摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!!第24話更新です。次話からちょっと場面が飛んでいくと思います。なかなか進みませんが、いよいよ山場に入っていきます。
追記 さっき気付きましたが、いつの間にかお気に入り登録が500人を超えてました!ありがとうございます!これからも頑張ります!!


第24話 麦わら一味VSCP9

 ━エニエス・ロビー本島、裁判所屋上━

「“嵐脚(ランキャク)”」

 ズバッ!!!

「うおっ!!」

 ドォン!!

 麦わら一味船長‐モンキー・D・ルフィと、世界政府直下暗躍(あんやく)諜報(ちょうほう)機関“CP9(シーピーナイン)”諜報員‐ブルーノが相対している。

 流石(さすが)に唯一“殺し”を“許可”されている部隊なだけあって、一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないようで、ひとまずルフィも防戦一方のように見える。

 ブルーノの“ドアドアの実”の能力をフル活用され、翻弄(ほんろう)されている。床をドアに変えて姿を消したかと思えば、ルフィの足元をドアに変えて落とし穴のようにし、挙句(あげく)ルフィの頭を“回転ドア”に変えられ、目だけがグルグルと回っていた。

(悪魔の実の能力ってホントに何でもありだな……。)

 その様子を屋上の端まで下がり、柵にもたれかかったジャスミンが見物していた。

 一見するとルフィが押されているようだが、その(じつ)ルフィはブルーノの動きを全て見切っている。決定打になりそうな攻撃は全て無駄無く(かわ)しており、明らかにガレーラカンパニーでの動きとは違う。

(精神状態がここまで動きに影響を与える人間も珍しい……。)

 元々ムラっ気があって気分に左右されるタイプなのだろう。

 ガレーラカンパニーではロビンの裏切り疑惑によって精彩(せいさい)を欠いていたのに対し、今は真実を知ったことによって動きの1つ1つに見られていた迷いが完全に晴れている。

 ジャスミンが思わず呟く。

「単純と言おうか、はたまた純粋と言おうか…。」

 判断に悩むところだ。

 ドゴォン…!!!

 ルフィによって軌道を変えられたブルーノの“嵐脚(ランキャク)”によって屋上の柵が一部破壊される。

「ダメだ。」

 不意にルフィがにい、と笑いながら呟く。

「……おれはこんなんじゃダメだ…。」

 ルフィが静かな口調で続ける。

「………“青キジ”に()けた時、おれは思ったんだ…。この先の海にまたこんなに強ェ奴が現れるんなら、おれはもっと強くならなくちゃ仲間を守れねェ……!!」

「ルフィくん…。」

 その“覚悟”に一瞬圧倒される。

 自分と大して年齢(トシ)も変わらないのに、その意志は揺るぎ無い。

 おまけに…。

(今、“青キジ”って言った……?)

 確か“青キジ”とは海軍大将の異名だったと思うのだが……。

「…おれには強くなんかなくったって、一緒にいて欲しい仲間がいるから………!!おれが誰よりも強くならなきゃ、そいつらをみんな失っちまう!!!」

「では…。どうする?」

 ルフィの叫びにブルーノが問う。

「力いっぱい戦う方法を考えた…。誰も失わねェように………!!」

 ルフィが前かがみになり、自身の両膝に手を置いた時、足首が不意に波打ち、膨らんだ。

「誰も遠くへ行かねェように…。」

 ギュポン…

 ドクン…!

