摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第46話更新です。
さて、前回何となく予感していた通り、再会まで持っていけませんでした…(汗)
“最悪の世代”との絡みを期待している方々がいらっしゃいましたので、ちょっとニアミスさせてみました!
最後に登場した人物がわかる方はいらっしゃるでしょうか?一応ヒントは入れたので、そんなに難しくないとは思いますが、ぜひ予想してみてください!!


第46話 集い来るルーキーたち

 ━シャボンディ諸島53番GR(グローブ)

 “サウザンドサニー号”から飛び立つ事およそ3時間。ジャスミンは夕闇に(まぎ)れ、シャボンディ諸島に上陸していた。以前手に入れた分布(ぶんぷ)図を参考に、コーティング職人を探す為である。

 コーティング職人の中で、最も腕の良い職人を探すべく、造船所やコーティング工場(こうば)の多いエリアに降りたのだが、間の悪い事に現在連日新聞を(にぎ)わせている海賊たちが多く上陸しているのに気付き、“ヤルキマン・マングローブ”の枝の間から下を見下ろしていた。

(何だってこんなに同時期に…。)

 上陸する前に上空から見下ろした際、やけに海賊船が停泊しているのを見て咄嗟(とっさ)に地面では無く樹の上に降りてそのまま身を隠したのだが、眼下に群れを成す海賊たちの姿に(まゆ)(ひそ)める。

 その中でも、コーティング職人らしき男を脅し付ける赤い髪の男の姿がジャスミンの目に留まった。“ルーキー”と呼ばれる海賊たちの中でも特に悪名(あくみょう)高い“キッド海賊団”船長ユースタス・“キャプテン”キッドに間違い無かった。

((うわさ)通りの粗暴(そぼう)さ…。下手に顔を合わせると厄介な事になりそう…。)

 無駄に(いさか)いを起こして海軍の目を惹くのは避けたい。このまま彼らが去るまで、樹の上でやり過ごそうと考えていた時だった。

「ん?」

(?!)

 “キャプテン”キッドの隣に立っていた仮面の男‐“殺戮(さつりく)武人(ぶじん)”キラーが、突然ジャスミンの隠れている枝を見上げ、ジャスミンが慌てて彼らの死角に入る。

「あ゛?どうした、キラー。」

 ドサリ、と胸倉を(つか)んでいたコーティング職人を離し、“キャプテン”キッドが(かたわ)らのキラーに問う。

「いや、誰かに見られているような気がしてな…。」

「何ィ?」

(ヤバッ…!)

 バッとキラーの視線を追った“キャプテン”キッドに、ジャスミンが内心焦る。

 別に争いとなっても負ける気はしないが、仮にもルフィよりも懸賞金が上の大物“ルーキー”である。大事になって海軍の目を惹くのは本意では無い。

「確かめるか…!」

 “キャプテン”キッドがジャスミンが隠れている辺りに向かって右手を突き出した。

(何をする気…?)

 ジャスミンが疑問に思ったその瞬間、バチィッと“キャプテン”キッドの右手が、何かが()ぜたような音を放つ。

 ジ…ジジ……!

 その途端(とたん)、左手の腕時計が微かなノイズを放ち、画面に乱れが生じた。製品の性能と保証にかけては世界一と(うた)われるカプセルコーポレーション製のデジタルウォッチである。去年の誕生日にもらったばかり、おまけに送り主であるトランクスが修行中でも着けていられるように、と特別頑丈(がんじょう)に改造してくれたものだ。何もしていないのに壊れる(はず)が無い。

 (いぶか)し気に時計を見つめていると、不意にその腕時計と腰に着けているウェストポーチがグイッと()()に引っ張られる。

「え…?!」

 よろけかけた体を咄嗟(とっさ)に踏ん張りながら、思わず声を上げてしまい、はっと口を(おさ)えた。

「!本当にいやがったか…!コソコソと()ぎ回りやがって、引き()り出してやるよ…!!」

 バチバチッ…!

