東方転生録   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です!
今回で寺子屋編終わりです!
あと、いつも通り私の妄想が暴走してます。
それでは今回も、のんびりしていってね!


雨宮琥珀の喪失⑦

 

 僕(雨宮琥珀)が寺子屋に寄った際、授業終わりの休み時間はいつも生徒達と一緒に遊んでいたらしい。

 なので、今日も例によって生徒達から遊びに誘われてしまった。どうすれば良いのだろうか。

 

「さ、行きましょう琥珀」

 

 慧音さんと話し終えた霊夢さんがこちらにやって来た。

 すると、「霊夢も一緒に遊ぶのだー!」とルーミアが霊夢さんの腕にしがみつく。

 

「はぁ? 遊ぶって……」

 

 霊夢さんは僕に『どういう事?』と言う様な目を送り、僕はそれに対して引きつった笑みを返すしかなかった。

 

 

 

 

 

「設定はどーしようか?」とリグル。

 

「この間の続きにする?」とミスティア。

 

 僕達を除く全員が賛成した事により、どうやらこの前遊んだ時の続きをやる様だ。

 それで、一体何をするのだろうか。

 

「やだな琥珀、もー忘れちゃったの? おままごとだよ!」

 

 チルノがニカッと笑って僕の肩を叩く。なるほど、おままごとか。いかにも可愛らしい遊びだな、と僕がほっこりしていると。

 

「ねぇちょっと、遊んでて大丈夫な訳?」

 

 霊夢さんがこっそり耳打ちしてきた。

 僕は苦笑いを浮かべつつ、

 

「仕方ないですよ、ここまできて断るのも忍び無いですし。一回ぐらい付き合ってあげましょう」

 

 僕の言葉に霊夢さんは不承不承(ふしょうぶしょう)ながらも頷いてくれた。

 

「それじゃあねぇ、まず琥珀はお父さんね」

 

「お父さんだね、分かった」

 

 いやぁ、おままごと何ていつぶりだろうか。こういう遊びって大人になってからやると逆に面白い気がする。歳を重ねても童心を忘れない事って大切だよなぁ。

 そのまま僕が大人と子供の違いについて考え始めた時、寺子屋メンバーの間では熾烈(しれつ)な会議が開かれていた。

 

 

 

「お母さん誰やる?」

 

 リグルが尋ねると、

 

「今回は霊夢さんもいるし、じゃんけんで決めるのが一番手っ取り早いと思うけど」

 

「私も大妖精に賛成かな」

 

 大妖精が案を提出、ミスティアもそれに同意し、じゃんけんでお母さん役を決める運びとなった。

 

「霊夢もじゃんけんするのだー!」

 

「いや、私は別に残った役で良いわよ」

 

「駄目なのだー! 公平に行こうぜ、なのだー!」

 

 霊夢も(強制的に)参加し、じゃんけんが始まる。

 

「「最初はグー、じゃんけんポン!」」

 

 それぞれ手を見比べて、一喜一憂(いっきいちゆう)する。

 

「霊夢とミスチーと大ちゃんが勝ちだね」

 

 チルノとリグル、ルーミアが予選敗退し、残った三人で再び二回戦。

 

「「じゃんけんポン!」」

 

 結果は、パー二人のチョキ一人。よって、霊夢の役はお母さんに決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。あ、あなた」

 

「駄目駄目、そんな恥ずかしがってちゃいけません!」

 

「もう、何で私がこんな事を……」

 

「はい、もう一回!」

 

 

 

 

 

 

 それから何回リテイクしただろう。

 大妖精やミスティアから演技指導をされていた霊夢さんがようやく合格を貰い、満を持しておままごとが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 僕は玄関に寝転びたい衝動を我慢しつつ、(くつ)を並べてリビングに向かう。

 

「おかえりなさい、あなた」

 

 キッチンからは、妻の霊夢の声と共に、美味しそうなカレーの香りが(ただよ)ってきた。

 僕がリビングに行くと、

 

