摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第28話更新です。今回、導入的な話になるのでさほど場面は進んでいません。次回バトル予定です。
思っていたよりも早めに更新出来たので、年内にもう1回更新を目指します!


第28話 鍵はどこに!?繋がれた2人と華麗なる手のひら返し

 ━司法の塔・(おおかみ)の間━

 ガラガラガラ…

 日本庭園を()したようにも見えた(フロア)は、上の階から落ちてきた瓦礫(がれき)で見る影も無い。

「“ウシウシの実”モデル麒麟(ジラフ)!ぎゃ~~~ははは!!お前も不憫(ふびん)な奴だ。一生キリン人間とは……!!」

「キリンの何がおかしいんじゃ!わしは気に入ってると言うとろうが!!」

 目の前でキリンと(おおかみ)が言い争っている。

 地球には動物型(どうぶつがた)の人間(所謂(いわゆる)獣人(じゅうじん)である)も多くいた為、別に喋る動物が珍しい訳ではない。

 が、目の前の敵を放置したまましなければならない会話には思えない。

(状況分かってんのかな、この人たち……。)

 思わずゾロの隣で沈黙してしまう。

「……あのハトの野郎は“(ひょう)”だったな。他に2人も動物に化ける能力者がいたとは…。“CP9”ってのはそういう集団なのか………!?」

「たぶん、政府か“CP9”のトップからか支給されたんだと思いますよ。まぁ、単に“悪魔の実”として支給したのか、動物縛りを狙ったのかは分かりませんけど。」

 ゾロの呟きを拾い、ジャスミンが答える。

「あぁ?何で分かる?」

「…そこのキリンの人は、さっき『“人獣(じんじゅう)型”で止めるつもりがキリンになった』って言ってましたよね?つまり、自分で自分の能力をコントロール出来ていない……。でも、仮にも世界政府直下の組織の人間が未熟なまま務まるとは思えない。ということは、能力を得てから間も無い、と考えられる。ガレーラカンパニーでは変身しようとする様子は無かったし、その時既に能力者だったのならとっくに披露(ひろう)している筈。でなきゃ、今になって未熟な姿を(さら)すというのも考えにくい。となれば、能力者になったのはたぶんその後。でも、最低でも1億強の価値のアイテムを個人がそう易々(やすやす)と手に入れられるとも思えない…。そうなると、組織から戦力強化の為に支給された、という可能性が高い。」

成程(なるほど)?つまり、他にも能力者がいる可能性が(たけ)ェってことか。」

「そういうことです。」

 つらつらと自身の推察を話すジャスミンに、ゾロが納得したように頷く。

「それはそれとして…。」

「あん?」

 ジャスミンが不意に目線を前に戻す。

「いつまでやってるんでしょうね?あの人たち……。」

「…………。」

 未だ言い争いを続けるCP9の2人を見やって呟くジャスミンに、ゾロも思わず無言になった。

「そろそろ意識をこっちに戻してくれないと、身構えて無い相手に攻撃するのも()りづらいし…。」

「面倒くせェな…。」

 チャキ…

 そう言うなり、ゾロが既に抜いていた刀を構え直す。

「オイ、キリン…。いつまでそこで言い争ってんだ。おれには時間がねェと言った筈だぞ!!そのままで良いんなら、そのまま斬らせてもらうぞ。」

(おろ)かな…!!キリンの持つ底知れぬ破壊力を甘く見るな。変型(へんけい)…!!!“人獣(じんじゅう)型”…!!!」

 その言葉と共に、カクの姿が変化していく。

「見せてやる……。生まれ変わったわしのパワー!!」

 が、いざ変わったその姿を見て

「ぷっ………!!!」

 ジャスミンは耐え切れずに()き出し、

「かっこ悪っ!!!」

 ゾロも思わず突っ込んだ。

貴様(きさま)……今!!」

「ぎゃ~~~~~~~っはっはっはっはっひ~~~~~~~い!!!」

 ガビ――――――――――ン!!という文字を背負ったようなショックを受けたカクを(ジャブラ)が馬鹿にしたように笑っている。

 カクの“人獣(じんじゅう)型”にそれ程インパクトがあったのだ。

 何というか、全体的に四角い。

 仮に効果音を付けるなら“の――――――ん!!”だろうか。

 キリンだから首が長くなるのは仕方無いのだが、体が人間だとアンバランスさが余計に引き立つ上、人間の姿の特徴である“四角い鼻”が体全体に反映(はんえい)されている為、全体的に“かくかくしている”のである。

「ぎゃ――――――はっはっはっ!!!」

「いつまで(わろ)うとるんじゃ、ジャブラ!!!」

(ああ、あっちの人ってジャブラっていうんだ・・・・・。)

 再び始まったCP9の2人のやり取りに、思わず思考が明後日(あさって)の方角に向かう。

 その時だった。

「!」

 ジャスミンが気付いたのとほぼ同時に、

 ヒュウン!!

