摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第43話更新です。
今回、やたら長いです。
伏線回収しようとしたら、異様に長くなりまして…。
何はともあれ、お付き合いください。

ご感想、お気に入り登録などありがとうございます!!


第43話 ジャスミンの考察

 ━バーソロミュー・くまの撤退から半日後━

 あちこちが崩れ、中もめちゃくちゃになっているメインマストの屋敷内を、ジャスミンが()()()を探して各部屋を(しらみ)(つぶ)しに回っていた。

 “麦わらの一味”は一旦自分たちの船に戻り、“ローリング海賊団”は中庭で日光浴をしつつ数年ぶりの太陽を満喫(まんきつ)していたが、一先(ひとま)ずの騒動が終結した以上、ジャスミンには何を置いても優先しなければならない事があったのである((ちな)みにジャスミンも一旦サニー号でチョッパーの治療を受けた)。

「どこに隠したんだろ…?」

 (ひと)()ちつつモリアの部屋やダンスホールを家探(やさが)しするものの、なかなか目的の物が見付からない。

 あのマフィアの男に奪われたドラゴンボールとウェストポーチが、どこを探しても見付からないのだ。モリアのような性格ならば、大事な物は自分のテリトリーに隠しているものとばかり思っていたのだが…。

「ここに無いって事は、宝物庫(ほうもつこ)かどこかに移した…?」

 こんな事なら、モリアを叩き起こしてドラゴンボールの在処(ありか)を吐かせるんだった、とジャスミンが溜息を()く。

 既にモリアは気絶したまま部下2人の手によって別の船に乗せられ、スリラーバークを出航している。目を覚ましても面倒なので、モリアをこそこそと運び出す部下たちを黙って見逃がしたジャスミンだったが、今となっては早計(そうけい)だったかもしれない。

 今からでも追いかけた方が良いだろうか、とジャスミンが思案していた時の事だ。

「ジャスミ――――ン…!どこ――――…?」

 不意に中庭の方からナミが呼ぶ声が響く。

「な―――――に――――――?ナミちゃ――――ん?!」

 呼び声に応じ、ジャスミンもテラスから顔を出す。

「あ!いたいた。ジャスミン!!これ、あんたのでしょ――――?!」

 見ればナミが中庭から手を振っているが、その足元には見覚えのあるアタッシュケースと、手には愛用のウェストポーチが握られていた。

「それ!?」

 目にするなり自身の物に間違い無い事に気付く。

 バッと、そのままテラスから身を(おど)らせ、中庭へと着地する。

「それ!どこにあったの?!」

 着地したその勢いのまま、ナミへと駆け寄る。

「やっぱりあんたのだったのね?誰の仕業(しわざ)かは知らないけど、あたしたちの船に他のお宝と一緒に積んであったのよ。ドラゴンボールは全部(そろ)ってるみたいだけど、一応無くなってる物が無いかどうか確認した方が良いと思うわ。」

「ありがとう…!」

 ウェストポーチを受け取り、足元のアタッシュケースを開けた。ドラゴンボールが確かに7つ全て(そろ)っているのを確認した後、ウェストポーチの中を確認する。

 左手が使えないのでもどかしいが、何とかファスナーを開け、地面に中身を並べていく。

「えっとペンライトにケータイ、財布にドラゴンレーダーとカプセルケース…。」

 カプセルケースも中身を確認するが、全てのカプセルがそのまま残されていた。念の為にドラゴンレーダーを起動させるが、故障している様子も無く、正確にドラゴンボールの位置を示しているのが分かる。

 ついでに財布の中身も確認するが、ゼニー札の他にこちらの世界で手に入れたベリー札も抜かれている様子は無かった。あのマフィアの男も、ジャスミンから荷物を取り上げたもののドラゴンボール以外には注意を払わなかったようだ。モリアにしてみても、取り()えずドラゴンボールが手に入れば他の物などどうでも良かったのだろう。

「良かった、全部あるし壊れた物も無いみたい…。」

 無事に見付かった事に安堵(あんど)し、中身を再びウェストポーチに詰め直す。

「良かったじゃない!じゃあ、これで元の世界に帰れるってことね?」

「うん。長かった…。」

 これまでの半年間を思い出し、軽く溜息を()く。

「ところで、いつ帰るつもりなの?もしかして、今日これから…?」

「ううん。ナミちゃんたちはともかく、あまりドラゴンボールを使うところを人目に(さら)したく無いから、適当な無人島でも見付けるつもり。取り()えず、夜になるのを待とうかと思って。」

