摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

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お待たせしました!第49話更新です。
次話から原作と多少違う展開になる予定です。
今回はあくまでも導入部分なので、さほど進んでいません(汗)
次回更新はいつになる事やら…(汗)

追記:お気に入り登録が2300人を超えました!!感想・評価もありがとうございます!



第49話 ケイミーを救え!シャボンディ諸島の闇

 ―――――――――第7宇宙。ジャスミンの出身星である地球を始め、多種多様の生命が息衝(いきづ)惑星(わくせい)が数多く存在する。

 その中でも(ぞく)に“あの世”と呼ばれている場所に、()()は存在した。

 “界王星(かいおうせい)”。

 一般的に()()呼ばれる惑星(わくせい)は1つの宇宙に4つ。しかし、ジャスミンを含める地球の戦士たちにとっては、“界王星(かいおうせい)”とは“北の界王(かいおう)”が住まう“北の界王星(かいおうせい)”を指す。

 小さな、地球から見れば本当に小さな惑星(わくせい)の上には1(けん)の家と赤いスポーツカー、そして良く手入れされている事が(うかが)える芝生(しばふ)と、それを2分するように惑星(わくせい)縦断(じゅうだん)した道。

 その家の前に置かれたテーブルとイス。そこに座り、分厚(ぶあつ)い本でひたすら調べ物をしている者こそが、この惑星(わくせい)の主、“北の界王(かいおう)”だった。

「う―――――――む………。」

 青い肌の為に(はた)から見れば分かり辛いが、その顔色は良くない。

界王(かいおう)様、まだ分かんねぇのか?ジャスミンのいるとこ。」

 同じくテーブルに付き、頬杖(ほおづえ)を付いてその様子を見ているのは悟空だった。

「ちょっと黙っておれ!時空乱流(じくうらんりゅう)何て、滅多(めった)に起こるもんじゃ無いんじゃ!これまで起こったのは、いずれも歴史の動乱(どうらん)や星の変生(へんせい)など何か大きなエネルギーが発生し、時空間(じくうかん)に影響を及ぼした時じゃ。何故、あんな変哲(へんてつ)も無い骨董品(こっとうひん)屋で発生などしたのか……。まずはそこを解明せん事には、1人の人間が流された世界など特定出来んわ!!」

「うぉっ!?」

 くわっ!と怒鳴り付けてくる界王(かいおう)に、悟空が思わず()()った。

「わ、分かったよ。でも、そんなに難しいんか?特定すんの。」

「当ったり前じゃ!!この宇宙以外にも世界は星の数程あるんじゃぞ?!その中から何の手掛かりも無しに見付けようなんぞ、不可能じゃ!例えるなら、海の中に落としたたった1つの小石を見付けようとするようなもんじゃぞ!!!」

「そ、そんなにかぁ?!」

「分かったら静かにしておれ。この界王(かいおう)(ろく)には、この広大な宇宙が誕生してからの、全ての事柄(ことがら)が記されておる。きっと原因が見付かる(はず)じゃ。原因さえ分かれば、時空乱流(じくうらんりゅう)の“出口”もきっと突き止める事が出来る。そうすれば、今度は意図的にその世界への“入口”を創る事も出来る(はず)じゃ。」

「“入口”を創る?」

然様(さよう)。ジャスミンという娘が流されてしまった世界と地球を一時的にトンネルのように繋ぐのじゃよ。ポルンガは確か、“自分の力では見付けられない”と言ったんじゃったな?」

「ああ。確かそうだ。」

 界王(かいおう)の言葉に、悟空が半年前の記憶を手繰(たぐ)る。

「さっきも説明したが、この宇宙以外にも世界は星の数程存在する。その中から何の手掛かりも無しにたった1人の娘を見付け出す事は不可能。ポルンガとて同じ事じゃ。しかし、原因を解明し“出口”を突き止める事が出来ればその世界の“座標(ざひょう)”を知る事が出来る。それさえ分かれば、ポルンガが“入口”を創ってくれる。」

「よ、良く分かんねぇけど分かった。」

「分かったら静かにしておれ!気が散るわ!!」

 ただでさえ大仕事なんだから邪魔するな、と再び本に目を落とした界王(かいおう)の横に積まれているのはこれまでに目を通した界王(かいおう)(ろく)の山。その数478冊。そしてその反対側に積まれているのは、まだ目を通していない界王(かいおう)(ろく)の山。その数531冊。

