摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
それから3日後、ジャスミンはレーダーで感知できた2つのドラゴンボールを集めることに成功した。
予想通り、その2つのドラゴンボールは海底に沈んでおり、ジャスミンはブルマにモニターを頼まれていた潜水飛行艇でそれを回収した。海獣に襲われたり海王類に食べられかけたり碌な目に遭わなかったのだが……。
「まさかレーザー砲を活用する機会がくるとは思わなかったな~…。」
5つ目のドラゴンボールを回収した
「人生って何が必要になるかわかんないな…。」
しかし、無事に5つのドラゴンボールを回収できたものの、残り2つの
恐らく海王類か何かが呑み込んでしまったのだろう。いくら巨大な海王類と言えども、しばらく待てば消化されることの無いドラゴンボールは自然に体外に排出される筈である。
それまで何をして過ごせば良いのやら……。
3日間のドラゴンボール探しの間、成り行きで海賊を海軍に突き出したこともあった為、既に2,800万ベリーだった所持金は7,000万ベリーまで増えていた。
旅費としては十分過ぎるくらいであり、これ以上積極的に賞金稼ぎとして動くと変に目立つ危険も増える為、ジャスミンとしては自衛手段以外で海賊に関わるつもりは無かった。
そうなると、本格的にやることが無くなってくるのだ。この世界を見て回りたい気持ちはあるが、下手に動き回ると海軍及び世界政府にも目を付けられる可能性がある。一般的に正義の象徴とされている海軍だが、ここ3日の間に実際に世界を見て回り自身の目や他の人間からの印象を聞くと、海軍も決して完全な善とは言えない。
もちろん、組織として多くの人間を抱えている以上、様々な思想が交錯するのは至極当然のことであるが、それだけでなく組織全体としてグレーな部分も多いのだ。
天竜人の横暴なふるまいを全て許容し、人身売買を黙認するなど倫理的に信用できない部分が多過ぎる。
その為、できる限り目を付けられるような事態は避けたかった。
ドラゴンボールが再び感知できるようになるまで、どれくらいかかるかは想像が付かないが、自然排出されるまではどんなに長くとも半年以上かかることは無いと考えられる。
幸い、資金なら十分蓄えることができた。この無人島でこのまま隠れ住み、日用品は近くの島に夜になってから舞空術で飛んで買いに行けば良い。
そうなると日中は暇になるが、この際仕方が無い。1度己を鍛え直すのにも良い機会だと考えた。
(試したい技もあるし……。)
~それから半年後~
ジャスミンは舞空術で宙に浮きながら座禅を組み、既に日課となっている瞑想を行っていた。心を静め無にし、己の精神を研ぎ澄ませているのである。この半年間、定期的にドラゴンレーダーを確認していたが、残り2つのドラゴンボールの
別に地球に帰ることを諦めた訳ではない。むしろその逆である。日が経つにつれ、ジャスミンの
だからこそ、レーダーを見る頻度を自ら下げたのである。1度気にしてしまえばそれ以外のことを考えられなくなってしまうことを恐れたのだ。ジャスミンは自分の精神的な未熟さを良く理解している。
ドラゴンレーダーを確認する度に期待し、そして裏切られる。その行為はジャスミンの心にその都度傷を残した。
だからこそ意図的にレーダーに触れる時間を減らし、その分の時間を瞑想に当てていたのだ。
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!
突然響き渡ったアラームにジャスミンは目を開け、座禅を崩してゆっくり着地する。
ピピピッ!ピピピッ!ピピッ………!
ポケットからスマホを取り出してアラームを止める。瞑想開始から3時間が経過し、設定した時間を知らせた為である。
「ふう…。」
休憩がてらカプセルハウスに戻り、寝室のベッドボードに置いてあったドラゴンレーダーを確認する。今日は1週間に1度の確認の日であったのだ。
カチッ!
ピッピッピッ!
スイッチを入れ、画面が明るくなると同時に電子音が響き、ゆっくりと移動しているドラゴンボールが表示された。
「ウソ…!やっと見付けた……。6つ目だ!」
距離はここからおよそ数1000km。この方角は
おまけに、移動しているということは誰か人間が見付けて運んでいる可能性が高い。いきなり船の上でエンカウントするより、まずは距離を取ってどんな人間が所有しているのか確認した後、どこかの島に上陸したのを見計らって接触した方が無難だった。
もちろん、鳥か何かが運んでいるならその場で手に入れられるし、仮に悪名高い海賊だった場合は遠慮無く奪うが、客船か何かの一般人が手に入れた可能性も否定できない為である。
取りあえず、夜になったらレーダーを頼りに近付き、その後どうやって手に入れるか方向性を決める必要があった。
「よしっ!準備しよっと。」
必ずドラゴンボールを揃えて地球に帰る、決意も新たにジャスミンも準備を始めた。
~その少し前、空島はスカイピア・
「見ろ!!!こんなに!!!」
海賊王を目指す少年、モンキー・D・ルフィとその仲間たちは
「すごーい!!」
航海士・ナミは拾い上げた王冠に頬ずりし、
「キレーだな!!サルの家で見たヤツと同じだ~!!」
船医のトナカイ、トニー・トニー・チョッパーは鐘形の黄金のインゴットを見付けて歓声を上げた。
「コリャ本物だぜ!!このヘビなに食ってんだ…。」
コックのサンジは黄金の十字架を担ぎ、周囲の宝を見回してノラが体内に宝をため込んでいたことに呆れている。
彼らは手分けして宝をノラの胃の中から運び出し、その後ちょっとした行き違いと勘違いによりスカイピアの者たちが差し出した黄金の柱を受け取ること無く自分たちの船・ゴーイングメリー号へと引き上げた。
そして実に高度7000mの高さから船ごと落下し、空島名物のタコバルーンの力を借りて
ただ、彼らは知らなかった。ノラの胃袋から運び出し、持ち帰った宝の中に赤い星を秘めた澄んだオレンジ色の玉があったことを。
そして彼らはまだ知る由も無かった。その玉を持ち帰ったことで、これから出逢うことになる1人の少女の存在を。
これはこれから紡がれる、1人の少女と
これからどのような物語が紡がれていくのか、それはまだ誰も知らない。
ただ1つ言えること。今この時、確かに世界の運命の輪は大きく動き始めた。
それは当初この世界が辿る筈だった道をなぞりつつ、しかし違った軌跡を残して進んでいく。
今回書きたかったこと。主人公の精神面の弱さ。ノラの胃袋家探しするルフィたち。ノラの胃袋にドラゴンボールを隠すのは連載当初から決めてました。書きたかったシーンが書けて満足です。
そして、終盤作者の厨二っぷりが明らかになってますが生温かく見守ってやってください。不治の病なんです……。