摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

25 / 68
お待たせしました!第22話更新です。すいません、まとまった時間がなかなか取れなかった上に季節の変わり目で見事に風邪を引きました(汗)。幸い、仕事に支障は出なかったんですが、執筆にあてる程の気力が無く…。たいへんお待たせしてすみません…。


第22話 突入!エニエス・ロビー

「よっ、と……。」

 ザパッ……!

 “ロケットマン”から飛び立った後、先程の場所まで戻り気を失っている海兵‐Tボーンを海から引き揚げる。

「意外と傷が深いな…。」

 一旦線路の上に乗せる形で傷を確かめながら呟く。

 揺れる線路の上では手当することも出来ない。また、出来れば雨風の及ばない場所で海水に浸かってしまった傷口を清められればベストなのだが。

「逆方向になっちゃうけど、一旦ウォーターセブンまで戻った方が良いかな…。」

 エニエス・ロビーの方が距離的には近いが、敵の本拠地でのんびり傷の手当が出来るとも思えない。

 いっそわざと人目の付く場所へ下り、手当を任せて置いてきた方が良いか、ともチラッと考えたが、罠だと警戒されるのがオチだろうし手当が遅れては手遅れになる危険もあった。

 となれば多少距離があってもウォーターセブンで手当し、その後で先程の切り離された車両の海兵たちに預けた方が良いだろう。

 実際にこの海兵‐Tボーンを知る者ならば話も通じ易い。現場の人間の方が話が通し易いものなのだ。

「急ごう。」

 Tボーンを背中に担ぎ上げ、フワリ、と舞空術で宙に浮き上がる。

 ギュン!

 ウォーターセブンを目指し飛び立った。

 

 ━同じ頃、“ロケットマン”内━

「さっきの車両はきっとサンジくんたちの仕業(しわざ)よ。」

 ナミが先程の車両について断言する。

「じゃ、もうすぐか!!よ――――――し!!!行け――――――――――“ロケットマン”!!!敵は近いぞ―――――!!!ハトの奴をぶっ飛ばすぞ―――――っ!!!」

「ウオオオ~っ!!!」

 ルフィの号令に男たちが声を上げた。

「あれ?ルフィ、そういえばジャスミンはどこに行ったの?」

「ああ。さっきゾロが斬った海兵助けに行った。」

「ハアアァ???!!」

「海兵をか!!?」

 ルフィの言葉にナミとチョッパーが驚愕の声を上げる。

 海賊である彼らにとって、敵対した相手、それも海兵を助けに行くというのがある意味衝撃だったのだろう。

 そして、一切それらに気付かず、ゾロは1人熟睡していた。

「アイツは海賊じゃねェからな。」

「あ……。」

「そういえばそうか。」

 その言葉にナミとチョッパーは一瞬納得してしまった。

 すっかり仲間のようなノリでいたが、ジャスミンは単に“友達”として手を貸してくれていただけだったのだ。

「アイツにはアイツなりの“信念”があるんだ。しししっ!アイツやっぱり仲間になんねェかな~!」

 殊更(ことさら)ルフィが嬉しそうに笑った。

 この一件が終わった後、再度ジャスミンはルフィの強烈な勧誘の嵐に遭うのだが、それはまだ先の話である。

 

 ━その直後、ウォーターセブン“造船島”中心街━

「へくしっ!」

 いくつかあるホテルの屋根の上でTボーンの手当をしながら、ジャスミンが不意にくしゃみをした。

「?…風邪引いたかな?」

 そんなやわな鍛え方はしていないつもりだが、この雨風で体調でも崩したか?と思案しつつも、手当の手は止めない。

 巻いている先から包帯がぐっしょりと濡れていく。

 激しく吹き付ける雨風と、押し寄せるアクア・ラグナを防ぐ為に建物の窓は全て塞がれており、中に入ることは出来なかった。

 当然、入口も全て塞がれている為、止む無く雨ざらしの中で屋根の上で手当していたのだ。

「良し。…この場所じゃ、これが限界か……。」

 一通りの傷を消毒し、ガーゼと包帯で止血する。

「早くルフィくんたちと合流しないと・・・・。」

 再びTボーンを背中に担ぎ上げ、海へと飛ぶ。

 キィイ―――――――――――――――――ン……!!!

 背中のTボーンを落とさないようにある程度スピードは抑えているものの、その速度は“ロケットマン”を遥かに上回る。

 5分程飛んだところで、先程ゾロが両断した車両が見えてきた。

 乗っている海兵や政府関係者が、木材の端切れのようなもので懸命に海を()いでいる。

「いた…!」

 トッ!!

