Angel Beats! ~First Love~   作:ナナシの新人

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Episode26 ~意図~

 夕食後、ゆりさんと寮の玄関で合流して一緒に、(かなで)さんの部屋へ向かう。

 三人での話し合いの場は普段私の部屋なんですが、(かなで)さんが見せたい物があると言うことで、今日は彼女の部屋で行うことになった。

 

「で、どうなりました?」

「当然だけど。みんな、混乱してたわ」

 

 幹部への報告を済ませた後、ゆりさんは体育館に戦線メンバー全員(ギルドを除く)を招集し、天使と心残りの件についての話しをした。

 今まで疑うこともなく、敵として対処していた訳で唐突に想定外の告白をされたのだから、答えを出すのに時間が掛かかるのは当然のこと。ゆりさんも。それを解っているから答えを出すことに対し、制限を決めずに解散させた。

 

「ゆっくり、答えを出してくれればいいわ。時間はあるんだから、それこそ永遠にね」

「そうですね。さあ、着きましたよ」

 

 (かなで)さんの部屋に到着。

 ノックをすると、少し間が開いてからドアが開いた。

 

「いらっしゃい。どうぞ」

「おじゃましまーす」

「お邪魔するわ」

 

 部屋に上がらせてもらう。テーブルには、三人分のお茶と和菓子が用意されていた。

「準備するから、食べて待ってて」と言われたため、さっそくいただいていると、(かなで)さんは机のパソコンを立ち上げて操作を始めた。

 

「二人とも、これを見て」

 

 準備が済んだらしく、私たちにディスプレイを見るように言った。

 立ち上がって、(かなで)さんを真ん中に挟む形でパソコンの液晶画面を覗き込む。画面に写っていたのは、天上学園全校生徒と教師の名簿。所属クラス、部活、委員会、部屋番号などの項目が表示されていた。それと、在籍年数も。

 

「これが、どうかしたの?」

「うん。先ずは、私のページを出すわ」

 

 (かなで)さんは、自分の名前にカーソルを合わせてクリック。すると顔写真、氏名、年齢、生年月日。そして、命日が表示された。

 

「次は、ゆりのページ」

 

 続いて、ゆりさんのページを開く。(かなで)さんのページと同じ項目が表示された。

 ゆりさんに顔を向けると、不思議そうな表情(かお)している。そう言えば、ゆりさんには話していなかった。話す直前に、(かなで)さんの分身(コピー)問題が勃発したため報告が遅れていた。

 

「次は――」

「あたしっすね」

「うん」

 

 (かなで)さんは頷いてから、私の名前にカーソルを合わせてクリック。直後、短い警告音が鳴り、画面には「error(エラー)」と表示された。以前、(かなで)さんから聞いた通り。

 

「これ、どういうことなの?」

「私にも、解らない。他の人は、こんなことにならないから」

 

 (かなで)さんは、一般生徒(NPC)教師(NPC)のページを幾つかクリック。ここに来た人たちの項目とは違い、命日の表記が無いとは言え、そのすべてが、問題なく表示されている。

 

熊耳(くまがみ)さんは、どうでしたか?」

「それを、今から調べてみるの」

 

 検索項目にカーソルを合わせて、キーボードを叩いた。

 

「出たわ。奈緒(なお)

 

 ――覚悟はいい? と問いかける様に(かなで)さんは、私に視線を向けた。頷いて答える。

 もし、これで熊耳(くまがみ)さんのデータを見れるのであれば、特殊能力者で括られている訳ではないことが判明する。

 

「いくわ」

「お願いします」

「何だか緊張するわね」

 

 (かなで)さんは、熊耳(くまがみ)さんの名前にカーソルを合わせてクリックした――。

 

「さて、どういうことか説明して」

「あたしから話します」

「お願い」

 

 いったん、パソコンを離れて来たときと同じ様にテーブルを囲んで座り、会話。

 

「川釣りの当日。SSS(スリーエス)と合流する前に、ケガの件を花壇で教えてもらったんです。そのあとは、色々あったんで」

「ああ~、そういうことね。で、結局――」

 

 ゆりさんは、パソコンに顔を向けた。同じように見る。

 パソコンの画面上には、熊耳(くまがみ)さんに関するデータが、ゆりさんたちと同じ様に表示されていた。

 

