摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
因みに月曜からしばらく忙しくなりそうなので、更新は早くて来週になるかもしれません。
わあああああああああ!
「捕まえろォ!!!」
「暗殺者どもを逃がすなァ~~~~!!!」
ガッ!
ドカッ!
ドスッ!
ドサッ!
「ケガはさせたくないんです。この場は引いてもらえませんか?」
さすがに転ばせるだけでは凌ぎきれず、ナミを後ろに庇いながら出来るだけケガをさせないように襲ってくる住人たちを当て身と手刀で次々に気絶させていく。
「クソッ!この女強ェ…!」
「さすが1億の賞金首のクルー…!」
「いや、私はクルーじゃないんですが…。」
完全にジャスミンを麦わらの一味と勘違いしているらしい。最も、船長であるルフィの他には
「あたしたちが一体何したっていうのよ!!」
「とぼけるな暗殺者の一味め!!!よくもアイスバーグさんを撃ちやがったな!!!逃がさんぞ!!!」
「くそォ!!おい!!やめろお前らァ!!!おれたちはなんもしてねェ!!!」
「そうよ!!だいたいロビンにだってアイスバーグさんを狙う理由が無いもの!!!」
ルフィやナミが弁解するが、既に暗殺者は麦わらの一味、と思い込んでいる島の人間には通じなかった。
「いつまでも言い張ってるが良い。とにかく、お前ら
「このォ!!!何でそんなありもしねェこと……!!アイスのおっさんと話をさせろォ!!!」
「観念しろ。海賊。」
最早、誰が何を言っても聞き入れる気は無いらしい。
「ぶっ潰せ!!ガレーラカンパニー!!!」
その叫びが契機となった。
「どうした。受けるばっかりで良いのか?」
「だからおれは!!お前らと戦う理由がねェんだって!!!」
ガチャガチャン!!!
「
銃を放り投げ、残りの3人もそれぞれバズーカや大型ののこぎりを武器に構えている。
「くっそォ、やる気満々かあいつら!!」
ズム!!!
ボッカァン!!!
「うわあ!!!」
5人の中で最も巨漢‐タイルストンがバズーカをルフィ目がけてぶっ放す。
「うおおっ!!!」
「直撃だァ!!!」
住民から歓声が上がるが、ジャスミンの目はルフィが寸前でロープを引き千切ってクレーンで釣り上げられた木材の上に逃げるのを捉えていた。
「……いや、逃げた。」
「危ねェ」
ヒュッ!!
ズバン!!
「わっ。」
ガラガラガシャア…ン!!
「うお!!!」
落下する木材に巻き込まれることなく着地したルフィだったが、間髪入れずに
「ハア!ハー!」
ガカカッ!!!
壁際に追い詰められたと同時に、投擲されたのこぎりで服を縫い止められてしまう。
ドウン!!
「!!?う…、あ!しまった、動けねェ!」
その隙を逃すこと無く放たれたバズーカに、ルフィも焦りを見せた。
ドッゴオオ…ン!!
「ルフィ!!」
「よっしゃ、仕留めたぞォ!!」
ルフィがいた辺りに爆炎が立ち上り、
「いえ――――――い!!アッハッハッハッハッハ!!」
「気分爽快だわいな!」
「そうそうあんな奴ァ吹き飛ばしちまえば良いんだ!!」
いつの間にかちゃぶ台と湯呑を持ち出し、一服しているフランキーと部下?の四角い髪型の女性たちがガレーラカンパニー側についたような会話をしている。
(どっから持ってきたんだろ……。)
「さすがはおれたちの誇り!!!“ガレーラカンパニー”!!!いやいやいやしかし、お前。その麦わらのチビは
ご丁寧に「おんどりゃああ!!!」と気合を入れながらガシャァーン!!と盛大な音を立ててちゃぶ台をひっくり返す。
(それがやりたかったのか…。)
相変わらず襲い掛かってくる住人たちを捌きながら、軽く感心しながら横目で様子を伺う。
「ガレーラァ~~~~~!!!!」
「少し待っていろ。お前の相手はあいつを完全に捕えてからじゃ。」
「だから…!!何でおれの獲物をお前らが捕えるんだ……!!!いや、もういい。口で言ってもわからねェ様だ……。」
ウガァア、と吠えるフランキーを全く相手にせず、
「パウリー危ない!!!」
「ガレーラ逃げろー!!!」
「フランキーが!!ヤベェ攻撃に出るぞー!!!」
「コネクターセット……。」
ガチッ、ガチッ
腕と腕をT字型のパイプのような器具で繋いでいる。
「
「クレーンを…?」
「逃げろガレーラァ~~~~!!」
「大砲か?」
「……あのクレーン、いつの間に倒れたんだろうと思ったら…。」
「あんた、見て無かったの?!」
「つい考えごとしてて…。」
という会話をしている間に、フランキーの準備が完了したらしい。さっき装着したパイプを両手で包み込むように構えている。
「砲弾なんざ飛ばさねェよ。飛んでくのは…“空気の弾”。ただし…、速度は風の領域を超える。」
「空気?」
「危険だ、逃げろ~~~!!!」
「アァア~~~~~~~~~っ!!!」
気合と共にフランキーの両腕が大きく膨らんでいく。
「“
ベコォン!!!