 再び何かが()ぜたような音が響き、次の瞬間、グンッと引っ張られる力が急激に強くなる。

(マズい……!)

 不安定な足場では踏ん張るのも限界がある。左手ごと腕時計を引っ張られているだけでもバランスを保つのに精一杯なのに対し、ウェストポーチを引っ張られているせいで腰までもっていかれそうだった。

 何とか足を踏ん張り、右手で目の前の枝に抱き着いて耐えているが、引っ張る力はどんどん強くなっていく。

 舞空術(ぶくうじゅつ)で逃げようにも、引っ張る力が強過ぎる。体を浮かせようとした瞬間に、力負けして“キャプテン”キッドへと引き寄せられてしまうだろう。

(仕方無い…!)

 バシュッ…!

 右手で枝に力一杯抱き着いたまま、引っ張られている左手で何とか狙いを定め、気功波(きこうは)を放つ。

 ドゴッ!

「!何だ?!」

 放たれた気功波(きこうは)が“キャプテン”キッドの足元が(えぐ)れ小さなクレーターを作り、それに気を取られたのか引っ張られていた力が一瞬消えた。

 その瞬間、

(今だ……!)

 ドシュンッ………!!!

 ジャスミンがその(すき)を見逃す(はず)も無く、一気にスピードを上げた舞空術(ぶくうじゅつ)で上空へと逃れる。

 キイィイ………ン……!!

「ふう…。ここまでくれば大丈夫か……。」

 超高速で上空2000m程まで一気に上昇したので、“キャプテン”キッドたちにはジャスミンを目視する事は出来なかっただろう。

(それにしても、“気”は完璧に消してた(はず)なのに…。)

 流石(さすが)は億超え、と言ったところか。

 腕時計に目を落とせば、ノイズはすっかり収まり画面も元に戻っていた。ウェストポーチを確認すると、スマホがさっきの腕時計同様にノイズを発し、画面も一部がバグが発生したようにおかしい。

「げ…!まさか壊れた?!」

 慌てて音声認識のガイドアプリを起動させようとするが、応答は無く画面にタッチしても全く反応しない。一縷(いちる)の望みをかけて再起動をかけると、通常通りのホーム画面が現れる。

 先程とは異なり操作にも反応するが、念の為に機種の状態をセルフチェックするアプリを起動させ、本当に問題が無いかを確かめる。

 ピンポーン…!

『強力な磁気(じき)を感知しました。その影響で、一時システムに異常が発生しましたが、現在は全ての機能が復旧しています。』

 セルフチェック終了と同時にガイドアプリも復旧したらしく、音声で報告があった。

磁気(じき)?!そうか、だから時計とウェストポーチに入れてたスマホが引き寄せられて…。」

『発生の原因は不明。先程の磁気(じき)を解析し、システム保護の為のアプリを作成しました。』

「システム保護アプリ?」

『次にその磁気(じき)を感知した場合、データバックアップとシステム保護の為に自動的にシャットダウンします。』

「そのアプリが起動するまでの猶予(ゆうよ)は?」

磁気(じき)が発生してからおよそ0.07秒。磁気(じき)の影響範囲は半径200m以内と推定。』

「そのアプリが起動しても故障する可能性は?」

『半径100m以内の接近で14.9%。半径50m以内の接近で36.7%。半径2m以内の接近で56.3%。』

「…なるほど、近付き過ぎると危ないって事ね……。」

 出来るだけ“キャプテン”キッドには近付かない方が良さそうだ、と判断したところでガイドアプリを終了してウェストポーチに戻す。

 さて、これからどうするかと意識をコーティング職人探しに移した。

 今すぐにさっきの場所に戻る訳にはいかない。50番代のGR(グローブ)はシャボンディ諸島で最も造船所やコーティング工場(こうば)の多いエリアだが、今となっては違う番号のGR(グローブ)に行くのも危険だろう。“キッド海賊団”の人間がジャスミンを探している可能性が高い。

