摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第47話更新です。
前回のクイズ?でみなさん正解されていたので、そこが通じた事がとても嬉しかったミカヅキです。
さて、今回いよいよ“黒幕”についてチラッと出てきます。ある程度ヒントは出しましたが、前回よりも難易度は高いので正解される方はいらっしゃるでしょうか?
※オリキャラでは無く、既存のキャラクターをゲストとして登場させるつもりで話をさせております。ぜひ推理してみてください。


第47話 動き出す脅威

「はぁ?」

 急に目の前で意味の分からない事を言い出した男に、思わずジャスミンが素頓狂(すっとんきょう)な声を上げた。

 無法地帯を歩くのだから、下手に変装して絡まれるよりも自分が“中将殺し”と分かった方が抑止力になるだろう、と()えてナミに告げていた前言(ぜんげん)を撤回し、変装も何もしていなかったジャスミンだったが、こんな“電波系”に絡まれるんだったらやっぱり髪型と服装だけでも変えるべきだっただろうか、と一瞬悩んだ。

 しかし、“電波系”かとも思ったその男に見覚えがある事に気付き、記憶を(さら)う。

「あなたは確か…。“魔術師”バジル・ホーキンス……!」

 長い金髪と独特の風貌(ふうぼう)。“北の海(ノースブルー)”出身の“ルーキー”、懸賞金2億4,900万B“魔術師”バジル・ホーキンスに間違い無かった。

「おれを知っていたか。」

「連日新聞を(にぎ)わせている“ルーキー”を知らない方がおかしいと思いますけど。」

()められている気はしないが…。」

 お前が言うな、とでも言いたげな顔をしたホーキンスだったが、溜め息を1つ()いて本題に入る。

「……“尋ね人の相”が出ているな。それも、お前自身も誰を探せば良いのか分からない。」

「!?………何を知ってる?」

 警戒を(あら)わにするジャスミンを(なだ)めるように、ホーキンスが殊更(ことさら)ゆっくりと言葉を(つむ)いだ。

「落ち着け…。おれはお前の“相”を読み取っただけだ。ここに来たのも、お前がいると分かっていたからでなく、おれの運勢を占った時に“出逢(であ)うべき相手”がいると気付き、導き出された方向へと出向いてみただけの事。」

「……さっきも言ってましたね。“出逢(であ)うべき相手”というのは?」

「ここでお前の“探し物”を見付ければ、近いうちおれはお前に命を救われるらしい。」

「……つまり、その“占い”で私の探している相手を探す代わりに、自分を助けて欲しいと?仮にも“億越え”の“ルーキー”の割に随分(ずいぶん)と弱気ですね。」

「これは“運命(さだめ)”だ。おれの占いは外れない。…何より、実際に対峙(たいじ)すれば分かる。お前がおれよりも(はる)かに強いのは明白(めいはく)。」

 大真面目に不可思議な事を主張するホーキンスに、(いぶか)し気な視線を送っていたジャスミンだったが、不意に目の前の男の二つ名を思い出す。“魔術師”。てっきり能力を指してのものと思っていたが、あながちそうでも無いのかもしれない。

 ホーキンスは(いた)って真面目に言葉を(つむ)ぎ、ジャスミンを真っ直ぐに見詰めている。

 何よりも、ジャスミンが人を探している事、実際に誰を探せば良いのか探しあぐねている事まで知っている事を考えると、信用に(あたい)するだろう。

「……なら、実際に占ってみてくれませんか?私は誰を探してどこに行けば良いのか。あなたを助けるかどうかは分かりませんけど、占いの内容次第では善処(ぜんしょ)します。」

「ふむ。何よりだ。…ここでは店の邪魔になるな。場所を変えよう。そこで良い。」

 5m程離れたオープンカフェのテーブルを指し、ホーキンスが先導する。

 無法地帯の割に意外と店の種類が豊富だよな、と割とどうでも良い事を考えながら後に着いて行く。

 

「で、どうやって占うんですか?」

 何も頼まずに席だけ陣取るのも営業妨害(はなは)だしいので、取り()えず商魂(たくま)しく注文を取りに来た店員にアイスティーを注文し、ホーキンスに問う((ちな)みにホーキンスは、店員を一瞥(いちべつ)する事すらしなかった)。

「これだ。」

 そう言って取り出したのは、トランプよりも1回り大きなカード。

「カード?」

 タロットに似ているが、占いにはさほど詳しく無いので違いが良く分からない。

「おれはこれを使って占う。」

 手袋を()めたまま器用にカードをシャッフルし、体から伸びた(わら)のようなものに、1枚1枚貼り付けていく。

((わら)…?ホーキンスは“超人(パラミシア)系”の能力者……?)