「パパ、おかえりなさいなのだー!」

 

 と、僕にしがみついて来る愛娘(まなむすめ)のルーミア。今日も元気いっぱいだ。

 

「ただいま。今日も良い子にしてたか?」

 

「うん! ママの買い物袋を持ってあげたのだ!」

 

「それは偉いね、ルーミアが良い子にしてくれてパパも嬉しいよ」

 

 頭を撫でると、ルーミアは「パパくすぐったいのだー」と言って目を細くする。そんなルーミアが可愛くて、我を忘れてナデナデしていると、

 

「あなたー、食器出してくれる?」

 

 キッチンからの妻の呼び掛けに自我を取り戻し、僕はナデナデを切り上げて食器を出すべくキッチンに向かった。

 

 

「いただきます」

 

「いただきますなのだー!」

 

「ふふ、召し上がれ」

 

 スプーンで白米とカレールーを(すく)って頬張る。野菜と肉の旨味が詰まったルーと、甘く優しい味わいの白米が口の中で絡み合い、スパイスが鼻を突き抜ける。

 

「やっぱり、ママが作るカレーは最高だよ」

 

「そーなのだー! 最高なのだー!」

 

 言いながら、ルーミアはもりもりとカレーを食べ進める。

 

「そんなに慌てなくてもカレーは逃げないから、ゆっくり食べなさい」

 

「はぁーい」

 

 和気あいあいとした食卓の中で、僕は「幸せだなぁ」としみじみ思うのだった。

 そしてまた、この幸せがいつまでも続いて欲しいと。

 

 

 

 しかし、永久(とわ)に続く幸せなどありはしないのだ。

 僕はその事を、身をもって思い知らされる事になる。

 

 

 

「ルーミアちゃん、あーそーぼ!」

 

 翌日の朝、娘と同じ学校に通うリグル君がやって来た。

 玄関のドアを開けて対応する。

 

「おはようリグル君。ルーミアならもう少しで来ると思うから、少し待ってあげてくれ」

 

「はい!」

 

「リビングで待つと良い、今ジュースを持ってくるね」

 

「ありがとうございます!」

 

 リビングのソファーにリグル君が座るのを見て、僕はキッチンの冷蔵庫からオレンジジュースをコップに注いだ。

 ついでに自分のカップにもコーヒーを入れて、リビングのテーブルの上に運ぶ。

 

「どうぞ」

 

「いただきます!」

 

 二人でコーヒーとオレンジジュースを飲んで、一息つく。

 娘の同級生とモーニングコーヒーか。こういう休日も悪くない。

 

「リグル君、いつも娘と仲良くしてくれてありがとう。これからもあの子をよろしく頼むよ」

 

「いえいえそんな、むしろこちらからお願いしたいですよ!」

 

「はは、本当かい? 君に何か迷惑とか掛けてないかな?」

 

「とんでもない! いつも助けられてばかりですよ」

 

「ふむ……、リグル君もそろそろ中学生だね。()()とかどうなのかな?」

 

 僕が小指を立てて聞くと、リグル君は頬を赤らめて、

 

「いやいや、いないですって! そもそも僕はル──いえ、なんでもないです……」

 

 リグル君はゴクゴクと勢い良くジュースを飲み干した。

 ふむふむ……これは、青春だね。

 僕が学生時代の懐かしさに浸っていると、二階からドタドタと足音が近づいて来て──

 

「ごめん、遅れたのだー!」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「じゃあ、行こっかリグル」

 

「そうだね」

 

 一応、玄関先まで二人を見送る。

 

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

 

「はい!」

 

「分かったのだー!」

 

 バタン、とドアが閉まる。

 ……さて、どうしようか。

 霊夢は友達と会う約束があるともう家にいないし、ルーミアもリグル君と遊びに行ったから夕方まで帰らないだろう。

 その間何をしようかとリビングに戻り時計を見ると、ちょうど十時になる所だった。

 ……本でも読もうか。

 僕はそのままリビングで、昼になるまで本を読んだ。

 

