摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第38話更新です!
今回は導入部分の為、次回バトル勃発の予定です。

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第38話 遭遇!もう1人の七武海

 ━“サウザンドサニー号”医療室━

(……この“気”………?確か………。)

 医療室のベッドの中、夢現(ゆめうつつ)にジャスミンは覚えのある“気”を感じ取った。

 以前感じた時には、酷く希薄(きはく)で感じ(にく)かった()()

(間違い無い……。この“気”は…。)

「あの、ゆうれい……。」

 パチ、と目を開きジャスミンが(つぶや)く。

 まだ意識がどこかぼんやりとしているものの、深く眠れた事で体力が回復したのか、先程目が覚めた時よりも気分がスッキリとしている。更に、チョッパーが点滴(てんてき)鎮痛剤(ちんつうざい)を入れてくれていたのか、体中の痛みも大分(だいぶ)(やわ)らいでいた。確かに、痛いと言えば痛い。今は鎮痛剤(ちんつうざい)()いているだけであって、怪我そのものが完治した訳では無いのだから当然(とうぜん)だ。

 実はジャスミンはそれ程痛みへの耐性が無い。これ程にボロボロになる事などほとんど経験が無かったし、時折修行中に怪我をしたとしてもある程度酷いものだったなら、すぐに神殿(しんでん)を訪ねてデンデに治してもらっていたからだ(例えジャスミンが自ら行かなくても、意外と過保護な父によって連れて行かれる事も多かった)。

 しかし、今は呑気(のんき)に寝ている場合では無い。

「っつ………!」

 ゆっくりと身を起こし、右手を何度か開閉させて自身の体調を確かめる。

「これ位なら、いける。」

 だが、ジャスミンとて伊達(だて)に鍛えている訳では無い。体力・気力共に万全(ばんぜん)の状態だったなら、例え常人(じょうじん)なら絶対安静の重傷だとしても、戦えるだけの打たれ強さは備わっている。

 それよりも気になるのは、あの幽霊(ゆうれい)と同じ“気”を持つ誰か‐恐らくはあの幽霊(ゆうれい)を操っていた能力者本人が、この近くをうろついている事だ。

この船(サニー号)の中にいる…。」

 いくら睡眠(すいみん)導入剤(どうにゅうざい)投与(とうよ)されていたとしても、ここまでの接近をみすみす許すとは我ながら情けない失態(しったい)を犯したものである。

 内心で自身に舌打ちながら、周囲を見回す。体力・気力共に戦える程度には回復したが、生憎(あいにく)服が無い。

 その原因を思い出し、再び気分が沈みそうになったものの、今はそれどころでは無い、と自らを(りっ)する。

「ん?」

 ベッド(わき)の回転椅子の上に、何か布とメモが置かれているのに気付く。

「私(あて)?」

 チョッパーからジャスミンに()てた手紙だった。

[ジャスミンへ。体の具合はどうだ?おれたちは、今から(さら)われたナミとルフィたちの影を取り戻してくる。夜明けまでには戻るつもりだ。もし、それまでにお前が起きた時の為に一応メモと、服を置いておく。だけどお前はまだ絶対安静だからな!絶対にフラフラ出歩かないように。トニートニー・チョッパー]

 メモが乗っていた布を広げる。見れば、甚平(じんべい)型の病衣(びょうい)だった。良く病院で入院患者(かんじゃ)が着ているアレだ。

「助かる…!ありがとう、チョッパーくん…!!」

 この際、着られれば何でも良い。ベッドから下り、病衣(びょうい)(まと)う。スニーカーはどうやら処分する程酷く汚れた訳では無かったようで、ベッドの下に(そろ)えてあったのが幸いした。

 スニーカーを()き、1歩足を踏み出した直後。

「……!」

 これまでに感じたことの無い“気”の何者かが突然現れ、その直後にあの幽霊を操っていたらしい能力者が(すさ)まじい速さで“スリラーバーク”から遠ざかっていく。

「っまずいかも…!」

 何があったのかは知らないが、その何者かの近くにナミがいる。この“気”が“麦わらの一味”のもので無い以上、敵である可能性も高い。

 ナミの所へ急ぐ必要があった。

 

 ━その少し前、“スリラーバーク”内ペローナの“不思議の庭(ワンダーガーデン)”━

『出て来ォ―――――――い!!!麦わらの一味ィ―――――――――――!!!!』

 壁をぶち破って城から飛び出し、割れ(がね)のような大声で叫んだのは、およそ40mはあろうかという巨大な鬼のようなゾンビ。巨人族と比べても3倍近く大きく、牛のような巨大な角は歪曲(わいきょく)している為分かり辛いが、5~6mはあるだろうか。

 この世界(ワンピース)において、唯一“魔人(まじん)”の異名(いみょう)を持つ伝説の巨人。“国引(くにひ)き伝説”のオーズ。

 ルフィの影を入れられ、500年の時を()て再び(よみがえ)った狂戦士(きょうせんし)が、“麦わらの一味”に牙を()く。

『“ゴ―ム―ゴ―ム―の~…”』

 オーズがサンジにターゲットを(しぼ)り、オーズが右手を振り上げる。

「ルフィの技だっ!!」

「まさか伸びるのか!?」

「あいつもゴム人間になったのか!?」

 チョッパーとウソップ、ゾロがそれに注視(ちゅうし)する。

『“(かま)”!!!』

 ボゴォン!!!

