摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第35話更新です!
お気に入り登録1600人越え、感想・評価などありがとうございます!
なんだか、閲覧数がえらいことになっていてちょっと怖いですが嬉しいです!!
さて、次回からいよいよスリラーバーク編です!

今週ちょっとばたばたしてまして、少し更新が遅れるかもしれませんが、どうか気長にお待ちください!


第35話 遂に賞金首!さよならウォーターセブン

 ━翌日、特設海賊ルーム━

 ドカァ…ン!!!

「ふぁっ!!?」

 不意に響いた破壊音に、ガバッと身を起こす。

 そこで初めて、ジャスミンは自分がそれまでベッドに寝かされていたことに気が付いた。

「何だ……!!!」

「誰だァ!!!」

 サンジやフランキーたちが騒いでいるのが分かるが、今の今まで眠った記憶も無く寝ていたらしいので、そもそもの状況が理解出来ない。

「え?え?」

 思わず周りをキョロキョロと見回すが、周りの人間もいまいち状況を把握(はあく)出来ていないらしいので、誰も説明してくれる者はいなかった。

「お前らか……。“麦わらの一味”とは…。」

 そう言いながら壁に開いた穴から、犬を模した帽子を被った老人がゆっくりと入ってくる。

「モンキー・D・ルフィに会わせたい男たちがおるんじゃが……。」

「海軍……!!!」

 警戒するサンジたちの声で、その人物が海軍ということに気付くが、寝起きでは相変わらず回転の悪い頭ではその次の行動を見送るしか無かった。まぁ、殺気や敵意は一切感じられなかったというのも大きいが、第一に

「起きんかァ~!!!」

 ドカァン!!!

「い!?痛ェ――――――!!!」

 いくら賞金首相手とは言え、出会(であ)(がしら)唐突(とうとつ)に殴り付けるような海兵がいるとは思わず、ルフィもまた大人しく殴られるとは思っていなかったので。

 それにしても、いきなりテーブルごと床をぶち破るようなパンチを繰り出すとは…。しかも、今の一撃は敵意が無いながらも強い“気”が込められていた。

「痛ェ!?何言ってんだ、パンチだぞ今の!!ゴムに効く訳……!」

「今、一瞬(こぶし)が“気”を(まと)って…。」

 サンジが驚愕のあまり叫んだのを受け、まだ眠気が取れずにボケっとしているジャスミンが呟くが、“ゴム人間”が打撃に痛がっている、という衝撃的な事実が大き過ぎて誰も気が付かなかった。

「愛ある(こぶし)は防ぐ(すべ)無し!!随分(ずいぶん)暴れとるようじゃのう。ルフィ!!」

 そう言いながら帽子を外した老人の顔を見て、ルフィが叫ぶ。

「げェ!!!じ…、じいちゃん!!!!」

「「「「えェ!!?じいちゃん!!?」」」」

「どーりでルフィくんと“気”が似てると思った………。」

 周りが驚愕に叫ぶ中、ジャスミンのぽやっとした声が間延(まの)びした様子で響く。

 

「ルフィ、お前。わしに謝らにゃならん事があるんじゃないか!?」

 仁王立(におうだ)ちして言い放つ老人(ガープ)に、若干(じゃっかん)ルフィが萎縮(いしゅく)しているのを感じるが、敵意も害意も感じない為、下手に関わらないことに決めた。

 何より、家族間のことに他人が口を出すものでは無いので。

 それに、目の前にいる海軍の英雄(ルフィの家族)よりも優先しなければならない相手が他にいるようだ。

 それにしても、海軍の英雄がルフィの祖父だったとは、すっかり頭から抜けていた。名前と存在はこちらの世界では有名だった為、(うわさ)程度に聞いたことはあったが…。

(言われてみれば、名字(みょうじ)が一緒だった……。)

 まだボーっとしている頭で考えながら、ベッドの下に(そろ)えてあったスニーカーを()く。

「うぁ…っとっと…!」

 立ち上がった途端(とたん)、激しい眩暈(めまい)と頭の内側から打ち付けるような頭痛がジャスミンを襲う。

 バフンッ!