 

 十三時半、僕はお昼ご飯を食べに近所のファミレスまで来ていた。近所と言っても、車で十分程の所だが。

 

「ふぅ、何食べようかな」

 

 車を降りて店の入り口に向かっている時だった。

 

「琥珀……?」

 

 僕の名前を呼ぶ声に振り向く。

 

「ミスティア……」

 

 そこには、僕が霊夢と出会う前に交際していた、ミスティア・ローレライの姿があった。

 

 

 

「久しぶりだね」

 

「あぁ……。元気だった?」

 

「うん。琥珀は?」

 

「僕も、何とか元気にやってるよ」

 

 互いに向かい合わせに座り、会話する。

 ミスティアと別れてから、会う事はおろかメールでのやりとりもあまりしていなかった。その為か、実際よりも永く会っていない気がした。

 

「それで、結婚したんだ?」

 

「あぁ、子供もできたよ」

 

「そう……名前は?」

 

「ルーミアって言うんだ」

 

「……きっと、可愛らしい子なんでしょうね」

 

「あぁ、自慢の娘さ」

 

 しばしの沈黙。僕は気まずさを取り除く様に、なるべく明るく話し掛ける。

 

「ミスティアの方こそ、どうなんだ? 何か良い事とかなかったのか?」

 

「私の方は……特に無いかな。あなたと別れてから、誰とも付き合ってないし。仕事ぐらいしかやる事ないし」

 

「そ、そうか……」

 

 再びの沈黙。僕は耐えきれずに、何とか会話を(つな)ぐ。

 

「でもお前なら、きっとすぐに趣味だったり恋人だったり見つけられるさ」

 

「……無理よ」

 

「……え?」

 

 ミスティアはどこか遠くを見る様にして、僕に言った。

 

「あなたより好きになれる人なんて、いる訳無いわ」

 

「……ミスティア……」

 

「私、今でも好きなのよ。あなたの事」

 

「え──」

 

「もう別れて何年も会ってなかったけど、あなたへの愛を忘れた日何て、一日たりともなかった」

 

 ミスティアの目に涙が(にじ)む。

 

「ねぇ琥珀────」

 

「待たせたね! 当店自慢の料理だよー!」

 

 ミスティアが何かを言おうとした瞬間、『さるの』と胸に名札を付けた店員さんが注文していた料理を運んで来た。

 そこで会話は一旦打ち切りとなり、僕達は食事に専念するのだった。

 

 

 

「お会計は百万円だよ!」

 

 猿野さんがそんな冗句(じょうく)を言った。

 僕はお財布を出そうとするミスティアを制して、

 

「良いよミスティア、僕が払うよ」

 

「え、でも……」

 

 困惑する彼女を余所(よそ)に、僕はお会計を済ませる。

 

「ありがとう、また来てねー!」

 

 そして、僕達は店を後にした。

 

 

 

 駐車場に向かう時、僕は彼女との会話を思い出して尋ねた。

 

「ミスティア、駅から歩いてきたんだろ?」

 

「え、……うん」

 

「送ってくよ」

 

「良いの?」

 

「もちろん」

 

 ここまで来たら、やれる事はやってあげたい。ミスティアの秘めたる想いを聞いてしまったからだろうか。僕は強くそう思った。

 

 

 ミスティアを助手席に乗せて、僕は車を走らせる。

 ここから駅までなら、車で五分も掛からないだろう。

 移動中、僕とミスティアの間に会話はなかった。

「さっき店で何を言い掛けたの?」と、そう尋ねたい気持ちはあったが、それは僕の好奇心で軽々しく聞いてはいけない事だと思った。

 

 すると、あっという間に駅へと到着した。

 

「着いたよ、ミスティア」

 

「……うん」

 

 しかし、目的地に着いたというのに、ミスティアは車を降りようとしない。

 

「ミスティア?」

 

