Angel Beats! ~First Love~   作:ナナシの新人

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Episode13 ~資格~

 球技大会当日。SSS(スリーエス)の制服に身を包んで、校舎前の大階段でガルデモチームと合流。挨拶を交わして試合会場の野球場へと移動。

 野球場は、校舎から結構な距離がある。橋を渡って、保健室が入る建物の前を通って、坂道を下った先に、野球場が見えた。

 

「そう言えば、打順とかどうするんですか?」

 

 隣を歩く岩沢(いわさわ)さんに、聞いてみる。

 

「あたしも、知らない」

「それは僕、不肖山倉(やまくら)が、昨日の練習を見て決めさせていただきました」

 

 男子の一人が、答えた。

 ひさ子さんの話によると、集められた男子たちは野球部には入っていないものの、全員野球経験者だそうです。

 

「試合前に発表させていただきます」

 

 野球場に入る。試合直前の二チームが整列しているところへ大胆にも、ひさ子さんが割り込んでいった。

 

「悪いけど次に進めるのは、あたしらに勝った方にしてくれ」

「またかよ。どんどんチームが増えていきやがる」

 

 球審役の男子が、めんどくさそうに嘆いている。

 もう他の戦線チームは、既に参戦している様ですね。

 

「出場たいなら普通に参加申請すればいいだろ」

 

 ――うん。誰が聞いてもぐぅの音が出ないほどのド正論。

 

「それじゃあ面白くないだろ?」

 

 腕を組んで微笑んで見せたひさ子さんの脇から、関根(せきね)さんが顔を出した。

 

「お兄さん、ウチらガルデモチームでっせ! 興味なんですかっ? それに今日はなんと、初お披露目の美少女つきっ!」

 

 するりと後ろに回った関根(せきね)さんは、私の肩を両手で掴み、球審の前に突き出した。目が合う。球審を務める男子は、顔をそむけた。

 

「そ、それとこれとは......」

 

 横目でチラッと私を見ている。何か言いたい事があるんすかね。

 

「まだ足りねぇーのかよっ。仕方ない、とっておきを出すかぁ、みゆきち~」

 

 気持ち悪いほどの猫なで声で、入江(いりえ)さんを呼んだ。

 

「な、なに?」

 

 身の危険を感じるのか、入江(いりえ)さんはおそるおそる関根(せきね)さんの隣へ。すると関根(せきね)さんは、躊躇なく彼女のスカートを少しまくり上げた。

 白い綺麗な太ももと黒いのが、チラッと見えた。

 

「き、きゃーっ!」

 

 顔を真っ赤にして悲鳴を上げる、入江(いりえ)さん。

 男子たちからは「おおーっ!」と、大きな歓声が上がる。

 

「この通り、あたしらはスカートっ! もしかしたら......ぐへへ~」

「もうっ! しおりんっ、それなら自分のスカート巻くってよっ!」

「えっ? だって、パンツ見えるじゃん」

「おい、関根(せきね)。たかが、パンツなんかで......」

 

 言いかけた岩沢(いわさわ)さんの動きは止まり、ひさ子さんは眉尻を上げて不快感をあらわにしている。見回して見ると、ガルデモチームの男子も含めた全員がやらしい目になっていた。ったく、コイツらはっ!

 

「ひくなっ!」

「はっ!?」

 

 私の大声で我に返った球審の男子は口元に拳を持っていき、ゴホン! とわざとらしく咳払いして、先に整列していた両チームに命令を下した。

 

「お前ら、ジャンケンしろ」

「えぇーっ!」

 

 三塁側ベンチ。入江(いりえ)さんは、落ち込んだままベンチに座っている。

 

「もう、しおりんったら......」

「そろそろ機嫌直してくれよ~。いいじゃん、どうせスパッツはいてるんだし」

「そうだけど~」

 

 やっぱり、あの黒いのはスパッツだったんですね。まあ、私もはいている。SSS(スリーエス)の制服で参戦と言っていましたし。

 

「お前ら、そんなのはいてんのか?」

岩沢(いわさわ)さんは、はいてないんすか?」

「ああ、はいてない」

 

