Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
翌日のお昼。
報道部の活動を終えた私は一人、大食堂でお昼ご飯を食べていた。
顔を上げる。
近くに、通信士の
「どうしたんすか?」
「いえ、声をかけようとしたところで振り向かれたので......」
「はあ? それで、なにか?」
事情はよく分かりませんが。ひとまず用件を尋ねると、
「臨時会議のお知らせです。13:00本部へお願いします」
「わかりました。着替えてから行くことになるので、少し遅れるかもしれません」
今の私は、天上学園指定の制服。女子寮へ戻って、
「問題ありません。
つまり、暇なら来ればいい、ということ。一礼して
招集は強制ではないそうですが。午後の予定は空いていたため、制服を着替えて、本部へ向かうことにした。
大食堂の脇を通って、医局が入る建物を越えた先に、校舎や体育館へ繋がる第二連絡橋が見えた。この橋を渡れば、
「ん?」
連絡橋横の植物園で、麦わら帽子を被った女子が、花壇の手入れをしていた。本部へ行く足を止めて、キレイな花が咲き誇る花壇へ向かう。
「こんにちは。キレイな花畑っすね」
しっかりと、手入れが行き渡っているのがわかる。
私の声に手を止めて、顔を上げた女子は、
「こんにちは。あなた、前にグラウンドで会ったわね。どちら様だったかしら?」
そう言えば、今の私は
「あたしっすよ」
「あ、
「ゆりさんに、頂きました。あたし、お二人の連絡役ですから」
「ああ......」
理由を聞いて
「その制服、似合ってるわ」
「ありがとうございまーす」
ゆりさんにも、
「
「他にやる人、居ないから」
植物園全体を見渡す。この花壇だけではなく、別の花壇やビニールハウスもある。一人だけで、これだけの敷地を管理するのは大変に思えた。
「あたしに、何か手伝えることはありますか?」
手伝いを申し出る。やや遠慮気味だった
「キレイね」
「キレイっす」
花を眺めながら作業していると、思い出した様に
「
「あ、はい。何かわかりましたか?」
手を止めて、
「分からなかった」
「そうっすか......」
未知のソフトウェア、「
「だけど、おかしいの」
「えっ?」
話しには、続きがあった。
「えっと......。生徒名簿から
「あたしだけ? 他の人は?」
「何人か試したけど、みんな見れた。ゆりの項目も見れたわ」
ゆりさんのも見れたとすると、もしかして......。
「
「くまがみ?」
少し考えたあと、ポンっと手を叩いた。
「ああ、生きていた頃の
「今度、調べていただけますか?」
「うん、わかった」
そしてそれは、この世界を創造したであろう「神」への手がかりになるかも知れない。
「あっ......ちょうちょ」
「紋白蝶っすね」
花の上をひらひらと舞う蝶を、
「お前ら、そんなとこで何してるんだー?」
突然、後ろから声を掛けられた。振り向いて、声の主を確認する。
「草むしりとか......」
「水やりですね」
立ち上がって、二人で質問に答える。
「そ、そうか......」
「あっ、そうだっ。今からみんなで、川釣りへ行くんだ。お前らも来いよ」
「川? あそこに近づくのは校則違反よ。危ないから」
今回の招集理由は、川釣りだったんだ。ちょっとお節介を焼きますか。
「いいんじゃないっすか? もう、生徒会長じゃないんですし」
「でも、生徒だから......」
律儀な人っすね。見かねた私は、リボンを解いて風に流す。
「ああ~、リボンがぁ~。橋の下へ飛んでいっちゃいました。
「あ、ああ。任せろ」
「ありがとうございまーす。
「......ハァ、仕方ないわね」
呆れ顔で小さくタメ息ついた
「よし、じゃあ行こうぜ」
踵を返して歩き出した
「
「いやー、お邪魔かと思いまして」
「な、なに言ってんだよっ。戦線のみんなも居るんだって、お前も来いよっ!」
慌てて、私にも声を掛けて来た。これは、確定っすね。
「はいはい、わかりましたよ~。そう言う事にしといてあげま~す」
「ん?」
私たちのやり取りに首を傾げている、
「おーいっ」
その中の一人、
「
「天使」というワードに、
「戦線メンバーの
「いいじゃないか。交ぜてやろうぜ」
「我らが戦線の敵だぞッ!? 宿敵だぞッ!?」
姿は見えないけど、後ろでハルバートが動いてる。これは、
「アホですねっ」
「あさはかなり」
ゆりさんの後ろに隠れている男子とは違い、彼女の横に居るユイさんと
「聞いてくれ、もう無害だ。敵じゃない」