 ジャスミンの意識が一瞬(それ)るが、今は気にする事でもないか、とすぐに意識をカードに戻す。

 カードの絵柄の部分は表、つまりホーキンス側に向けられている為、ジャスミンからはその絵柄は読み取れない。最も、絵柄が見えていたとしてもはっきり言ってジャスミンにはその意味が全く分からないのだが。

「ふむ…。場所は…、“新世界”。誰の物でも無い島だ。」

「“新世界”…!?」

 1枚1枚貼り付けながら呟いていくホーキンスの、確信を持って(つむ)がれた言葉に、思わず聞き返す。

「ああ。お前の“尋ね人”は“新世界”の、“誰の物でも無い島”にいる。」

「“誰の物でも無い島”…?無人島?いや、場所が“新世界”なら誰の縄張りでも無いって事かな…?もっと詳しく分かりませんか?」

「おれが実際に行った事のある場所ならば特定も可能だが、全くの手探りならばこれが限界だ。」

「それなら、相手の人数や目的は?」

「それならば分かる。」

 頷きながら、ホーキンスが残っているカードを貼り付けながら読み解いていく。

「3人。1人は女、1人は男。残る1人は男のようだが、そうではない。ふむ、妙だな…。コイツらは本当に人間か?」

「どういう意味です?」

「カードの示し方がおかしい。酷く読み取り辛いが、人間のようであってそうでない、男女の2人組と良く分からん奴が1人…。女と男は存在がはっきりしているが、最後の1人は酷く希薄(きはく)だ。……なるほど、それだけ弱っている状態、という事か。追手から逃れてその島に辿(たど)り着き、身を(ひそ)めているのか……。なるほど、目的は3人目の“蘇生”…いや、“復活”だな…。」

「つまり?」

 カードを貼り付けながら1人で納得したように呟くホーキンスに()れたジャスミンが()かす。

「お前が探している相手は男女の2人組。しかし、人間であってそうではない。追手から逃げてその島にいる。3人目の死にかけている仲間を何とかしようとしているらしいな。」

「“復活”…。人間であってそうでない…。」

 その言葉に、神龍(シェンロン)台詞(せりふ)を思い出す。

『地球では無いようだが、同じ第7宇宙の存在である事は間違い無い。』

(宇宙人って事…?)

「具体的に何をどうやって3人目を“復活”させようと?」

「…何をしているかまでは知らんが、男の方が戦いの場に出現しているようだ。今から10日後に動く、と出ている。」

「10日後?何か大きな戦争でも起こるんですか?」

「“世界を動かす争い”と出ている。闇雲(やみくも)に“新世界”を探し回るよりも、それを待った方が確実だろう。」

 (いささ)抽象的(ちゅうしょうてき)だが、先程までの完全な手探りに比べれば道が(ひら)けたのは喜ばしい。

 しかし、“復活”と“追手”。その言葉に加えて、“気”を全く(つか)む事の出来ていないという事実。相手が善か悪かも分からないが、先程まで感じていた嫌な予感が増している。

(胸騒ぎがする……。)

 背筋が(あわ)()つような感覚を一先(ひとま)ず無視し、ホーキンスに向き直った。

「…参考になりました。少なくとも3日はシャボンディ諸島に滞在する予定ですから、その間にあなたが危ない状況にあるのに遭遇したら、お礼に手助け位はします。」

「近いうちに再び()う事になる。それが運命だ。」

 そう言い置いて早々に立ち去るホーキンスを見送る。ほぼ同時に先程注文したアイスティーが運ばれてきた。もっと長く話し込んでいた気がしていたが、実際にはものの5分にも満たない短い時間だったらしい。

 取り()えずストローを(くわ)えて(のど)(うるお)しながら、まずは目先の課題であるコーティング職人探しに意識を戻す事にした。

 

 ━2時間後、43番GR(グローブ)ショッピング・モール━

 あの後、改めて宿を取ったジャスミンは例のコーティング職人の老人の“気”を時折探りつつも、暇を潰すべくショッピング・モールをぶらついていた。

 (いま)だに目当ての老人は賭場(とば)を離れる気配が無く、ずっと宿に(こも)っているのも退屈(たいくつ)で仕方が無かったからである。

 今回は無法地帯では無い為、無駄に人目を()かない為にも簡単な変装をしていた。

 特徴的なポニーテールは止め、シニヨンを作ったツインテールにして白い髪(ひも)で飾っている。

 服も、ワンピース(この)世界ではあまり流通していないらしいパーカーにジーンズでは無い。ジャスミンの花の刺繍(ししゅう)がアクセントのミントグリーンのチャイナ風ワンピースを(まと)い、同じくジャスミンの花が刺繍(ししゅう)された同色の布靴。