 ベンチの男子がざわめく。目を細めて睨むような視線を向けると、わざとらしく立ち上がってキャッチボールを始めた。

 

「そんなこったろーと思ったよ。ほら、岩沢(いわさわ)

「おっ、サンキュー」

 

 ひさ子さんは、ビニールに入った新しいスパッツを岩沢(いわさわ)に手渡した。岩沢(いわさわ)の着替えが済んだのを見計らって、山倉(やまくら)さんが男子を引き連れてやって来る。

 

「では、打順と守備位置を発表させていただきます。まず一番は、足の早い鈴木(すずき)。ポジションはセンター」

「よっし」

「続いて、二番。バントが上手く、守備も上手い、川相(かわい)。ショート」

「おうっ!」

「三番は僕、山倉(やまくら)が行かせて貰います。ポジションは、キャッチャー」

「四番は、ホームラン製造機の村田(むらた)。サード」

 

 ここまでは全員、野球経験者の男子たち。まあ、順当ですね。

 

「五番、運動センス抜群のひさ子さん。ポジションはピッチャー」

「あたしが、ピッチャーやるのか?」

「はい。例年通りですと、セカンドで川相(かわい)と共に鉄壁の二遊間を組んでいただくところですが。今年は、エースとしてチームを引っ張ってください」

「エースか......悪くない響きだな。わかったよ、リードは任せる」

「はいっ、お任せください!」

 

 山倉(やまくら)さんは、気合いの入った力強い返事を返した。

 

「六番、黒羽(くろばね)さん。セカンドをお願いします」

「あたしっすか?」

「はい、練習を見て驚きました。あなたの冷静さと状況判断の良さは、チーム一です。黒羽(くろばね)さんの加入で、今までネックだったピッチャーにひさ子さんを据える事が出来ます」

「わかりました。がんばりまーす」

 

 続いて七番、関根(せきね)さん、レフト。

 八番、岩沢(いわさわ)さん、ファースト。

 九番、入江(いりえ)さん、ライト。

 関根(せきね)さんと入江(いりえ)さんは、見かけによらず肩が強く、ふたりより身長の高い岩沢(いわさわ)さんがファーストと理由を知ると、しっかりと適材適所に采配されていることが分かった。その辺りはさすが、経験者ですね。

 

「ちぇっ、七番かよ。四番DH辺りが妥当だろうっ」

「まあまあ、しおりん、落ち着いて」

「これまで、あなたがヒットを打ったところを見たことがありません」

「うぐっ、手厳しい一般生徒(NPC)だぜ......」

「まあまあ、今年実績を上げれば――」

 

 関根(せきね)さんは納得していない様子ですが、一応決まったみたいですね。球審から集合の合図。グラウンド整列して挨拶、ジャンケンで勝ったチームとの試合が始まった。

 

 

         * * *

 

 

 先攻は、ガルデモチーム。

 一番鈴木(すずき)さんが、ヒットで出塁。二番川相(かわい)さんは、無難に送りバント。三、四、五番が連続ヒットで二点を先制して、なおも得点のチャンスで私の打順。

 

「相手のピッチャーは、ストレートは速いですが。変化球はありません。甘いコースに来たら思いきって振ってください」

「わかりました」

 

 ヘルメットを被って、右の打席に立つ。

 

「お願いしまーす」

「あっ、はい。こちらこそ......」

 

 相手投手の初球高めのストレート。ストライク。

 山倉(やまくら)さんの話し通り速いっすね。二球で簡単に追い込まれました。三振だけはしない様にバットを短く持って、構え直す。高めに緩いボールが来た。失投? 狙ってバットを振るも当たらない。

 

「よしっ。抜けなかったっ」

「変化球?」

 

 ベンチに戻ると、すぐに山倉(やまくら)さんが駆け寄ってきた。

 

「すみません。今のは、カーブです」

「あの速いストレートに、緩いカーブっすか。打てないっすよ?」

「そうですね......。ですがさっきの投手の言葉を聞く限り、そう何度も決まるボールでは無いようですし、カウントを取りに来る甘いストレートを積極的に狙っていきましょう」