「だったら、一緒にご飯食べましょ。このままはい、サヨウナラ、じゃあんまりだわ。それに、バーソロミュー・くまがサイボーグだって話、まだ詳しく聞いて無いもの。」

「それは私も気になるわ。」

 ナミの言葉に被せるように、その後ろからロビンが現れる。

「私には分からなかったけど、どこで()()だと判断したのかしら?」

 感情の読めない笑顔を浮かべつつ、ロビンがジャスミンを見詰める。

「ああ、それは…。」

 ジャスミンがそれに答えようとした時だった。

「お―――――い!ナミさん!ロビンちゃん!それとジャスミンちゃん!メシの準備が出来たよ―――――!!」

 ナミたちの後ろから、サンジが呼びかける。それを受け、ジャスミンの腹部がキュルルル…、と切なげな音を立てた。

「あ…。」

 右手で腹部を押さえつつ、恥ずかし気に(ほお)を染めて(うつむ)くジャスミンに、ロビンが思わず(ほお)を緩める。

「ふふっ。続きは食べながらにしましょうか。」

「そうね。特にジャスミンはウォーターセブンを出てから何も食べて無いんでしょ?まずは腹ごしらえね。」

「…はい。」

 (ほお)を染めつつ、ジャスミンがナミたちの後に続く。

 

「「「「「いただきま―――――――す!!!」」」」」

「んんんめ~~~~~!!!」

「こんなうめェ料理食った事ねェ!!!」

「まともなメシすら何年振りだよおれたちァ~~~~!!」

「生きてて良かったァ~~~~~!!」

 晴天の下、並べられたサンジ手製の料理を“ローリング海賊団”や骸骨紳士‐ブルックが嬉々として(むさぼ)っている。無論、“麦わらの一味”も負けじと食べているが、長年まともなものを食べていなかった彼らの勢いはそれほど凄まじかった。

 丸2日に渡って強制的な絶食状態だったジャスミンも、サンジが別メニューとして出してくれたスープをゆっくりと(すす)っていた。ジャスミンを再度診察したチョッパーにより、しばらくは消化の良いものを食べさせた方が良い、と診断された為だ。

 ジャスミン自身が考えているよりも、丸2日に渡る絶食と暴行は彼女の体に負担をかけていたのである。自覚するよりも先に点滴と睡眠である程度回復してしまったのが悪かったらしく、戦闘時のアドレナリンも手伝い本人も気付かなかったのだが、バーソロミュー・くまを追い返した後で気が抜けたのか貧血を起こして再度点滴された程だった(そんな状態で無茶をやらかしていたからこそ、チョッパーがあれ程怒ったのだが)。

 温かいスープを(すす)りながら、ほっと息を()く。空腹を自覚した途端(とたん)どっと疲労が押し寄せていたのだが、温かいものを飲んだ事で体も温まり、それだけでも体が()えるようだった。

「ふぁ…あふ……。」

 しかし、体が温まってきた事で急激に睡魔が襲ってくる。未だ回復し切っていない体は休息を欲しているらしい。

 眠い目を(こす)りつつ、完全に意識が落ちる前に、と話を切り出す。

「それで、ばーそろみゅー・くまのはなしでしたっけ…?」

 ……眠気で頭がフラフラと揺れている上に、かなり舌っ足らずになってしまったが。

「ジャスミン、あんた眠いなら寝ても良いのよ?」

「うふふっ…。」

 律儀(りちぎ)に説明しようとするジャスミンにナミが呆れたような声を出し、ロビンは微笑(ほほえ)まし気に笑う。

「だいじょうぶ…。ふぁ…。私が人の気配で位置とかざっくりとした体調が分かるっていうのは、ナミちゃんは知ってるよね?」

 もう1度大きな欠伸(あくび)をすると、先程よりも幾分(いくぶん)かはっきりとした口調となったジャスミンが続ける。

「ええ、聞いたわ。」

「細かい説明するとややこしい上に長くなるから(はぶ)くけど、私たちはそれを“気”って呼んでる。」

「“気”?」

「はい。気配、オーラ、生命エネルギー…。呼び方は様々ですけど、大元は一緒です。それは生き物なら必ず持っているもの。私の故郷では、極一部の優れた武道家はそれを自在に操る(すべ)を持っています。」

 以前ナミには簡単に説明していたが、本題に入る前に再度ロビンにも説明しておく。

「例えば、“気”を圧縮して体外に撃ち出す“気功波(きこうは)”。体内の“気”をコントロールしつつ放出し、自由に空を飛ぶ“舞空術(ぶくうじゅつ)”。他にも離れた場所にいる相手の“気”を感じ取って瞬時にその場所に移動したり、他人の傷を(いや)したり…。人によって活用方法は様々ですけど、この技術の応用の1つに、特定の相手の居場所を感じ取ったり、敵の強さを測るものがあるんです。本題に入る前に、取り()えずそれを前提として覚えていてください。」

