今回は番外編ですので悪しからず。
※自己解釈、オリ設定はここでは当たり前!良いね?
それでは今回も、のんびりしていってね!
今夜の月は、紅かった。
その大きく紅い美しい真円を見ていると、私の決心もより一層強くなる。
そして思い出す。
あの日の屈辱を……。
「……行け」
私の指示で、部下の妖怪共が次々に雄叫びを上げ走る。
「さぁ。パーティーの始まりだ」
私の声は、静かな夜の闇へと溶けていった。
私がワイングラス(赤ワイン入り)片手に部屋でくつろいでいると、何やら外が騒がしい事に気付く。
「……うるさいわね……何事かしら?」
私は騒ぎの真相を確かめるべく、部屋を出て玄関ホールへと向かう。
「あ、お姉様!」
道中でフランと遭遇した。
「フランも気になるのね?」
「うん。それに、何か面白い事かも知れないよ!」
フランはわくわくした様子で言う。
本当に面白い事なら良いのだけど……何か嫌な予感がする。
面白いとは逆の、嫌な事が起こる予感が……。
「行こ、お姉様!」
「ええ」
私達は再び玄関ホールを目指し、歩を進める。
そして、私の嫌な予感は、見事に的中してしまった。
玄関ホールには、無数の異形のものの残骸があり、鉄の臭いが充満していた。
「これは……」
思考を巡らせてみる。
雑魚妖怪が殴り込みに来るのは前にもあったが、ここ最近ではそんな事無かった。どうして今になってこの紅魔館を襲うのか?
外からはまだ騒がしい音が聞こえて来る。
ここで考えるより、外に行った方が良さそうだ。
「行きましょう、フラン」
隣を見るとフランはいない。
次に玄関の扉の方に視線を移すと、フランの服の赤がちらっと見えた。
どうやらもう行ってしまったようだ。
私もフランに続いて外に出た。
外にも、残骸と血が散らばっていた。
そして、咲夜、パチェ、美鈴が
「咲夜、これは何事?」
私は、一番近くにいた咲夜に今の状況説明を頼む。
丁度、妖怪共は全滅したようだった。
「お嬢様!……それが、」
そう言って、咲夜は庭の奥を見つめた。
私も一緒に見つめてみる。
そして私はこの騒ぎの原因を理解する。
すると、ソイツはこちらに歩み寄って来た。
「これはこれは、レミリア嬢。ごきげんよう」
ソイツは赤いコートを身に纏った、背が高い男。
「何がごきげんようだ、お前、どうしてここに来た」
「随分と
そう言って目の前の男、ブロード・レッドロイドは不敵な笑みを見せる。
コイツは少し前に吸血鬼異変と呼ばれる異変を起こした張本人だ。
だが、この男とスカーレット家はかなり前から関わりがある。
何せ、この紅魔館は元々あの男のものだったのだ。
あの男はその昔、お父様と並んで恐れられた吸血鬼だ。
そしてある時、お父様との闘いに敗れ家を追い出されたと聞いている。
だが、お父様が死んだ事を知ったあいつは、この紅魔館を奪おうと前に襲って来た事がある。
それが吸血鬼異変。
紅魔館を襲うと同時に、この幻想郷を支配しようとしたが、それが琥珀の目に止まり異変は解決された。
……のだが、この様子だとまた性懲りもなくリベンジしに来たようだ。
全く呆れる精神だ。
……あ…………。
ここで、思い出す。
つい昨日、魔理沙が来た時に言った言葉を。
“琥珀、今外の世界に遊びに行ってんだよ。一人だけズルいよなぁ”
「どうしたレミリア嬢?顔が青いぞ」
相変わらず気持ちの悪い薄ら笑いを顔に貼り付けて、ブロードは言う。
「黙れ、私は至って健康だ」
どうしましょう!?
まさかの琥珀不在!?
あえぇ何で!?琥珀不在何で!?