ドカン!!!
「うああァ~っ!!!」
標的になった5人の船大工たちだけでなく、その後ろのドックにまで被害が及ぶ。
「
「うわァ!!!またクレーンが倒れるぞ――――――!!!」
「逃げろー、こっちまで届いちまう!!!」
「アッハッハッハ!オウ、潰れちまえ!!こんな造船ドックなんざ、潰れちまえ~っ!!!」
ズズズゥン…!!!
クレーンが倒壊し、辺り一帯に土埃が舞う。
「造りかけのガレオンごと……!!]
「1番ドックが崩壊したァ~~~~っ!!!」
フランキーの攻撃によって1番ドックは半壊し、見る影も無い。
辺りは巻き込まれないように逃げ出す者、その様子に視線が釘付けになる者と様々だったが、幸いそのおかげでジャスミンたちに襲い掛かってきていた住人たちも、おおよそそちらに意識が向いていた。
「ナミちゃん、ケガは?」
「大丈夫。それにしても、“
「ナミ!!!ジャスミン!!走れ!!」
言葉と同時にルフィが走り寄ってくる。やはり、直撃は上手く避けたらしい。
「ルフィ!!あんた大丈夫!?」
「ルフィくん、ケガは?」
「おれがあれくらいでやられるか!!とにかく意味がわからねェ、何とかしてアイスのおっさんとこ行こう!!!」
荒く息をつきながらも、この場を逃げ出す算段を付ける。
「賛成。このままここに居ても、リンチ以外の未来が見えないし。」
「えェ!?行くの!?無理よ、この騒ぎの中っ!!」
「おい見ろ!!“麦わら”が逃げるぞ!!!」
「やべェ。」
「しっかり捕まってろ!!」
がし!!
ナミと纏めて右腕で抱えられる。
「わ!!待って!」
「ルフィくん、私自分で飛べ……!」
びゅ!!ぴょーん!
最後まで喋ることが出来ないまま、勢い良く上に引き上げられた。
~ガレーラカンパニー本社向かいの屋根の上~
「うぇ、ちょっと酔った・・・・。」
ジャスミンが屋根の上に片膝を立てて座り込み、自身の膝に
自分で飛んでいる時はスピードをいくら出しても平気なのだが。
引き上げられる時の浮き上がるような感じが苦手らしい。エレベーターに乗った時の数10倍内臓が浮き上がるような感覚がした。
「ちょっと大丈夫?」
「何とか…。」
ナミに背中を擦ってもらいながら、返事を返す。
「なっさけねェな~、お前。」
ルフィが小指で鼻をほじりながら呆れたような声を出す。
「内臓がヒュンッてなったよ…。私、飛べるから自分で移動出来るのに…。」
「そういや、そうだったな!」
あっけらかんと笑われ、ジャスミンは気が抜けるのを感じた。
「…もう、良いよ……。」
「それどころじゃないわよ!ロビンのことだけじゃなく、色々とやばい状況なんだから!!」
「やばい?…何がやばいんだ。」
「この島の“地形”と“気候”よ。これだけ風が吹いて気圧が落ちてくれば、今夜島を台風が通るかもしれない。“水の都”と
「それがどうした。」
「んー。まあ、気になるから後で調べてみる。―――――――――それより
「ルフィくん、どうやってアイスバーグさんに会う気?」
「そうよ!問題はそれ!だいたい、本気で行くの!?」
「当たり前だ。アイスのおっさんが何でロビンを犯人だと言ったのか、直接聞いてくる。」
「言っとくけど、私たちも島中から追われてる身だってこと、忘れないでね。ちゃんとどこがアイスバーグさんの部屋か見当つけて上手く隙をついて慎重に……。」
「ルフィくん、話聞いてる?」
「?」
「じゃ、行って来る。」
「え…。」
ぐいー…ん
いつの間にか、ガレーラカンパニー本社目がけてルフィが腕を伸ばしていた。
「ちょっ………!!!」
ナミが止めようとするが既に遅かった。
バリィン!!!
次の瞬間には、ゴムの反発力を利用したルフィが本社に飛び込んでいたからである。
「“麦わらのルフィ”が本社に侵入したぞ――――――――っ!!!」
「赤いベストに麦わら帽子だ!!!」
「アイスバーグさんを守れー!!」
当然だが、途端に本社が騒がしくなった。
「あーあ、行っちゃった…。」
「………。」
ナミは最早声も出せないでいる。
「いっつもあんな感じ?」
「あんな感じ…。」
ズー……ン、とした効果音が聞こえそうな程がっくりしているナミに、少し迷ったが言葉を続ける。
「ナミちゃん、さっきの気圧の話だけど、もしかして警報聞いて無いの?」
「警報?」
「アクア・ラグナの警報。」
「……ねぇ、ジャスミン。すっごく嫌な予感がするのよ。質問しても良い?」
「たぶん間違って無いと思うけど、どうぞ。」
「“気圧”と“警報”って聞いただけで良い予感はしないけど……。“アクア・ラグナ”って名称が不安を掻き立てるわ。はっきり聞くけど、アクア・ラグナってもしかして水害か何か?」
「ピンポーン。……さっきの騒動の前に地元の人に聞いたら、場合によっては町1つ沈めちゃう程の高潮だって。予報では夜半過ぎに襲来するらしいよ。」
「町1つ沈める程の高潮ォ!?」
「……やっぱりそういうリアクションになるよね・・・。」
ガーンッ!!
