Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
そこには、想像以上に悲惨な状況が広がっていた。
何人もの戦線メンバーが、四人の
一足先にグラウンドへ降りた
そして、四人の
生徒会長代理に存在を気づかれる前に、彼を意識して特殊能力「
「行きます。
「ああ、わかった。能力は?」
「既に使っています。実証済みですので、ご心配なく」
「そうか。だが、無茶はするなよ」
「わかってます。あなたは、生徒会長代理の死角へ回って下さい」
頷いた
「あそこからどうやって出てきた?」
「扉を壊した」
生徒会長代理はゆっくりと近づき、
「何年掛けて作ったと思ってるんだ。生徒会長代理として命じる、大人しく戻れ」
「
惨状に怒気を込めた
これが噂の「
「フッ......」
生徒会長代理は鼻で笑い、耳を疑う言葉を発した。
「逆らうのか? 神に......」
――神?
「そう、僕が神だ」
「バカか、こいつ......」
「こんな事しておいて、何言ってんだっ」
呆れ声の
「愚かな......。
ああ~、なるほど。そう言う理屈ですか。
それで神を自称してると、子どもの様な身勝手で幼稚な考えですね。
「そして僕は今、そこに辿り着いたんだ......。僕が、神だ」
「神なったお前は、どうするつもりだ......!」
「安らぎを与える......」
「俺たちに、かよ......っ」
「無茶苦茶してくれんじゃねぇかよっ!」
二人の言葉を受けた生徒会長代理は背中を向け、血まみれで倒れている大勢の戦線メンバーを指した。
「抵抗するからだ」
そのままグラウンドの中央に倒れている女子の方へと歩き出した。あの特徴的な頭のリボンは、
「キミたちは、神になる権利得た魂であると同時に、生前の記憶にもがき苦しむ哀れな人間だ。神は決まった。なら僕は、お前たちに安らぎを与えよう」
「ゆりっ!」
「あうっ、うっく......」
「ゆりっ! これ以上なにを――」
「な、なによ......?」
「キミは、今から成仏するんだ」
「なっ!?」
「先日、転校生が消えたのを知っているだろ? そう、キミが探していた人間だ」
「神である僕が成仏させた。彼は、幸せそうな顔をして旅立っていったよ」
「どうやって......?」
「僕が長い年月掛けて用意したのは、天使の牢獄だけじゃない。催眠術だ」
私は、
「お、おい......」
「お前......」
「大丈夫でーす。ご心配なく」
私の能力は、意識している一人に対してのみ有効。能力が掛かっていない
「さぁ、目を閉じるんだ。貴様は今から成仏する。こんな世界でも幸せな夢を見れるんだ」
その言葉に従う様に、
「いやー、びっくりしたなぁー!」
「え......う、うわぁーっ!?」
生徒会長代理は、大声を上げて尻餅をついた。
彼にとっては突然、目の前に私が現れた訳ですから無理ない。しかし、滑稽な格好ですね。
「あなた、今の......」
「話しは、あとにしましょう」
崩れ掛けた
「き、貴様ッ! い、いったいどこから現れたッ!?」
「なに言ってんだ? あいつ......」
歩いて近寄っていくのを普通に見ていた
「さぁ~、あなた神なんでしょ? 自分で考えたらどうっすかぁ?」
「くっ......おいっ!」
「こいつを、なっ......き、消えたっ?」
顔を大きく左右に動かして、必死に私の姿を探している。視認出来ないためか、動揺して命令を出せないでいるみたいです。命令がないと操っている
私を探して、後ろに振り向いた。その背中に声をかける。
「どこ見てんすかー?」
「ええっ!? なんなんだっ、貴様ッ!?」
「報道部の者でーす」
「ほ、報道部......?」
カメラを止めて、録画してある大食堂での暴行現場の映像を見せる。
「ほら、これ見てください。あなたが、生徒に暴行している現場です。顔もばっちり写ってまーす。それと今、このグラウンドで行われている蛮行もしっかりと記録してあります。これ、教師にみせたら解任は確実っすね」
「よ、寄越せっ!」
権力を失うのを恐れたのか、ビデオカメラに向かって飛び掛かって来た。この行動は当然、想定内。似たような事をする人は、今まで何人もいましたし。その時と同じ対処法を使う「
「また消えたっ?」
「こっちでーす」
「くそっ、撃てっ!」
今度は、間髪入れずに命令した。パァンッ! パァンッ! とグラウンドに銃声の乾いた音と雨音が交ざった音が響き、勝利を確信したのか、生徒会長代理は笑みを見せた。
けど、私には何の異変も起こらない。
「ナイスっす!
