

 

「「「素晴らしい心を持った存在なんだね・・・(なのですわね・・・)」」」

 

 

 ウオォイ! そこの元堕天使ィィィィィィッッ!!!!!!

 歴史上最大の聖人二人と意気投合してんじゃねぇですよぉぉぉぉぉっっ!!!!!! 

 

 

 

 

 

修学旅行初日、イッセー・ルート。『八坂』に招かれた屋敷にて。

 

「・・・なんだか、えらいことになってますね」

 

 昼間、俺に襲いかかってきた妖怪たちが謝罪したいからと言われて訪れた先にあった不思議空間を抜けて通されたバカでかい屋敷で、狐の小さなお姫様「九重」から謝られて仲直りして詳しい話を聞かされた上で、俺が言った意見だった。

 

「各勢力が手を取り合おうとすると、こういうことが起こりやすい。オーディンのときもロキが来ただろう? 今回はその敵役がテロリストどもだったってことだ」

 

 なんと、京都に住まう妖怪たちを束ねている八坂の当主『八坂姫』って人が、何者かに浚われて行方不明になってるらしい。

 そして先生は、誘拐犯たちは十中八九カオス・ブリゲードの一派だと断言した。俺たちも先生と同じ考えだ。

 

「・・・どうかお願いじゃ。母上を・・・母上を助けるのに力を貸してくれ・・・。いや、貸してください。お願いします」

 

 九重が手をつき、深く頭を下げる。・・・俺は、こんな小さな子が頭を下げる姿に声を涙で震わせて、気持ちを新たに旅行中の戦闘を覚悟したんだ!!!

 

 

 

 

 

修学旅行初日、セレニア・ルート。宿泊先のホテル、自室にて。

 

「イェーイ! 今夜はオールナイトだぜーっい!(合コン喫茶のノリで甘粕夕麻)」

「わーっ! ヤンヤヤンヤ♪(お祭り気質で騒げりゃ何でもいいイリナ)」

「わーい(斬ること以外に興味ないから好き嫌いがなく、普通に楽しめてるゼノヴィア)」

 

「・・・・・・ZZZ(疲れてオネムの混沌帝国皇帝陛下)」

 

 

 遮音力場を張って、はしゃぎまくる普通の修学旅行を満喫しまくってる戦争国家の最高幹部三人+国家主権者一人であった。

 

 

 

 

 ・・・・・・そして彼女たちは、運命の二日目を迎える・・・・・・

 

 

 

修学旅行二日目、イッセー・ルート。渡月橋。

 

「――この霧は・・・・・・」

 

 昨日あったばかりの九重に案内してもらいながら楽しくおじゃべりしていた俺たちは、突然ぬるりと生暖かい霧に包まれて、俺と眷属の皆以外の人たちは突然まるっといなくなっちまった!

 

「この感じは、間違いありません。私がディオドラさんに捕まったときに神殿の奥で同じ霧に包まれて、あの装置に囚われてたんです」

「―――『ディメンション・ロスト』」

 

 木場が言って、それに答えるようにアサゼル先生が「お前ら、無事か?」と、空から声をかけてくれながら、黒い翼を羽ばたかせて降りてきてくる。

 

「俺たち以外の存在はこの周辺からキレイさっぱり消えちまってる。俺たちだけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。

 ・・・この様子だと、渡月橋周辺とまったく同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか?」

「・・・そう言えば、亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に口にしておった。気づいたときには霧に包まれていた、と」

 

 九重が言葉を添えてくれる。

 それは、俺の嫌な予感は当たってしまったことを意味していたもいたのだ・・・・・・。

 

 

 ――やがて渡月橋の方から複数の気配が現れてくる。

 薄い霧の中から近づいてくる人影の一人が前に進み出てきて、挨拶をしてきやがる。

 

 

 

「はじめまして、アザゼル総督、そして赤龍帝。俺は『カオス・ブリゲード』英雄派のリーダーで、曹操と名乗ってる。三国志で有名な曹操の子孫だ。―――いちおうね」

 

 

 

 

 

 

修学旅行二日目、セレニア・ルート。健勲神社(旧称・健織田社)で、祈願中に。

 

「・・・・・・む」

「?? どうかされたんですか? 天野さん・・・突然厳しすぎる視線で遙か彼方を睨むように眺めだされた様ですが・・・」

 

