Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
音楽室でピアノのレッスンをしている二人と一緒に夕食を食べたあと、自室に戻り、ノートパソコンを立ち上げて音楽を流しながら課題に手をつける。
BGMは、もちろん「
洗練されたサウンドとボーカルの圧倒的な歌唱力が、いっそうやる気を引き出してくれる。しっかり集中して一時間、ペンを置いて、腕と背中を大きく伸ばす。
「よしっ!」
終わった課題を鞄にしまってから勉強机の棚にある、一冊のノートを手に取って開く。この死後の世界へ来た日から一日も欠かさず書いている日記。さて、今日も記録を付けますか。
今日の出来事を思い返しながら日記を書いていると、部屋のドアがノックされた。
「はーい」
椅子を立って、ドアを開ける。
来客は、ゆりさん。白い軍師帽を被っているところを見ると、トルネードが終わってすぐ来たらしい。
「いらっしゃいませ。どうぞー」
「お邪魔するわ。
「
「音楽室?」
――どういうこと? と、不思議そうに首を傾げた。
説明する前に、ひとまず上がってもらってから昼に起きた出来事を話す。
「へぇ~、
「意外ですか?」
「まあね。だけど、
被っていた帽子をテーブルに置いてから、ゆりさんは話し始めた。
先ずは今日、参加できなかった定例会議について。聞き込みは現在、生徒全体の約5%前後。生徒数が多いこと、戦線メンバーは普段授業に出ていないこともあり、なかなか進まないみたい。他にも、違うメンバーが同じ人に聞き込みを行ってしまうなどの連携ミスも多少あるらしく。こういったことは、聞き取りが進むにつれて増えて行くことが予想されている。
神探しの方は、学園敷地の西側を中心に捜索中。今のところ、特にこれと言った成果は上がっていないとのこと。
未練解消班は、幹部以外の聞き取りが終了。その殆どが、自ら解決できる問題、もしくは既に解決されていることが多く、明日からは幹部メンバーへ移る予定。
捜索班、情報収集班はほぼ予定通り。未練解消班は、私たちの想像を遥かに越える速さで進んでいた。
「それから、もう一つ。この世界から何人か卒業していったそうよ」
「そうですか。それは、よかった......で、いいんですよね?」
「ええ、そうよ。納得して行けたんだから」
未練が解消されてしまえば、この世界から消えてしまう。
それをねじ曲げてまで残るには、相当な精神力が必要ってことか。「こうなるメンバーも居ると思ってたし」と、そう続けたゆりさんでしたが、やはり寂しそうだった。
長年一緒に過ごしてきた仲間......いえ、彼女にとって戦線は家族に近い存在なのかも知れません。けど、その
「じゃあ、お風呂行きましょっ」
着替えを持って、大浴場の入り口で待ち合わせ。ゆりさんが来るのを待ってから、一緒に脱衣所に入る。最近、報告会を終えてから一緒にお風呂に入ることが日課になりつつある。今日は、
消灯時間まで一時間弱ということもあって生徒の数は疎ら、そんな中ゆりさんが知っている顔を見つけた。
『
『ゆり?
『こんばんはー。
『こんばんは。
挨拶を済ませ、かけ湯をしてから湯船に浸かる。
『
ゆりさんの質問に、
『あたしには、ギターがあればいい......』
速攻で挫折していた。
『才能の差に絶望した......』
『
『うん』
『ところで天使......元天使は、
『聞いてなかったんすか?』
『ああ、聞いてない』
この二人は練習中、お互いのことをどう呼びあっていたんでしょうか。
『けど、
『もう、死んでるけど』
『ははっ、だな。これからも頼むぜっ』
『う~ん......どうすればいい?』
『
『あたしも、そう思います』
『そう。なら、夕食の後でよかったら』
『十分だ。頼むぜ、
無事、話はまとまったみたい。
* * *
「
午後最後の授業が終わると、担当していた女性教師に話し掛けられた。
「はい、なんでしょうか?」
「これを、図書館の司書さんに渡してくれる? 私今から、会議で行けなくて」
渡されたのは、メモ用紙。次回の授業で使う資料みたい。
「わかりました。届けておきます」
「ありがとう。じゃあ、お願いするわね」
女性教師は、急ぎ足で教室を出ていきました。鞄を持って席を立つ。少し離れた席から、報道部のみんなが寄ってきました。
「
「すみません。先生から用事を頼まれました、先に行っていてください」
「うん、わかった。後でねー」
一緒に教室を出た彼女たちとは反対方向へ向かう。階段を下り、校舎を出て、図書館へ向かう。相変わらず、立派な図書館。そのカウンターに座る、メガネをかけた女性の司書さんに話し掛ける。
