Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
登校前の早朝に訪ねて来た、
ひとまず、部屋に上がって待っていてもらう。寮内に設置されている、部屋から一番近い自販機で二人分の飲み物を買って戻り、話を聞く事にした。
「それで、お話しとはなんでしょうか?」
「
「ゆづるさん?」
初めて聞く名前に疑問系で聞き返したの見て、
「えっと、
「ああ~、
しかし、下の名前で呼ぶだなんて知らない間に、二人の仲は進展しているみたい。お節介の甲斐があったっということでしょうか。
「その
「
「あたしにですか?」
「うん。
正直、何の話しか想像もつかない。
ただ、
「わかりました。いいですよ」
「ありがとう。じゃあ、お昼に時間もらえるかしら?」
「はい。場所は......そうですね、報道部の部室でいかがでしょうか。部室なら誰も来ませんし、気兼ねなく話せます」
提案に、
その後、人もまばらな食堂で、朝ご飯を食べて教室へ登校。
午前の授業を終え、お昼は売店でサンドイッチとジュースを買い、部室で
そして、約束の時間ちょうどに部室のドアがノックされる。
「どうぞー」
声をかけると、静かにドアが開いた。
「お邪魔するわ」
先に入ってきたのは、
彼女のあとに続いて、
「いらっしゃいませ。テキトーに座ってください」
私の正面に、
昼休みが終わるまで、あと40分弱。移動時間を考えれば30分ほど、あまり時間はない。私はさっそく、用件を聞く。
「では、さっそく始めましょう。それで、お話しとはなんでしょうか?」
「
「あ、ああ。えっと......」
「俺は、夢半ばで死んだ......」
まあ、そうでしょうね。死後の世界に居る訳ですし、何かしらの未練や心残りがあるはず。しかし、
「俺、ここに来た時、生きていた頃の記憶がなかったんだ。辛うじて覚えていたのは、苗字だけで。
――う~ん......妙ですね。
「それで?」
「俺と同じ思いを、
目を開けて
「まあ、いいんじゃないっすか」
肯定の言葉を聞いてか、安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、
「......具体的な方法は?」
「あいつらはみんな、心残りがあるからここに留まっている。だから、生前の未練を解消する手伝いをするんだ」
この人、簡単に言いますね。それが、どれほど難しいことか。シンプル故に分かりやすいですけど、シンプル故に解決はとても困難な問題。
「なるほど、分かりました」
「よし! じゃあ、さっそく――」
意気揚々と立ち上がろうとしたところを呼び止める。
「ただし、ひとつ条件があります」
「条件? なんだ......?」
中腰だった
条件があると聞いた彼の
「とても単純なことです。本人の意思を確認し、同意を得ること。以上です」
「そ、それは......」
「
私の出した条件を聞いた途端、
おそらく、
「もし、あたしが知らない間に、あなたの行動で未練や心残りを解消出来たとしたら。最期は、あなたに感謝するかも知れません。ですが――」
先日、この世界を去った
私はきっと、それが、この世界の正しい卒業のあり方なんだと思う。
「もし、自分の意思とは別のところで、他の誰かの勝手な意思で消されるのだとしたら、あたしは、嫌です。きっと、他の人も。当人の意思を確認せず、同意を得られないまま行おうと言うのなら、分かりますよね?」
「......ああ。
「そこまでとは言いませんけど。まあ、極端にいうとそういうことです」
掛け時計を見る。
私と
「
「......少し考えてみる」
「はい。では今日は、これで。他言はしないんで安心してください」
「ああ、そうしてくれると助かるよ」
席を立ち、部室を出て鍵を掛ける。
「
「うん、また放課後」
「
「......うん。
「さっきも言いましたけど、未練や心残りを解消するということに関しては理解できます。やり方さえ間違えなければですけど」
「どうすれば、いいと思う?」
「そうっすねー」
「みんなに考えを話して、ちゃんと理解してもらうこと。未練を解消したら、この世界から消えてしまうことも含めてです。そして――」
そのためには、絶対に越えなければならない壁がある。
「一番最初に、ゆりさんに話すべきです。それ以外ないっしょ?」
「そうね。ゆりは、何て言うかしら?」
本気で彼らの未練を解消し、卒業させたいのなら個性の強いメンバーをまとめ上げ、導くほどの高いカリスマ性を持つリーダーであるゆりさんの協力が必要不可欠。
彼女が首を縦に振らなければ、誰も
「正直、とても難しいと思います。それが分かってるから、あたしにだけに話しに来たんでしょ?」
「ちゃんと、ゆりに話してみるわ」
「それが良いと思います。あっ、そうだこれを」
解答用紙すり替えの証拠が入ったファイルを、
「早ければ明日には、生徒会長に復帰出来ると思いますよ」
「うん、今から行ってくるわ」
「授業間に合いますか?」
「急げば、大丈夫。
「どういたしまして」
そして、この日の放課後緊急の全校集会が開かれ、
* * *
「ああ~っ、もうっ。肩こったわっ!」
「自業自得です」
「言い返せないのが、ムカつく......」
夕食後、
「ゆり、お疲れさま。
「ありがと、
「ありがとうございまーす」
用意してくれた飲み物を受け取る。
先日話し合った時と同じ形でテーブルに着くと、
「ゆりは、どう思う?」
「......
ゆりさんは、私に答えを求めた。
「本人の意思を確認し、同意を得ること。出来ないのなら協力も応援も出来ないと答えました」
「そう......」
目を閉じたゆりさんは、難しい顔で腕を組んだ。
答えを出すことに迷っている。
それはつまり、もう、
「先ずは、
「うん」
無難な答え。でも、もしかしたら
「ところで、
「そうですね。反対される確率の方が遥かに高い訳ですし、冷酷な天使のフリをしてれば......」
「だって、友だちだから」
身を乗り出したゆりさんは、わしわしと
――しっかし、こう面と向かってはっきり言われると少しハズいっすね。
ゆりさんは座り直すと「さて本題の話を始めるわよ」と話題を変えた。
「それで、神についてだけど。何か情報はあるかしら?」
「ないわ」
「あたしも、特にありません」
「そうっ。はい、解散っ! って訳にもいかないわっ。なんでもいいの、何かないっ?」
「う~ん......」
と、聞かれたものの。実在するかどうかもわからない神様を見つけ出すなんてこと――あっ、そうだ。神様と言えば......。
ひとつ、疑問が思い浮かんだ。
「ここって、神社とか教会ってないんですか?」
私が自分の足で散策した限り、神社、寺院、教会など宗教に関するような施設は見つけることは出来なかった。
「神社......教会? それよ、それだわっ。何で、そんなことに気が付かなかったのかしらっ。神様なんだから、神にまつわる場所を探せばいいんじゃないっ!」
「
「う~ん......聞いたことも見たこともないわ。明日、先生に聞いてみる」
「お願いね、
こうして、実際に存在するかどうかも分からない。
まさに雲を掴むような途方もない、神様探しが始まりを告げた。