「ねぇ琥珀」

 

「ん? どうしたんだい?」

 

「私ね、頑張ったんだよ。あなたの事は忘れようって、いろいろしたの。でもね、駄目なの。あなた以外の男性(ひと)に魅力を感じないの」

 

 するとミスティアは、潤んだ瞳で僕を見据えて、上気した顔を僕に近づけてきた。

 

「ねぇ、琥珀……私……」

 

 端麗(たんれい)な顔はどんどん近づき、彼女の(くちびる)が僕の唇と重なろうとした時──

 

 

 

「ちょっと待ちなさい!! タンマ! ストップ! 止まれい時よぉ!!」

 

 ──霊夢さんが顔を赤くして怒声を上げた。

 

 

 

「流石にこれはやり過ぎじゃないの!?」

 

 突如、僕達を包んでいた空間が寺子屋の教室へと回帰した。

 霊夢さんの声に、「えー、これからが面白いのにー」と待機組が愚痴(ぐち)(こぼ)す。

 

「あんたもあんたよ! 何ちょっと期待してんのよ!」

 

 霊夢さんの怒りの矛先(ほこさき)が僕に向けられた。

 

「すみません、かなり役に成り切っていたみたいで……」

 

 僕がそう言っても、霊夢さんは聞く耳を持たずに説教を開始する。

 

「私、出番これからだったのに……」

 

「ドンマイだよ大ちゃん! また今度やろ!」

 

「にしても、ミスティアってば大胆だよねぇ。いくら憧れの人だからってあれは流石に──」

 

「わぁーわぁー!! な、何言ってんのリグル!?」

 

「うー、もっとナデナデして欲しいのだー」

 

 僕が霊夢さんに絞られてる間に、横では生徒達が好き勝手に盛り上がっていた。

 まぁ、皆が楽しんでくれてのなら良かった。……のかな? 

 

「ていうか、あんたらいつもこんな遊びしてる訳?」

 

「いつもではないですけど」と大妖精。

 

「他にもねー、外で遊んだり、カードゲームとかもやるよ!」とチルノが胸を張る。

 

「琥珀はここに来る度に、いろんな遊びを教えてくれるのだー」

 

「さっきのおままごとは、リアルおままごとと言うらしいですよ。外の世界の"昼ドラ"というのを参考にした……と言っていました」

 

 ミスティアが微笑む。

 

「ふーん。結局、諸悪の根源はコイツなのね?」

 

 霊夢さんの鋭い眼光が僕を射抜く。

 ……もう勘弁して下さい。

 

「琥珀、霊夢」

 

 霊夢さんが再び僕に文句を言おうとした所で、慧音さんがやって来た。

 

「今日はありがとう。これから用事があるのだろう? 門まで送ろう」

 

 慧音さんは僕と目が合うと、小さく頷いた。

 ありがとうございます、慧音さん。いろいろと救われました。

 

「琥珀ー、また遊んでねー!」

 

 生徒達に手を振って、僕達は教室を後にした。

 

 

 

「本当にありがとうございました、助かりました」

 

 寺子屋の門を出た所で、僕は慧音さんにお礼を伝えた。

 僕の言葉に慧音さんは「なに、大した事はしていないさ」と微笑を湛える。

 

「また困った事があればいつでも頼ってくれ。私で良ければ力になろう」

 

「えぇ、そうさせて貰うわ」

 

 そうして、僕達は慧音さんにもう一度お礼を言って、寺子屋を去る。

 本当に良い人だったなぁ、慧音さん。

 僕は寺子屋を出てしばらく、慌ただしくも楽しかった寺子屋の思い出に浸るのだった。

 




はい、お疲れ様でした!
おままごと、本当はもっと考えてあったのですが、あれ以上やると引き際が無くなるので割愛しました笑
大妖精の役も考えててたけど、まあ仕方ないですね(◔‿◔)
次回からはまた幻想郷案内状に戻ります。
それでは次回も、のんびりしていってね!
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