東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です!
書いてるとノッてきちゃって、前後編で終わらせるのは無理だと判断しました(笑)。
後何話続くか分かりませんが、頑張りますので!
今回は視点変更が多いかも知れません、ご了承下さい。

それでは今回も、のんびりしていってね!


雨宮琥珀の喪失②

 

 声が聞こえた。

 真っ暗な視界に光が射し込んだかの様に、僕は目覚めた。

 少しだけ頭が痛い。

 起き上がろうと手を付くと、石の手触り。何故と思うより先に、熱で反射的に手を引っ込める。この強い日射しに長時間晒されていたのだろう、熱いのも当然だ。でも、どうして僕は外に?

 顔を上げると、自分が今いる所が分かった。石段だ。何故だか僕は、石段の上で寝ていた? そこまで考えて、僕の思考は止まった。

 ……待て。もっと大事なものがあるだろう。何故僕がこんな所で寝ていたのかなんてこの際どうでも良い。

 僕は誰だ? どうしてだ、何で自分の名前も分からないんだ。自分がどんな人間なのか、全く思い出せない。僕は誰で、ここはどこで、僕は……。

 

「やっと満足した?」

 

 驚いて振り返る。

 そこには、紅白の巫女服と思われるものを身に着けた、一人の少女の姿があった。

 年は僕と同じくらいだろうか。脇とへそが丸見えな衣装はどうかと思うが、不覚にも見惚れそうになってしまう。こんな状況だと言うのに。

 気を取り直そう。

 彼女の口ぶりからして、初対面という感じではなかった。少なくとも、僕と彼女は知り合いと見て良い。しかし、僕は彼女と会った事がない。

 彼女の顔も名前も知らない……それどころか自分の名前も知らないのだけれど。

 そうだ、それならば彼女に聞くしかない。恐らく、彼女は僕を知っているのだ。なら、聞くしかない。

 

「全く、それじゃあ私は掃除に戻るから、あんたもさっさと――」

 

「あの、すみません」

 

 一拍置いて、質問をまとめる。

 

「あなたは僕の事をご存知なんですか? なら教えて下さい、僕は誰なんでしょうか? あなたと僕は、知り合いなんですか?」

 

 僕が聞くと、彼女は眉をひそめ、不満を隠しもせずにぶつけてきた。

 

「…………はぁ!? あんた何言ってんの、そうやっていつも変なイタズラして、流石に怒るわよ?」

 

 もう怒ってるじゃありませんか、とは今の彼女には言えなかった。今にも襲いかかりそうな睨み具合に、僕はたじろいでしまう。

 

「いえ、イタズラではありませんが……」

 

「その喋り方は何よ。どうせ敬語にすれば騙せるとかいう浅はかな考えでしょ」

 

 彼女が言う騙すとかイタズラとかは何なのだろうか。彼女は何か勘違いしてる気がする。それとも、僕は彼女を騙す様な行いをしてしまったのだろうか。とにかく弁解せねば。

 

「いえ、初対面の方に崩した喋り方は出来ません。あなたの方が年上かも知れませんし――」

 

 僕が言った途端、彼女の右ストレートが僕の頬を(かす)めた。

 

「次は当てるわよ」

 

「……すみませんでした」

 

 年の話がまずかったのだろうか。年上に見られて怒ったのだろうか。だとすれば悪い事をした。女の子はデリケートなのだ、気を付けよう。

 彼女の方はというと、顎に手を当て思案にふけっているようだった。

 すると、突然、想像だにしない事が起こった。

 何と、急に空中に裂け目が出来たかと思えば、そこから金髪でフリルのついたドレスの様な服を着た綺麗な女性が顔を覗かせたのだ。何を言っているのか分からないと思うが、僕も何が起きたのか分からなかった。

 そして、僕が茫然自失としている間に、彼女(巫女さん)と僕はその裂け目へと吸い込まれてしまったのだった……。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「これは頭部外傷による一時的な記憶障害、分かりやすく言うのなら記憶喪失ね」

 

 迷いの竹林の奥地、普通の人間ならばまず近寄ろうとしない……もとい近寄れない所にある屋敷。ある一件以来、永遠の術を解き、外部と関わり合う様になった永遠亭に、霊夢と琥珀は訪れていた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 一時間程前の博霊神社。

 突然起こった事故と、それによる琥珀の異変。

 

「僕は誰なんでしょうか?」

 

 私は困惑した。

 最初こそは冗談だと思っていた。突然、自分が誰か分からない、私の事も覚えてない、なんだなんて。イタズラ好きドッキリ好きの琥珀の事だから、どうせまたその(たぐい)だろうと。

 しかし、様子がおかしい。

 持ち前の鋭い勘が働く。

 今の琥珀は、私が知る琥珀ではなく、明らかに別人なのだと。

 ……仮に、だ。仮に、もしかしたら、万が一にも、琥珀が本当に何もかもを忘れてしまったとしたら。

 正直言って、かなり危機的な状況だ。何がマズイって、色々あってパッとは出てこないけれど、日常生活は当然として果ては幻想郷の危機と言っても過言ではない……かも知れないのだ!

 情報管理や治安維持をはじめ、琥珀は間違いなく重役。

 一刻も早く手を打たなければ……! でも、どうしたら? こういうのに詳しい人って誰かいたかしら……。そうだ、まずは紫に――!