 バッグも普段のウェストポーチでなく、髪(ひも)と同じく白いポシェットである。

 余談だが、ドラゴンボール世界でも“チャイナ服”や“チャイナ風~”といった言葉は存在する。主に東地区の一部で使われているものだが、中国という国が存在している訳では無いので、その語源は定かでは無い。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

 服装に合わせて派手では無いが軽く化粧をしている為、良家の子女にも見える。

 本来ならもっとラフな格好をしたかったところではあるが、如何(いかん)せん地球で購入した服は当然ながら向こうの流行(はやり)を取り入れている為、こちらの世界では完全に浮いてしまう。使っている生地(きじ)やボタンなどもこちらの世界では存在しない物もあり、多少そういった事に詳しい物ならば分かってしまうだろう。おまけにここはショッピング・モールであり、そこかしこに服屋がある。

 チャイナ風ワンピースも同じような物ではあるが、似たようなデザインや生地(きじ)の服ならばこちらの世界にも存在している為、若干マシなのだ。おまけにここは“新世界”の入口たるシャボンディ諸島。多種多様な服装の人間がこの場所に(つど)っている為、ジャスミンの服装もさほど目立ってはいない。

 かと言って、いつまでも余所(よそ)行きの格好(去年の誕生日プレゼントに、とチチが()ってくれたものだ)をしているのも落ち着かないので、手頃な服屋に入って新しい服を購入したいところである。

(さて、ティーン向けの服屋は、と…。)

 ジャスミンが周囲を見回している時だった。

 ―――――ゾクッ……!!!

 ほんの一瞬だけだったが、(すさ)まじいまでに強い、邪悪な“気”を感じ取る。

「なっ……!!?」

 バッと、思わずその方向を振り向くが、既にその“気”は感じ取れなくなっており、細かい位置どころかおおよその距離すら測る事が出来なかった。

 分かったのは方角のみ。

「今のは…、まさか………!」

 これまでに感じた事の無い、邪悪な“気”。もしや、今のが“時空間(じくうかん)を歪めている元凶(げんきょう)”だろうか。

 一瞬。たった一瞬で、全身に鳥肌(とりはだ)が立った。

(あんなの、今まで1度も感じた事なんて……。)

 あまりの脅威にそこまで考えたところで、ふと頭に引っかかるものがある。

(1度も…?いや、昔似たような“気”を感じた事があったような……?)

 本当に昔、まだジャスミンが幼かった頃に1度だけ、先程感じた“気”に良く似た“気”を感じた事があった(はず)だ。

 (いま)鳥肌(とりはだ)の治まらない腕を(さす)りながら記憶を探る。

 しかし、ある程度平和な時代に生まれたジャスミンは、そこまでの脅威に(さら)された事はほとんど無い。例外は魔人ブウの一件くらいだが、魔人ブウの“気”はこんなものでは無かった。そうなると、心当たりは本当に無くなってしまうのだが……。

(!そうか、もう1人いた……!()()()にそっくりなんだ………!)

 それに思い当たると同時にゾッとする。

 あんな()()()と同格の相手を何とかしなくてはいけないのか、と。

 ホーキンスの予知した“世界を動かす争い”まで後10日。

呑気(のんき)に服なんか買ってる場合じゃない、か……。」

 蟀谷(こめかみ)に冷や汗が伝うのを感じつつ、完全に意識を切り替える。

 ルフィたちにも悪いが、コーティング職人に構っている場合でも無くなった。ルフィたちがシャボンディ諸島に着いた頃に1度釈明(しゃくめい)に来るが、近くの無人島でしばらく鍛え直さなくては。

 今はルフィたちの所まで飛んでいく時間も惜しい。

 一旦借りた宿まで荷物を取りに行くべく、(きびす)を返し、ジャスミンが走り出す。

 

 




用語解説
・シニヨンを作ったツインテール…わかりやすく言うとセーラー〇ーンヘア。
・ジャスミンのワンピース…チチさんお手製。特に孫家とは家族ぐるみの付き合いなので、ジャスミンの私服にはチチさんお手製のものが多数。

追記:確率の出し方がおかしいとのご指摘を受けた為、訂正しました。
追記2:ルフィたちがシャボンディ諸島に来るまでの日数を換算し忘れていた為、8日後から10日後に修正しました。

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