摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について 作:ミカヅキ
さて、今回はいよいよキャラと絡みます。話の展開上、微妙なところで切りましてが、次話ではもっと絡む筈…。……たぶん。
人気の少ない場所を探し、そっと上陸する。
ドラゴンレーダーを確認すると、この場所から1km圏内にドラゴンボールの反応があった。
周囲を見回すと、人気は全く無いが足元から絶えず巨大なシャボン玉が浮き上がってきている。
そしてこの地面は巨大なマングローブの上に乗っており、何10本とマングローブが集合して島のようになっているのがわかった。
「ここって確か「ワンピース」に出てくる島だったよね………?」
前世でハマった漫画の1つに確かに出てきていた。少なくとも15年は昔の話なので作品の詳細を覚えている訳ではない。しかし、主要キャラクターや印象的な場所はまだ覚えている。
(まさか……。)
急速に自分の中で嫌な予感が膨らんでいくが、冷静になろうと努める。
「…気を探れば良いんじゃん!」
しばらく深呼吸しているうちに思いつく。
むしろなぜ半日も思い至らなかったのか。自分で思っていたよりもどうやら焦っていたらしい。
意識を集中させ、最も馴染んでいる
「ウソ……。」
ずるずるとへたり込む。
確かに皆、普段は気を抑えて暮らしているが、戦闘中でもないのに0にするまで隠すことは無かったし、どれだけ距離があっても親しい相手の気なら見つけることができていた。
だが、今はそれができない。すなわち、探している相手が地上にも天界にも存在しないことを示していた。
(トリップしちゃった…?)
転生したと思ったら今度はトリップするとは。自分の人生、ちょっと波乱に満ち過ぎてはいないだろうか。
「落ち着け……。大丈夫、ドラゴンボールがある。必ず帰れる……!まずしなきゃいけないのは、お金を稼ぐこと。それから、なるべく早くドラゴンボールを集めること…!!」
やるべきことを口に出し、深呼吸していくうちに徐々に落ち着くことができた。
できるだけ早くドラゴンボールを集めたいところだが、この世界は危険が多い。それに、基本的な戦闘力はドラゴンボールの世界よりも高いだろう。少し気を探っただけでも一定以上の強さの人間がゴロゴロしている。
(たぶんこれが海賊とか海兵なんだろうな………。)
もしかしたら賞金稼ぎも含まれているかもしれない。
しかも、ワンピースの世界は確か世界情勢も不安定だった気がする。場所によってはドラゴンボールを見つけてもすぐに手に入れることができない可能性も高い。それに、骨董品屋に売られていたように既に誰かが所有してしまっている可能性もあるのだ。お金はあるに越したことは無い。
その為には、ある程度資金を稼いでこの世界の紙幣を手に入れる必要があった。
「よし!」
気合を入れ直して立ち上がる。まずは近くにあるドラゴンボールを回収するのが先決である。
近くのマングローブを見上げると「12GR」の文字が書いてある。ドラゴンボールの反応はその先からのようだった。
(それにしても……。)
「荒れてるな~、この辺。」
はて、漫画では主人公たちが土産物屋などで遊んでいたような記憶があるのだが…。
(こんなところも出てきたんだっけ?)
やはり記憶が薄い。15年以上前のことなので無理もないが。
そんなことをつらつらと考えているうち、ふとあちこちに散らばっていた周辺の人間が集まり始めているのに気付いた。
(6人…?違うな、7人だ。)
囲まれている。つかず離れずの距離を保ちつつ、徐々にジャスミンを包囲していた。
この諸島の中でもそこそこの強さのようだったが、あくまでもドラゴンボールの世界の一般人に比べればの話である。
(海賊かな?)
撒くのも倒すのも簡単だが、他に仲間がいても厄介なので取りあえず相手側が行動を起こすまで知らぬ顔をしておく。
ざっ……!