「今わざわざそれを説明するって事は、バーソロミュー・くまの話と関係があるって事なんでしょ?」

「うん。それを説明する為にもう1つ説明しなきゃいけないんだけど…。」

 ナミの質問に同意しつつ、話を続ける。

「実は、私の知り合い…。正確に言うと父の友人の奥さんなんだけど、()()()()()()()()()なんだよね。」

「「え?」」

 ジャスミンの衝撃な発言に、思わず2人も一瞬言葉を失う。

「その人は昔ある科学者に無理やり改造されてサイボーグになったんだけど、その時に体のほとんどを改造されたからか、その人には()()()()()()んだ。いや、正確に言うと()()()()()()()()()()、って言った方が正しいかな?」

「さっき、生き物には必ず“気”がある、と言っていたと思ったけど、その人には無いというのはどういう事かしら?」

 真剣な顔付きになったロビンが姿勢を正す。

「ここからは私の仮説が入るんですけど…。“気”とはあくまでも肉体に宿るもの。サイボーグとして改造された時点で、その人の肉体のほとんどは生来のものでは無く、人工的な生体パーツに代わっています。自我はそのままらしいですし、日常生活も全く問題無く送れていますが、体のほとんどは人工物なんです。主要の脳や内臓のいくつかはそのままらしいですけど、生身の肉体がそれだけじゃ他者が感じ取れる程の“気”を発していない…。極論になりますけど、つまり()()()()()()()()()()()()()()から、“気”を感じ取れない、という事じゃないでしょうか。以前、体内にエネルギーを作る装置が埋め込まれているから、本当は食事をしなくても大丈夫という話を本人から聞きました。お腹は空くけど、別に食べなくても死なないんだって…。だから、だと思います。…すみません、上手く説明出来ないや…。」

「いいえ。何となくだけど分かったわ。今の話を踏まえると、バーソロミュー・くまにも()()()()()()()()のかしら?」

 肩を落とすジャスミンにロビンが軽く微笑(ほほえ)みかける。

「いえ。正確に言えば“気”はありました。でも、()()()()()()()んです。……フランキーさんと同じように。」

「フランキーと同じ?」

「そういえば、あんたフランキーの事聞いてきたもんね?誰が改造したのか、とか…。」

 ナミが思い出したように呟く。

「もし、この世界にサイボーグ技術が普及しているなら厄介な事になるな、と思って。フランキーさんと初めて会った時も思ったんだけど、“気”は大きいのに()()()()()から、(とら)えにくくて…。」

「大きいけど薄いって良く分かんないんだけど?」

「何て言えば良いかな…?感覚的なものだから説明し辛いんだけど、フランキーさんも体の半分は機械で生身じゃないんでしょ?半分機械な分何て言うのかな、大きさの割に密度が少ない、って言ったら分かる?本来なら、フランキーさん位“気”が大きいならもっと力強く感じる(はず)なんだけど、変に弱々しいというか…。」

「良く分かんないけど、サイボーグの“気”?が特徴的、っていうのは分かったわ。」

 …自身の感じた感覚を何とか言語化しようと試みるジャスミンだったが、ナミには通じなかったようだ。

「うん、まぁそこが分かってもらえれば良いや…。」

 完全に理解出来るのは、ジャスミン同様に“気”を感じ取れる者だけだろうと思っていたので、取り()えず肝心なところが通じれば良いや、と途中で説明を諦め、欠伸(あくび)を噛み殺す。

 説明し終わった達成感もあり、いつの間にか始まった大合唱をBGMに、ジャスミンの意識が徐々に遠退(とおの)いていく。何とか意識を繋ぎ留めようとはするものの、既に緊張感の切れた状態では不可能だった。

 