外見は冷静でも、内心は驚く程焦っていた。
あの男、ブロードはお父様と並んで恐れられた吸血鬼。
その力は凄まじく、更に、今のブロードはその昔よりも遥かにパワーアップしている。
詰まる所、この幻想郷でブロードに勝てるのは少人数だろう。
今から助けを呼ぶ時間は無いし、私のプライドがそれを許さない。
でも、琥珀なら勝手に助けてくれるから私の中では困った時の信頼度が極めて高い。
でも、そんな琥珀も今はいない。
緊張と焦りからか、喉が渇き、手汗が
「大丈夫ですよ、お嬢様」
気付くと、咲夜が隣にいた。
いや、咲夜だけじゃ無くパチェも美鈴もフランも。
「皆……」
――そうだ。
私がこんな腑抜けじゃあ、皆に示しがつかない。
私はレミリア・スカーレット。
紅魔館の主なのだから。
「準備は良いか?諸君」
ブロードの言葉で、私達は一斉に構える。
あいつにスペルカードルールで闘う気は無い。
これは、本気の闘いだ。
「では始めるか?」
ブロードは腰に差してあったレイピアを抜く。
それに対抗するように、私はグングニルを具現化させる。
先程まで吹き付けていた風が、ピタリと止んだ。
風からの戦闘開始許可をもらい、私は全体を使ってグングニルを投げつける!
が、あっさり避けられる。
当たるとは思っていなかったが、こうも簡単に避けられるとやはり悔しい。
私が再びブロードを見た時には、奴は既にナイフに囲まれていた。
無数のナイフがブロード目掛けて降り注ぐ。
しかし、ブロードはレイピアを振るいナイフを全て弾き飛ばした。
息つく間も無く、続けて赤い球体がブロードに降り注ぐ。
が、やはり当たらない。
「ふむ。魔法使いを先に消すか」
ブロードが何か呟いたと思った次の瞬間、奴はパチュリーの目の前にいた。
私でも、奴の動きが見えなかった……。
「パチュリー!!」
私が叫んだ時にはもう遅く、パチュリーの体をレイピアが貫通した。
吐血し、額から汗をだらだらと流すパチュリーの姿が写る。
「まず、一人」
空から落ちてくるパチュリーを受け止める。
「パチュリー!しっかり……して……」
パチュリーの腹部周辺は既に赤く染まっていて、それが私を焦らした。
「――カハッ!……ゴホッ!」
とても苦しそうに咳き込むパチュリー。
私の手に、その生暖かい液体が触れる。
「……よくも……パチュリーを……!」
私の中で、大きな怒りが込み上げた。
「貴様あ”あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
頭が真っ白になり、気付いたらブロードに向かって飛んでいた。
「怒りに身を任せた攻撃か……。それは三下がやる事だ」
ブロードの蹴りが私の腹に叩き込まれた。
「――ッ!?」
腹部が熱い。
喉も。
血の味がする。
気持ち悪い。
直後、背中に衝撃。
私の意識は、その衝撃に一瞬で刈り取られた。
「お姉様!」
「戦闘中に余所見は駄目だろ」
何時の間にかフランの背後にはブロードがいた。
フランが声を上げる間も無く、その小さな体に先程レミリアが受けた蹴りが繰り出される。
「――お前は、体術が得意だったな」
今度は美鈴の後ろにブロードはいた。
「そうですね、得意です――よ!」
美鈴の回し蹴りはブロードに掴まれる。
そのまま投げ飛ばされる。
だが、受け身を取ってすぐに立ち上がる。
その頃には、ブロードは再び美鈴の背後にいた。
「随分と背後を取るのがお好きなようで」
「ああ、大好きさ」
軽口を叩きながらも、美鈴は裏拳を放つ。
だが、ブロードは掌で容易に受け止め、軽口を返す。
パシッと拳が掌に当たる音が聞こえるとほぼ同時に、美鈴の次の攻撃は始まっていた。
右上段の蹴り、左の正拳突き、右の突き、左の足払い。
流れるように繰り出される美鈴の攻撃は、全ていなされた。
そして今度は、ブロードの肘鉄が美鈴を捉える。
「カハッ……!」
「悪く無い動きだが、まだ甘い」
そのまま回し蹴りをくらい、美鈴は吹き飛ばされ、紅魔館の壁に受け止められた。
「おっと、館は傷つけ無いように注意しなければ……」
そう独り呟き、ブロードは
「残るは二人か」
ブロードはフランと咲夜に向かって歩き始めた。
「咲夜、援護は任せたよ!」
「了解です!妹様」
フランは、真紅に輝く剣を握り締めブロード目掛けて飛翔した!