 足首の膨らみが膝の付近に移動し、ルフィの身体が一瞬脈打(みゃくう)つ。

 シュッ…、シュッ…、シュッ…

「煙?いや、水蒸気……?一体何を…。」

 まるで海列車のような音と共に、ルフィの身体から蒸気が立ち上っていく。

「お前はもう…、おれについて来れねェぞ…。」

「何!?」

「おれの技はみんな…。一段階進化する。“ギア(セカンド)”。」

「“ギア”?技が進化する…?」

 ブルーノが疑問の声を上げる。

「身体から蒸気を()いて…。蒸気機関の真似事(まねごと)でもしているのか。――――何のハッタリだ。」

「おれは、お前らとここで会って良かった。“ゴムゴムの”……。」

 ギリギリとルフィがブルーノに向かって拳を構える。

「…狙い撃ちする気か…。()ける(すき)を与えるだけだ。……フン…………良く狙って当ててみろ……………!!」

「いや、違う…。」

 ブルーノはルフィを()め切っているようだったが、この場でルフィがそんなハッタリを見せるとは思えなかった。

「“(ソル)”。」

 ビュッ!

 ブルーノがルフィを翻弄(ほんろう)するつもりだったのか、動いた瞬間だった。

「“JET(ジェット)(ピストル)”!!!!」

 ドンッ!!!

「!!!?」

 ルフィの、遥かにスピードを増した一撃がブルーノを(とら)える。

「速い…!今までとは段違い……!!」

 ドゴオオ…ン!!!

「…く!!」

 吹っ飛んだブルーノが体勢を立て直した時には、既にルフィはそこにいない。

 ドカン!!

「オウ!!!?」

 後ろからブルーノを吹っ飛ばし、

「“スタンプ”!!!」

 ガン!!!

 間髪(かんぱつ)入れずにルフィが上から踏み付け、ブルーノは床に叩き付けられた。

「……!!!」

 ブルーノの受けた衝撃は大きいだろう。

 あの様子だと、ブルーノはルフィの動きを目で追うことすら出来ていない。

 自分がスピードで翻弄(ほんろう)していた相手に逆に翻弄(ほんろう)される。

 信じがたい現実に違いない。

「ルフィくん、良くここまで…。」

 どうやってか、身体能力そのものが劇的にパワーアップしている。

 先程までは変わっていなかったから、あの“ギア(セカンド)”という技が原因なのだろうが…。

(原理が分かんないな…。“気”は確かに大きくなったけど、あくまでも身体能力が上がったことで一緒に大きくなった感じだし……。自分で“気を高めた”って感じじゃなかった。)

「“空気開扉(エアドア)”!!」

 ブルーノが一時的に能力で離脱する。

「消えた……。」

(いや、“移動”はしてない。)

 確かに姿は消えたが、ブルーノの“気”は移動していない。

 しかし、何かに(さえぎ)られているかのようにぼやけて感じる。ともすれば見過ごしてしまいそうな程。

(空間移動系…。亜空間に留まることも出来るなら、説明もつくかな…。)

 フッ…!!

 ルフィの背後にブルーノが現れる。

「“ドアドア”。」

 そのまま掴みかかろうとするが、その両手は(くう)を切った。

 ヒュッ

 そしてルフィはさらにその背後に現れる。

「お前らが……、消えるように動くとき。一瞬に地面を10回以上蹴って移動してんのが見えた。コツもわかったし、そういう移動技があるのを知れて良かった。」

(そういう無駄な動きを入れてるから、一定以上からスピードが上がらないんだよなぁ…。)

 まぁ、純粋な脚力(きゃくりょく)によるものと違ってコツさえ掴めばルフィが真似て見せたように模倣(もほう)容易(ようい)であるので、軍として全体の戦力を底上げすると考えれば効率は良いのだろうが。

「“ゴムゴムの”!!!」

 シュンッ!!!

 ルフィの両手が後方目がけて思い切り伸びる。

「“鉄塊(テッカイ)”“(ゴウ)”!!!」

「受けて立つ気か…。バカだな。」

「“JET(ジェット)バズーカ”!!!!」

 ズドン!!!