「謎は、深まった訳ね」

「そういうことっす。さあ、始めましょう」

「いいの?」

 

 (かなで)さんは、気にかけてくれる。

 

「考えても解らないですから。今は、出来ることをしましょう」

「そうね。奈緒(なお)ちゃんは今まで通り、ケガには細心の注意を払って行動すること」

「はい」

 

 今は自衛に努める。私には、それしか出来ない。

 

(かなで)ちゃん。この名簿は、ここでしか見られないの?」

「ううん。生徒会室と職員のパソコンからなら見れるわ」

「そう。なら、生徒会室のパソコンを竹山(たけやま)くんに調べさせてもらってもいいかしら?」

「う~ん......私は、許可出来ないわ。生徒会のパソコンは私物じゃないから、生徒会に所属してないと使えないの」

 

 ――生徒会のルールは絶対って訳ですね。手引きをしてバレたら責任は、生徒会長の(かなで)さんが取らないといけない訳で、そうなれば最悪、再び解任もあり得る。

 

奈緒(なお)。明日の放課後、花壇の手入れを手伝ってくれるかしら?」

 

 ――なるほど、そういうことっすか。ゆりさんも、(かなで)さんの意図に気づいている。

 

「はい、もちろんいいですよ」

「うん、ありがとう。じゃあ16時に植物園の花壇で待ってるわ」

(かなで)ちゃんも、なかなか策士ね」

「さて、何のことかしら? 私は、ただ手伝いを頼んだだけよ」

 

 とてもわざとらしく惚けた。

 あとは、生徒会の一般生徒(NPC)を遠ざけることが出来れば生徒会室への侵入は容易い。それと、あの人をどうするか――音無(おとなし)さんを使わせてもらいますか。

 話題は変わって、神探しの件。ゆりさんは、(かなで)さんに進行状況を尋ねる。

 

「どうだった?」

「先生も知らないって言っていたわ」

 

 神社や教会が存在しないのなら、他に神に纏わる場所......関係ありそうな場所や施設を思い浮かべる。

 ――やっぱり空、とか。

 

(かなで)ちゃんが話しを聞いた教師は、本当に知らないのかも知れないわ。仮に、存在していたとしても」

「どういうことっすか?」

「二人は、ロールプレイングゲーム(RPG)やったことある? 教師は全員NPC。あたしたちとは違う。つまり、設定されていないことは知らないし、そもそも答えられないのよ。明日の朝、幹部全員に臨時招集をかける。二人は、自分のことを優先してくれて構わないから」

 

 ゆりさんは、何か策が浮かんだみたい。

 朝は毎日恒例の予習があるけど、休み時間に回してもらえばいいか。

 

「じゃあ、お風呂いきましょっ」

 

 一度、部屋に戻り着替えを持って大浴場で待ち合わせになった。

 

 

           * * *

 

 

「みんな、居るわね?」

「はい、全員居ます」

 

 ゆりさんの問いかけに、高松(たかまつ)さんが答える。

 昨夜言っていた朝の臨時招集に、私も参加している。そのまま授業に向かえる様に、学園指定の制服での参加。

 

「よろしい。では、これからのことを話すわ。あなたたちは、三班に別れて行動してもらう」

 

 リモコンを使って照明を落とし、同時に天井から巨大なスクリーンが降りて来た。

 

「先ずは、捜索班。文字通り自らの足で、神の手がかりを探す班よ」

 

 ゆりさんは、話しながら机の上のパソコンを操作。するとスクリーンに捜索班の文字と、活動内容が箇条書きで映し出された。

 

「主な活動は、学園内及び周囲の森の捜索」

「だが、数十年かけて全てを調べたが何もなかったぞ?」

野田(のだ)の言う通りだぜ? ゆりっぺ」

「わかってるわ、日向(ひなた)くん。けど、我々は見逃していたのよ」

「見逃していた? 何をだ?」

「我々は常に、神と云う存在のものを探して来たわ。主に建物や、隠れ家とかをね。けど、今回は違う。あなたたちには神に纏わる物を探して欲しい」

 

 画像が切り替わった。神社、教会、鳥居、地蔵、祠、碑石、書物など、全て神様に深くまつわる物。「そんなものあるのか?」「見たことないぜ」と、みな存ぜぬという声ばかりが上がる。