「すみませーん」
「はい、なにかしら?」
「これを渡して欲しいと、先生に頼まれました」
頼まれたメモを司書さんに渡す。受け取ったメモに目を通し始めた。しっかし、艶っぽい司書さんっすね――ん? 視線を感じて横目で見ると男子生徒が数名、本棚などに身を隠しながら、司書さんを見ていた。その中に、見知った顔が一人......って、ひくなっ! あの人、クラス担任じゃないっすかっ! 会議ほっぽり出して何してんだか、まったく。
「はい、確かに承りました。夕方には用意しておきます、と伝えてくれる?」
「あっ、はい。わかりました、伝えておきます。失礼しまーす」
帰り際、担任の方へ視線を向けると慌てて背を向けて、わざとらしく本棚から本を数冊引き抜き始めた。呆れて、言葉も出ません。よそ見をしていたせいで、入って来た人とぶつかりそうになった。反射的に謝る。
「すみません」
「いや、私の方こそ」
初めて見る、牧師のような格好をした初老の男性。
少し気になった私は、男性の行動を目で追った。カウンターへ行き、先ほどまで話しをした女性司書さんに第一コンピュータールームの場所を尋ねて、彼女と共に、図書館の奥に消えていった。
第一コンピュータールーム......少し気になりますね。
初老の男性のことを気に留めておき、図書館を後にする。そのまま教員棟に行き、女性教師に伝言を伝えてから外に出ると、
「おっ、
「ん? ああ......あなたたちですか」
またしても、
「順調らしいっすね。ゆりさんから聞きましたよー」
「怖いぐらいにな」
照れ隠しなのか、
そんな彼をすぐさま、
「全ては、
「お前、ちょっとヤバイぞ?」
「なんだと? 貴様、家畜の分際で......!」
「っんだと! 誰が、家畜だァッ!」
「貴様以外の誰がいる? さあ、僕の目を見るんだ......」
「それで今日も、活動してるんすよね?」
「そうなんだけどな......」
「なるほど......
「ああ、
ある戦線メンバーの心残りを解消するため敷地内に咲く、
「体育館の方に数輪ですけど、咲いているのを見ましたよ」
「ホントかっ?」
「はい。
「ありがとう、さっそく行ってみるよ。おい
「モゥー」
両手を地面に付いて、牛の様な鳴き声をあげていた。
「フッ......家畜に相応しい似合いな姿だな」
「何鳴いてんだよ......ったく、馬鹿やってないで行くぞーっ!」
「あっ、待ってくださいよっ。
二人は、
催眠術にかかった
「はっ!? こ、ここは? 俺はいったい、今まで何をしてたんだ? そうだ、
「
「そ、そうか。待てよっ、
二人を追って、体育館へ走って行く。
さて、
「
「どうしたの?」
「ここに植える花なんですけど――」
ビニールハウスを撤去した空き地について事情を説明すると、快く受け入れてくれた。
「そう言う理由なら。それに
「伝えておきます」
夕食を一緒に食べる約束をして、私は部室へ向かった。
議題は、今後の活動内容について。夏休みに行われる、運動部の大会について取材を中心に行うことを決めて。今日は、解散。
大食堂で
「いただきまーす」
「いただきます」
いつもより、一時間ほど早い夕食。
「“
基本装備の「
「羽を作った」
「羽っすか?」
「うん。
「ああ~......」
冷酷な天使を演じるって話が出た時。けど、羽ってまさか......。
「飛べるんすか?」
「ううん、飛べない。ただの飾り」
「......そっすか」
何に使うのかよくわかりませんけど、話しをしながら夕食を食べていると、トレイを持った
「
「どうぞー」
「サンキュー、じゃまするぜ」
「新曲は、いかがですか?」
「曲のイメージは、もう出来てるんだ。あとは、それに合わせて歌詞を書く」
まだまだ掛かりそうっすね。
夕食を食べ終わると、二人は立ち上がり、音楽室へ行った。
三人分の食器を片付け、部屋に戻って、課題と日記をつける。
「そろそろかな?」
時計は、消灯の一時間前。昨日とちょうど同じ時間に部屋のドアがノックされた。来ましたね、玄関を開ける。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
「お邪魔するわ」
時間通りに訪ねてきた、ゆりさんを出迎え。そして、いつもの様にテーブルを挟んで座る。今日は、私の方から先に報告を行う。話題はもちろん、図書館で見かけた初老の男性の件。
「確かに、少し気になるわね」
「どうしますか?」
「念のため調べてみるわ。何もなければいいんだけど......」
嫌な予感がするのか、ゆりさんは、少し眉をひそめた。
私も同じ。なぜだか妙な胸騒ぎがしてなりません。何もなければいいんですが――。