 

 そう上手く行くといいんですが。

 

「バッターアウトッ! チェンジ!」

 

 グラウンドを見ると、ちょうど関根(せきね)さんが笑いながら戻って来ました。私と同じく三振だった見たいですね。グラブを持って、セカンドの守備につく。

 

「いくぜッ!」

「どうぞっ!」

 

 マウンドに立ったひさ子さんの投手練習は、女子とは思えないほど速いボールを投げ込んでいた。相手ベンチから、どよめきが起こった。

 投球練習が終わって一回裏の守備。ひさ子さんは、練習の勢いそのままに三者凡退に抑え、ガルデモチーム二回表攻撃。

 ストレート狙いも、要所で緩急のあるカーブを見せられ無得点に終わる。

 

「やっぱり、あのカーブが効いてますね」

「はい、コースに来なくても緩急をつけられるのが厄介です」

 

 その後も、どうしてもカーブが頭に残ってしまいヒットは出るも後続が打てず。相手も、ひさ子さんのストレートを捉えきれず。お互い無得点のまま六回裏の守備。

 ひさ子さんに疲れが見え始め、連打とフォアボールでツーアウトながら満塁のピンチを迎えた。

 

「先輩、バッチこいっす!」

「せんぱ~いっ」

「ひさ子、ガンバレ!」

「ああっ」

 

 ガルデモメンバーに声援を力に追い込んて、ツーツーからの五球目。

 

「あっ、やばっ!」

 

 高めに浮いた甘いボールを痛打され、走者一掃のタイムリーツーベースで逆転された。こちらの攻撃はあと一回、これはまずいですね。次の打者をなんとか抑えて、スリーアウトチェンジ。

 

「わりぃ~、ここぞって時に......」

 

 ベンチへ戻ったひさ子さんは、申し訳なさそうに謝罪。

 みんなで励ましていると、他の競技の取材をしていた佐々木(ささき)さんが、ビデオカメラを片手にやって来ました。

 

「あれ~、負けてる?」

「あ、佐々木(ささき)さん、そのカメラを貸してください」

「ん? うん、はい、どうぞ」

「ありがとうございまーす。鈴木(すずき)さん」

「なに?」

 

 ガルデモチーム最終回は、打順良く一番からの攻撃。打席に向かうところだった鈴木(すずき)さんを呼び止める。

 

「出来るだけ粘ってください。弱点を探します」

「よし、わかった」

 

 ビデオカメラをズームモードに切り替えて、投手だけに集中する。

 

「ひさ子さん」

「なんだ?」

「ピッチャーの投げた球種がストレートか、カーブのどちらかを教えてください」

「ああ、わかったよ」

 

 画面の中で、投球モーションに入った。放たれたボールが、キャッチャーミットに収まる音が聞こえて、球審のコール。ストライク。

 

「ストレートだ」

「了解っす。次も、お願いします」

 

 二球目もストレート。ボール。

 カウント・ワンエンドワンからの三球目。

 

「カーブだ」

 

 カーブが外れて、ボール。四球目もカーブ、ストライク。

 平行カウントからの五球目のストレートをカットし、同じくツーツーからの六球目。

 

「カーブだ」

 

 外のカーブに空振り三振、ワンナウト。相手ベンチが盛り上がる。鈴木(すずき)さんが、落胆した様子で帰ってきました。

 

「すまん......」

「いえ、上出来です。みなさん、ちょっと集まってくださーい」

 

 集まってもらい、ビデオカメラで録画した映像を見せながら説明する。

 

「と、言うわけです」

「なるほど、やはり僕の目は間違っていなかった。川相(かわい)!」

「おうっ、絶対打ってやるっ!」

「頼んだぜっ」

 

 ひさ子さんが、グッと親指を立てる。

 それに答え、二番の川相(かわい)さんは、初球のストレートを叩いてセンター前ヒットで出塁。続く山倉(やまくら)さんもストレートを打ち、ツーベースヒット。連打で一死三塁二塁のチャンスで四番の田村(たむら)さん。