「あれ?」

 (かたむ)いた自分の体を支え切れずに、ベッドに尻餅(しりもち)を着く。

「あら、起きたのね。」

 かけられた涼し気な声に顔を上げる。

「ニコさん…。」

「おはよう。良く眠っていたわね。」

 見れば、ロビンがジャスミンに気付いて近付いてくるところだった。他の者たちはルフィと老人(ガープ)のやり取りに意識がいっているのか、こちらには気付いていない。

「おはようございます。…あの私、昨日一体いつ寝たんでしょうか?」

 フラフラする頭に手をやりながらロビンに尋ねる。

「時間的には夜の10時くらいかしら。覚えてる?昨日、あなたのことを色々聞いているうちに、ジュースと間違えて私とナミ用だったカクテルを飲んじゃったのよ。グラスに半分くらいだったからそれ程量は飲んでいないし、度数も大したことは無い(はず)だけど、お酒に弱かったのね。それお酒よ、って声をかけようとした時にはもうコテン、と寝ちゃってたからベッドに寝かせたの。」

「そ、それは大変なご迷惑を……。」

 笑いながら告げられた言葉に、思わず顔が赤くなるのを感じる。

 これで頭痛と眩暈(めまい)の原因が分かった。明確な二日酔いである。

 それにしても、いくら何でも酒とジュースを取り違えるとは、帰れる目途(めど)が立ったことで気が緩んでいたのだろうか…。

「気分はどう?頭は痛くない?」

「頭痛と眩暈(めまい)が少し…。でも、大したことはありません。」

「立派な二日酔いね。ちょっと待ってて、お水持って来てあげるわ。」

 クスクスと笑いながらロビンが一旦その場を離れる。

 身動きするとガンガンとした痛みが頭を襲う為、こめかみをゆっくりと()みながら周囲に目をやる。

「うわぁ…。」

 ルフィと老人(ガープ)のやり取りを見れば、何故か説教の最中に眠ってしまったらしいルフィが老人(ガープ)にしこたま殴られているところだった。

「そもそも“赤髪”って男がどれ程の海賊なのか解っとるのか!?お前は!!」

「………!?シャンクス!?シャンクスたちは元気なのか!?どこにいるんだ!?」

「あれ、“赤髪”って確か“四皇(よんこう)”の1人じゃ………?」

 ルフィの麦わら帽子が“預かり物”ということは覚えていたが、まさか相手が“四皇(よんこう)”だったとは覚えていなかった。

 “赤髪のシャンクス”と言えば、“新世界”に君臨(くんりん)する4人の大海賊のうちの1人。まさか、ルフィとその大海賊に繋がりがあったとは……。

 いやまぁ、仮にも主人公なのだからそんな過去があってもおかしくは無いのだが。

 ジャスミンがそんなことをつらつらと考えている間にも、老人(ガープ)の話は進んでいく。

「この“四皇(よんこう)”を食い止める力として“海軍本部”、そして“王下七武海(おうかしちぶかい)”が並ぶ!!この“三大勢力”がバランスを失うと世界の平穏(へいおん)は崩れるという程の巨大な力…。」

「良く分かんねェけど、元気なら良いや。(なつ)かしいな――――――…。」

「か、軽い……。」

 ルフィの大雑把(おおざっぱ)さにジャスミンが思わず呟く。

 何だろう、この軽さは。何だか、(すご)く身近なところでこういう人を1人知っている。

(悟空さんにそっくり…。ジャンプの主人公ってみんなこうなの?)

 血の繋がりは一切無い(はず)なのだが。

「まさか、ルフィの麦わら帽子があの“赤髪”から預かっているものとは知らなかったわ。」

 いつの間にか戻ってきていたロビンが呟く。

「その(すご)さを全く理解していない辺りがルフィくん、って感じですけどね…。」

 差し出されたミネラルウォーターのボトルを、礼を言って受け取りながらジャスミンも同意した。

 1口、2口と水で(のど)(うるお)していくうちに、自覚は無いまでもかなり(のど)が乾いていたことを知る。気が付けばボトルの半分をゴクゴクと一気に飲んでしまっていた。

「ぷはっ…!」

「少しは気分が良くなったかしら?」

 息継(いきつ)ぎの為、ボトルから一旦口を離したのを、見計(みはか)らいロビンがジャスミンへと声をかける。

「お陰様(かげさま)で、大分良くなりました。」

 どうやら二日酔いだけでなく、軽い脱水症状も起こしていたようだ。水を補給したことで、身動きする度に襲っていた頭痛と眩暈(めまい)も大分マシになってきた。

「それは良かったわ。」

 クスクスと笑うロビンに軽く頷き、残りの水を(あお)った。

 わーわー…!

 ガキィ…ン!!!

 キィ…ン!!

「ん?」

「?なにかしら?」

 壁から開いた穴から、外の騒ぎが伝わってくる。

「ロロノアさんが外で暴れてるみたいですね。」

「ゾロが?」

「はい。まぁ、ロロノアさんを何とか出来るような実力者はいないみたいですし、ルフィくんのお祖父さんもこの場で捕まえようとしている訳じゃないみたいなので、私もちょっと私用(しよう)で出かけて来ますね。」

 水を飲み干し、今度こそ立ち上がる。

「早めに戻って来た方が良いわよ。今日はバーベキューですって。もちろん、あなたの分もあるわ。」

「それは楽しみです。」

 悪戯(いたずら)っぽく笑ったロビンに微笑(ほほえ)み返し、ルフィやゾロが暴れているのを尻目(しりめ)に海賊ルームを後にした。

 