倒れていたのは、生徒会の
私寄りの二人は、
「ば、バカな......」
「詰みです。観念してください」
「くっ......」
護衛を失い観念したらしく、両手を地面に突いた。
しかし、突如として不気味に笑い出した。
「フッ......フフッフフッフフフ......」
「なんすか?」
「詰んだのは......貴様の方だーッ!」
顔を上げた彼の右手には、拳銃が握られていた。
見たことのある、デザインの拳銃。以前、
次の瞬間、私の視界に入ってきたのは泣いている雨空と照明の灯り。撃たれたはずなのに、不思議と痛みは感じない。その代わりに重みのある、温かい何かが私に覆い被さっていた。
「ゆりっぺっ!」
「ゆりっ!」
「
「はぁはぁ......うっ、くぅ......」
「無駄なあがきをする。どうせ、全員成仏するんだ......!」
立ち上がった生徒会長代理は、再び私に銃口を向けた。不味い。「
「無茶はするなよ」、
「もう止めろーっ!」
生徒会長代理が視界から消えた。彼の代わりに、
「こんな事をして、いったいなにになるってんだッ! 俺たちの生きてきた人生は、本物だ! みんな必死に生きて来たんだよ! それを奪う権利は、お前には無い! 神にだって! だからみんな、今もここで必死に抗ってるんだよっ! お前だって同じだろッ!?」
「なにを知った風な......」
「わかるさ、お前もここに居るんだから......!」
「なら、あんた認めてくれんの? この僕を......」
「お前以外の誰を認めるんだよ? 俺が今、抱いてるのはお前だ。
彼の名前を呼んだその時、生徒会長代理の
* * *
女子寮。寮内に完備されている調理室を借りて作ったお粥を、食べやすい温度に冷ましてからスプーンを口に運ぶ。
「はい、あ~ん」
「自分で食べれるわよっ」
ベッドに横になっている
「なにを強がってんすか?」
「強がってなんてないわよっ。いっぅ~......!」
「ほら」
「あなたね......。あたしは、ケガ人よっ」
「知ってますよ。だから、こうして看病してるんじゃないですか」
あの時、
「嫌なら、ちゃんと食べて早く治して下さい」
「......わかったわよ。んっ」
諦めたのか口を開けた。レンゲをゆっくり口に入れる。
「......すごくおいしい」
「そうですか? よかったっす。はい、あ~ん」
「あ、あ~ん」
なめたけをトッピングしたお粥は好評みたいです。なめたけは普通に食べるのはもちろん、お粥との相性も抜群なんすよっ。食べ終わった食器を片付けて、部屋に戻る。
「ねぇ......」
「なんすか?」
スポーツドリンクをコップに注いでいると、背中越しに声を掛けられた。コップにストローを差して、彼女に手渡してからベッド脇に座る。
「ありがとう」
「いえ、それでなにか?」
「あの時、どうやったの?
「うーん......」
命を救って貰った訳ですし。正直、ケガが直ぐに治らない私が撃たれていたらどうなっていたことか......。考えると、とても怖くなった。
「他言無用で、お願い出来ますか?」
「正直に話してくれるならね」
「はぁ......。わかりました。あたしを見ていて下さい。よっと」
「えっ! あ、あれ? 消えたっ?」
「どもっす」
「わぁっ! い、いったい、どうなってるのよ......?」
「これは、あたしの特殊能力です」
「特殊......能力?」
信じられない、と言った様子で目を丸くしている。
「まさか、天使の“
「いえ、生きていた時から持っている力です」
「どういうこと? 訳がわからないわ......」
「話してもいいですけど、説明すると長くなりますよ?」
「時間はたっぷりあるわ。聞かせて、あなたの話しを――」
私は、
私の歩んできた、理不尽な人生を――。