 界王(かいおう)が現在目を通しているのは界王(かいおう)(ろく)の479巻。

 界王(かいおう)(ろく)は全1010巻。

 半年かかってまだ折り返せていない。

 …………道のりは長かった。

 

 ━シャボンディ諸島22番GR(グローブ)人間(ヒューマン)(ショップ)

「誰も人魚売りに来てねェか!!?」

 シャボンディ諸島の至る所に点在する、奴隷(どれい)たちが()()に売買される人間(ヒューマン)ショップ、その1つにルフィはいた。

「き、来てねェよ!!」

「おい麦わら、騒ぎになると探しづらくなるぞ!!」

 店員の胸倉(むなぐら)(つか)み、締め上げるルフィをハチが制止する。

「どうだ、タコッパチ!!パッパグ!!」

 ぜーぜーと荒い息を()きながらハチとパッパグに問いかける。

「いねェな店内には。」

 ハチが店内を見回し、目に付く(おり)の中を探すが、目的の人物はいなかった。

「ウチは倉庫ねェから出てる商品で全部だ。」

 ルフィの締め上げから解放された店員が、ルフィたちを(なだ)めるように話す。

 何故(なぜ)ルフィたちがここまで焦っているのか、誰を探しているのか、それを明らかにするには少々時間を(さかのぼ)らなくてはならない。

 少し前まで、ルフィたちはシャボンディ諸島の名物とも言える観光スポット、“シャボンディパーク”で遊んでいた。これまで遊園地など行った事の無い彼らは、少々羽目(はめ)を外してしまった。それは、この諸島の()()()熟知(じゅくち)している(はず)のハチやケイミーも例外では無く。

 ケイミーから目を離してしまった。

 奴隷(どれい)の売買が()()()されているこの諸島では、魚人や人魚は格好の()()となる。特に若い女の人魚は(けた)外れの値段が付く事もあり、人攫(ひとさら)いを生業(なりわい)とする者たちにとっては、(のど)から手が出る程に手に入れたい()()となる。

 それは魚人や人魚にとっては、誰しもが知っている事だったが、あまりにも楽しい、夢のような時間を過ごすうちに失念(しつねん)してしまった。

 アイスクリームを選ぶ為に、歩けないケイミーを1人ベンチに待たせ、彼らはその場を離れてしまった。

 ………彼らが戻ってきた時、ケイミーは(さら)われてしまっていた。

 ルフィたちは2手に分かれ、ケイミーを捜索する組と他の仲間たちと合流する組に分かれたのである。

 一旦人間(ヒューマン)(ショップ)を出、ルフィたちが周囲を見回す。

「ニュー!!まだ売られてるとは限らねェし、せめて(さら)ったチームが分かればな。」

「お――――――い!!!ケイミ――――――――!!!」

「ペイ…、ペイビ――――――――イ!!!どこだ――――!!?」

 ルフィが声の限り叫び、パッパグは号泣(ごうきゅう)している。

 その様子に、周囲の人間も“麦わらのルフィ”に気付き、ざわつき始めたが、ルフィたちにそれに構っている暇は無かった。

畜生(ちくしょ)ォ…!!おれが悪いんだァ~。遊園地は人攫(ひとさら)いにとって絶好(ぜっこう)誘拐(ゆうかい)スポット。奴らが“人魚”をそれ程欲しがっているか、知っていながら…。」

 パッパグが泣きながらケイミーと交わした最後の会話を思い出す。

「あ…、あァ…、あれがケイミーとの最後の会話なんて嫌だァ――――――!!!おれが(わり)ィんだ!!おれが!!!遊園地なんか……。」

「何か知らねェけど、あんなに喜んでたんだ!!遊園地に行った事は良いじゃねェか!!」

「…良かねェよ!!本当は…、魚人や人魚がこの島に入る事さえ良かねェんだ!!――――――だけど、ハチはどうしてもお前らの役に立ちてェって言うから…。」

「………パッパグ!!それ以上言うな!!」

「何で良くねェんだよ!!タコッパチ!」

 ハチがパッパグを制止しようとするが、ルフィがそれに疑問の声を上げる。

「ケイミーとハチの敵は…、何も人攫(ひとさら)いだけじゃねェ。この諸島に住む“人間”たち全員が敵なのさ。」

「!?」

 パッパグが続けた言葉に、ルフィが一瞬言葉を失う。

 そして、パッパグから人魚や魚人たちが受けてきた迫害の歴史と、今尚(いまなお)続く差別を知らされる。

「差別…。」

「ここは、()()()()()だと割り切らなきゃバカを見るのはこっちの方なんだよ!!!だからおれは!!鬼になってもケイミーを止めなきゃならながっだ!!!ゲイビ――――――――ィ!!」