 ふっ、と意識が浮上する。

「あれ…?」

 目の前に広がる天井に、ここどこだっけ…?とまだポヤッとしている頭を必死に働かせるが、自力で答えに辿(たど)り着く前にほぼ答えの声が響く。

「ジャスミン!起きたのか?」

 とてててっと可愛らしく走り寄ってきたのは、“麦わらの一味”が誇る船医‐チョッパーだった。

「ちょっぱーくんがいるってことは…、ここはルフィくんのふね……?」

「おう!お前体力が限界だったみたいで寝ちゃったんだよ!!放っとく訳にもいかないからサニー号に運んだんだ。」

「うわ―――――――。ご迷惑おかけしました…。」

 身を起こしつつ頭を下げる。どうやら再び医療室に寝かされていたようだ。

「私どれ位寝てた?」

 やけに頭が重く、体の節々が痛い。丸1日寝てた、というオチじゃ…、と恐る恐るチョッパーに尋ねる。

「3日だ。」

「……………………ごめん、もう1回。」

「だから3日だって。」

「………マジ?」

「マジ。」

 重々しく頷かれ、事実と悟る。

「だから言っただろ。それだけ体に負担がかかってたんだぞ!!」

「ごめんなさい。」

 再び説教が始まりそうだった為、すぐ様謝る。

「まぁ、分かってるなら良いけど…。それより腹減ってないか?サンジが、いつジャスミンが起きても良いようにスープ作ってくれてるぞ!!」

 キュルルル…!

「…減ってる。」

 現金なもので、スープと聞いた途端(とたん)に自己主張する腹部を押さえ、頬を染めつつ頷く。

「良し!じゃ、用意してもらって来るから待ってろ。そうだ。待ってる間に風呂入るか?」

「え?お風呂あるの?」

 ぜひ入りたい。ウォーターセブンを出てから入れていない為、髪もベタベタで臭いも気になる。

「おう!サニーの風呂は広いぞ!!」

「迷惑じゃなければぜひ。」

「じゃ、ロビンかナミに用意してもらって来るから待ってろよ!!」

「うん。」

 その後、数分で戻ってきたチョッパーに案内され、汗を流す事が出来た。さすがに起きたばかりの為、浴槽に入る事は許されずシャワーだけだったが、生き返る心地だった。

 そして。

「色々とご迷惑をおかけしたみたいで…。すみません、ありがとうございました。」

 食堂にて勢揃いした“麦わらの一味”に謝罪する。

「おう!気にすんな!!」

「こっちこそ助かったからな。」

「色々助けてもらったからお返しよ。」

 ルフィ、ウソップ、ナミを始めにそれぞれ好意的に返してくれた。

「気にする事ねェよ。それより、腹減ったろ?座ってくれ。」

 サンジもジャスミンに椅子を勧め、スープをよそってくれる。

「アウ!まずは食えよ。3日も寝っぱなしじゃ腹減ってるだろ。」

「まずは食べましょう。若いお嬢さんが食べないままは体に悪いですから。ヨホホ!!!」

「うふふ。」

 年長組(フランキー、ブルック、ロビン)の気遣いに恐縮しつつ席に着く。(ちな)みに、ブルックとはバーソロミュー・くまを追い返した後に自己紹介し合っている。

 チョッパーはニコニコとジャスミンを見守っているし、ゾロもウォーターセブンで見せていた警戒は取り去ったようで、好意的とまではいかないが険の無い眼差しをジャスミンに送っていた。

 

 どことなく気恥ずかしい思いをしつつ、食事をいただいた1時間後。

 ジャスミンと“麦わらの一味”は甲板に出ていた。

「じゃ、始めるね。」

「おう!!わっくわくすんな!!!」

 “麦わらの一味”からやや離れた所に立ったジャスミンが、手にしたアタッシュケースを開き、ルフィに断る。ルフィを始め、“麦わらの一味”の興奮もピークに達していた。

(やっと帰れる…。)

 ジャスミンも興奮を抑え、口を開く。

()でよ神龍(シェンロン)!!!そして願いを叶えたまえ!!!!!」

 カッ!!!!

 アタッシュケースに納められた7つのドラゴンボールが(まばゆ)く光り、昼間にも関わらず空が暗く(かげ)った。

 神龍(シェンロン)が、現れる―――――――――。

 

 

 




用語解説
・18号…以前も紹介した、クリリンの妻でマーロンの母。永久エネルギー炉を持つ人造人間(サイボーグ)で、クリリンより強い。

作中のサイボーグ及び18号についての解釈について
・ドラゴンボール世界において、“人造人間(サイボーグ)”は“気”が無い、と明言されている為、ワンピース世界とつり合いを取らせる為に独自に解釈しております。また、それを強調する為に原作では描写の無い「18号は永久エネルギー炉により、本来食事を必要としない」というねつ造設定を付けさせていただきました。
ドラゴンボール世界の正史(未来トランクスの世界)において、17号と18号が食事をしている描写が無いこと。+破壊にも遠慮が無い為、食料などの心配を一切していない(食品工場や生産する人間に気を使うような描写が無い)という点から解釈させていただきました。
賛否両論あると思いますが、二次創作という事でご了承くださいませ。

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