Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
解答用紙を回収している時突然、
『なんじゃありゃー!? グラウンドから、超巨大なタケノコがニョッキニョッキとぉーッ!』
この声は、
彼が、校庭を指差して高らかに叫ぶも誰一人反応せず、恥ずかしそうに項垂れて座り込んだと思ったら、飛んだ。比喩ではなく、文字通り椅子ごと
『ぐわぁーっ!?』
頭部を両手で抱えながら床で、のたうち回っている。とても痛そう。
しばらくして痛みが収まったのか、
『あなたがミスした時の為に、椅子の下に推進エンジンを積んでおいたの~。どうだった? ちょっとした宇宙飛行士気分は?』
『一瞬で天井に激突したよッ! てか、推進エンジンなんて――』
――なにやってんすか、この人たち。
私は今、
「あった」
映像を早送りして、次のテスト終わりまで飛ばす。
今度は、別の男子が突然上半身裸になって鍛え上げた肉体を女性教師に見せつけた。
「ひくなっ」
変態か、コイツ。完全にセクハラ。
後ろ姿だから顔はわかりませんが、声は私の知り合いと似ていた気がする。あと身体を鍛えてるところとか。おっと、また見逃した。巻き戻して、おかっぱ頭の男子をズームで捉える。先ほどと同様に、解答用紙すり替えの場面が録画されていた。
よし。不正の証拠は掴んだ。これで、いざという時に預かった問題用紙とこの動画で、
「さて、お風呂行くか。ん?」
タンスに着替えを取りに行こうと思ったところで、部屋のドアがノックされた。目覚まし時計の時間の針は消灯まで、まだ一時間以上の余裕がある。先日の様に、
「はーい」
ドアを開ける。来客は、
「こんばんは、ゆりっぺさんから伝言です」
「とりあえず、入ってください」
「失礼します」
部屋へ招き入れて、ドアを閉める。
「ゆりっぺさんからの伝言です。
「どう言う事ですか? 状況を教えてください」
「現在
あの生徒会副会長――やはり人だったんですね。実際に暴行現場を何度も見ましたし、危険とは思っていましたが......。
「グラウンドの様子は?」
「惨状という言葉が適当かと思います。生徒会長代理は、
意識を取り戻しても、すぐにまたやられる。
延々と一方的に苦痛を与え続ける、卑劣な行為。
「なるほど。
「はい。ゆりっぺさんも、
「......わかりました、私も準備をして探します。男子寮か図書館に、
「了解しました。では、失礼します」
しかし、探すといっても私よりも遥かに
「となると、校舎内か?」
女子寮の玄関を出ると、雨は先ほどよりも強くなっていた。傘を差して校舎へ向かう。長い階段を下り、大食堂の脇を通って校舎へ近づくと、雨音に混ざり微かに発破音が聞こえた。昇降口前の大階段からグラウンドへ目を向ける。照明に照らされた数十程の人影、そのうちの何人かが倒れいる。グラウンドの雨溜まりは、
酷いな、これは急がないと。
この悲惨な現状を止められるのは「天使」しかいないんだから。
悲惨な戦場から背をそむけて、校舎へ入る。校舎の中は非常灯が灯っているだけ、天気も悪いため薄暗い。慎重に廊下を進み、幽閉場所を探す。
閉じ込めるなら目立たないかつ、逃げ出せない場所。上か下。レンガ造りの校舎の構造からして上は壁伝いに脱出は可能。なら、下? けど、学園に地下があるなんて......ああ、ありましたね、ギルドが。
ギルドは元々、学園の敷地内にある地下空間を開発して作った組織。それなら、ギルド以外の地下空間があっても不思議じゃない。廊下に備え付けられている消火栓の中から、懐中電灯を拝借して注意しながら廊下を歩いていると、カツンッと何かが落ちた様な音が聞こえた。音の出所へ走って向かう。二階へ上る階段があり、一階と二階の間の踊り場に黒い物影が見えた。
「きゃあっ」
ライトで照らすと、黒い物影は悲鳴を上げた。
黒い物影の正体は、
「
「ふぇっ? あっ、
振り向いた
「どうして、こんなところに?」
「えっと......」
「あたしらは、待機を命じられているんだ」
違う女子の声。
「ひさ子さん、おひさっす」
「ああ、球技大会の時以来だな。で、本題だけど。あたしらは陽動班だから、交戦時は基本的に安全な場所に居るんだ。ほら、
「ありがとうございます」
ひさ子さんは、
「
「
「ゆりに? 天使を探せだなんて、現場は相当みたいだな......」
「はい。それで、ギルドへの入口を知りませんか?」
「ギルド?」
私の推測を話すと、ひさ子さんは腕を組んで頷いた。
「なるほどな。あたしが知ってるのは、体育館のパイプ椅子の収納奥くらいだけど......」
「ありがとうございます。行ってみます」
「ちょっと待てっ!」
階段を下りようとしたところで、呼び止められた。
「なんすか?」
「ギルドには、対天使用の即死トラップが幾つも仕掛けられてる。そのトラップ解除指示は、ゆりにしか出せないんだよ」
「ああ~......」
それは不味いっすね。左手に目を落とす。ようやくふさがった指先の切り傷。それでもまだ、傷跡が少し残ってる。どう言う訳か私のケガは、直ぐに完治しない。それとも自傷は対象外なのだろうか。調べるにしても、今は調べようもないし、出来れば痛い思いもしたくない。
「あの~」
「天使なら。あたし、見ました」
「ホントですか?」
「ホントですぜ、お嬢っ!」
ひさ子さんの横から、
そして、
「あれは、そう......午後の授業の休み時間、屋上でみゆきちとジュースを飲んで駄弁っていた時のこと。天使と
「うん」
やっぱり、この校舎付近で幽閉されている可能性が高い。
「C棟の方へ行ってみます」
「あたしらも、探すか?」
「いえ、大丈夫です。ひさ子さんは、二人を安全な所へお願いします」
まだ怯えている
直後、C棟内の非常ベルが一斉に鳴り響いた。人影が二つ、こちらに向かって走って来る。ライトで照らすと、男女の生徒。女子は探し人の天使――
「
「ん? あなた......どちら様だったかしら?」
「おい、急ぐぞ、
立ち止まって首を傾げる
「あなたが、
「あ、ああ......」
グラウンドへ向かって走りながら、三人で話をする。
「先に行ってください。あたしは、応援を呼んできます」
「――わかった、
「うん」
二人は、階段を駆け下りていく。
私は、教員棟の方からこちらへ歩いてくる二人を待った。
「遅かったですね」
「ああ。寮に銃を取りに行ってたからな」
「彼女に、見せていいんですか?」
模範生の制服を着た
「コイツは、口が堅いからな」
「ご安心下さい。他言はしません」
「そうですか。では、あたしたちは下へ行きます。
「そうさせていただきます」
「
「どうした? 突然」
「教えてください。お願いします」
「ある。流れ弾が足をかすめた」
「その傷は、直ぐに完治しましたか?」
「ああ、一日も経たないうちにキレイに治った」
やっぱり、私だけか......。
「それが、どうした?」
「これを見て下さい」
左手をライトで照らして、僅かに筋の入った傷跡を見せる。
「ケガか?」
「はい、一週間以上前に自分で切った傷です。ようやく目立たなくなりました。どう思いますか?」
「さあな。だが、分からない以上無茶は絶対にするな。取り返しがつかないことになるかも知れない」
「......はい、では行きましょう」
先に降りた二人を追って、私たちも大階段を駆け足で下り。
血に染まる戦場へ降り立った。