 ルフィの渾身(こんしん)の一撃が炸裂(さくれつ)した。

「……ホンットに頑丈(がんじょう)な奴だな…。」

 受けてなお、倒れないブルーノにルフィが半ば感心したように呟く。

「……ほんじゃあ、もっと面白ェもん見せてやるよ。」

 ぐっ、とルフィが右手の親指を()むが、歩み寄ったジャスミンがそれを制止する。

「必要無いよ。ルフィくん。」

「あ?」

「もう気絶してる。」

 その言葉と同時に、ブルーノの身体が揺らぎ、倒れ込んだ。

「すげェ疲れた…。」

 荒い息を()きながらルフィが呟く。

「どうやったの?アレ。だいぶ消耗(しょうもう)してるみたいだけど…。」

 ふらついているルフィを見てジャスミンが(たず)ねる。

内緒(ないしょ)だ。」

「……あんまり無茶しないようにね。船長だからって全部背負う必要は無いでしょ?仲間に頼っても良いんじゃないかな?」

「おう。だけどおれは、仲間がいねェと何も出来ねェ。だから、仲間はおれが守るんだ!」

「……そう。」

 詳細を語らないのは自分が“仲間”ではないからだろう、と納得してその場は引いたジャスミンだったが、まさか体に負担をかけるのを自覚していながらも平気で無茶をやらかす人間だ、とはまだルフィのことを理解しきれていなかった。

 (のち)に、あの時無理やりにでも問い詰めて説教しておくんだった、と後悔することになるのだが、それはまだ少し先の話である。

 

 閑話休題

 

「うし!」

 ルフィが気合と共に屋上の柵、その1段高い柱に登る。

「ルフィくん?何を…。」

 もし飛び出そうとするなら力づくでも止めなくては、と思ったものの次の瞬間に聞いた叫びで自身も柵に登る。

「ロ~~~~~~ビ~~~~~~~~ン!!!迎えに来たぞォ~~~~~~~~~!!!!」

 裁判所の屋上から、目の前の司法の塔に向かって叫んだ。

「ロ~~~~~~ビ~~~~~~~~・・・ン~~~~~~~!!!!

「まぁ、ここまで暴れちゃったら忍び込むも何も無いから良いか……。」

 溜息を()きつつ、ルフィが登る柱にもたれかかり、腕を組みながらナミたちを待つ。

 ぐぎゅるるるるるる…!!

「ん?」

「だいぶ暴れたからなァ………!!腹減った…。こんな時の為の…べ~~~~~んと~~~!!!」

 ()(あお)ぐとルフィが両手に骨付き肉を持って頬張(ほおば)っていた。

「いや、それどっから出したの……?」

 思わず突っ込むが、肉に夢中なルフィは全く聞いていない。

「うめェ、うめェ。」

 ムシャムシャと肉を頬張(ほおば)るルフィを取りあえず放っておき、司法の塔を見やる。

(ニコ・ロビンさんとフランキーさんはあの中か…。)

 このまま自分が特攻(とっこう)をかけた方が早いだろうが、それではロビンが抱えた“闇”は晴れないだろう。

 それに、ルフィがここでCP9(シーピーナイン)との戦いを経験しておかないと後々どんな弊害(へいがい)が起こるか分からない。

「おし!!元気(パワー)復活だ!!」

「あ、食べ終わったんだ?」

「ううおおおおォ~~~~~~!!!お――――――――――い!!!誰かいねェのか――――――!?出て来――――い!!!」

「……ルフィくんてホント真っ直ぐだね…。」

 何かもう、他にコメントの仕様(しよう)が無い。

 ルフィの叫びを何とも言えない気持ちで(なが)めていた時のことだった。

 ズドォォン!!!

「!」

 ガシャァン!!!

「ぐおお!!!」

 ギギギギギ…

 ガラガラ…

 何かが爆発したような音が響いた直後、何かが司法の塔から飛び出し、目の前のフェンスにぶち当たる。

「!」

「あれは……。」

 ニコ・ロビンとフランキーが何故か司法の塔から飛び出してきたのだ。

 が、勢い余ってフェンスに突っ込んでしまったらしく、外れてしまったフェンスに支えられる形で宙ぶらりんとなった。

「スーパ~~~~~!!!」

 フランキーがおなじみの掛け声と同時にフェンスを蹴った反動でベランダ部分に戻ったようだが、拘束はまだ外れていないらしい。

「お―――――――――っ!!!ロビ―――――ン!!!良かった!!まだそこにいたのかァ!!!」

 ロビンもルフィに気付いた様子で、真っ直ぐにルフィを見詰めていた。

「“ウエポンズ(レフト)”!!!」

 ドドドドドゴォン!!

