摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
何はともあれ、お付き合いください!
「あ!怪獣のばーさん!!この島にいたのか!」
「当たり前ら!あんな海の真ん中にいたら溺れて死んじまうわね。んががががが!!」
「あの人たち知り合い?」
ルフィと老婆のやり取りを見つつ、何で怪獣?と思いながらナミに尋ねる。
「ああ、海列車のシフト
「へぇ~。」
「煙突に刺さってたってお前っ!!!あっはっはっはっはっ!ゾロはマヌケだな~。どうやったらそんなことに!」
「人を笑える立場か、あんたが!!!どっちも大マヌケよ!!!」
ジャスミンとナミが話している間に、ゾロが煙突に刺さっていたことを知ったルフィが大うけしており、ナミに叱責され、顔が変形する程思いっ切り
まぁ、ルフィも家の間に挟まっていたのだから、確かに人のことは言えない。
「あ……、じゃあサンジとウ………、サンジは!?」
(ウソップくんのことを口に出さないのは、ルフィくんなりのケジメなんだろうな……。)
1度口にしかけたが、言い直したルフィを見て思う。
(それはそれとして…、何であんなに思いっ切り顔引っ張られたまま正確な発音が出来るんだろう……?)
割と衝撃的な光景に思わず思考が
「そうね。話すことは色々あるわ。2人共聞いて。」
ナミが、先程のロビンの一件を知らないルフィとゾロに真相を説明する。
さらに、海列車は既に発射してしまい、ロビンだけでなくウソップとフランキー、さらにそれを追って一味のコック・サンジまでもエニエス・ロビーに向かったことが告げられた。
「考えることは何もねェじゃねェか。すぐ船出して追いかけよう!!!」
「―――――それ以外ねェな。」
真相を聞いたことでルフィとゾロからも迷いは消えたらしい。
(良い目だ。)
目は口程に物を言う、とは良く言ったものだ。ルフィもそうだが、ゾロも一船の船長を担えるだけの器の持ち主なのだろう。
「おい!ロープのヤツ、船貸してくれよ!!いや、船より“海列車”はもう出ねェのか!?」
ルフィがパウリーに問う。
「………“海列車”ってのはこの世にパッフィング・トム1台きりだ。かつていた伝説の船大工のチームが力を合わせてこそ、完成したあれは奇跡の船なんだ。」
「じゃ、船貸してくれ。この町で1番強くて速ェ船!!」
「良い加減にしろ、てめェら!!!たった今海で何を見た!!?例年来るアクア・ラグナでさえ、それを越えた船はいねェんだ。さっきの大波を見ただろう。そこのポニーテールがいなきゃ、間違い無く裏町は崩壊していた。お前らもお陀仏だったろうよ。今、船を出せば最大のガレオンで挑んでも1発で粉々にされるだろうな。死ぬと分かって船を出させる訳にはいかねェ!!!」
パウリーの言葉には、長年アクア・ラグナを見続け、尚且つ船大工として培ってきた重みがあった。
「朝まで待て。嵐が過ぎたら船くらい貸してやる。―――――おい、お前らも避難所にでも行ってろ。もう人探しは終わったんだ。」
船大工たちを促し、話を切り上げようとしたパウリーを引き戻したのは、ナミだった。
「――もし、朝まで待ったとして、あたしたちの目的は果たされるの!?エニエス・ロビーってあたし…、知ってるわ。政府の島だと聞いて思い出したの。そこは“正義の門”がある場所じゃないの!?」
「?」
「何だそりゃァ。」
ルフィとゾロは全くピンと来ていないようだが、ナミが続ける。