 柏手を打ち、決められた手順に従って礼儀正しく神社に奉られているご神体であらせられる織田信長公に祈りを捧げておられた天野さんが、突然どっか遠くを睨みだしたのでビックリしてしまいましたよ。・・・ついに頭がおかしくなったのかもしれないなーって。

 

 つか、この人って元堕天使なのに平然とお祈りとかするんですよね-。「信じる心は何よりも美しくて尊い」とかなんとか恍惚としながら。

 元堕天使設定がネタでしかなくなってきた感の強い、今日この頃な天野夕麻さんでありましたとさ。

 

 

「・・・いえ、大したことではないのですが・・・。ほんの一瞬だけ、私の英雄感知レーダーに反応があった気がしたものですからつい・・・。ご心配をおかけしてごめんなさい、セレニア様」

「え。なにその妖怪アンテナみたいなレーダー・・・」

 

 コワ・・・。やっぱり変な電波を感知されてたみたいですね。病院行きましょう、病院。今すぐにです。

「主が疑問に思われたなら、答えて上げるが忠実な家臣のイリナちゃん♪

 なので、ご説明して差し上げましょ~う☆ 英雄感知レーダーとは~! お義父さまの使う邪神レーダーや、ゼノヴィアが使える神様レーダーを天野夕麻元帥閣下専用にご自身の手でカスタマイズされたものでして!

 元帥閣下の決められた絶対値に値しそうな英雄候補を感知できるようになるという驚異的なレーダーでありまーす♪

 なお、基本的には頭のアホ毛で英雄オーラを受信するため、ちょっとしか伸びてない夕麻閣下のアホ毛の感度だと大まかに感じ取るぐらいのことしかできませ~ん」

「なるほど、よく分かりましたよ紫藤さん。ご説明ありがとうございました」

 

 うん、本当によく分かりました。―――やっぱ、変な電波受信しちゃってるだけじゃねぇですか! 壊せ! そんなレーダー!

 どう考えたって強化人間が使うサイコミュ以上に厄ネタにしかなりませんよ! その設定!

 

「ですが、妙な翳りで曇らされたような感じ方だったので気になるのも確かですし・・・。ゼノヴィア大将、厄介事をお願いしますけど、この近くで何か妙な気配を探り出すことはできませんか?

 あなたの念能力『円』を使えば半径三百メートルぐらいはカバーできると思いますから」

「承知。・・・む~ん・・・・・・喝っ!!」

 

 忠誠心溢れる部下に失礼なのを承知で、心の中だけでも言わせていただきますね?

 ・・・何やってんの、この人たちって・・・。すっごくバカバカしいんですけども・・・。

 

「見つけました。渡月橋の上辺りに、人工的な疑似空間を上書きして隔離した一帯があります。おそらくは、それかと思われます」

「空間を上書き。確かこのまえ似たような機能を持ったロンギヌスが会った気がしましたね。確か名前は・・・で、デメ・・・ロス・・・・・・」

「《デメちゃんロスト》?」

「そう、それですよイリナ大将。さすがは憲兵総監兼内閣安全保障局長です」

「えへへ~、それほどでも~♪」

「・・・たぶん、絶対に違う名前だったと思うんですけど・・・」

 

 聞こえてないでしょうし、聞いてもらえないことを承知の上で一応ツッコんでおく私です。

 こういう時、『強さが正義』を基準とするバトルファンタジー世界で凡人の私は不利になる一方ですよ。何言ってもやっても通用するかしないかは相手次第にならざるを得ませんから。

 ・・・まぁ、今回の場合は私も正式名称覚えてないから自信がないし、本気でツッコむ資格ないんで小声で言うしかないってだけでもあるんですけどね?

 

「『デメちゃんロスト』・・・調査部が見つけてきた文献によれば、霧が包み込んだ物を他の場所へ転移させることができるロンギヌスでしたか。

 ディオドラの神殿でアーシア・アルジェントを閉じ込めておく檻と処刑用の首縄にのみ使っていたときには戦略的に無意味でしたが、兵藤イッセーたち全員を自分たちの戦いやすい戦場に転移させられるとなれば厄介極まる能力ですな。

 味方にあるならともかく、敵の手にあるときには真っ先に破壊しておきたい強力無比な移動支援能力だ」

 

 ゼノヴィアさんが言うことに基本、私も同意見ではあります。

 ・・・ただ、「お前が言うな」な気持ちになるのだけは避けられようがないですけどね・・・。

 

「もし仮に、その・・・で、『デメちゃんロスト(仮名)』によって強制転移させられたのが兵藤さんたち全員だったとしてです。その場合はどうされるのです?