 

「チッ、敬遠かよ!」

「オラオラピッチャー、勝負しろ男だろっ」

「まあまあ、しおりん落ち着いて~」

 

 犠牲フライ、内野ゴロでもコース次第で同点の場面。ここは無理をして四番と勝負する必要は無いですし、当然ですね。

 

「ひさ子、頼んだぞー!」

「おう、任せとけって!」

 

 四番を敬遠し、ひさ子さんの打順。

 

「さっきの借りは、バットで返すぜっ」

 

 意気揚々と打席に立つも、ストレート二球で追い込まれた。

 

「ひさ子先輩ッ、根性ッス!」

「おうっ、おらよッ!」

 

 ひさ子さんは、三球目のカーブを完璧に捉えた。打球はライトの頭を越えて、フェンスまで到達、走者一掃のタイムリースリーベースで五対三と最終回で再逆転に成功。ホームベースを踏んで、ベンチに戻ってくる男子をハイタッチで迎える。

 

「ナイスっす」

黒羽(くろばね)さんの情報通りです、狙い打ちですよ」

 

 山倉(やまくら)さんを始め、ベンチへ帰ってきたふたりも同じように頷いた。

 

「そうですか。それでは、あたしの打順ですので行ってきます」

「頑張ってね~」

「はーい」

 

 最後のバッターボックスに立つ。

 

「お願いしまーす」

 

 相手投手は、まだ諦めていなのか初球のストレートは、今まで打席の中で一番速かった。

 

「おお、速いっすねー」

「絶対負けねぇ!」

 

 キャッチャーも諦めてない。二球目もストレート、際どいボール球を見逃す。きっと、前の打席までだったら手を出してましたね。三球目の投球モーションに入った。来た、カーブ。高めに浮いたカーブを逆らわずに逆方向へ流し打ち、ライト前ヒットで追加点を上げた。

 

「よっしゃー、初ヒットだーっ」

「やったね。しおりんっ」

 

 関根(せきね)さんもカーブ打って続く。相手投手のワイルドピッチなどのエラーも重なり結局、この回更に二点追加して八対三と大きくリードを広げた。

 

「完璧でしたね。さすがでした」

 

 最後の守備につく前に、ひさ子さんに話しかける。

 

「変化球をフルスイングで打ったのは初めてだ。お前が見つけた、ピッチャーのクセのお陰だよ」

 

 私が見つけた投手のクセ。それは、カーブを投げる時リリースポイントがストレートの位置に比べて低く、やや大回りしてくること。これは恐らく、ボールが高めの抜けない様に低めに抑えて投げようするからでしょう。カメラの映像をスロー再生したら、はっきりと浮かび上がった。

 

「あと三人お願いします」

「ああ、任せろよ」

 

 気合い十分に見えたひさ子さんでしたが、ワンナウトを取ったあと際どいボールで二人連続で四球でランナーを二人許す。しかし、関根(せきね)さんのレーザービームの様なまさかの好返球、最後は私の能力を使った隠し球でゲームセット。ピンチを作るも逃げ切りました。

 ベンチで勝利を分かち合う中、キャッチャーの山倉(やまくら)さんが、岩沢(いわさわ)さんの元へ駆け寄って行く。

 

「やりましたっ。このチームで、やっと勝つことが出来ました!」

「だな、よくやってくれたよ」

「こんな時になんですが、僕と付き合ってくださいっ!」

 

 グラウンド中に聞こえる様な大声の告白。

 関根(せきね)さんと入江(いりえ)さん、そこに佐々木(ささき)さんが加わり盛り上がる。

 山倉(やまくら)さんの告白に対する、岩沢(いわさわ)さんの返事は――。

 

 

         * * *

 

 

「合言葉ー」

神も仏も天使も無し(カミモホトケモテンシモナシ)

 

 消灯後、いつもの様に仲村(なかむら)さんの部屋へ。

 

「決勝戦、惜しかったですね」

「ホントよっ、まったく......」

 