「政府所有の“司法の島”エニエス・ロビー。そこにあるのは名ばかりの裁判所…!!!エニエス・ロビーへ連行されることそのものが罪人の証とされ、罪人はただその誰もいない裁判所を素通りして、やがて冷たく巨大な鋼鉄の扉に辿り着く。それは“正義の門”と呼ばれ、罪ある者がくぐればもう2度と日の光を見ることは出来ない絶望の扉。何故なら、その先にある港から海へ出て到達出来る場所は2つしかないから。1つは世界中の“正義の戦力”の最高峰“海軍本部”。もう1つは、拷問室と死刑台が立ち並び、世界中で暴れ回っていた凶悪な囚人たちが幽閉される、深海の大監獄“インペルダウン”。エニエス・ロビーは罪人に何の慈悲も与えず、ただそこへ送り込むだけの形だけの裁判機関!!そうでしょう!?賞金首のロビンにとってはどこへ運ばれようとその先は地獄よ!!!こうしている間もロビンは刻々と“正義の門”へ近付いて行ってるのに!!!朝までなんて待てる訳ないじゃないっ!!!」
ナミの叫びが周囲に
「―――――行く方法なら、無いことも無いよ。」
「えっ…!?」
「ホントか!?ジャスミン!!!」
途端にルフィの目が輝く。
「私の持ってる船なら海中を進める。海の中なら、アクア・ラグナは凌げるし、流れもそこまでじゃない筈だよ。」
「潜水艦ってこと?」
「うん。ただ……。」
「ただ?」
「4人乗りなんだ。だから、操縦する私を除いて後3人が限界かな…。」
「3人か……。」
「あたしたちの中から、2人ロビンの救出には行けないってことね?」
「うん。だけど、行く前に…。――――――ルフィくん、失礼を承知で聞くよ。エニエス・ロビーに乗り込むって意味を本当に分かってる?」
「そのポニーテールの言う通りだ。例え行く手段があろうが、そこへ行くべきじゃねぇ。お前ら自身海賊だってことを忘れるな。」
ジャスミンの言葉にパウリーが続ける。
「エニエス・ロビーは“世界政府”の中枢に繋がる玄関だ。当然、それに相当する戦線が敷いてある。――――――どんな海賊も、あの島へ連行された仲間を取り返そうなんて考えねェ…。どうなるか分かるからだ……。お前ら“世界政府”の中枢にケンカでも売る気か!!!」
「そうだぞお前ら!!もう止めとけ!!」
「追いかけても殺されちまう!!」
「お前らこそ助かる可能性0だぞ!!!」
パウリーの言葉に、周囲の船大工たちが同意する。
「そんなの関係ねェ!!!」
ドパァァン!!!
ルフィの叫びに呼応するかのように、裏町に打ち付けた巨大な波が
「な……!」
「波まで怒った…。」
「仲間が待ってんだ!!!!邪魔すんなァ!!!!」
「良いぜ。相手になってやる。」
シュルル!!
パウリーがルフィの叫びに、自身の
それに応えて、麦わらの一味のそれぞれ臨戦態勢となった。
「待ちなおめェらァ!!!」
「ココロさん。」
一触触発だった空気をココロが断ち切る。
「
「うるせェな!ばーさんには…!」
「“関係ねェ”な、あァ…。まァ聞きな…。まったく、おめェら放っときゃ死ぬ気らね。……死ぬ覚悟があるんなら…。着いてきな。出してやるよ“海列車”」
「“海列車”は1台しか無いんじゃ…?」
ココロの言葉にジャスミンが尋ねる。原作でどんな方法でエニエス・ロビーに行ったのか覚えていないからこそ、自身が所持している潜水飛行艇で乗り込むことを提案したのだが……。
「んががががが!!!着いて来れば分かることら…。」
-ウォーターセブン、ゴミ処理場裏・レンガ倉庫—
ナミを除く麦わらの一味とジャスミン、そしてそれを伴ってきたココロと着いてきたチムニーらがそこにいた。
ギイィ…
“No2”と記された倉庫の扉をココロが開く。
「この倉庫も8年は放置されてる。“海列車”に至っちゃ12年以上手付かずら。もう動かねェかも知れねェな。んががが。」
「おい、それじゃ困るぞ!!!」
「…8年も放置されてたって言う割に、奥に誰かいるみたいですね。」
ジャスミンが倉庫の奥から気を感じ取る。
(それにこの気は……。)
「そんな筈は無いら。正面の扉にも鍵がかかって…、ん?何ら開いてるねェ。」
ドドドド…!