 風を切って車両の1つに降り立つ。

「なっ……!!」

「誰だ貴様!!!」

 突如(とつじょ)空から降り立ったジャスミンの姿に、海兵たちが殺気立つ。

「争う気は無いよ。あなたたちの上官を送り届けに来ただけだ。」

 武器を構える海兵たちを片手で制止しつつ、出来るだけ傷に(さわ)らないようにTボーンを横たえた。

「Tボーン大佐!!!」

「一体何をした貴様!!」

「大佐から離れろ!」

 ジャキキキッ!!!!

 一斉に海兵たちの武器がジャスミンへと向けられる。

「だから争う気は無いって言ってるのに…。こんな所で死んで良い人間じゃないと思ったから拾って連れて来たんだ。応急手当はしたけど、傷は深い。早めに医者に診せた方が良いよ。」

「手当だと……?」

「貴様、海賊じゃないのか?何故大佐を助ける!?」

「私自身は海賊になった覚えは無いよ。――――Tボーン大佐だっけ?彼はこんな所で死んで良い人間じゃない。彼が掲げる“正義”のその先を私は見てみたい。」

 それは偽らざる本音だった。上に行けば行く程、海軍という組織は闇に染まっている。どこまでTボーンが自分を貫けるのか。世界政府の闇を知って(なお)、真っ直ぐに“正義”を通せるか。それを見てみたいと思った。

 目を()らすこと無く言い切ったジャスミンに、海兵たちが動揺する。

 敵では無いのか?という空気が漂うが、その間にジャスミンは再び宙へと浮き上がる。

「う、浮いてる…!」

「悪魔の実の能力者か!?」

「じゃあ、後の手当は任せるよ。」

 ギュン!

 そう言い置くと、海兵たちに構うこと無くジャスミンが空へと飛びあがった。

「急ぐか…。」

 キイィ―――――――――――――――――ン!!!!

 ルフィたちに追い付くべく、全力でエニエス・ロビーへと飛ぶ。

 そのスピードは先程の比では無い。2~3分も飛べば、エニエス・ロビーの正門が見えてきた。

 “ロケットマン”とフランキー一家の船も見える。

「間に合った……!」

 タン!

 “ロケットマン”の屋根に手を付き、そのまま窓から車内へ滑り込む。

「ただいま。」

 ストン、と着地しながら告げたジャスミンに真っ先に反応したのはナミでもルフィでも無く、いつの間にかルフィたちと合流していたらしい男‐サンジだった。

「おぉう!?窓から急にレディが!!ここで会ったのも運命。初めまして、あなたのコック‐サンジです!!」

 喋ると同時にジャスミンの前に(ひざまづ)き、胸に手を当ててキラキラとした決め顔を向ける。

 予想していなかったところからの激しい反応に、ジャスミンが思わずビクッと体を震わせ、「止めんか!!」とナミがサンジをどついた。

 それを見てルフィが爆笑する、というちょっとしたカオスな状況が繰り広げられた。

 

 その後、落ち着いてからちょっとした自己紹介が行われる。

「改めまして、ジャスミンといいます。ルフィくんたちとはウォーターセブンで友達になって・・・・。成り行きでお手伝いすることになりました。」

 サンジたちに向かってペコリ、とお辞儀(じぎ)しつつも、ジャスミンの目はサンジの隣の仮面の人物に注がれていた。

 そう、狙撃の王様“そげキング”である。

 頭から爪先までとっくりと見詰め、うん、と1人頷く。

(ウソップくん……。意外とケガも大丈夫そうだ。)