 パッパグはルフィに説明しながらも自らを責め続ける。

「ニュ~。悪い、麦わら。お前らの手助けをするつもりが迷惑を…。」

「何言ってんだお前ら!お前らが悪いと思う事なんて、1つもねェじゃねェか!!お前ら3人共、もうおれたちの友達なんだ!!例えどんな事したってケイミーは必ず助け出すから!!!もう泣くな!!!」

「!!!……ムギ………、お前……!!」

 パッパグの涙が思わず止まった、その瞬間だった。

 そこに、もう1人が()()()()()

 

「どうしたの?ルフィくん。」

 そう、ルフィに声をかけたのは。

「ジャスミン!?」

「遅くなってゴメンね。ちょっと訳があって…。ナミちゃんたちは?」

 かけられた声にルフィがその場に視線を向けると、そこには本来上陸直後に合流予定だった少女‐ジャスミンがいた。

「訳?って、それどころじゃねェんだ!大変なんだよ!!」

「何があったの?この人たちは?」

「話は後だ!ケイミーが、友達の人魚が(さら)われたんだ!!早いトコ見付けねェと……!」

「!そのケイミーさんって名前からして女の人だよね?いくつくらい?若いのかそれとも、ある程度の年齢なのか分かれば……。」

 ルフィの言葉に、ジャスミンが半年程前に仕入れた情報を手繰(たぐ)る。

「たぶん、おれたちとそう変わんねェ年齢(トシ)だと思うけど、ホントに分かんのか?!」

「なら、十中八九1番GR(グローブ)人間(ヒューマン)オークション会場だと思うよ。」

「ほ、本当かそれ!?」

 言い切ったジャスミンの肩をハチが(つか)み、詰め寄る。

「あのオークション会場はシャボンディ諸島でも最大の規模…。若い女の人魚を欲しがる好事家(こうずか)なんていくらでもいるから、普通に人間(ヒューマン)(ショップ)でに売り払うよりも、オークションで金額を跳ね上げさせた方が見返りは大きい。それにあそこは確か天竜人(てんりゅうびと)御用達(ごようたし)だった(はず)…。」

「て、天竜人(てんりゅうびと)だって…?!」

「マズいぞ、それ……!!」

 恐れていた事態を彷彿(ほうふつ)とさせる言葉に、ハチとパッパグの顔が一気に青くなる。

「今日は1日だから…。マズいな、今日がそのオークションが開催される日…。開始時間は確か16時。今ならまだ間に合います。」

 ジャスミンが時計で日時を確認する。現在は15時39分。急げばまだ間に合う。

「なら急いで行こう!!」

「待ってルフィくん!!!」

 すぐにでも駆け出しかねないルフィをジャスミンが制止する。

「ケイミーさんを助けには私が行く!ルフィくんは、この人たちと一緒にオークション会場の裏口付近に隠れて待っててくれない?」

「何でだよ!?おれも行く!!」

「ルフィくん、絶対隠密(おんみつ)行動とか出来ないでしょ?エニエス・ロビーでの事、まだ忘れて無いよこっちは!!もしかしたら天竜人(てんりゅうびと)がいるかもしれない所で派手に暴れられると迷惑なの!!下手すれば“大将”が軍艦引き連れて攻めて来るんだから!!!」

 ただでさえ“予言”された日まで時間が無い。負ける気はさらさら無いが、大将の相手をしている暇など無いのだ。

「私なら、客に気付かれないでオークション会場に忍び込める。必ずケイミーさんを連れて行くから、裏口で待ってて!」

「わ、分かった…。」

 ジャスミンの剣幕(けんまく)に押されたルフィが頷く。

「じゃ、先に行ってるから。」

「お、おう…!」

 バシュッ!と飛び立ったジャスミンを見送りながら、ポツリとハチとパッパグが呟く。

「ニュ~。アイツ、“中将殺し”だろ?意外と優しいんだな…。」

「新聞だとかなり極悪非道に書かれてたけどな…。」

「アイツは良い奴だ!おれたちも行こう!!」

 言い置いて、ルフィも走り出した。

 




界王さま登場~。
・界王録…一応原作にも出て来るが、実際には何冊あるのかは不明。宇宙が始まってからの全ての事が書いてあるなら、1冊じゃ済まないよな、と巻数はねつ造。

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