ジャスミンとココロの会話を聞くことも無く、既にルフィやチョッパーは奥の扉に向かって走っている。
「うおー!!!……!!あった!!!かっこいいぞ――――――!!!」
「言っとくがまともなモンじゃねェよ!こいつの名は“ロケットマン”とても客など乗せられねェ、“暴走海列車”ら。」
先行したルフィの興奮した叫びにココロが答え、続いて扉をくぐったジャスミンの目にもその“暴走海列車”の姿が明らかになった。
そこにあったのは、所々苔むしたもう1台の海列車。パッフィング・トムとは異なり、ヘッド部分が尖っており何故かサメを模したらしい厳つい顔が着いている。
ココロ曰く、「サメのヘッドは洒落でつけてある」らしい。
「速そ~~~~!!!」
ルフィとチョッパーの顔がこれ以上無く輝き、チムニーやゴンべらと一緒にはしゃいでいる中、“ロケットマン”の中からトランクを手にした1人の男が出て来る。
「あれ!?アイスのおっさん!!!」
(やっぱりアイスバーグさんだったんだ。)
ジャスミンが先程感じ取った気は間違い無かったらしい。
「麦わら…、良く無事だったな……。海賊娘の言った通りだ……。ココロさんが連れてきたのか。」
「命はあったようらね、アイスバーグ。おめー、ここで何してんらい…?」
「……ここにいるってことは…、あんたと同じことを考えたのさ。――――――バカは放っとけねェもんだ。」
「んががが。」
笑みを浮かべなら返したアイスバーグに、ココロも声を立てて笑う。
「使え。整備はすんだ・・・。水も石炭も積んで、今蒸気を溜めてる。」
倉庫内に放置されていた木箱に座り込んだアイスバーグが、ルフィに向かって告げる。
「おっさん、準備しててくれたのかー。」
「喜ぶのは生きられてからにしろ。この“ロケットマン”は“パッフィング・トム”の完成以前の“失敗作”だ。どう調整しても蒸気機関がスピードを抑えられず暴走するんだ。命の保証などできねェ。」
「ああ!!!ありがとう、アイスのおっさん!!!よ――――――し!!行くぞ、お前ら乗れー!!ばーさん、ナミが来たらすぐ出してくれ!!!」
たん!
と勢い良く“ロケットマン”に飛び乗るルフィだったが、急にふらりと足を
「ルフィ、大丈夫か!?さっきから足元ふらふらしてるぞ。」
「血を流し過ぎたんだろ。」
「エニエス・ロビーに着くまで、横になってた方が良いんじゃない?」
チョッパー、ゾロ、ジャスミンの順で声をかける。
「あァ、ちょっとうまく力が出ねェ…。肉でもあれば……。」
「いや、肉を食べたからってすぐに血肉になる訳じゃないでしょ…?サイヤ人じゃあるまいし…。」
声まで力を無くしているルフィにジャスミンが突っ込む。後半は小声だったので、ルフィたちには聞き取れ無かっただろうが。
そんなやり取りをしている中、ジャスミンはナミと他に2人の気が近付いているのに気付く。
ガラガラガラ…
何やら、重い荷物を荷車か何かで運んでいるような音と共に、次第にナミの声も聞こえてきた。
「急いで、こっち!!」
「この辺で食べたら良いじゃないか。」
「あたしがそんなに食べるか!!!」
ガラガラガラガラガラ…!!!
