Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
「
医局のベッドで穏やかに眠る
「あたしたちと同じよ。どんな致命傷でもじきに治るわ」
切り刻まれた制服をテープで補修しながら、ゆりさんは答える。ケガは完治していても、制服に付いた汚れと血の跡が痛々しい。
昨夜、突如して現れた「天使」。
その姿は、
もう一人の天使は、一人河原に残っていたゆりさんに警告なしで攻撃を仕掛けた。ゆりさんは、自身の身を守るため応戦するも「
「同じ
「理由は、あるわ」
先の天使エリア侵入作戦の時に発見した、能力開発のソフトウェア「
今のところ対処方がないことから、時間稼ぎのためゆりさんを除く戦線メンバーは、しばらく真面目に授業を受ける振りをすることに決まった。
「お待たせしました」
「行きましょ」
寮の部屋で学園指定の制服に着替え、女子寮の管理室に寄ってからゆりさんと合流。分身を産み出せる能力があるのなら、消す能力もあるハズと考えた私たちは、それを探るため
「よし、ピッキングで......」
「カギ、ありまーす」
「えっ?」
マスターキー使って、ロックを解除。ドアを開く。
「どうやって?」
「特殊能力を使って、管理室からマスターキーを拝借しました」
「......便利な力ね」
部屋に入り、内側から鍵を掛ける
ゆりさんは、さっそくパソコンを立ち上げた。液晶にパスワード入力画面が表示される。
「パスワード......分かりますか?」
「ええ。以前侵入した時に、
「ああ~、おかっぱ頭の......」
実際は、
「えっと......」
ゆりさんはキーボードを叩いてパスワードを入力し、エンターキーを押した。ディスクトップの画面が表示され「
その間に私は「
「あったっ。
「あ、はい。なんすか?」
マニュアルから目を外して画面を見ると、二人が一人になるイメージが表示されていた。
「“
「分身を元に戻すスキルみたいね。本来なら、この命令で戻るんだろうけど......」
「うーん、無意識に産み出された分身ため信号を受け付けなかった?」
「それが有力ね。このプログラムを書き換えられればいいんだけど、マニュアルは?」
「どうぞー」
とても分厚い「
「うわぁ、何よこれっ? 全文英語じゃないっ」
「しかも専門用語ばかりです」
「くっそ......。
「メンバー総出で探しますか?」
「そうね、飛ばされた方角はわかるし。けど、一応保険を掛けて置くわ。分身を生み出す「
キーボードを操作して、プログラムを書き換えていく。
「タイムウェイトは10秒! これで、どうだっ!」
画面上に、カウントダウンが表示された。
「10秒って待ってると長いわね」
「そうっすね」
カウントがゼロになると「
「よしっ。これであとは、
「連動して“
「ええ、さっそく保健室へ戻りましょ。そろそろ起きてると......ん? これ、新しい能力が追加されてるわっ?」
「どれっすか?」
「
「二本の“
「ええ、爆音が轟くでしょうね。対多数用の新技ってとこか......。購買に、耳栓って売ってたかしら?」
「確か、あったと思います」
「そう。なら、後で買っておくわ。じゃあ行きましょ」
「あたしは、カギを返してから行きます」
「わかったわ。じゃあ、保健室でっ!」
PCの電源を落としてたゆりさんは、先に医務室へ向かう。
私は、「
最後に出てきた
「どうしたんすか?」
「あっ、
「
「戻ったら、医務室が荒らされてて......」
「何やってんだ! 行くぞ、
「待ってよ、
先に行った
状況を把握するため医局棟の医務室へ急いだ。
「ゆりさん」
「
医務室の中は
「
「もう一人の天使、ですね」
「ええ、プログラムを弄ったのがバレたみたい」
なるほど......冷酷な天使は「
「既に、捜索の指示は出したわ」
「あたしも探します」
「お願い。あたしは、本部で報告を待つわ」
医務室を出る。幽閉するなら人目につかない場所、となると学園全体を囲む森の中。あるいは、地下辺りが有力。とにかく、目撃者がいないか聞き込みをするため生徒の多い校舎方面へ向かう。
校舎前に到着すると、昇降口から見知った三人組が出てきた。
「みなさん」
「あっ、
報道部の一人、
「はい、ご心配お掛けしました。もう大丈夫です。ところで、
「会長さん? 会長さんなら、大きな荷物を抱えて体育館の方に行くのが教室から見えたよ。ね?」
他の二人も、彼女の言葉に頷いた。体育館は、ひさ子さんが、ギルドへの入り口があると言っていた場所――決定的ですね。