 

「霊夢、状況は把握したわ! さぁ、早く行くわよ!」

 

 突如として空中に現れたスキマから、珍しく慌てた様子の紫が私の腕を掴んだ。

 

「わぁっ!? って紫! あんた、行くってどこに?」

 

 ドンピシャのタイミングで現れた紫に感謝しつつ聞く。

 

「この間行った屋敷に、医術の心得がある人がいるでしょ」

 

 問答してる合間に、私と目を点にして紫を見る琥珀はスキマへと吸い込まれ、紫の言う屋敷へと連れて行かれたのだった。

 

 

 

 そして現在、永遠亭のある一室にて、琥珀の現在の状況を説明した私は、永琳の返答に凍りついた。

 琥珀が、記憶喪失? ドッキリじゃなくて、本当に!?

 正直、心のどこかではまだ琥珀が演技をしているのではないかと思っていた。しかし、永琳の言葉を聞いて、私は認めざるを得なかった。琥珀の今の状態は演技でもなんでもなく、真実なのだと。

 

「まさか、琥珀がこんな事になるなんてね。想像だにしてなかったわ。世の中、なんでもあり得るものね」

 

 診断結果を下した永琳自身も、かなり驚いているのが分かった。

 まあ、驚くのも無理ないと言うか、琥珀を知る人なら当然と言うか。鬼の正拳突き喰らってもピンピンしてる様な奴が、階段を滑り落ちて記憶喪失って。笑い話にもならないわ。少なくとも今は。

 

「でも! どうせすぐ治るんでしょ?」

 

 その言葉には、治るに決まっていると言う根拠がない確信と、更に言えば治って欲しいと言う願望めいたものが含まれていた。

 

「それは分からないわ」

 

 しかし、永琳はキッパリと言い放つ。

 

「確かに、すぐに治る可能性もあるわ。でも逆に、いつまで経っても治らない可能性もある。不安定なのよ、記憶障害ってのは」

 

「それじゃあ、二度と治らないかも知れないって訳!?」

 

 つい動揺してしまうも、それを(なだ)めて永琳は説明を続けた。

 

「いいえ、記憶が戻る事に関しては私が保証するわ。最悪、記憶を元に戻す薬でも作れば良いもの」

 

「そんな薬あるの?」

 

「私を誰だと思っているのよ、無ければ作れば良い。それだけよ」

 

 何だか頼もしい永琳の言葉に胸を撫で下ろす。

 良かった、治るのね。

 

「ただ、今日から薬を作り始めても多く見積もって一月は掛かるわ」

 

「結構掛かるのね」

 

「えぇ。だから、それまではそっちで何とかして頂戴。記憶が戻るキッカケがあれば、琥珀も何か思い出すかも知れないわ。色々試してみたら? それで治れば万々歳。治らなければ、一月後にまた来なさい」

 

 そして、永琳にお礼を言うと、私と琥珀は部屋を後にした。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「なるほどね……おおよその事は分かったわ。けど、一月は少し長いわね」

 

 外で待っていた紫に事情を説明してる内に、霊夢達は再び博霊神社へと帰って来た。

 

「記憶が戻るキッカケがあれば、何か思い出すかもって。永琳が言ってたわ」

 

 薬が出来るまでの合間に、試せる事はやっておきたい。

 でも、一体何をすれば……。

 

「あ、あの……」

 

 その時、ずっと黙って話を聞いていた琥珀が口を開いた。

 

「霊夢さんに紫さん、僕の為に何だか色々考えて下さっている様で、本当にありがとうございます」

 

 そう言うと、琥珀はペコリと頭を下げた。

 そんな琥珀を見た霊夢と紫は、呆然と互いに顔を見合わせて、自分達が知っている琥珀と今の琥珀との違和感に戸惑う。

 

「別に、大した事してないわよ。そんなに(かしこ)まらなくても……」

 

「いえ! そんな事ありません! あなた方がいてくれてとても心強いです」

 

 自分が何者か、ここはどこか、何もかもが分からない事尽くしの琥珀にとって、霊夢と紫は自分が今頼る事の出来る唯一の人物なのだ。

 二人が自分の為に頑張ってくれているなのに、当の本人が任せっきりなのは羞恥の極み!

 

「すみません、良ければですが、僕に幻想郷を案内して頂けませんか? どこがどこやらさっぱりなんです。それに、どこかに記憶を呼び覚ますヒントがあるかも知れません」

 

 自分なりに現在の状況を踏まえて、今一番して欲しいと思った事を提案した。

 

「……じゃあ、霊夢。案内役はあなたに任せたわ。私は少し用があるから、ここら辺でお(いとま)するわね」

 

 紫はウィンクをしてスキマの中へと消えて行った。

 

「えっと、では霊夢さん。よろしくお願いします」

 

 霊夢に向き直り、琥珀が爽やかな笑顔でお辞儀をする。

 

「良いわよ別に。……よろしくね」

 

 霊夢は蒸気した顔を隠す様にそっぽを向いて、無愛想に呟くのだった。

 

 

 




はい、どうもお疲れ様でした!
記憶喪失物って結構鉄板ですよね。
どう書けば良いか、まだ纏まってないけど、ノリと勢いでやってきたのが私です! 私が信じる、私を信じろぉぉぉ!!

それでは次回も、のんびりしていってね!
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