 特殊能力によって隔離されている場所なのでしょう? 新幹線の時とちがって自然にできた距離と物理の防壁だけでなく、本気で侵入阻止を目的として防御スキルで固めてある場所で行われている戦闘に介入するのは難しいのでは?」

「ご安心ください、セレニア様。私の次元斬は空間だろうと何だろうと切り開きます」

 

 やっぱ、お前の方が厄介じゃないですか! 敵にしたら嫌すぎる相手じゃないですか! 防御関係なくなっちゃってるじゃないですか! スゴいですね! 邪神を支配することに夜能力補正! そりゃ誰だって強者こそが絶対者と思い込みたくもなるわ! 反則にも程があります!

 

「はい! はいはいハ~イ!! セレニア様! アタシだったら次元の狭間に飲み込ませてから空間丸ごと支配下に置いて行き来を自由にすることが可能にできます!」

「腕力と根性と自分を信じる心によって、力づくでこじ開けられます」

 

 ・・・なんっで、うちの軍隊にいる人たちは碌でもない能力ばかりチートしてるんですか! もっとヒーローっぽい能力やスキルも身につけなさいよ! 主人公勢でしょ! 原作ではですけれども!(当たられた原作知識が最近当てにならないんで自信ないですが!)

 

 あと、それから元堕天使の美少女高校生! あなたはもう、この世界観にいてはならない人です! 一人だけ別世界観の住人です!

 自分のあるべき世界観へ帰っておしまいなさーーっい!!!

 

 

 

「と、言う訳ですので私たちはイッセー君たちが巻き込まれているであろう戦場に赴きますけど、セレニア様は如何なされますか?

 ここで帰りをお待ちしていただけるのでしたら、護衛に私たちの内一人は必ず残しますけれど・・・」

「・・・行きます。邪魔なうえにお荷物でしょうけど、ついて行かせて頂きます・・・」

 

 放っておくと絶対やり過ぎちゃう人たちですからね、この人たちって・・・。

 ・・・尤も、私が付いていったぐらいで結果が変わるとは到底思えませんが、万に一つでも死人を出さずに済む可能性があるとするなら賭けるしかない今日この頃な私です。

 

 

「では、各々方。討ち入りに参るとしましょうか・・・。『グレーター・テレポーテーション』!」

 

 

 

 

 

 

「母上をさらったのはお主たちか! 母上をどうするつもりなのじゃ!」

「母上には我々の実験にお付き合いして頂くのですよ。スポンサーの要望を叶えるため、と言うのを建前に使ってね。・・・・・・おや?」

 

 

「・・・・・・あれ?」

「えっ!? セレニアたち・・・一体どこから!?」

 

 

 ――変な色に包まれてる渡月橋のほぼ中央に出たと思ったら、橋の両側で兵藤さんたちと、学生服っぽいのを着た初対面の誰かさんたちが睨み合ってる状況に出ちゃいましたね。

 

 これはおそらく・・・・・・ものすっごい場違いな状況下に介入しちゃったこと疑い有りませんね! どうしましょうか!? 私無能で無力なんで何にもできないんですけれども!?

 

「これはこれは・・・君たちのことも聞き及んでいますよ。それに調べさせてはみていた。

 混沌帝国と名乗る我々以外の人間勢力を率いておられる『銀の魔王姫』殿でしたね。お目にかかれて光栄の至り。

 正直なところ、貴女たちに関しては居場所どころか拠点さえ把握できずに難儀していたので出向いてきてくれて助かりましたよ。おかげで手間が省けました。心の底からありがとう」

「・・・え? なに、その二つ名・・・。過大広告過ぎる上に恥ずかしすぎるんで、心から取り下げて頂きたいですけど・・・」

「え。今気にするべきなのそっち?」

 

 なぜだか頭目二人で顔を合わせて、頭に?マークを浮かべ合う展開になってしまいました。

 だって、あなたたちの名前すら知らない私にとっては重要度上なんですもん。

 敵の情報を知らないうちは、何をどう基準にしても意味ないですし。自分の知ってる知識だけを基準とした「自分はこうだから、敵はこうに違いない」なんて決めつけは固定概念を生み出すだけですし不利になる一方でしょう? 馬鹿らしいのでやりませんよ、そんなもん。