前に3人、後ろに4人それぞれ厳つい男たちが姿を現した。
「嬢ちゃん、こんなところ1人で歩いてちゃ危ないぜ?」
「そうそう。売り飛ばしてくださいって言ってるようなもんだ。」
前に立った3人のうち2人がニヤニヤとしながら話し出す。どうやら人攫いの方だったらしい。
(テンプレ過ぎてどんなリアクションをすれば良いのやら…。)
こういう如何にもなセリフを言って反応を見るのが楽しいんだろうなぁ、と思わず思ってしまった。
「……急いでるので、そこ通してもらえませんか?」
何かもう、反応を返すのもめんどくさかったが、無視もどうかと思ったので取りあえず正論で返してみる。
「お前状況わかってんのか?!ああ!!?」
「なめてんのかゴラァ!!!」
何というか、セリフとリアクション全てがテンプレ過ぎて逆に面白くなってきたが、こちらがわざわざ付き合ってやる義理は無い。
「まぁ、良いや。通してくれる気無いんですよね?」
軽く手足を回して柔軟を行いつつ一応尋ねてみる。
「当たり前だろうが!!」
「大人しく捕まった方がケガしなくて済むぜ?」
「…ああ、うん。そこまでテンプレでこられるとこっちも遠慮無く抵抗できます。」
「あ?何言ってんだコイツ?」
「先に仕掛けてきたのはそっちなので…。正当防衛ですから。恨まないでくださいね!」
言い終わると同時に踏み込み、前に立つ男たちのうち真ん中の鳩尾に正拳突きを、その右隣の男の顎に掌底を叩き込み、振り向きざまに左隣の男の側頭部に後ろ回し蹴りを食らわせた。
その間、時間にしてわずか0.7秒。そして、間髪入れずに後ろに立っていた残りの4人も、それぞれ全員纏めて1秒かからず沈められる。
何が起こったのか理解する暇も無かっただろう。
「よし。……さあ、行こ。」
男たちをそのまま放置して再度歩き出す。
ピッピッピッ……。
(レーダーだとこの辺りの筈なんだけどなぁ。)
先程の「12GR」と書かれていたエリアから移動して、現在は「13GR」である。
辺りを見回していると、不意に上から人間が降ってきた。
「わっ!」
軽く後ろに跳んで避けると、立て続けに3人降ってきた。全員がステレオタイプの海賊といった格好をしている。
そこそこボロボロにやられているが、命に別状は無いようだった。
ちょうど「13GR」と書いてあるマングローブの根に階段が作られており、そこを転がり落ちてきたようである。
「なんでこんなところから…。」
まじまじと見ていると、階段の途中に光るものを見つけた。
「あった!
拾い上げカプセルから出したケースにしまい込む。ケースをカプセルに戻しつつ、階段から上を仰ぎ見る。
下にいた時には気付かなかったが、どうやらマングローブの根っこの上に家が建っており、先程の男たちはここから落ちてきたらしい。
気を探ってみると、先程ジャスミンを襲ってきた人攫いたちよりもよほど大きな気が1つ。
(襲おうとして返り討ちにされたってところかな。)
そう結論付けると、ジャスミンは気をより多く感じる方向へ歩みを進めた。実際には男たちの方こそ法外な金額をぼったくられて襲われた被害者であるのだが、ジャスミンにとっては知る由もないことだった。
彼女にとっては2度と会うことも無いだろう海賊よりも、人通りの多いところで情報収集を行うことが最優先だったからである。
「17GR」、後少しで観覧車の見えるエリアに辿りつこうとしていたところで、ジャスミンは再び襲われた。今度は先程よりも大人数で、20人弱はいるだろう。
「ここ、ほんとに治安悪いなぁ、もう!」
文句を言いつつ、流れるような動きで襲ってくる男の攻撃を受け流し、手刀と鳩尾への1撃で次々と沈めていく。
(誰か見てるけど…。)
特に悪意は感じないが、確かに視線を感じる。どちらかと言えば面白がっているような感じだろうか?
この諸島の誰よりも強い、また静かな気である。
(強いなこの人。)
戦闘力の高さで言ったら自分の方が上だろうが、この気は数々の実戦を潜り抜けてきた戦士の気である。仮に戦っても、経験で翻弄させられた挙句に遊ばれそうな予感がする。
「はっ!」
最後の1人を蹴り飛ばし、他に仲間がいないことを確認してから視線の感じる方向へと目を向けた。
「何か用ですか?」
「おや。これはこれは、気付かれていたとは…。」
そう言ってマングローブの根の影から出てきたのは、肩までの長さの白髪をオールバックにした、屈強な老人だった。
「予想以上に見どころのある娘さんのようだ……。」
読んでいただいてありがとうございます。ついでに評価をいただけたりしたら、小躍りして喜びます。
さて、主人公の服装について一切説明していなかったので、この場で軽く説明させていただきます。
基本的にボーイッシュです。パーカーが好きで、だいたい普段着はパーカーにジーンズ、ハイカットのスニーカー(イメージはコン○ース)です。
髪は邪魔にならないようにだいたいはポニーテール、たまに三つ編みにしてます。トリップ当時はポニーテールなので、表記が無い限りポニーテールだと思ってください。
そして次は用語解説です。ドラゴンボールご存知の方は見なくても大丈夫です!
次回更新は、うまくいけば今夜にでもアップします!それが無理だったら少し間が空くと思いますので、どうか気長にお待ちください。
・気…ワンピース世界における「覇気」の概念とほぼ同じ。主人公が良くしている「気を探る」というのはワンピースでいうところの「見聞色の覇気」のようなものだと考えていただければ大丈夫です。
・天界…デンデやピッコロらが暮らす神殿のことを指す。