 ガチャン!!

「わっ!!」

 何かが風を切って飛んできて、ゾロの手首に音を立てて()まった。

「……!?何だ、この手錠(てじょう)は!」

「ぎゃ――――――!!しまった!!すまない、ゾロくん!!」

 後ろからそげキング(ウソップ)が叫ぶ。

「…そげキング(ウソップ)さん、いないと思ったら……。」

「オイ、何の真似(まね)だてめェ!!!」

「そいつは!!たぶん、例の海楼石(かいろうせき)手錠(てじょう)なんだ!!敵は2人とも能力者だから、手錠(てじょう)()めてやれば弱ると思って!!」

「それを何でおれに()めてんだ、バカ野郎!!」

「だ……、だってよ!!キリンの顔がおかしくって……、つい手元が狂って!!」

「…おのれ、どいつもこいつも……!!」

 言い訳しながらカクを指刺して笑うそげキング(ウソップ)に、再度頭に来たらしいカクが(うな)るような声を上げる。

 そして怒りのままに両手を床に付け、カポエイラのように長い首ごと体を回転させ始める。

「“嵐脚(ランキャク)”…。」

「お!」

「うお―――――!!!何だ?!何か来るぞ――――――――――!!!」

 そのカクの様子に、ジャブラ(先程、ようやく名前が発覚した)が声を上げ、何かを感じ取ったそげキング(ウソップ)も悲鳴を上げる。

「んん…、“周断(あまねだち)”!!!!」

 ドウッ!!!

 カクを中心に、そこから円形状に凄まじい風が巻き起こった。

「こりゃ、いかん!!」

 ジャブラは直後にその場を離脱し、

「伏せろ!!ウソップ!!」

「うおお!!」

 ゾロがそげキング(ウソップ)を抱えてその場に伏せる。

 そしてジャスミンもまた、ゾロたちが上手く回避(かいひ)したのを見届けた後に、自身もその場に身を伏せた。

 その一瞬後、

 ズドオォ……オン!!!

 ズズズ…!!!

 凄まじい轟音(ごうおん)(フロア)に響き渡る。

「くっ……!」

「うわああああ――――――――――っ!!」

 巻き起こる風から顔を腕で(かば)いつつ、()()るジャスミンの耳に、爆風で吹っ飛ばされたらしいそげキング(ウソップ)の悲鳴が聞こえた。

 少し経った後、風が収まり身を起こす。

 ガラ…

 ドス…!

 カラン…

 あちこちから瓦礫(がれき)が落下する。

成程(なるほど)。“長さ(リーチ)”か…。遠心力にあの巨体からのパワーも手伝って、斬れ味がより深く鋭くなってやがる。」

 少し離れたところからゾロが批評しているのが聞こえた。

「……な、何だァ!?おい…、何も壊れてねェじゃねェか……。」

「天井見てみてください。」

 拍子抜けしたような声を出すそげキング(ウソップ)に、ジャスミンが天井を指刺して見せる。

「?あれ?あんな所から空が見える………!!?うおお!!まさか!!!この“司法の塔”が斬れてズレてんのかァ!!?オイオイオイオイ、危ねェよォっ!!!」

「周囲全てに広がる斬撃(ざんげき)・・・・・。確かに強力ですけど、()けるのはそう難しくはないし、味方にも無差別……。技としては2流だと思いますよ?」

 驚愕も(あら)わなそげキング(ウソップ)だが、ジャスミンはしれっと辛口のコメントを行う。

「フン!みっともねェ。戦闘で感情(さら)け出しやがって。」

 タン!