 怒り心頭の仲村(なかむら)さんは、個人的に罰ゲームを課そうかしら? と、何やら物騒な事を言ってます。

 球技大会は、SSS(スリーエス)のゲリラ参戦を知った生徒会が野球部のレギュラーを生徒会チームとして参戦させ、SSS(スリーエス)のチームを次々と撃破。

 決勝まで勝ち残った日向(ひなた)さんたちチームも仲間割れにより逆転サヨナラ負けで準優勝に終わった。因みにトラブルを起こしたのは日向(ひなた)さんと、ガルデモの新ボーカルのユイさんの二人。

 

「それで?」

「ん? なんですか」

「何か気になる事があるんじゃない?」

「なぜ、そう思うんですか?」

「何となくよ。けど、そう聞き返すって事はあるって事よね」

 

 さすが、と言いますか。見透かされてますね。

 

「試合の直後、一人、この世界から消えました」

「ええ、報告は受けてるわ。まさか、一般生徒(NPC)と思っていた男子が、あたしたちと同じ魂を持った人だったなんてね」

 

 仲村(なかむら)さんはテーブルに肘をついて、空に浮かぶ三日月を眺めた。試合直後、岩沢(いわさわ)さんに告白した山倉(やまくら)さんは、フラれはしたものの満足そうに晴れ晴れした表情(かお)で、この世界から去っていった。

 仲村(なかむら)と同じように、月を眺めながら聞く。

 

「もし、この世界で恋が成就したら、どうなるんですか?」

「そうね。恋人同士になった瞬間、消える可能性が高いわ」

「事例が、あるんですか?」

「さぁ~? だけど、生前恋が実らず未練を持ってこの世界に来た人間も中にはいるわ。そう言う人のために、一般生徒(NPC)の性格にも個性があるし、顔や体格も様々。実際、模範として恋人同士の男女(NPC)も居るわ」

「なるほど......」

 

 思っていた以上に確りとした設定で、この世界は存在してるんだ。

 

「他は?」

「そうですね......。そうだ、これを見てください」

 

 持ってきていたビデオカメラをテーブルに置いて、録画した映像を撮影する。

 

『あなたたちのチームは、エントリーされていない』

 

 液晶画面に制服の上に指定のジャージを着た立華(たちばな)さんの映像と声が流れた。

 

「これって、天使が乱入して来た時の映像ね」

「はい」

 

 続きを見る。

 

『別に良いだろ。参加することに意義がある』

『生徒会副会長の直井(なおい)です』

 

 日向(ひなた)さんの主張のあと、立華(たちばな)の隣に居た学生帽を被った男子が前に出て来たところで、一時停止ボタンを押す。

 

「ここです。彼をよく覚えておいてください」

「コイツが、どうかしたの?」

 

 カメラを操作して別の映像を流す。

 

『フッ! フンッ!』

『うっ......がはぁ......』

『ぐっ......』

 

 昨日、撮った大食堂三階のベランダ行われた暴行事件の映像、暴行している男子の顔がハッキリと写っている。

 暴行しているのは、日向(ひなた)さんのチームに対し生徒会副会長の直井(なおい)と名乗った男子。

 

「コイツ......」

「どうしますかー?」

「とりあえず、テストが終わるまで泳がせるわ。にしても、試合の隠し球といい。よくこんな寄った映像を撮れたわね~」

 

 疑るような表情(かお)

 

「ほら、あたしって影薄いですし」

「まったくそうは見えないけど? まあいいわ。じゃあ今日はここまでにしましょ」

 

 カメラ持って立ち上がり、ドアノブに手を掛けたところで振り返って、仲村(なかむら)さんに向き直す。

 

仲村(なかむら)さん」

「なーに?」

「恋をした事は、ありますか?」

「なによ、唐突に?」

「何となくです。では、お休みなさい」

 

 ドアを開けて、廊下に出たとき背中から彼女の返事が聞こえた。

 

「......無いわ」

「そうですか」

 

 ドアが閉まる瞬間、「私には恋をする資格なんて無いわ......」と、小さな声が聞こえた。

 

 ――私と、同じですね。

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