続けて咲夜も、手にナイフを絡ませて走る!
間合いに入ると、フランはその真紅の剣を渾身の力で降り下ろした。
そしてブロードはその細いレイピアで、フランの一撃を受け止めた。
二人の間で火花が散る。
その隙に、ブロードの背後に現れた咲夜は手に持ったナイフを投げつける。
ナイフは一瞬でブロードのすぐ側に迫る。
だが、ナイフは当たらない。
ブロードはフランの剣を弾き、即座に宙に飛ぶ。
「ふむ。君は……時を止める事が出来るようだ」
着地したブロードが、咲夜を見据えて言った。
咲夜は答えずに、黙ってブロードを睨み付ける。
だが、ブロードは構わず言葉を紡ぐ。
「その能力、実に厄介だ。だから私も能力を使う事にする」
そう言って、ブロードはその場で、誰に向かってでも無く、レイピアを突き出す。
「――え?」
フランの声だった。
その素っ頓狂な声に、咲夜はフランに視線を向け、驚愕した。
フランの腹からは、鋭いレイピアが血を纏って突き出ていた。
勿論、フランの背後には誰もいない。
レイピアが引き抜かれると、フランは無気力に倒れた。
「妹様!!」
咲夜は慌ててフランに駆け寄る。
途中、ブロードは咲夜に攻撃しなかった。
「妹様!!」
「ゲホッ!……大丈夫……こ、ぐら……い」
「これが、私の能力だ」
ふと、ブロードが言った。
「私は「結合させる程度の能力」を使える。今のは私とフランドール嬢にある空間を結合、もとい繋げたまで」
気付けばブロードは咲夜のすぐ後ろまで来ていた。
「――!」
咲夜が立ち上がり振り向こうとした時、ブロードに両手首を掴まれ、咲夜は自由を奪われた。
目を覚ますと、紅い月が目に入った。
その月は、今まで見た月の中でも一位二位を争う美しさで、思わず見とれてしまった。
「離せ!!」
その叫びで、私は正気に戻る。
……今の声は咲夜!?
咲夜の危機を感じとった私は、急いで体を起こそうとする。
――っ痛!
でも、起こそうとすると激しい痛みに襲われ、思うように動けない。
それでも体を捻って咲夜のいる方を向く。
そこには、両手首を押さえられ、身動きが取れない咲夜の姿が写った。
「さ……や!!」
喋ろうとするだけでも痛みが走る。
苦しい。
咳き込み、血が出る。
折れた骨が肺に刺さっているのか……。
「さて、血を吸うのは今日は初めてだ。しかも咲夜嬢の血を吸えるとは……吸血鬼冥利に尽きる」
「っ!離せ!」
咲夜の抵抗虚しく、ブロードの拘束は解ける気配は無い。
人間と吸血鬼の力とでは差があり過ぎる。
私は、無力だ。
目の前で……家族が傷つけられて、守る事も出来ないっ!
何が……誇り高き吸血鬼だ!何が……紅魔館の主だっ!
悔しい涙が溢れた。
自分の無力さを痛感し、悔しくて、自分が憎くて、情けなくて!
咲夜の首筋に、ブロードの口が近付いていく。
そして、白く鋭い牙が、咲夜の首に突き刺さっ――――
「やめろ」
そんな声が聞こえたと思った途端、ブロードが消えた。
直後、私の後ろから聞こえる何かが壊れる音。
首だけ動かして見ると、紅魔館の玄関が壊れて破壊の跡は奥まで続いていた。
それを認識すると、体が軽くなるのを感じる。
どうやら、体の傷が全快したようだ。
私は立ち上がり、再び咲夜の方に目を向ける。
そして、思わず安堵と喜びが混じった笑みが浮かぶ。
「まったく……遅すぎよ、琥珀」
遅すぎとレミリアから言われたので、反射的に謝る。
「すみませんでした!!」
我ながら綺麗なお辞儀だ。
百点!