 ━造船島・1番ドック入口━

 仮設本社の周囲には海兵が隙間(すきま)無く囲っていたが(まるで砂糖(さとう)(たか)(あり)のようだった)、まだ正式に手配されていないジャスミンは、多少の視線を集めながらも基本的にスルーされた為、何の障害も無く出てくることが出来た。

「さて、と…。わざわざ差し向けられた追手がルフィくんのお祖父さん、ってことはあの時の“約束”を守っていただいた、と思って良いんですよね?」

 辺りにいるのは海兵たちのみ。少し前までドック入口前を固めていた島民たちは、海兵たちによって家へと帰されたようだ。

 そんな中、突然“誰か”に向かって喋り出したジャスミンに、周囲の海兵たちが何事かと視線を向けるが、すぐに驚愕に目を見開く事となった。

「ああ。男が1度口にした事だ。センゴクさん、元帥には上手く言っといたよ。まぁ、ガープ中将が来たのは別におれが何かした訳じゃなくて、あの爺さんが勝手に来たんだけどな。」

 カツリ、と革靴を鳴らして現れた男に、周囲にいた海兵たちが(どよめ)く。

「た、大将・青雉(あおキジ)!?」

「何故ここに??!」

 周囲の激しい動揺を全く()(かい)する事無くジャスミンに歩み寄った青雉(クザン)に、ジャスミンもまた向き直る。

「ところで、何故わざわざ大将さんがここに?」

「“麦わらの一味”のニコ・ロビンとは多少の因縁(いんねん)があってな…。ちょっと直接確かめたいことがあったのよ。」

「…この場でどうこうしよう、って訳でも無いみたいですね。」

「ああ。この島で仕掛ける気はねェよ。おれが暴れちゃ、他の島民に迷惑がかかる…。“約束”通り、この島の奴らにゃ手を出さん。」

 ダルそうに頭を()きながら断言した青雉(クザン)微笑(ほほえ)む。

「それを聞いて安心しました。」

「良く言う…。“島民に手を出すな”ってのは、最初からそれも狙っていたんだろ?」

「さぁ?どうでしょう?」

 呆れたような青雉(クザン)に、ふふっ、と笑いながら返す。

「それじゃ、今度こそ2度と会わないことを願ってます。」

「ああ。お互いの為に、な……。」

 (きびす)を返し、その場を離れようとしたジャスミンの背中に、思い出したような青雉(クザン)の声がかかる。

「!ああ、そうそう…。明日の新聞には今回の一件が()(はず)だ。手配書を、楽しみにしてると良い。」

 

 どこか楽し気にも聞こえる声で告げられた言葉の本当の意味を、ジャスミンが悟ったのはその更に翌日のこと。

 夜通し行われたバーベキューパーティーを存分に楽しんだ翌朝のことだった。

「あの言葉はこういう意味か……。」

 予想はしていたが、予想以上の額に呆れた声を()らした。

DEAD(デッド) OR(オア) ALIVE(アライブ)・“中将(ごろ)し”ジャスミン。懸賞金(けんしょうきん)3億8,000万B(ベリー)

「“中将(ごろ)し”って…。殺して無いってのに……。」

 初頭手配で億超え、しかも3億を超えたとなると異例中の異例と言える。

 新聞によると、“麦わらの一味”では無いが一味の共犯者であり、“バスターコール”の艦隊をほぼ1人で壊滅させ、5人の中将と100人の精鋭を相手取った、とある。

 (おおむ)ね間違ってはいないが、新聞ではジャスミンをかなり好戦的な危険人物として扱っており、詳細(しょうさい)は不明だが“悪魔の実の能力者”として紹介していた。

 「まぁ、そこらへんは勘違いされても仕方無いけど……。それにしても、我ながら悪そうな顔で写ってるなぁ……。」

 一体いつの間に撮られていたのか、挑発的な笑みを浮かべるジャスミンの顔が真正面から写されていた。恐らく青雉(クザン)と交渉している時に撮られたと思われるが、かなりの遠距離で撮られたのだろう。全く気付かなかった。

「ま、良いか。」

 青雉(クザン)は言葉通りにきちんと“約束”を守ってくれたようで、パウリーたちガレーラカンパニーの人間やフランキー一家の事は一切書かれていなかった。

 それが分かった以上、これ以上ウォーターセブンに留まる理由は無い。

 

 それから1時間と経たずに、ジャスミンはココロに言伝(ことづて)を頼んでウォーターセブンを後にした。最後のドラゴンボールを見付けたら、帰る前にルフィたちに挨拶(あいさつ)すれば良い。

 そう考えての行動だったが、再会の時はジャスミンが考えていたよりもずっと早く訪れる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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