「うお!!」

 ()り出されたオーズの右手が、サンジの立っていた瓦礫(がれき)(えぐ)り、寸でのところでサンジが()ける。

「の…伸びはしなかった!!…けど!」

「あんだけリーチと破壊力があったら関係ね――――――――っ!!!」

 その破壊力に、チョッパーとウソップの目は飛び出さんばかりである。

「“首肉(コリエ)フリッ…”」

『ふんっ!!!』

 ガン!!!

 サンジが反撃の為、オーズの(あご)()り上げようとするが、それをオーズが頭突(ずつ)きで迎え撃つ。

 ガァンッ!!

「うっ!」

 サンジの体は容易(たやす)()ね飛ばされ、瓦礫(がれき)に突っ込んだ。

 ドゴォンッ!!!

「ぐァ!!!」

 間髪(かんぱつ)入れずにオーズが追撃(ついげき)し、サンジが壁に叩き付けられる。

「あの巨体で何て速さ!!!」

 フランキーが思わず叫ぶが、その(かん)にもオーズがサンジに(せま)る。

 ガララ…

 壁に叩き付けられたサンジが、崩れ落ちた瓦礫(がれき)と共に落下していく。

 オーズの巨大な手がサンジを(つか)み取ろうとした、その時だった―――――――…。

 バキィッ!!

『うおっ!?』

 オーズの手を()り付け、

 ガシッ!

 落下するサンジを地面に叩き付けられる前に(かつ)ぎ、

 ダン!

 着地したのは――――、

「「「「「「「ウサギ!?」」」」」」」

 ジャスミンの影が入れられた、動物(ワイルド)ゾンビだった。

『私が相手になるよ。かかって来いよ、木偶(デク)(ぼう)…!』

『何だァ?お前…!』

 最強(ジャスミンの影)伝説(オーズの体)の戦いが始まろうとしていた。

 

 ━同じ頃、“サウザンドサニー号”━

(くさ)れ怖ェ!!!逃げろ――――――――っ!!!』

『どわあぁああぁあ!!!』

 ゾンビたちが恐れをなして逃げ出すのは、聖書を抱えた7m近い大男。

 “スリラーバーク”の(あるじ)、ゲッコー・モリアと同列(どうれつ)の男。世界政府公認の海賊“王下(おうか)七武海(しちぶかい)”の1人、“暴君(ぼうくん)”バーソロミュー・くま。

「驚いたな…。まさか、こんな短期間にもう1人“七武海(しちぶかい)”と会う事になるとは思わなかったよ。」

「!」

 バッと、くまが振り返った先に、ジャスミンが(たたず)んでいた。

「お前は…、“中将(ちゅうじょう)(ころ)し”のジャスミン……?!」

「別に1人も殺してないけど…。不本意だな、その異名(いみょう)。」

 むっすりとした顔でジャスミンが否定する。

何故(なぜ)、お前がここに?お前自身は“麦わらの一味”では無いと聞いているが…。おまけに、随分(ずいぶん)ボロボロのようだが……。」

 矢継(やつ)(ばや)に投げかけられた問いと、包帯だらけの病衣(びょうい)姿にスニーカーという格好(かっこう)揶揄(やゆ)するかのような言葉に、ジャスミンが渋面(じゅうめん)を作る。

「別に………。それより、それはこっちのセリフなんだけどね。何で、“七武海(しちぶかい)”がこんな所に?ここはゲッコー・モリアの船の(はず)…。」

「お前には、関係の無い事だ…。」

「そう…。なら、こっちもノーコメントにさせてもらうよ。」

 お互い、腹の探り合いだった。こころなしか、周囲の気温が2~3℃下がったような気がする。

「それよりも…。“泥棒猫(どろぼうねこ)”だな…。そこにいるのは。」

 不意にくまがジャスミンから目を()らし、“スリラーバーク”の門の上、(とりで)にいたナミに目を向ける。

「えっ!」

 突然注目され、狼狽(ろうばい)するナミを余所(よそ)にくまが言葉を続ける。

「モンキー・D・ルフィに兄がいるというのは、本当か。」

「い、いるわよ。エースでしょ?……それが何?」

成程(なるほど)…。本当だったか。」

「何なの!?ルフィに用!?目的は何!?本当に“七武海(しちぶかい)”!?」

「何をしようと、おれの自由。」

 聞きたいことを聞くなり、スタスタと歩き出すくまの背中に、ジャスミンが(くぎ)()す。

「あなたがどこで、誰と、何をしようと自由だけど…。ルフィくんたちや私の邪魔をする気なら、容赦(ようしゃ)しないよ。」

 一瞬立ち止まり、くまが(つぶや)く。

「覚えておこう。」

 そして、瞬間的に移動する。

「い、一瞬で…!?」

 ナミが驚愕しているのが分かる。一般人には到底(とうてい)(とら)えられなかっただろうが、ジャスミンの目はしっかり()()を映していた。

「やっぱり能力者だったか……。」

 まぁ、今の問題は()()では無い。何を考えているのか、全く読めないくまの言葉に若干(じゃっかん)違和感(いわかん)を覚えつつ、それどころでは無い、と意識を切り替える。

 ルフィたちの影は原作でも大丈夫だったので何とかなるだろうが、ジャスミン自身も影を奪われてしまったのだ。一刻も早く奪い返さなくては。

 夜明けは、近い。

 

 

 

 




某幽霊娘が不在と分かっているので、ちょっと余裕のあるジャスミン(笑)

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