 

「正直、わからない。少なくとも、教師は存在を否定しているわ。そこで第二班は、情報収集班」

 

 再び映像が切り替わる。今度は情報収集班と記され、捜索班の時と同じく、活動内容が表示された。

 

「これは重大な任務よ。一般生徒(NPC)への聞き込み」

「まさか、全員に聞くの......?」

「当然よ。聞かなければ可能性はゼロのままなんだから」

 

 大山(おおやま)さんの質問に、ゆりさんは間髪入れずに答えた。

 

「マジかよ? 二千人はいるぜッ?」

「oh...my god」

「その神を探してんだろ」

 

 批難に近い声が飛び交い、本部が騒がしくなった。パンパンッと、ゆりさんは手を叩いて注目を集める。

 

「ちょっと落ち着きなさい。いい? 情報収集は、時間との勝負よ」

「どうしてだ?」

 

 音無(おとなし)さんが、手を上げて質問をした。

 

「あとひと月足らずで夏休みだからよ」

「えっ? 夏休みがあるのかっ?」

「そりゃ有るさ、普通の学校だからな」

「そうなのか......」

「話しを戻すわよ。いいかしら? 音無(おとなし)くん、日向(ひなた)くん」

「ああ、悪い、続けてくれ。それで、夏休みになると何か不味いことがあるのか?」

 

 ゆりさんは、ええ、と頷く。

 

「夏休みに入ると、多くの一般生徒(NPC)は帰省するのよ」

 

 来たばかりの私と熊耳(くまがみ)さん、音無(おとなし)さんに解るように簡単に説明してくれた。長期休校で帰省するのは、一般生徒(NPC)のみ。私たち人は、帰省出来ない。まあ死んでる訳ですから当然と言えば当然。

 しかし帰省と言っても、実際に学園の外に家が在ある訳ではなく、天上学園から一時的に消えるだけで、休み明けには何ごともなかったかのように登校してくるとのこと。

 

「なるほど。夏休みまでに聞き込みを終えなければ、教師の監視の目が少なくなる夏休みに効率的に行動出来なくなる、と」

「そう。奈緒(なお)ちゃんの言う通りよ。そこで戦線の七割を情報収集班に当てる。残りの三割は、捜索班。そして――」

 

 ゆりさんは、音無(おとなし)さんに顔を向けた。

 

「最後は、未練解消班。これは、音無(おとなし)くんに一任するわ」

「俺、一人なのか?」

 

 少し不安そうな表情(かお)を見せる音無(おとなし)さんに対してゆりさんは、室内の照明を付け直してから「パートナーを一人選ばせてあげる」と提案した。

 

「誰でもいいわ。ただし、授業を受ける必要がある奈緒(なお)ちゃんはダメよ」

「じゃあ、えっと......」

 

 音無(おとなし)さんは、明るくなった本部を見回す。彼の正面に座っている日向(ひなた)さんが、目をつむり足を組むと、わざとらしく髪をかき上げた。

 

「じゃあ、日向(ひなた)......以外で」

「よしっ、やろうぜっ、音無(おとなし)! って、ワッツ! ホワーイッ!?」

 

 思わせ振りな態度に、日向(ひなた)さんが壊れた。

 

「なんでだよッ!?」

「いや、冗談だって。日向(ひなた)、頼むよ」

「......俺は、時々お前が解らない時があるぞ。やっぱSなのか?」

 

 釈然としない様子の日向(ひなた)さんでしたが、一応決まったみたい。

 

「他は好きに別れてちょうだい。あと、竹山(たけやま)くん」

「何ですか?」

「特別な仕事を頼みたい。あなたにしか出来ない仕事よ。16時に生徒会室に来て」

 

 竹山(たけやま)さんは、得意気に眼鏡を直す。

 

「わかりました。お任せください。それから僕――」

「以上、解散!」

 

 ゆりさんの解散宣言を聞いて、私は一人、授業を受けるため教室に向かった。

 午前の授業を終えて、お昼ご飯を済ませる。そして、午後の授業を受ける。授業を全て終えて、(かなで)さんとの約束した花壇に行く前に、生徒会室へ立ち寄った。

 