「ゴメン、遅くなった!!」
ナミが荷車を引いた2人の男を引き連れ、入口に姿を現す。
「ナミ!!おい、何やってんだお前!!早く乗れバカヤロー!!!」
ルフィがナミに怒鳴る。
「わっ、すごい。これも“海列車”!!?」
「……いやあ、こんな所にもう1隻あったとは。」
「驚いた。」
荷車を引いていた男たちが驚嘆している。
「ナミちゃん、その人たちは?」
「“海列車”の
荷車から荷物を下ろしながら言うナミを手伝い、一緒に“ロケットマン”に詰め込む。
「よいしょ。」
「随分大きいけど、中身は?」
「どこ行ってたんだ!!時間がねェっつったの誰だよ!!その荷物なんだ!?」
「肉とお酒。」
怒鳴り付けるルフィに対してナミは平然と返している。
更に、ルフィも「文句言ってごめんなさい!!!」と即座に態度を変えてナミの持ってきた食料を手当たり次第に口に突っ込んでいる。
実に見事な手のひら返しである。
「さすが…。ルフィくんたちのことは知り尽くしてるね…。」
とてもこれから敵の本拠地に乗り込むとは思えない、実に呑気な光景が広がっていた。
ゾロでさえ、一緒に持ち込まれた酒を物色している。
その間、ココロとアイスバーグの大人組はこれからの動きについて確認していた。
どうやら、動けるようになったとは言え重傷のアイスバーグは待機となり、ココロが運転手を引き受けてくれるらしい。
「ん……?」
「どうしたの?」
「誰か来るね。…1人や2人じゃないよ。7~8人はいる。」
ジャスミンが告げた時だった。
「麦わらァ~~~!!!」
ザッ……!!
全身に包帯を巻いた、妙な防具を着けたチンピラたちとフランキーと一緒にいた女性たちが入口に現れる。
「フランキー一家!」
「この忙しい時に…。」
ゾロが溜め息を
「頼む!!!おれたちも連れてってくれェ!!!!エニエス・ロビーに行くってガレーラの奴らに聞いた!!!アニキが政府に連行されちまったんだ!!!追いかけてェけど…、アクア・ラグナを越えられねェ!!!!」
「相手は世界政府らよ。」
「誰だろうと構うかァ!!!」
「アニキを取り返すんだ!!!」
「あたしらアニキの為なら、命だって惜しく無いわいな!!!」
「お願いだよ!」
フランキーは随分と慕われているらしい。
少なくとも、目の前で涙と流しながら頭を下げる彼らに、
「冗談じゃないわ!!!あんたたちが今まであたしたちに何をしたか分かってんの!!?」
しかし、船の修繕に必要な金を盗み、あまつさえ
「恥を忍んで頼んでる!!アニキを助けてェんだ!!!」
だが、彼らの真っ直ぐな涙は確かに届いていた。
「乗れ!!!!急げ!!!!」
ルフィの叫びが彼らを“ロケットマン”へと促す。
「………!!!麦わらァ……!!!」
「ちょっとルフィ!!!」
「ま、良いよ。」
ナミが抗議するが、一味の
「すまねェっ!!!恩に着る!!!!でも、その車両じゃなくて良いんだ!!おれたちァ、おめェらに合わせて“キングブル”で海へ飛び出すからよ!!車両の後ろに掴まらせてくれれば良いんだ!!!よろしく頼む!!!じゃ、後で!!!」
ガン!!!っと派手な音を立てて頭を床に打ち付け礼をした代表の男—ザンバイが、他の仲間を引き連れて入口へ取って返す。「アニキ救出に行けるぞー!!!」と歓声を上げながら。
「んがががが。ほいじゃ、行こうか。」
ガコン…
ココロが“ロケットマン”を始動させ、シュッシュッシュッ!と独特の蒸気音を上げながら動き出した。
シュッシュッシュッシュッ…!
シュッシュッシュッシュッ…!
シュッシュッシュッシュッ…!
「さァ海賊共、ふり落とされんじゃらいよ!!!ウォーターセブン発、エニエス・ロビー行き“暴走海列車・ロケットマン”!!」
「よし!!!出航!!!行くぞォ!!!全部奪い返しに!!!!」
ポッポ―――――――――――!!!
ココロの言葉に、ルフィの号令が続く。
これから、ジャスミンがどのようにして歴史を紡いでいくのか、それはまだ本人でさえも知らない……。