Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
「今日は、ここまでにしましょう」
放課後、球技大会へ参加予定の生徒取材から帰ってきた三人に提案をした。
「もう? いつもより早いね」
「球技大会が終わったら、すぐにテストですから」
「うわぁ~、そっか、テストかぁ......」
あからさまにテンションが下がって、机に突っ伏すようにうなだれた。
「学生の本分は、学業しょ?」
「そうだけど~」
「勉強は、ねぇ?」
「あはは......」
笑って、誤魔化そうとしている。あれだけやって、まだ自信がないんでしょうか。仕方ない。席を立った私は、先回りして部室のカギを掛けて、彼女たちの退路を断った。鞄から出した教科書の表紙を、ポンっと軽く叩く。
「さぁ始めますよ。テスト勉強」
試験対策の勉強会を開始。
みんなは嫌々ながらも、ノートと教科書を広げた。最初にテスト範囲内を確認し、星ノ海学園の中間試験で出題された問題を参考にして自習。
「うぅ~......うん? あれ?」
「どうかしましたか?」
ようやく気が付いたらしく、スラスラとペンを走らせ問題を解き始めた。
「解る......かもっ」
「わたしもっ、ね?」
「うんっ」
毎朝予習して、授業で復習している訳ですから、必然的に学力は上がっているはず。あとは実際に問題を解いて、試験本番までに自信を持ってもらえば、今の三人なら平均八割近くを狙えると思う。一緒に予習をしていて分かったんですけど、元々頭は悪くないと思いますし、何より覚える気がある。はなっからやる気の無かった、誰かさんとは違って。
「と......解けたーっ」
「はい、良くできました」
部屋の掛け時計を見る。約束の16時まで後10分。
「では、解散にしましょう。お疲れさまでした」
部室の戸締まりをして、女子寮へ帰る。
またね、と手を振る彼女たちを見送り。私は約束をした、
「いらっしゃい。どうぞ」
「おじゃましまーす」
部屋に入り、初めて来た時と同じ場所に座って、鞄を隣に置く。テーブルの上には既に教科書、ノート、参考書が用意されいて、既に準備万端といった様子。
「お茶を淹れてくるから。くつろいでいて」
部屋の中を見る。私と同じで一人部屋。ベッドにタンス、クローゼットと一通りの家具が揃っていて。学習机の上には、パソコンが設置されていた。
「これか」
私が初めてこの世界に来た夜にも、
「ん?」
パソコンの横、壁との間に立て掛ける様に置かれた一冊の本を見つけた。手にとって見る。
本のタイトルは、「
本を開こうとしたその時、外で物音が聞こえた。本を元の場所に戻して座る。ほぼ同時にドアが開いて、おぼんを持った
「お待たせ。粗茶ですが......」
「ありがとうございます。あっ、お菓子っ!」
おぼんの上には、お茶の他にも、生前よく食べていたチョコレート菓子の箱が乗っていた。
「これ、好きなの?」
「はいっ」
「そう、よかったわ。お茶と一緒に食べましょう」
約ひと月ぶりのお菓子をご馳走になる。
「う~んっ、おいしいな~」
「ホント美味しそうに食べるわね。購買に売ってるわよ?」
「知ってます。だけど今月は、必要な物を買い揃えたので、あまり余裕がなくて......」
この学校では、生徒全員に奨学金が支給されていて、そこから食費や筆記用具などの雑貨類。あとは下着とか、パジャマとか、部屋着とか。まあ、そういった必要な物を購買で買う事になる。
「そうなのね」
「はい、じゃあ始めましょう。一番苦手な科目を教えてください」
「えっと......」
テーブルの上に用意された教科書から一冊手渡してきた。受け取って表紙を見る。教科書には、三年と書かれていた。
とりあえず、テスト範囲を教えてもらい教科書の内容を確認する。
「なるほど......」
「分かるかしら?」
確かに、一年の内容に比べると相当難しい。でも、全く理解出来ないこともない。教科書を読みながら理解していけば、何とかなると思う。
「大丈夫です。では、これから始めましょう」
「お願いするわ」
「最初からやるの?」
「はい。苦手と言うことは、基礎をしっかり理解出来ていない、と言うことですから。そんな状態で、いきなりテスト範囲の勉強しても暗記になるだけなので意味が無いです。遠回りになると思うかもしれませんが、基礎が何故基礎になるのか。そこを理解するのが、一番の近道なんです」