(と、なると…。もう1つの可能性に賭けるしか無い訳だけど………。)

 半年前に遭遇した老人を思い出す。

(出来ればあの人には会いたくないな……。)

 悪印象を持っている訳では無いが、あのテの()()()()タイプは正直(しょうじき)なところ苦手なのだ。おちょくられそうで。

「…そんな事言ってる場合じゃない、か……。」

 原作でサニー号をコーティングしたのがどんなコーティング職人だったかは覚えていないが、彼らがバーソロミュー・くまと交戦し、能力であちこちに飛ばしたのは覚えている。確かルフィだけが()()()()大暴れしていたのも。

(何でルフィくんだけあんなに大暴れしてたんだっけ?)

 何か、とても大事な事を忘れている気がするのだが。…正直(しょうじき)ワンピースの“原作”に関してはエニエス・ロビーの一件以降に関してはインパクトのある場面(シーン)を所々覚えているだけで、時系列や詳しい内容はほぼ覚えていないのだ。

 これがドラゴンボールに関する事なら、多少マイナーな初期の話も事細かに覚えているのだが…。

 何だろう、何か…

「何かやらかしてる気がする………。」

 何を失敗したのかは全く思い当たらないが、確実に何かをやらかした気がひしひしとする。

 それが自分が忘れている“原作”に関してなのか、何なのか…。

 ひとまず嫌な予感に目を(つむ)り、半年前に()った老人の“気”を探る事に専念する事にした。

 

 ━21番GR(グローブ)(無法地帯)━

(この辺の(はず)なんだけど…。)

 無法地帯だけあって、周囲が荒れているが、賭場(とば)や酒場などでそれなりに栄えている。土地柄海賊たちが多く集まるようで、手配書で見た顔がチラホラとジャスミンを(うかが)っているのが分かる。

 が、流石(さすが)にここまで辿(たど)り着ける海賊となると慎重な者が多いらしく、値踏みするような視線を送るものの直接ジャスミンに対しケンカを売るような真似(まね)をするような者はいなかった。

(あぁ、ここだ。…でも、ここって………)

 目当ての老人の“気”を探り当てたのは良いものの、よりにもよって賭場(とば)とは………。

(100%カモにされる未来しか見えない…。)

 出て来るのを近くで待っていた方が身の為のようだ。

 こと戦闘においてならそう簡単に遅れを取るつもりは無いが、ああいった場は独自のルールを有している場合が多く、賭け事などした事も無いジャスミンにとってはアウェイ過ぎる。

 一歩中に足を踏み入れればルールに従わざるを得ないが、懸賞金は高いとは言え強面(こわおもて)な訳でも特別体格が良い訳でも無い、まだ10代のジャスミンなど格好のカモだろう。

 これがナミのようにある程度場数を踏んでいるならともかく、ジャスミン自身中に入れば気圧されない自信は無い。“お(のぼ)りさん”よろしくカモにされるのはゴメンである。最悪の場合は身売りする羽目になるかもしれないのだから。

(仕方無いからどっかで時間潰そう…。)

 長丁場(ながちょうば)になるかもしれないから、先に近くのGR(グローブ)で宿を取った方が良いかもしれない、と一旦その場を離れようと(きびす)を返した時だった。

「なるほど…。“出逢(であ)うべき相手”というのはお前だったか。“中将殺し”。」

 不意に、ジャスミンの目の前に立ちはだかった男がいた。

 

 

 




用語解説
・スマホのガイドアプリ…お察しの通り、モデルはsi〇i。しかし、作者はi〇h〇neどころかスマホすら所持していないガラケー愛用者の為、ざっくりしたイメージのみで書いていますので、様々な矛盾にはスルーでお願いします。
カプセルコーポレーション製なら現代の科学では不可能な事が可能に違い無い、という作者の希望的観測により、ドラゴンボール世界のケータイには1台1台簡易的な人工知能が内臓してある設定にしました。ケータイというより、電話の出来るパソコンのイメージ。

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