と背後に文字を背負っていそうな表情をしている。「絶望」というタイトルを付けたらピッタリかもしれない。
「地元の人たちはみんな避難するって。裏町の辺りは完全に沈んじゃうくらいだって話だし、私たちも避難しないとマズイと思うんだけど…。」
「問題は、島中の人間が敵になったこの状況でどうするかってことね…。」
「そ。それに、もしかしてナミちゃんたちみたいに、他の“麦わらの一味”の人たちも警報聞いて無い人がいるかもしれないし。最初に他の仲間と合流して、これからどうするか決めた方が良いんじゃないかな?」
「そうね。それにしてもあいつら一体どこにいるんだか……!」
「そういえば…。アイスバーグさんの件だけど……。」
「?何か思いついたの?」
「アイスバーグさんの所に、世界政府の人間が定期的に訪ねてるらしいんだよね。」
「そういえば……!昨日、あたしたちが造船所を訪ねた時に見たわ!」
「そうなんだ?じゃあ、世界政府の人間はアイスバーグさんの持っている“何か”を譲ってもらおうとして来てるって噂を知ってる?さっき、1番ドックの前で地元の人が話してたんだよ。もしかして、“
「“
「本来存在しない筈の政府の暗躍機関らしいけど、あくまでも噂だしね。でも、本来は
それは本当である。1番ドックでルフィやナミに会う前に、確かにそんな噂を話す男たちがいた。人目を気にしてか、すぐに話題は変わってしまったが…。
その話を聞いて、うろ覚えだった原作知識に引っかかるものがあったのだ。
「アイスバーグさんを襲ったのは世界政府かもしれないってこと?じゃあ、ロビンを見たっていう話は?」
「そこはまだ何とも…。でも、さっき私が話した仮説を覚えてる?」
「え~と…。アイスバーグさんを襲ったのは、殺すことが目的じゃなかったって話?」
「そう。仮に、そのアイスバーグさんが持っている“何か”が欲しかったんだとしたら?私だったら、何度来られても譲りたく無いものだったらどこかに隠してる。その隠し場所を知る為にアイスバーグさんを殺せなかったのだとしたらどう?」
「……話の
「でしょ?ニコ・ロビンさんがそれにどう関係してくるのかはわからないけど…。捜査を
「そう…。そうね。可能性はあるわ!」
ドォン…!!!
「銃声?!」
「ルフィ!?」
ダンッ!
ガレーラカンパニー本社から銃声が聞こえてきたのとほぼ同時に、ルフィが屋根に飛び移ってくる。
しかし、その表情は硬い。
「………もしかして、話せたの?アイスバーグさんと?」
「本当にロビンを見たって……。」
ストン、と屋根に座りながら硬い声でルフィが告げる。
「――――――そんな。……どうしてロビンがそんなこと…。」
「おれは信じねェ!!!!」
「そうね。私も信じないわ!」
「ナミ。」
力強いナミの声にルフィがナミを見詰める。
「さっきちょうどジャスミンとそんな話をしてたの。それはロビン本人じゃなくて、ロビンの偽物かもしれない。仮にロビン本人だったとしても、何か理由があるに決まってるわ!!」
「にししっ!そうだな!!」
「じゃ、これからどうする?」
話がまとまったところで、ジャスミンが今後の予定を尋ねる。
「取りあえず、他のみんなを探しましょ。出来れば宿に戻って荷物を取りに行きたいところだけど…。」
「それは難しいかもね。島中が敵の状態だし…。宿はもう抑えられてると思う。」
「そういや、ジャスミンお前も一緒に来るのか?」
「ここに連れて来たのルフィくんだと思うんだけど……。まぁ、さっきの騒動で私も麦わらの一味だと思われてるみたいだし、しばらく一緒に行動させて。」
「おう!良いぞ。」
「あんたのせいでしょうが!!」
ガンッ!
シュウウゥ…!
ナミの拳骨でルフィの頭にぷっくりとタンコブが出来る。
(凄い…。怒りのあまり一瞬だけど“気”を拳に纏わせてる……。)
「ゴメンねジャスミン、巻き込んで・・・・。あたしもうっかりしてたわ。」
「気にしないで。友達の為に何かするのは特別なことじゃないでしょ?」
こうなれば、毒を食わらば皿まで、の心境である。
笑って言ったジャスミンに、ナミもほっとしたような笑顔を見せた。
ナミがルフィに拳骨を落とす時に気を無意識に使っている、というのは作者の都合の良い解釈によるものです。