Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
「この世界に異変が起き始めている。みんなの知っての通り、新たな敵性勢力が出現した。まんまだけど、“
体育館には、大勢の戦線メンバーが集まっていた。全員で60人前後くらい。更に卒業していったメンバーとギルドメンバーを含めれば100人超の大所帯。これだけの人間をまとめて来たゆりさんは、改めてスゴい人だと思いしらされた。
ゆりさんは、ステージ上の最前部に立って、今後について話しをしている。
「
今までにない出来事に対する不安と混乱から、体育館にざわめきが広がっていく。ゆりさんは座り直して、構わずに話しを続けた。
「
あの子たちの様に、ここ卒業する。確かに今のところ、それが一番確実な自衛になると考えられる。目の前にいる戦線メンバー全員の顔を見渡したゆりさんは、とても真剣な表情で声を張った。
「
「......ゆりっぺは、どうするんだっ?」
彼女の言葉を聞いて、男子が答えを求めた。それはきっと、戦線メンバー全員の思いを代弁した想い。みんな、ゆりさんの回答を固唾を飲んで待っている。
「あたし? あたしは、ここに残るわ。あなたたちと違って、未練が残ってるし」
未練が残っている。それは、ここから去れない。つまり、ゆりさんには戦う意外の選択肢がないということ。ゆりさんは、ステージから飛び下り、腕を組んで勝ち気な
「もちろん、素直に消されるつもりはないわ。だけど、あなたたちを守ってもあげれない。ここから先は、自分の身の安全を一番に考えて行動しなさい。幹部は全員付いてきなさい。以上、解散」
ゆりさんが体育館の入り口へ向かい歩き出すと、戦線メンバーは自然と左右に分かれて、彼女が進む道が出来た。私は、幹部メンバーと一緒に付いていく。外に出て、体育館裏に回ると煙突のある建物が見えた。その建物の側面にある、焼却炉付近の広場で、ゆりさんは幹部へ向かって問いかける。
「あたしが居なかった数時間の間に、何か変わったことは無かったかしら?」
問い掛けに答えたのは、
「あの
「それ以外でよ」
顔を見合わせているが、誰も喋らない。特に心当たりはないってことですね。ゆりさんは落胆の表情で、タメ息をついた。
「あんたたちは、体育館を拠点に戦いなさい。
「うん」
「ゆり。お前は、どうすんだよ?」
「やることがあるわ。ヤバくなったら、この世界を去りなさい」
「ゆりっぺッ!」
「酷いあだ名......でも、そのおかげで、みんなに慕われたのかもね。ありがと」
感謝の言葉は小さな声でしたが、しっかりと聞こえた。
直後、敵襲ーッ! と大きな声が、
「
「“
「じゃ、また会えたら会いましょ!」
ゆりさんも、駆け出した。置いていかれた幹部はどうすればいいのか葛藤している。もう、しばらく時間が必要なようです。
「では、あたしもここで」
「どこ行くのっ?」
幹部に背を向けた私に、
「購買へ行ってきます。残るにしても、戦うにしても、準備は必要ですから」
「そうだな、俺も行く。お前たちは、どうする?」
私の意見に同意した
「決まっている。俺は、ゆりっぺの力になるだけだッ!」
「お前は、とことん一途なヤツだな
「......二手に別れよう。ゆりは、一人で何かをするつもりだ。
彼らが話し合う間に、私と
「何か用っすか?」
「ゆりっぺを探しているだけだ」
「そうっすか」
校舎の裏を通って、教員棟の中に入る。結局、
「......誰?」
「あたしでーす」
カチっと音がした。ゆっくりと扉が開く。部屋の中は、夜にも関わらず電灯は点っておらず、月明かりで照らされているだけで、ゆりさんの顔を認識出来る程度の明るさしかなかった。
「何しに来たのよ......」
「手伝いが必要かと思いまして。それに、あたしには戦う理由があります」
「......あんたたちは?」
後ろにいる二人を見て、目を細めた。
「俺はお前に、
「ああ......そうだったわね。あなたもそうなの?