 フランキーが2人を追ってきた海兵たちを狙い撃つ。

「フランキーもいるみてェだな。良し!!そこで待ってろ!!!遠いけど飛んでみる!!!」

 言い置いてルフィが柱から飛び降り、ゴム人間ならではの反動を利用して司法の塔へ飛び移ろうとしている。

「ちょっ・・・!ルフィくん?!ナミちゃんたちが来るまで待ってって…!」

「“ゴムゴムの”ォ~!!」

「待って!!!!」

 いざ、ルフィが飛び移ろうとした時、ロビンの叫びが木霊(こだま)する。

「何度も言ったわ。私は……!!あなたたちの(もと)へは戻らない!!!帰って!!!!私はもう、あなたたちの顔も見たく無いのに!!!!どうして助けに来たりするの!!?私がいつそうしてと頼んだの!!?私はもう…、死にたいのよ!!!!」

 悲痛な叫びだった。

 その叫びを聞いたフランキーがロビンに突っかかろうとしたようだが、後ろから現れたCP9(シーピーナイン)のカクに蹴り飛ばされている。

 また、CP9(シーピーナイン)では無さそうだが、海兵にも見えない男が何やら騒いでいるが、さすがに距離がある上、風の音でかき消されて何を言っているのかは聞き取れない。

 そして、ベランダ部分より下にある窓から残りのCP9(シーピーナイン)たちも飛び出し、“月歩(ゲッポウ)”でベランダに降り立つ。

 その中にルッチ、カク、カリファのガレーラカンパニーで対峙(たいじ)した3人も含まれている。

(何でドヤ顔?)

 思わず冷めた目で見てしまう。

 まあ、あれだけ大口を叩いていた割にたかだか10代の小娘にあっさり負け、本人を前にしてもその屈辱(くつじょく)を顔に出さないという点においては、素晴らしいポーカーフェイスだが。

 いや、それともジャスミンに気付いていないのだろうか?

 

 閑話休題

 

「死にてェ!!?」

「そうよ!!!」

 ジャスミンがわずかに気を()らした間も、驚愕から立ち直ったルフィとロビンのやり取りは続いている。

「ロビ――――――――ン!!!死ぬなんて、何言ってんだァ!!?お前!!!」

「鼻ほじんなくても…。」

「あのなァ!!ロビンっ!!!おれたち、もうここまで来ちまったから!!!」

 ボッカァァ・・ン!!

 ルフィが呼びかける後ろで、屋上の床が突然()ぜ、穴が開く。

「とにかく助けるからよ!!!そんでなァ、それでも・・・まだお前死にたかったら、そしたらその時死ね!!」

「いやいやいや…。」

 思わずルフィを見上げて突っ込むジャスミンの後ろで、穴からの爆風により巻き上げられた瓦礫(がれき)と一緒に、ナミとチョッパーが落ちて来る。

 ナミは綺麗に着地したが、チョッパーは背中から落ちてしまったようだ。

 続いてゾロとサンジも到着し、間を置かずに何故かウソップ、もといそげキングが下から飛んできた。

 自分の意志では無かったらしく、着地に失敗していたが。

(どうやって飛んできたんだろ…。)

「頼むからよ!!ロビン…!!!死ぬとか何とか…、何言っても構わねェからよ!!!そういうことはお前…。おれたちの側で言え!!!!」

「そうだぞロビンちゃん!!!」

「ロビン帰って来―――――い!!!」

 ルフィの呼びかけに同意しながら、同じく柵の上、その1段高い柱に麦わら一味が並ぶ。

「後はおれたちに任せろ!!!」

 

 麦わら一味が遂に揃った。

 

 

 

 

 

 


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