「ありがとうございました」
「ううん、どういたしましてっ」
「ところで、授業中によそ見はダメっすよ」
「あ、あはは......」
まったく、このコたちはっ。と、今はそんなことを言ってる場合じゃない。急いで戦線本部へ向かう。
「
合言葉を言って、本部がある校長室に入り、ゆりさんへ報告を行う。
「天使は、ギルドです」
「そう、やっぱり......。
トランシーバーに話しかけた。
この様子、ゆりさんもギルドと踏んでいたらしい。
『はい、
「天使を発見、幹部は体育館へ集合。ギルドへの降下準備をさせておいて。それから
『了解しました』
トランシーバーを置くとゆりさんは、ふぅ......とタメ息をついた。
「なぜ、
「あなたの護衛よ」
「......あたしは行くな、ってことっすか?」
「ご明察。ギルドは先月爆破したけど、まだ活きてるトラップがいくつもあるわ。それに――プログラム改編前に、分身が「
地上も危険性を排除出来ない。
それで、私の事情を知っている
「安心なさい。
「お願いします」
『
廊下から、
「いらっしゃい。
「何の用だ?」
「あたしたちは、これから天使を追ってギルドへ降下する。あなたには、
「わかった。気をつけろよ」
「うん、ありがと。じゃあ行くわ」
愛用の白い軍師帽を被って、廊下に出た。
「ゆりさん」
背中越しに声をかける。
「なーに?」
「耳栓、持ちましたか?」
「もっちろんよっ!」
耳栓の入ったケースを掲げて、笑顔を見せた。
遠くなるゆりさんの背中を見送って、私は
「
「ああ。俺は、お前の護衛だからな」
「お願いしまーす」
校長室を出る。図書館へ移動する前に、
「待たせたな」
「いえ、では行きましょう」
大階段を下って、グラウンドから経由して図書館に到着。
「あたしは、視聴覚コーナーへ行きます。
「そうだな、雑誌でも見てる。何かあったら来てくれ」
「わかりました。では、一時間後にまたここで」
「ああ」
洋楽の棚で「
「ぜっと、ぜっと。ん? お、おおーっ!」
棚に「
さっそく、新譜を手に取る。新曲のタイトルは「
ギターのフィードバック音から始まり、激しい演奏とボーカルの美声が流れた。目を閉じて、音楽に集中する。
――なんだろう? これ......。
最初は、初めて聞く新曲を聞き入っていた。
けど、サビに入ると違和感を感じた。
『えっと......場所は、陽野森高校ですね』
『さぁ......僕には、ただあなたが破いたようにしか見えませんでしたが?』
『ゆさりんこと~、
『揃いも揃って、うっぜぇーなっ!』
演奏の中に聞き覚えのある声が混ざる。
記憶にある
『悪夢の内容を聞き出してください。崩壊の手がかりになるかもしれません』
――ここは......星ノ海学園、併設のマンションの通路。
『......なぁ
『なんですか?』
『もし僕が、“
『......信じますよ。あなたは、
『そうか......。もう一つ聞いていいか?』
『なんすか?』
『もし......お前が――』
* * *
と――。
とも――何かが、聞こえる。
「
呼ぶ声に目を開けると、目の前に
「気がついたか......よかった」
身体を起こして辺りを見回すと、図書館の視聴エリアだった。外はもう、すっかり暗くなっている。
「どうしたんすか? 顔色悪いっすよ?」
「どうしたって、お前っ! 今、消えそうだったんだぞっ!」
「えっ? あたしが......」
――消えそうだった?
「どういうことっすか?」
「わからない。あたしが来たときには、意識がなくて......今にも消えそうな、そんな気がしたんだっ!」
「......大丈夫っすよ。ただちょっと、生きていた頃の夢を見ていただけっすから」
そう、私が誘拐される数日前の夢。
他人の特殊能力を奪い取ることが出来る、“略奪”の能力者である
だけど、あの時の質問を――私は、知らない。
「“
「“
「えっ! なんでっすかっ!?」
「お前に消えられたら、困るからだ」
「そんな簡単に消えませんって!」
お互い引こうとしない。私にとって「
それでも
「あたしの新曲が出来るまででいいっ。頼むっ、お前に聞いて欲しいんだっ」
手を合わせた
「......わかりましたよ」
あまりの剣幕に、渋々と了解。
ここまでされたら断りきれない。
「話しは、ついたようだな。もういいか?」
「
「
ゆりさんの方は、うまく行ったんですね。
「そうっすか。
「医務室へ向かっているそうだ」
「そうですか。では、あたしたちも行きましょう」
「ああ」
「では、
「ああ、お休み」
夢に出てきた
後ろをゆっくり歩く