「確かに、そうかもしれないわ」
彼女は、納得して頷いてくれました。
「始めは、ここからですね。えっと、ここは......」
「うん」
教科書を読みながら解説していくと、
* * *
集中して、一時間。勉強会を終えた私たちは、夕食を食べるため食堂へやって来た。
「どれにしよっかな~」
発券機に小銭を投入し、どれにしようか迷っていると隣でピッと電子音が聞こえた。
「これにしよっ......と」
ラーメンのボタンを押す。
「
「これよ」
食券を見せてもらう。
「あっ......」
「どうしたの?」
私が購入した食券を見せる。
「お揃いね」
「お揃いっすね」
偶然にも同じメニューだった。カウンターで食券を料理に替えて、二人掛けのテーブルに座り、ラーメンを食べる。
「ラーメンも、おいしいっすね」
「ええ、美味いわ」
気になったから聞いてみる。
「
「
「お肉と
「
二回とも即答だった。よほど、
『ふぅ......』
大きなタメ息が、浴室を反響する。
『気持ちいいですね』
『ええ、気持ちいいわ』
結局、そのまま流れでお風呂も、
『今日は、利用時間まで時間があるから。ゆっくり出来るわ』
『生徒会長は、大変ですよね』
身に染みて分かる。私も、星ノ海学園では生徒会長を務めていたから。ふと、今、星ノ海学園はどうなっているんだろうと頭を過った。
『心配事?』
『ちょっと。生きていた頃の学校は、どうなってるのかなと思いまして』
『そう』
『考えても仕方ないっすよね。髪洗おっと』
湯舟を出て、シャワーの前の椅子に座って、シャンプーを泡立てる。
『手伝うわ』
『あっ、ありがとうございます』
『髪、キレイですね』
『そうかしら?』
『めっちゃキレイっす。あたし、クセっ毛だから羨ましいです』
『私は、あなたの髪もいいと思う』
お世辞でも、
『ありがとうございます。はい、流しますよ? 目をつむってください』
シャワーでシャンプーの泡が残らないように流し、もう一度湯船に浸かって身体を温めてから浴室を出る。タオルで身体に残る水滴を拭き取り、着替えていると妙な視線を感じた。
「なんですか?」
「その下着、可愛いわね」
「......
「
誰? と、首を傾げた。
「
「ああ......そうだったわね。いつも“ゆりっぺ”って呼ばれているから、分からなかったわ」
長年争いを続けていたって言ってましたけど、そんな認識なんですね。
「それにしても、可愛いわ」
じぃ~......と直視されると、いくら女子同士でも変な感じ。
「えっと。じゃあ、テストが終わったら一緒に購買へ見にいきますか? 新しいのも入荷してると思いますよ」
「そうね。そうしましょう」
一緒に買い物に行く約束をして、この場は乗り切った。
* * *
扉をノックする。
「合言葉~」
「
カチッとロックが外れ扉が開いた。
「いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
扉を閉めて、カギを掛ける。
「先ずは、あたしからね。ガルデモの新しいボーカル候補が見つかったわ」
「ツーサイドアップの娘ですか?」
「そうよ。よくわかったわね?」
「以前、駐車場でギターを弾いているのを見かけまして」
自分の後は彼女しか居ない、と言っていたからよく覚えている。
「なるほど、あなたの方は?」
「
「そう......そっか。もう、そんな時期なのね。ん? フッフッフ......テスト。そう、テストね」
何かまた悪巧みを思いついたのか、
「それからもうひとつ、気になる事があります」
「なーに?」
「食堂の三階のベランダで、暴力沙汰があるみたいです」
「暴力? あたしは知らないわよ?」
やっぱり。
「と、なると......」
「あたしたち以外の人間である可能性が高いわね」
「ちょっと調べて見ます」
「一人で大丈夫?
「いえ、一人の方が動きやすいんで」
「そっ。じゃあ、何かあったら教えてちょうだい。あたしの方も少し調査みるわ」
恒例の報告会が終わり、自室に帰ってベッドで横になる。
週末は、球技大会。再来週は、中間テスト。
そして、暴力事件の調査。しばらく、忙しくなりそうですね。
コミック版Charlotteにて、