「六十点よ。咲夜のお辞儀を見習いなさい」
心を読まれたか、レミリアが言う。
マジか……自信あったのに。
「ゴホン。それより咲夜、大丈夫か?」
俺は咲夜に安否を問う。
ついさっき幻想郷に帰って来たばっかだが、神社に帰る途中、やけに騒がしいと思って紅魔館に来てみれば悪い意味での騒ぎの最中だった。
変態野郎が咲夜を押さえつけていたのだ!
俺は何とか危機一髪、咲夜の純潔を守る事に成功した。
が、どうやらこれは唯の痴漢騒ぎでは無さそうだ。
紅魔館メンバーは皆ボロボロで、命に関わる傷を負ってる奴もいた。
取り合えず皆の怪我を治して、状況を知ろう。
「咲夜、何があったんだ?」
咲夜に聞くと、簡潔に説明してくれた。
前に異変を起こした馬鹿吸血鬼がまたやって来たらしい。
困ったもんだ。
迷惑極まりない。
「お兄様~!!」
すると、フランが飛び付いて来た。
俺は優しく受け止める。
「よしよし、もう大丈夫だ。俺が来たからには皆には指一本触れさせ無い」
「これはこれは、正義のヒーロー気取りか?」
壊れた玄関から、……えっと……ブ、ブロード(?)が歩いて来る。
「別に?唯、仲間を守るだけだ。悪い?」
「私はこの日を楽しみにしていた」
……え?無視?
ブロードは話を続ける。
「私が貴様に受けた屈辱を、晴らす!」
奴はレイピアを突く構えを取る。
あいつの能力は……確か何でも繋げちゃうやつだったな。
奴がレイピアを宙に突き出す。
……が、何も起きない。
「っ!?……何故だ……?」
奴は自分の能力が発動しない事に驚いているようだ。
「……能力が発動しないのは、俺がお前の能力を
「――なっ!?」
目に見えて戸惑っているブロードに向かって、歩みを進める。
二回に渡る襲撃、皆を痛め付けた事。
ちょっとイラッと来た。
「……さて、覚悟は出来たか?俺は出来てる」
「ほざけ、人間の小僧!」
ブロードが俺に向かって来る。
そして俺の後ろに回り込むと、蹴りを出して来た。
俺は更にこいつの後ろに回り込み、
「まず、パッチェの分!」
蹴り上げる!
まだだ。
空に上がるブロードより高く飛び、ブロードが上がって来た所に、
「これはレミリアの分!」
肘鉄!
今度は猛スピードで落下していく。
俺は地上に先回りし、落ちてきたブロードに、
「美鈴の分!」
回し蹴り!
更に追撃!
吹っ飛んで行くブロードの足を掴み、
「フランの分!」
地面に叩き付ける!
「そして、」
俺はブロードを掴んだままハンマー投げのようにグルグル回って、
「咲夜の分だ!」
適当に投げる!
そしてお帰り頂こう。
【ブロードが幻想郷にいない嘘を本当に】
これであいつは里帰り出来た筈だ。
もう来ないで欲しいな……。
これだけやられてまた来たら
壊れた紅魔館も元に戻し、万事解決。
「ありがとう、琥珀」
珍しく、レミリアが素直に礼を言う。
明日は曇りのち雨かな?
「今失礼な事考えたでしょう?」
「いえ、滅相も御座いません」
「嘘だっ!!!!」
「う、嘘なんか吐いて無いぞ」
「嘘だよっ!!!!」
「え?ちょ、あの……!そうだこれ、外の世界のお土産です」
ビニール袋を取って渡す。
「皆でスウィーツタイムにしようぜ!」
「やった!スウィーツタイム!」
フランが喜んで目を輝かせている。
「し、仕方無いわね。別に外の世界のお菓子に興味があるとかじゃなくて小腹が空いたからよ」
勝った……計画通り。
このまま俺は、皆とお茶会をした。
神社に帰ったのは、結局次の日の朝だった。
はい、お疲れ様でした!
五千字初めて越えました(笑)
後、無駄にテンション高めでした。
それでは次回も、のんびりしていってね!