 戦いは敵有っての物なんですから、敵を知るまでは戦端なんか開けません。敵の強さがわからない間は、自分が上とも下とも言い切れないのが普通なのです。

 

 自分は『正しい』と信じる気持ちと、自分は『間違ってない』と信じたいだけの願望。

 その二つの間には一億光年以上の距離があり、混同するのは危険極まりないのです。

 ・・・だから今の私は、一人で内心アワアワする方が優先順位的には上。あわあわ、はわわ。

 

「その槍・・・最強と名高いロンギヌスが一つ、『トゥルー・ロンギヌス』ですか? では、あなたがカオス・ブリゲード軍所属『英雄派』を率いるリーダー曹操ですね。

 実に思想が私好みでしたので鮮明に記憶していますよ」

「そちらの方こそ、腰に帯びたる軍刀の禍々しさから見て只者ではありますまい。察するに、赤龍帝を覚醒させる際、総督殿に捨て駒として使い潰された後に奮起された思考の堕天使レイナーレ殿とお見受けしたが、如何かな?」

「如何にも。・・・と、言いたいところですが一つだけ訂正を。――その名は種族と共に捨てました。

 今の私は一人の人間、天野夕麻です。それ以下でも、それ以上でもありません。お間違えのないように願いましょう」

「承知した。訂正された者が言い間違えただけで殺されかねない意志の強さに敬意を表して、今後はあなたのことを天野夕麻の名で呼ばせて頂きましょう」

 

 

 ――そして、なんだか意思疎通ができてるっぽい敵リーダーと、味方サブリーダーのお二方。そして状況について行けずに置いて行かれる味方リーダーの私です。

 うん、戦力的には役立たずだから教えとく必要ないのはわかるんですけど、最低限度の状況説明ぐらいはしてもらいましょうか。

 普通のバトルファンタジーに出てくるおバカ主人公でさえ、それぐらいに待遇を敵から与えてもらっているんですからトリック・オア・トリートです!

 

 

「挨拶が済んだばかりで早速なのですが。――確認したいことがあります。

 先ほど、そこにいる狐のお嬢さんが言っていたことに相違ありませんか? 曹操。

 たしか、彼女の母親を誘拐して実験に使うとかなんとか・・・」

「如何にも。彼女には我々『人間』が『人間としてどこまでやれるか』を試すため、神を悪魔をドラゴンを堕天使を、その他諸々の超常的存在に勝つために必要な実験材料になってもらうつもりでいる。

 『敵を知り、味方を知れば百戦百勝危うからず』・・・敵のデータを可能な限り集めてから戦うのは基本中のきほ―――」

「・・・・・・情けない。情けなさ過ぎますね貴方たちは・・・」

「――んでしょう・・・って・・・ん?」

 

 天野さんが纏っていた空気が変わったのを察したのか、曹操さん(?)とか何とか呼ばれてた男性が警戒したように槍を構えて視線を鋭くしながら彼女を見据え、対する天野さんは苛立ちと哀れみの視線で彼らを厳しく睨み付けながらも静かな歩調で歩み出し、コツコツと靴を慣らしながらゆっくりと諭すように彼ら相手に話しかけられます。

 

 

 

「自分がこれから何と戦い、何を斃すのか。それを知るのは大事なことです。その為に子供の母親を用いようと画策するのは戦の習い。むしろ子供には手を掛けなかった誠実さは賞賛されて然るべきものだと私が保障致しましょう。

 ですが――――――」

 

「敵に勝つため敵を利用し、敵を知るため敵を使い、敵から得た情報で敵に勝つ。・・・そこまではよろしい。

 ですが、その為に敵の子供から親をさらって実験に使うとするなら、それはただの人体実験。弱き側が強き側に勝つため、非人道的行為に手を染める己を自己正当化する方便に過ぎません。

 大義とも正義とも、ましてや英雄などには程遠い・・・」

 

「敵に勝つため敵を使い、敵を知るため敵を用い、敵から得たデータを元にして敵を倒せさえすれば自分たちの勝利だ、勝った方が強くて上だ、手段も経過もどうでもいい。勝利が全てを正当化してくれるであろう。