「違う。俺は、ゆりっぺの手助けだ」
「そう。なら、みんなを守ってあげて」
「ハァ、わかったわよ。あなたも一緒に来なさい。ただし、本当に危なくなったら躊躇せずに去ること」
「おう、任せろッ!」
一度、校長室の中に入る。
校長室の机の上には、銃と大量の弾薬が入った箱が無造作に置かれていた。ちょうど、準備中だったようですね。
「ゆりっぺ、何をするんだ?」
「ギルドへ降下する。あなたたちも、銃を用意しておきなさい」
拳銃に弾薬を込めながら、引き出しとロッカーを開けた。数種類もの銃が収納されている。
『こちら、
「ん、どうしたの?」
ギルドへ降下するための準備を進めているとトランシーバーに、
『ギルドメンバーが地上へ上がってきました。例の
「そう。体育館へ移動するように伝えて。チャーには、本部へ来るように」
『わかりました。伝えます』
通信が途絶える。ゆりさんに話しかけながら、止めていた手を再び動かす。
「やはり、ギルドですか」
「ええ、身を隠すなら最適でしょうしね」
「しっかし、大胆っすよね」
「ホントよっ」
銃の準備が整った。ギルドにどれだけの数の
「ゆりっぺ」
誰かが、校長室へ入って来て、ゆりさんの名前を呼んだ。
「チャーね。ギルドの様子は、どう?」
「相当な数の
「
「
「どういうことだっ?」
チャーさんと
「グラウンドで
「そうか......。潜るんだな?」
「ええ、行くわ」
「なら、コイツを持っていけ」
ゆりさんに渡した銃は、他の銃とは違い長い形状のモノでした。ロッカーに収納されているスナイパーライフルとも、ちょっと違う形状に見える。
「これ、ショットガンっ?」
「ああ、そうだ。
「なにそれ、スゴいじゃないっ!」
得意気に銃のデキ語るチャーさんの話しを聞いて、ゆりさんのテンションが上がった。気持ちはわかります。グラウンドで戦った時は、一体の
「だが、残念なことに残弾はあと九発しかない」
ショットガン本体が出来上がったのは、私たちが地上に戻ってすぐのこと。作りかけだったのを急ピッチで完成させたそうで、弾薬の量産は間に合わなかったらしい。
「十分よ。ありがと」
「俺も行くか?」
「あなたは地上に残って、あたしの代わりに戦闘の指揮をとって。得意でしょ? ゲリラ戦」
「フッ......わかった、任せておけ。
「おう!」
それぞれ荷物を持ち、五人揃って教員棟を出る。
ギルドへ降下するため、出入り口へ向かって歩き出そうとしたところで、チャーさんが声をかけてきた。
「そう言えば、お前たちどこから潜る予定なんだ?」
「橋の下よ。あそこから一気にオールドギルドへ降りるわ」
作戦を聞いたチャーさんは、顔を手で隠しながら気まずそうに言う。
「......すまん、ゆりっぺ。あそこ、爆破しちまった」
「は? はあぁーっ!?」
想定外の事態にゆりさんは大声を上げて、今にも胸ぐらを掴みそうな勢いでチャーさんに詰め寄り、九発しか残っていない虎の子のショットガンの銃口を怒りのままに向けた。
「どういうことっ? 説明なさいよっ! ぶち込むわよ!」
両手を上げる。
「はしごを登りきったあとも、大量の
「......チッ、なら仕方ない。他の場所から行くわっ」
「図書館からですか?」
あそこから
「別の場所よ。前に話したけど、地下への出入り口はいくつもある。オールドギルドへ一番近い入口から降りるわ」
ゆりさんを先頭に入口へ移動を始めようとした時、今度は校舎の方から複数の人影がこちらに向かってきた。私たちは銃を構え、臨戦態勢を入る。すると人影は、慌てて両手を上げた。
「待て待て、俺たちだって!」
「
構えた銃にセーフティーをかけ、ホルスターにしまってからゆりさんは、
「で、なによ?」
「二手に別れることになった。防衛班と、ゆりっぺを手伝う――」
「要らないわ」
「そこは欲しいって言ってくれよっ、話が終わっちまうだろっ!?」
間髪入れずに提案を叩き切られて嘆く
「いいじゃないか、ゆりっぺ。
「まあ、戦力としては申し分ないけど。で、ユイ。あんたも来るの?」
「いやいやっ、あんなのがうじゃうじゃ出るところに行ったらおしっこちびりますからっ!」
「あっ、そ......」
「
「あっ、ありがとうございまーす」
洞穴の内部は、ギルドへ続く人工的な通路と違い。人一人がやっと通れるくらいの狭い空間。足下と頭をぶつけないように注意しながら進み、突き当たりに出た。ゆりさんはしゃがんで板を退かす。すると、四畳半程の空間に電気も確保されていた。
「ここは?」
「始まりの場所よ。ここから全てが始まった。さあ、行くわよ」
部屋の奥の鉄の扉を開くと、更に下へと降りられるはしごがあった。はしごを降りた先で、通路を進む。それを何度も繰り返し、どんどん地下へと降りていった。
そして、今までにない、とても広い空間に出た。
「懐かしいわね」
小さく微笑む
「ここが、なにか?」
「戦線を発足する前、ここで、
思い出話しを聞きながら歩いて行くと、分かれ道に出た。
そして――。
「やっぱり、出るわよね」
「右の方が、数が多いように思えますけど?」
左右の分かれ道を守る様にして、大量の
「あたしにも、そう見えるわ。オールドギルドへ出るには、右の道の方が近いのよ」
分かれ道の右は、ギルドとオールドギルドのちょうど中間辺りに出るルート。左は、滝と川があったエリアに出るルート。本命はおそらく右。なので私は、左へ行くことにしました。
「では、あたしは左へ行きます。念のため見落としがないかを調べながら」
「わかったわ。
「わかった」
各々戦闘準備を整える。ゆりさんを先頭に、右ルートへ突っ込んで行った。
「よしっ、行くわよっ。
「おうッ!」
「C'mon Let's go!」
私たちの方も、
そこにも、例の
「いったん補給していきましょう」
「ああ、そうだな」
バッグに詰め込んだ弾薬を渡して、装備の補充。
そして、ギルドの爆心地に到着した。
「これじゃ埒が明かないな」
「......ですね」
「二人は、先に行け。ここは私が、引き受ける」
「
好意に甘えて先へと進むと、オールドギルドの二つ手前の通路で、
「ゆりさんはっ?」
「ゆりっぺは、先に行かせたッ! チッ!」
質問に答えたあと
「
「えっ!?」
「All Right!」
お礼を言うと彼は親指を立て、
「
「ですがっ」
「ゆりを助けられるのは、お前しか居ない」
「......わかりました。ここに置いておきます、使ってください!」
弾薬が入ったバッグを通路に置いて、駆け出す。
次の通路、目の前の
――なんだろう? これは。
順調に進んでいるにも関わらず、ずっと妙な違和感を感じていた。けど、今は、そんなことを考えてる暇はない。頭の片隅に感じていた違和感を振り払い、戦闘と探索を続けながら辿り着いた、オールドギルドへの鉄の扉を開く。
そこには、信じられない光景が広がっていた。