摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について   作:ミカヅキ

66 / 68
お、お待たせしました…!
ここまで間を開けるつもりは無かったのですが、なかなかパソコンに向き合う時間が取れず…。
4月半ば頃まで執筆する時間がなかなか取れない事が続くと思います。ご了承くださいませ…。


第58話 仮面の下

 ――――――――――大地を激しく揺るがす、凄まじい2つの気の奔流(ほんりゅう)に意識を引き戻された。

「っ()っつ……!」

 身じろぐと同時に、全身を(さいな)む激しい痛みに思わず(うめ)く。

「!気が付いたかい?」

 声をかけられて初めて、自分が誰かに抱えられている事に気が付いた。

 記憶を刺激する声に疑問を感じながらも、痛みに思わず再び遠退(とおの)きかけた意識を手繰(たぐ)り寄せ、そっと目を開ける。

「っ……!」

 (まぶ)しさに目を(しばたた)かせながら、傷に響かないようにそっと頭上を振り(あお)いだ。

「トランクスくん………?!」

 自身を抱えている青年を目にした途端(とたん)、気を失う直前の事を思い出した。

「初めまして。ジャスミンちゃんだね?君の知っている“トランクス”とは違うけど、オレも“トランクス”だよ。君とは違う時代から来た、ね…。」

 苦笑しながら告げられた言葉に、まじまじと青年を観察する。

 自身(ジャスミン)の良く知る“トランクス”よりも大人びた、シャープな顔付き。髪も長く、淡い藤色の髪を(うなじ)の辺りで軽く(くく)っている。そして“トランクス”よりも体つきもしっかりしているのが分かる。抱えられている為はっきりとは分からないが、恐らく背も高いだろう。また、その背に背負われた、RPGにでも出て来そうな長剣はジャスミンの知る“トランクス”は所持していない。

 そう、ジャスミンはこの青年を良く知っていた。(ヤムチャ)の持つアルバムの中で、何よりも“原作”の中の知識として。そして、それを肯定するような言葉を、彼自身も先程告げていた。

「まさか…、未来から来たもう1人の………?!」

「そう。オレの事を知っていたんだね。お父さん、ヤムチャさんから聞いたのかい?」

 衝撃のあまり無言で頷きを返しながらも、頭の中は何故(なぜ)未来の世界(より正確に言えば平行世界)に帰った(はず)の青年が目の前にいるのか、という疑問でいっぱいだった。

「な、なんで貴方(あなた)がここに……?」

 そして、何故(なぜ)自分を助けてくれたのか。

 取り()えず抱えられたままでは気まずい事この上無い。恐らく肋骨(ろっこつ)が折れただろう胸元はシクシクとした痛みを発し、少し息苦しいがスリラーバークでの心身共に追い詰められた時に比べればまだマシである。

 下ろしてもらえるように頼もうと、口を開いた瞬間だった。

 ズォオオッ……!!!

 激しい攻防の末に弾かれた気功波(きこうは)が、流れ弾の(ごと)くジャスミンたちを襲う。

「おっと…!!!」

「!わっ……!?」

 当然、不意を突かれたとは言え簡単に直撃を喰らう程、トランクスは(やわ)な鍛え方はしてはいない。

 直撃を喰らう瞬間、ジャスミンを抱えたまま上空へと逃れる。

 しかし、抱えられていたジャスミンは予想外の動きに思わずトランクスにしがみ付いた。

「ゴメン、ゴメン。大丈夫かい?」

「あ、いえこちらこそ、すいません……。」

 苦笑するトランクスに気恥ずかしさを感じながら、そっと身を離す。

「あ、あの…。私自分で飛べるので……。」

「でも、怪我は大丈夫かい?」

「これくらいなら問題無いです……。」

 自身(ジャスミン)の良く知る“トランクス(現代)”と同じ顔で同じ声の(はず)だが、まだ高校生の“トランクス(現代)”とは異なり、未来から来た目の前のトランクスは大人の包容力(ほうようりょく)(あふ)れていて、思わず頬が熱くなる。

 元々ファザコン気味のジャスミンは“大人の男”に弱い。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

 下ろしてもらったジャスミンがそのまま舞空術(ぶくうじゅつ)でトランクスの隣に並ぶ。そうしてやっと人心地(ひとごこち)付いたジャスミンは、眼下で繰り広げられている激闘に唖然(あぜん)とさせられた。

「ところで、あそこで戦っているのはもしかして……。」

「ああ。オレの時代の悟飯さんだよ。」

「やっぱり…。」

 ジャスミンが散々苦戦していたあの“仮面の男”を圧倒している。分かってはいたが、ここまで実力差を見せ付けられると(いささ)か落ち込む。しかし、()()悟飯相手に未だに決定打を避け続けているあたり、やはりあの“仮面(かめん)の男”も只者(ただもの)では無いのだと再認識出来た。

「それにしても、あの男一体何者なんだ…?サイヤ人のようにも見えるが…。」

(くわ)しい事は何も…。私もいきなり襲われたので……。ただ、あの仮面で操られているようです。」

「操られている?」

「はい。さっき、仮面に(ひび)が入った時に苦しんでいたようなので、恐らく…。」

「なるほど……。」

 ジャスミンの説明に頷いたトランクス(未来)が声を張り上げる。

「悟飯さ――――――――ん!!!仮面です!!!仮面を壊してください!!!!!!」

 ――――――――――――そこからの悟飯の反応が早かった。

「分かった!!」

 トランクスの助言に瞬時に活路を悟り、相手の攻撃を弾くと同時に男の顔を仮面ごと(わし)(づか)む。

 ビキビキッ…ビシッ………!!!

「グッ?!」

 悟飯の常人離れした握力で仮面に次々と(ひび)が入った。そして、亀裂(きれつ)が広がっていくにつれて、男が苦し気に(うめ)き出した。

「ガァアアアアッ……!!!」

「っさせるか…!」

 悟飯の腕を引き()がそうと男がその腕を(つか)み、抵抗する。

 しかし、男が悟飯の腕を引き()がすより早く、悟飯が男の仮面を完全に砕く方が先だった。

 パリィッ……イン…!!!

「ガッ?!………うおおおおおおおっ!!!!」

 仮面が砕け散った瞬間、頭を抱えて苦し気に()()っていた男が、気合と共に凄まじい“気”を発した。

「「「っ……?!」」」

 それを見守っていた3人の戦士が、思わず身構える程。

「あ――――――…。」

 男が上空を向いていた顔をゆっくりと戻しながら、気が抜けたように息を()く。

「やっと頭がすっきりしたぜ…。」

 顔を(おお)っていた手を外し、前に向き直った男の姿に、悟飯とトランクスが驚愕する。そして、半ばその姿を予想していたジャスミンでさえも目を(みは)った。

「と、父さん……!?」

「悟空さん?!」

 彼らの良く知る英雄‐孫悟空と瓜二つの男の姿に。

 

 




次回、仮面の男の正体が遂に明らかに?!←まぁ、皆さんお分かりのあの人です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。