 『なぜなら自分たち人間は敵である異種族よりも弱く生まれついているのだから』――自らの力を信じて天に打ち勝ち、自らの存在を世界に示し、認めさせる大義のための戦争を主導する者たちが唱える理屈としては卑屈すぎる」

 

「天を落とすための戦で、天に縋って打ち勝つことに何の意義がある? 天を相手に、天に勝たせてもらって何が嬉しい? どこが誇らしい?」

 

「神を殺すのに神の力を使うのはいいでしょう。悪魔を殺すのに悪魔の力を使うのもいいでしょう。

 ですが、そこには確固とした『己』が無ければいけない。子供を泣かせて「所詮は敵だから」と笑う自分が英雄だなどと嘯くようになってはならない。

 力は力、敵を倒すための物であれ、味方を癒やすための物であれ、目的のために存在する物を目的を成すため使うとするなら、それは等しく道具の一つに過ぎません。道具は使えさえすればそれでいい。

 道具に振り回されて己が通すべき道と信念を見誤る者は種族にかかわらず英雄になれない。罪を罪として背負いながら歩めぬ者に勇気ある者『英雄』の名は重過ぎる」

 

「種族、階級、知恵、力、おっぱい・・・どれでもいいし何でも構いませんが、敵を倒すために使うとするなら全ては道具としてのみ見るべき物。道具を使って事を成すのは自分自身でなくてはならない。

 自らの願った夢を叶えるため、他人を利用するし続けて最後のとどめだけ刺して得たハッピーエンドで貴方たちは満足できるのか? 世界から卑劣さと狡猾さだけを認めてもらえて嬉しく思えるのが自分だとでも言うつもりなのか?

 敵より弱い自分が敵に勝つため外道に落ち、その現実から目を逸らしる口実としての大儀に逃げ続けて一体どんな夢を叶えるつもりでいる? 血の色をした悪夢を見るため血まみれの英雄となるのをそんなにまでして望んでいるのか?

 『戦争だから、勝つためだから』と自分を誤魔化し、信じる真を切り売りしながら手にした勝利の先で、あなたたちは一体どんな未来が待っていると世界を相手に叫ぶつもりでいるのだ」

 

 

 

 

「気に食いませんねぇ。喝を入れて上げるとしましょう。殴るのが好きな訳では決してありませんが、そうしなければあなた方の輝きは取り戻せないと信ずるが故に」

 

 

 

 

 

「『終段顕象』」

 

 

 

 

 ・・・そして現れる、デッカすぎる金色ドラゴンさん。

 なんか見慣れた宇宙まで着ちゃいましたけど、息できてる辺りはスゴいなぁ-。さすがはファンタジーだなぁ、うんうん。

 

 

「・・・で、コレ何?」

 

 目を眇めながら訊く私。答え如何ではグーで殴ります。利かなくても人として殴ります、絶対に。

 

「『黄龍』と言います。王都を守護する神獣であり、星の血流とも言うべき地脈が具現化した存在です。長さは大凡、関東平野にとぐろを巻けるぐらいの大龍神クラスで、今私たちがいる頭頂部は成層圏に達する程度かと」

 

 世界観超越しすぎるにも程があるし! ドラゴンが主役の作品になんて生き物呼んで来てんですかこの人はーーーーーーっ!!??

 

 

「世界の悪意を、不条理を否定するため自らもまた悪意に染まり、同類と化す。

 そんな人の迷いを払うのであれば、汚辱に塗れた敗北の人生から救い出そうとするのであるならば。彼らに道を指し示し、導く光は聖なるものこそ望ましいでしょう。

 彼らが本当の意味で天を落としたいと欲するのであれば、まずは天の高みを知り、その圧倒的力の差を見せつけられても、負けず挫けず泥を舐めながらでも立ち上がる強く気高い勇気こそが必要なのですから・・・・・・」

 

 

 

 

 ――その頃の地上では。

 

「な、なにぃぃぃぃっ!? こ、こんなものは知らない! 聞いていない! 俺たちはグレートレッドを喚ぶつもりで、いったい何を呼び寄せてしまったんだぁぁぁっ!!??」

 

「ちょ、ドライグ! ドライグさぁぁぁっん!? あのドラゴンなに!? あの金ぴかドラゴンなに!? デカ過ぎちまって俺の拳が絶対に届かない高さにまで夕麻ちゃんたちが行っちゃってるんですけどもーーっ!?」