 と避難していたジャブラが、カクの後ろにどこからともなく着地した。

「やかましい!わしはキリン気に入っとるんじゃ!キリン大好きじゃ。」

「あー、わかったわかった。」

「どうでも良いけど、さっさと始めてくれないかな?生憎(あいにく)こっちは急いでるんだけど「何やってんだてめェはァア!!!」って……。」

 放っておくと、再び言い争いに発展しそうなCP9たちにジャスミンが(くぎ)を刺していると、不意にゾロの絶叫が聞こえ、後ろを振り返る。

「おれのせいじゃないでしょ――――がァ!!!」

 そげキング(ウソップ)も泣きながら絶叫しており、見れば、ゾロの右手に()まっていた手錠(てじょう)そげキング(ウソップ)の左手に()まってしまったらしい。

「おめ―――――がおれに突進してきたからこうなったんだろ!!」

「そりゃ、さっきの攻撃でお前がボ―――――ッと突っ立ってやがるから……!!良いから、外せ早くこの手錠(てじょう)!!!」

「鍵なんかねェよ~~~~~~~!!!」

「何――――――――――っ!!?」

「あ~、さっきの攻撃を()けた時か……。」

 ゾロとそげキング(ウソップ)の言い争いを見ながら、原因を回想する。

「何やっとんじゃ、あいつら。」

「それ、言える立場だと思ってる?」

 しゅるる・・・、と音を立てて人間に戻ったカクが突っ込むが、それにさらにジャスミンが突っ込む。

 全くその通りな状況ではあるが、さっき似たようなことをしていた人間には1番言われたくないセリフである。

簡潔(かんけつ)に説明すると……!!これはロビンと()()()()になったってことだ…。」

「!!……じゃ、鍵は…!!」

「“CP9”の誰かが持ってる…。倒して手に入れるしかない。」

「無茶言うな!こんな状況で戦えるか!!!」

 そげキング(ウソップ)が状況を整理するが、手詰(てづ)まりなことを再確認するだけで終わったようだ。

「針金か何かで開きませんか?」

 言い争っていても進展しない為、取り()えず2人に近寄って提案するだけしてみる。

「針金ったって……。急に言われたって持ってねェよ。」

「ヘアピンならあるんですけど…。」

 髪を留めていたヘアピンを1本引き抜いて見せる。

「悪ィ!貸してくれってか、ダメにしちまうから1本くれ!!」

「どうぞ。」

 ヘアピンをそげキング(ウソップ)に渡す。

 針金状に広げ、四苦八苦しながらなんとか手錠(てじょう)を外そうとするものの、なかなか上手くいかないようだ。

「おい、お前たちっ!!!」

手錠(てじょう)の番号を言え!!」

「番号!?」

 カクとジャブラの唐突(とうとつ)(うなが)しに、そげキング(ウソップ)が聞き返す。

「どの鍵がどの手錠(てじょう)のものか分かるように、手錠(てじょう)と鍵にはそれぞれ番号がふってあるんじゃ。わしら2人の持つ鍵で開く手錠(てじょう)なら、すぐに外してやる。」

「え!?本当か!!?」

「え~っと…。あった!これか!」

 カクの言葉を受けてジャスミンが手錠(てじょう)の番号を探す。

「良し!何番だ!??」

「2番ですね。」

「2番だ!!!開けてくれ―――――――――!!!」

 そげキング(ウソップ)の叫びに、カクとジャブラがそれぞれ自分が持っている鍵を確かめる。

 が、

「外れだ。」

「わしもじゃ。残念。」

「何だよ、期待持たせやがって!!」

「じゃあ、他の2人の“CP9”の持ってる鍵ってことか…、ってオイ!ジャスミン!!お前が持ってる鍵は!!?」

「あ。」

 完全に忘れていた。

 (あわ)ててジーンズのポケットを探る。

「え――――と…。」

「頼むぞ…!今となっちゃ、それが最後の希望だ!!!」

「4番。」

「だああああ!!」

「お前も外れかよ!!チクショ―――――!」

「………なんか、すいません?」

 思わず謝ってしまった。

「仕方ねェ。先に……!」

 ドッ!ドウ!

 チッ!

 ジュッ!

 ドッガァアアン……!!!

「『先に殺した方が勝ち』、とでも言うつもりならこっちも一切容赦(ようしゃ)しないので、そのつもりで。」

 ジャブラが唐突(とうとつ)に切り出した、次の瞬間だった。

 カクとジャブラ、それぞれにジャスミンの気功波が放たれる。

 放たれた気功波は、それぞれカクの帽子を(かす)り、またジャブラのヒゲを片方焦がして向かいの壁を破壊した。

「「…………。」」

 カクとジャブラはお互い顔を見合わせた後に後ろを振り返り、ジャスミンが開けた壁の大穴を確認して再びジャスミンを振り返る。

「あ――――…。先にそのヘアピンで手錠(てじょう)外しちまえ。」

「そうじゃな。それくらいは待ってやるわい。」

 何て華麗な手のひら返しなんだ。

 ゾロとそげキング(ウソップ)の胸にそんな言葉がよぎる。

 そして、その様子を見たそげキング(ウソップ)は内心思った。

 コイツ1人いれば十分じゃねェかな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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