 何しろ、フランキー一家にかなり手酷くやられたようだったので(いささ)か心配していたのだが。

「ジャスミンちゃんって言うのか。いやぁ、それにしたってこの先はレディには危険だ。今から帰るのは難しいが、そこのレディたちと一緒に海列車の中に隠れてた方が良い。」

 女性至上主義のラブコックらしく、サンジがジャスミンとフランキー一家の2人‐モズとキウイに前線から引くように促した。

「ジャスミンならたぶん大丈夫よ。そんなに心配しなくても。」

「ナミさん?どういう意味だい?」

「だってジャスミン強いもの。」

「凄いんだぞ!ビーム出せるんだ!!」

「ビーム!!??」

「ビームじゃなくて気功波(きこうは)だって……。それより、エニエス・ロビーはもう目の前だけど、これからどうするの?」

 チョッパーの言葉を苦笑しながら訂正しつつも、話を本題に戻す。

「どうするってハトの奴らをぶっ飛ばしてロビンを助けんだよ!!」

「いや、私が聞きたいのは作戦をどうするかって話。」

 それによってジャスミンがどう動くかが決まってくる。

「そうね。ただ闇雲に突っ込めばどうなるか…。」

「せめて地形が分かりゃ作戦の1つも立てられるかもしれねェが…。」

 ジャスミンの言葉に、麦わらの一味の中でも頭脳派のナミとサンジが同意する。

「お前らちょっとコレ見ろ。」

 不意にパウリーがルフィたちを呼んだ。

 傍に寄ると、エニエス・ロビーの地図が広げられていた。

「前に1度線路の整備で来たことがあって…。おれがうろ覚えで描いたんだが、エニエス・ロビーのだいたいの地形だ。」

 パウリーが地図を指しながら、“正門”“本島前門”“裁判所”“司法の塔”“正義の門”とざっくりと説明をしてくれる。現在地は正門の手前だが、エニエス・ロビー全体を鉄柵がぐるりと囲っていた。

「“正義の門”ってのは島の裏手にあって“司法の塔”からのみ行けるようだ。」

「何だコリャ。黒いの何だ?」

 ルフィが地図に記された本島の周りを囲む黒い円を指して疑問の声を上げる。

「黒いのは滝だ。まあ、門を(くぐ)れば分かる。とにかく、“正門”から“正義の門”までのこの直線でニコ・ロビンとフランキーを取り返せなきゃ、おれたちの負けだ!!!とは言え、全員で雪崩(なだれ)込んでも、“CP9(シーピーナイン)”に出くわして実際勝つことが出来るのはお前らだけだ。一緒に列車に乗ってきてその強さが良く分かった。だからお前らは海でこのまま5分待って、“正門”からこの“ロケットマン”で本島まで突っ込んで来い!!!」

 パウリーがルフィを真っ直ぐに見る。

「おれたちァ、それまでに先行して列車が通れるように“正門”と“本島前門”をこじ開ける!!!その後もおれたちが例え何人倒れようとも構わず前へ進んで欲しいんだ!!」

 その後をザンバイが続けた。

「こっちはたかだか60数人。敵は2千3千じゃ収まらねェ筈。麦わらさんたちはとにかく!!無駄な戦いを避けて“CP9(シーピーナイン)”だけを追ってくれ!!!」

「ああ!!!分かった!!!」

 ザンバイの言葉にルフィが力強く頷く。

「それなら“正門”と“本島前門”は私が引き受けるよ。わざわざ敵中に入り込んでから開けるのはリスクが高い。

 私なら、この距離からでも門を吹っ飛ばせる。」

 ザンバイたちの(おとり)とも呼べる作戦を聞いてジャスミンがルフィに提案した。

「おお!さっきのビームか!!」

「ならその後は、ポニーテールも麦わらたちと一緒に行動してくれ。他の海兵の相手はおれたちがする。お前らは一刻も早くニコ・ロビンたちを救出するんだ。ルッチたちの足止めをしてくれたお前なら、充分過ぎる戦力だからな…。」

「え!?ジャスミンちゃん、そんなに強いの?!」

 パウリーの言葉に、合流したばかりでジャスミンのことを一切知らないサンジが思わず、といった(てい)でジャスミンを振り返った。

 実際に“パッフィング・トム”の中で彼らと対峙したサンジにとって、(にわ)かには信じられなかったのだろう。

「ええ、まあ…。」

「ウソだろ!?あ、もしかして悪魔の実の能力者なのか?それなら…。」

「サンジくん!後で説明したげるから話の腰折らないで頂戴(ちょうだい)!!!」

「ハァ~イ、ナミすわん!!!」

 ナミに対して目をハートにし、身体をくねんくねんにし始めたサンジに、またもやジャスミンがビクッとする。

「気にするな。サンジのアレは病気なんだ。おれも治せねェ。」

「あ、うん…。」

 チョッパーの言葉に思わず頷く。

 

 閑話休題

 