「だが、曲がりなりにも元生徒会長だぞッ!」
また、ハルバートが動いた。
「因みに、現生徒会長代理もいますが」
「その通りです。が、その前に僕は神です」
「どうすんだよ? ゆりっぺ」
「そうね......」
ゆりさんと目が合った。いいっすよね、と目で合図を送る。
「まあ、いいんじゃない。今は、生徒会長じゃないんだし」
意外な答えに、彼女の後ろの戦線メンバーが「ええーっ!?」と声を揃えて大声を上げた。多少心配する声が上があがったが、リーダーの決定は絶対らしく、
ゆりさんの隣へ行くと、すぐに話しかけられた。
「いつものリボン、どうしたの?」
「風に飛ばされました。河原に落ちてると思います」
「ああ、そう言うことね」
すぐに察してくれた。
「聞きたいことがあるんですが」
「なーに?」
「生きていた頃と、ここに来た時の季節がズレてるみたいなんですけど?」
私が死んだのは、ちょうど梅雨に入る頃。でも、ここで目覚めた時は冬服だった。
「ここに来る人たちは、みんなバラバラなのよ。季節も、時代もね」
「そうなんですか?」
「ええ、
確かに、
「さぁ、着いたわよ」
人工的に作られた階段を下ると、河原に出た。
川幅は広く、水深も深そう。確かに、足を取られるようなことになれば危ないですね。
「シャアァーッ!」
川に飛び出る様な岩場に座っていた釣り人が、見事に魚を釣り上げた。
「彼は、
「けど、相当な釣りマニアでな。別名、“フィッシュ
ゆりさんと
「よーしっ、始めるかっ!」
それが、作戦開始の合図になった。釣り針にエサを付けていると、
「お前、釣りの経験は......あったな。山で」
「なんで知ってんすか?」
「監察も、仕事の一つだからな」
「......信用されてなかったんすか」
「そう言う訳じゃない、定期的な見回りのようなものだ。お前たち以外の調査チームにも監察は出ていた。別の連中がな」
どこか懐かしそうに話す
「おおーっ、アユだっ!」
「ほう、デカイな」
「あら、やるじゃないっ。あたしも、負けてらんないわねっ!」
久しぶりの釣りを楽しんでいると突然、川の中央が渦を巻き始めた。
「あれは!
ゆりさんの慌てようから、ただならぬ気配を感じた私たちは、指示に従って釣り竿を上げる。よく見ると、渦の中心に釣り糸が伸びていた。
その糸の先は、
「うそっ!? あの子の、釣り竿にかかっちゃったのっ!?」
「なんすか?」
「この川の主よっ。
「分かりました」
「
「今だ! 引けーッ!」
見守っていると上空で。川の主が口を開いた。戦線メンバーたちは、その口へ向かって落下していく。
――食べられる、と思った瞬間、巨大魚が一瞬でバラバラになった。
「今の、何かしらの?」
「何かしらのスキルだとは思いますけど......」
何はともあれ、作戦無事に終了。
* * *
「
「なんだ? うぐっ......!?」
出来上がった料理を近くに居た、
「どうっすか?」
「......うまい」
「よっし、完成。
「私は、
主の大量の切り身の処理に困った
「すげぇーいい匂いだな。どれ、一つ......痛ぇ!」
盛り付け途中の料理に手を伸ばした
「
「いいじゃねぇか、ちょっとぐらいっ」
目を細めて、
「わ、わかったよ。くそっ......」
諦めたらしく、
「あっ、
「貴様、僕は神だぞ? 神を小間使いにする気かっ!」
「いいから運べよ」
「あっ、
「なあ、
「なに?」
「下の名前で呼んでいいか?」
近くで野菜の下処理をしている、二人の会話が聞こえてきた。
「どうして?」
「親しくなったからだよ」
「なったかしら?」
「なったじゃないか。一緒に釣りして、一緒に料理して......それに最初から思ってたんだよ。綺麗な名前だなって......好きだよ、お前の名前」
この先を聞くのは、無粋ですね。
さて、集中し直しますか。止まっていた手を動かす。
「美味い! これ、
「ん?」
顔を上げると、
「はい。口に合いましたか?」
「すげーうまい。な、ひさ子」
「ああ。
「生きていた頃は一人暮らしだったんで、たまに自炊してたんです」
大階段近くの水道で、食器の後片付け。
「ゆりっぺは?」
「さあな」
そう言えば、河原で「先に行っていて」と別れたきり、ゆりさんの姿は見ていない。近くで、ドサっと何かが倒れる様な物音がした。目をこらして見ると、ゆりさんが倒れていた。
「ゆりさんっ」
洗っていた食器を置いて、すぐさま駆け寄る。倒れているゆりさんを支える。彼女の制服は所々切れていて、身体も傷だらけだった。
「ゆりっぺっ、誰にヤられたッ!」
――天使、と。