『し、知らん知らん知らん! こんなドラゴン見たことないし聞いたこともない!! ま、まさか俺の知らない未知のドラゴンが存在していたのか!? 俺たち二天竜は最強の存在ではなかったと言うことなのかーーーーーっ!!!!????」

 

 

 

 んで、また成層圏。

 

「少々痛いかも知れませんが、天罰覿面と言う奴です。良薬は口に苦いと言いますから、耐え凌いで生き延びてください。それが出来なければ貴方たちに英雄を目指す資格はありません」

 

 

 ちゅどーーーーーーーーーーーっん!!!!!!!!!!

 

 

「・・・よし」

「よくない」

 

 すぱこん。

 軽く手ではたいてツッコミ入れます。(でも身長的に後頭部は無理でしたから、二の腕にです)

 

 

 

「――良薬も何も、殺してどうすんですか!? あれ直撃したら京都一帯が吹き飛ぶ程の威力ありましたよね確実に!? あの周囲には兵藤さんたちだっていたんですよ!?」

「ご心配なく、セレニア様。峰打ちですから」

 

 峰打ち!? 龍が口から発射する雷の峰ってどこ!? そんな部位あったんですか!?

 

「悪魔の強靱な肉体ならば、ギリ耐えきれる程度にまで威力を押さえさせて発射させております。吹き飛ばした京都もドリームランドで拡張した疑似京都の街中だけに被害を押さえ込みました。悪魔の体力なら夜までに回復して戦えるようにはなっていることでしょうから、問題ありません」

「・・・い、いや、問題しかないような気がするのは私だけなのでしょうか・・・?」

「疲れ切って消耗した中だろうと、戦う力を残しているなら戦うべきです。それができない程度の軟弱者では無いと私はイッセー君たちを信じております」

「・・・・・・もし、死んじゃってた場合には?」

「それまでのことかと」

 

 

 ・・・容赦ねぇですね、この人の信頼って・・・。ん?

 

 

「ちょっと待ってください、天野さん。今あなた、『悪魔ならギリ耐えきれる程度の威力』と仰ってましたけど・・・曹操さんたちは? あの人たちって確か、人間・・・・・・」

 

 心の中で盛大に冷や汗垂らしまくってる私からの質問に、天野さんは「ふっ」と慈愛に満ちた優しい微笑みを浮かべられて。

 

 

 

 

 

「悪魔に勝とうと志す者たちです。悪魔が生き延びれる攻撃で死ぬようなら、口先だけにも程があります。大言壮語だろうと言ったことには責任を持ってもらうのが混沌帝国の流儀というものです」

「・・・・・・」

「戦争ですからね。私は私の価値観と信念を力によって彼らに押し付けることを一切躊躇うつもりはありませんし、彼らもまた傲慢な神の視点で自分たちを見下してくる私のことを許すことは決してないでしょう。それで良いのです。

 覇気と覇気がぶつかり合い、善悪定かならぬ境地へと至り、輝きと呼べる全てを余すことなく現出せしめる。

 何でも良いですし、誰だろうと構いません。願う真が胸にあるなら、ただひたすらに夢を目指して走り続けてくれさえすればそれでよい。

 躓き倒れて、泥を舐めようと何度でも立ち上がる尊き姿は種族や身分に関係なく美しいことに変わりないのですから」

 

 

「なぜならば。悪魔だろうと天使だろうと人間だろうとアメンボだろうと、諦めなければ夢は叶うと信じて生きているのですからね!

 悪行を正当化する安易な道に流されることなく、胸を張って己の人生を走破できる自分自身の可能性を思い出して欲しいですから! 私はいつでも彼ら、夢を追う若者たちの側で見続けていたいと願い続けて生きているのですからね!!」

 

 

 

「いいですか皆さん!? 先達の示した道を乗り越えるために忘れてならない物・・・・・・。

 それは、自分を信じて貫き続ける勇気です!!!

 強敵を前に信念と正義に恥じることない戦で勝ちを目指しましょう! それこそ真の勝利と呼ぶべきもの!!

 己を否定した世界に自分と言う存在を力づくで認めさせたいと願うなら、己の腕一本で事を成す度胸と勇気ぐらい見せつけてからにしなさぁぁぁぁぁぁぁっい!!!!!」

 

つづく?

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