 結局、ジャスミンが正門を破壊した後で“ロケットマン”ごと本島に乗り込み、その後で再びジャスミンが“本島前門”を破壊して道を作る。というシンプルな作戦に纏まった。

 途中で海兵に会った場合はパウリーたちが引き受け、ジャスミンはルフィたちと一緒にCP9(シーピーナイン)を相手取ることとなる。

「さァ、おめェら島の正面らよ!!!エニエス・ロビーの後ろの空をよ━━くごらん!!!アレが“正義の門”ら……!!!」

 ココロの言葉に窓から外を見る。今まで(もや)に隠れて良く見え無かったが、近付いたことでその姿を(あら)わにしていた。

「うおああああ~~~~~~~~っ!!」

「でけ~~~~~~~~~~~~!!!」

「全開になることはまずねェ。罪人が通過する時、あの扉はほんの少しだけ開く。そして扉の向こうには“偉大なる航路(グランドライン)”を(はさ)む“カームベルト”のような大型の海王類の巣が広がって普通の船じゃ入り込めねェ。どうやるのか知らねェが…。海軍はそこを安全に通過する手段を持っているんら…。――――――つまり、海賊娘の言った通り……。連行された罪人を盗り返してェなら、あの門を通過するまでが制限時間(リミット)ってことら!!ぐずぐずしてる暇は無いよっ!!!」

「じゃ、門を吹っ飛ばそうか。」

 そう言い置いて、ジャスミンが窓から屋根へと上がる。

「吹っ飛ばすったってどうやって…。」

「大砲でも撃つ気か?」

 唯一ジャスミンの技を知らないサンジとそげキング(ウソップ)が顔を見合わせる。

「まァ、見てろ。」

「すっげ――――ぞ!」

 ゾロとルフィが楽し気な笑みを浮かべる。

 その頃、ジャスミンは屋根の上に立っていた。

「さて…。出来るだけ人は巻き込まないようにしないと…。」

 いっそ全力でぶっ放した方が楽なのだが、それをしたら最後、救出対象であるロビンやフランキーは(おろ)か、島ごと吹っ飛ばしてしまう。

「か――――…!め――――…!は――――…!め――――…!」

 まずは正門を狙う。

「波――――――――――!!!!!!」

 ドッゴォオオオォオンン!!!

 狙い通り、正面の鉄柵ごと正門の扉のみが吹っ飛ぶ。

「よし!上手くいった。」

 本音を言うと力加減を誤って本島の前門まで吹っ飛ばしはしないかと不安だったのだが。

 一旦車内に戻ろうとした時だった。

 窓から、ルフィが飛び出して行くのが見えたのは。

「ルフィくん!!?」

 何で1人で先に乗り込もうとしているのか。

「何やってんだ、あいつは勝手に――――――――――っ!!!」

「あの人作戦全然分かってねェ~~~~~~~~っ!!!」

 パウリーとザンバイの叫びが聞こえてくる。

「まぁ、ルフィくんが大人しく作戦通りに動くとは思って無かったけどさぁ…。」

 ジャスミンが脱力している間に、既にルフィはエニエス・ロビー本島へ突っ込み、正門の異常を確認に来た海兵たちを次々と吹っ飛ばしていた。

「おめェら、準備は良いかい!!?“ロケットマン”、突撃するよ!!!」

 ココロの言葉に、ジャスミンも車内に戻る。ふと、ザンバイらの姿が見えないことに気が付いた。しかし、それを確認するより先に再度ココロの声が響く。

「突っ込むよ!全員どこかに掴まりなァ!!!」

 ポッポ――――――――――!!!

 ゴオオオオオオオ…!!

 ぐん、と一瞬身体が浮くような感覚の後、

 ドッゴォオオオォ……オンン!!!

 ガガガガガガガガガ……!!

 ガクンッ!!

「ぐ……!」

「くぅ…!」

「きゃ!」

 凄まじい着地の衝撃が襲った後も進んだのが分かったが、その後すぐに“ロケットマン”が停車する。

「止まった…?」

「何で急に…。」

 その答えは、窓の外を見ればすぐに分かった。

「ふァ~~~…。まだ寝足りねェなァ…。こんなモンで突っ込んでくるとは思わなかったが、早ェトコ追っ払ってまた寝るぞ。」

「オイも。」

「巨人族ですって!!?」

「この2人が止めたのか……!」

 2人の巨人族が、正門を越えたところで“ロケットマン”を強引に止めてしまったのである。

「さすが“世界政府”の玄関と言われるだけあるね…。人材が豊富。」

「感心してる場合じゃ無いでしょうが!!!」

 ジャスミンの言葉にナミが突っ込んだ。

 




今回書きたかったこと
1.ジャスミンが正門破壊
2.オイモとカーシーが“ロケットマン”を止める
この2つはわりかし早い段階で入れたいと思ってました。取りあえず書きたいところは書けたので満足です。
追記:見直して初めてヨコズナの存在を忘れてたことに気付きました…。スイマセン、これから唐突に登場するかもしれません…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。