「失礼しまーす」

 

 ノックをしてから、生徒会室に入る。

 会長に復帰した(かなで)さんが、ファイルを持って座っていた。他には生徒会所属の生徒会役員(NPC)が数人、と。

 

「どうしたの?」

 

 約束の時間にまだ早いこともあって、(かなで)さんは首をかしげた。

 

「はい、そちらの方に用がありまして」

 

 彼女の近くで棚の整理をしていた、副会長に顔を向ける。振り向いた直井(なおい)さんと目が合った。

 

「僕に、だと......?」

「はい、話したいことがあります。ちょっと外に来てください」

「貴様、僕に命令する気かっ!」

 

 すっ、とビデオカメラの画面を見せる。見せた映像はもちろん、直井(なおい)さんが一般生徒(NPC)に暴力を奮っている現場の映像。

 

「きますよね?」

「くっ......」

 

 直井(なおい)さんは、学生帽を深めにかぶり直すと渋々着いてきた。廊下に出て、向き合う。

 

「何の話だ? 僕は貴様と違って忙しい、手短に済ませろ」

 

 思いっきり不機嫌そうな表情(かお)で聞いて......いえ、これは命令ですね。私も、嫌われたモノっすね。まあ嫌われるのには慣れてるけど。

 

「実は、直井(なおい)さんに折り入ってお願いしたいことがありまして。音無(おとなし)さんのことで」

「えっ? 音無(おとなし)さんっ? どういうことだ、詳しく教えろっ!」

 

 音無(おとなし)さんの名前を出した途端に、直井(なおい)さんのテンションが上がった。そっちの気があるんでしょうか? にしても、態度がデカイっすね。ちょっとばかり、お灸を据えておきますか。

 

「それが、人にものを頼む時の態度でしょーか?」

「くっ......教えてください」

「お願いします、は?」

「......お願いします」

「もっと」

「......教えてください、お願いします......」

 

 屈辱的な表情(かお)をして、頭を下げた。

 

「そこまでされたら仕方ないっすねー。はいはい、教えてあげますよー。音無(おとなし)さんは今、戦線メンバーの未練を解消するために話しを聞いて回っています」

 

 ここではあえて、日向(ひなた)さんの名前は出さない。その方が乗せやすいですし。

 

「なるほど、僕を音無(おとなし)さんのパートナーにってことですかっ!」

「大変なことだと思いますから。そこで直井(なおい)さんに手伝っていただければと思いまして、どうっすか?」

「フッ、愚問だ。待っててくださいっ、音無(おとなし)さーんっ!」

 

 生徒会の仕事を放り出して、廊下を走っていった。はい、計算通りです。生徒会室に戻る。

 

「あれ? 奈緒(なお)一人だけ? 直井(なおい)くんは?」

「用事を思い出したみたいで、廊下を走っていきました」

「そう。困った人ね」

「代わりに手伝います」

「でも......」

「大丈夫でーす。慣れてますから」

 

 直井(なおい)さんが整理していた棚に手を伸ばす。生徒会の仕事も久しぶり、何だか懐かしい。黙々と作業を続け、時刻は15時50分――そろそろかな? ガラッ! と勢いよくドアが開いた。

 

「大変ですっ! 野球場の水道で赤水が出ました!」

「それは、大変。今すぐに事態の収拾に向かって」

「はい、行ってきますっ!」

 

 生徒会役員(NPC)は全員総出で、対応へ向かう。

 (かなで)さんと私の二人だけが残された。(かなで)さんは、この時を待っていたかのようにファイルをしまって席を立った。

 

「私たちも行きましょう」

「はい」

「どうして、直井(なおい)くんを追い出したの?」

「居ない方が、二人も作業しやすいと思いまして」

「そう」

 

 音無(おとなし)さんと日向(ひなた)さんの手伝いをしてもらいたいのも本音。それに直井(なおい)さんなら、きっとちゃんとやってくれると思いますし。生徒会室を出て、花壇へ向かう途中ゆりさんと竹山(たけやま)さんが、生徒会室へ向かい歩いてきた。

 

「お願いします」

「任せなさいっ」

 

 すれ違い様に声を掛けると、力強い言葉を返してくれた。

 後は、二人に任せます。

 私には、待つ事しか出来ないですから。

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