Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
医務室が完備されている医局棟へ入ろうとした直前、
「どうしたんすか?」
「人だ」
彼が指を差した方を見る。暗くて顔は識別出来ないけど、着ている制服から
「
「えっ? ああ......、
やってきた男子は、先日から行方不明になっていた、おかっぱ頭の
「
「天使に飛ばされて、学園敷地外の外壁に激突して気を失っていました。目を覚ましてからは、いっさい飲まず食わずで森から脱出したてきたんです......」
ひびの入ったメガネを、クイッと上げた。
「あと僕のことは、クラ――」
「あっ、着きました」
何かを言いかけていた気がしましたが、
室内に居たのは、ゆりさんと
「ゆりさん」
「ああ、
「ゆり、何があった?」
思い詰めた
「詳しいことは、本部で話すわ。
「......俺は、
「そう。行きましょ」
作戦通り、
しかし、その代償は大きく、好戦的な分身の意識を大量に戻してしまったことにより、身体に壮大な負荷がかかり、再び意識を失ってしまった、と。
「なるほど、そんなことが......」
「あたしの判断ミスよ。
「いや、お前は組織を守るため最善を尽くした。
私たちは運良く遭遇しなかっただけで、
「そう言ってくれると、少しだけ救われるわ。
「わかりました」
「
『はい、こちら
「
『了解しました』
用件を伝えて、交信を終えた。
「じゃあ
「はい、お任せください。あと僕のことは、クライ――」
「行きましょ。
食堂や学生寮があるエリアとを繋ぐ、第二連絡橋の手前で
「今までにない事態です。天使のあんな状態は初めてです」
先ず話しを切り出したのは、報告役を務める
「このまま目覚めないということも、場合によってはあり得るやも知れません」
「それこそイレギュラーな事態よ、必ず目覚めるわ。いつか目覚めて、ただ寝過ぎたという結果に変わる......それだけのことよ」
ゆりさんは、
彼女の言うように、目覚めないなんてことはあり得ない。
なぜなら、ここは誰も病まないし、誰も死なないのだから。
「その時の彼女は、どっちの彼女なんだ?」
部屋の隅で話しを聞いていた
「おわぁっ!
「これは、相当重要な問題だってことだよ!」
などなど......、戦線メンバーからは驚きの声が上がる。
ゆりさんは、彼らの反応を気にする様子もなく、
「まさにそう、そこが問題よ」
「で、どっちの天使なんだ?」
「それは、最初の天使だよ。僕たちと一緒に釣りをした」
「だが、俺たちを襲った意識は、全て好戦的で冷酷だった」
「数で言えば、100対1くらいの割合だぜ?」
「フッ、愚かな。天使が今、なぜ意識を失っているのか。それは、たぶん――」
ゆりさんが「
「
ゆりさんは、口出しせずに黙って聞いていた私と
「そうですね。それほど深刻に捉える様な事案ではないかと思います」
「......なぜ、そう言いきれるの?」
組んだ手にアゴを乗せて、眉をひそめながら聞き返してきた。
「なぜって。それは、あなたたちの方がよくご存じのはずだと思いますが?」
幹部同士は、どういう意味だ? と顔を見合わせている。
壁に寄りかかり腕を組んでいた
「なるほど、そう言うことか。よくよく考えれば確かに、大した問題ではないな」
「でしょ? それより、晩ごはんにしましょう。さすがに、お腹が空きました」
時計の針は、20時を回っている。いつもなら、お風呂に入っている時間帯。
「よくこんな時に飯の心配なんて出来るなっ!」
「まあ、いいわ。みんな、夕食にしましょ」
「マジかよ、ゆりっぺ?」
「このまま考えていても答えは出ないわ。結局は、その時が来ないことにはね。それにお腹が空いてると、いざという時に力も出ないし。天使が、いつ目覚めるかもわからない以上、備えは重要よ」
「ゆりっぺがそう言うのなら、俺はそれでいい」
「お前はブレないな、
「うーん......、今日はシャワーで済ますかぁ」
消灯時間が近いこともあって私は、部屋に備え付けのシャワールームで汗を流すことにした。タンスから着替えを用意して、玄関近くのシャワールームへ向かう。
脱衣所のドアノブに手を伸ばしたところで玄関のドアがノックされた。
「はーい」
着替えを持ったまま、ドアを開ける。廊下に居たのは、着替えを持ったゆりさんだった。
「あら。
* * *
『はぁ~......気持ちいいわね』
『そうっすね~』
部屋のシャワーで済ますつもりだったんですが、結局一緒にお風呂に入ることに。消灯時間間際ということもあって、大浴場には私たちを含めて十人以下の生徒しかいない。
『それで?』
『うーん?』
『何か話があるから誘ったんしょ?』
ゆりさんは、パシャっと顔をお湯で流してから話を切り出した。
『
『さっきも言いましたけど、ゆりさんなら、わかるはずですよ』
勿体ぶらないで教えなさい、と目を細めた。
『ここは、死後の世界。誰も死なないし、誰も
『あっ、なるほど。そう言うことか......』
気づいたみたいですね。この世界の仕組みを少し考えればわかること。
『この世界では死なないし、病まない。例えどんな絶望的な確率だったとしても、外的要因で精神を病んだりすることは絶対にない』
『はい、その通りです』
『どんなに時間がかかっても
『はぁ......ホント、敵に回さなくてよかったわ。あなたも、
やや自虐的に乾いた笑顔を見せた。
『お願いしまーす』
湯舟から上がって、シャワー前へ移動。
先に髪を流してもらっていると、
『よう。ゆり、
『あ、こんばんはー』
『
『ああ、部屋でシャワーでもよかったんだけど、何となくな。そうしたら、お前らが居て驚いた。仲いいのか?』
『うわっ! なんすか......』
先程の自虐的な笑顔とは違い、ゆりさんはイタズラな笑みを見せると、後ろから抱きついてきた。
『見ての通り、仲良しよっ』
『そうか、それは良いことだな』
純粋な
三人一緒にお風呂を上がり、脱衣所で着替える。
「
「ああ、これか? 前に購買で、
「いいえ、似合ってるわ、ステキよ。いい趣味ね」
「そうか、ありがと。そうだ、
「はい、なんすか?」
パジャマのボタンを止めながら聞く。
「“
「心配しなくても聴いてませんよー」
「何の話し?」
「ああ、実は――」
「
「............」
「言っておくけど、意地悪で言ってるんじゃないわよっ?」
「それは、わかりますけど......」
楽しみを奪われる私は、どうすればいいんっすか......。
ん? 新譜じゃなくて、アルバムなら聴いても平気かも......
* * *
翌日、朝一番に誰かが部屋を訪ねて来た。
玄関のドアを明ける。訪ねて来たのは、
「おはよう」
「おはようございまーす。目覚めたんですね。意識の方は、大丈夫っすか?」
「うん、壮絶な戦いだったけど。