Angel Beats! ~First Love~ 作:ナナシの新人
翌朝、教室に入ると「
「スゴい人気だねっ」
「みんなのお陰です。ありがとうございました」
「ううん、楽しかったよっ。ガルデモと話せたし」
「ねーっ」
みんなは笑顔で、そう言ってくれた。まあ、三人ともガルデモのファンですし、喜んでもらえたのならなによりです。その後は話題を変えて、今日の活動内容について話しながら恒例の予習をしていると、担任が教室に入ってきた。
「ほら、席つけー」
出席簿で教卓を叩いて、座るように大きめな声で言う。
出席を取っている間に一時間目の準備をしていると不意に、担任と目が合った。なぜか、どこか気まずそうな様子で私に体調を聞いてきました。問題ないことを伝えるも、不思議に思って
午前の授業が終わり、昼休み。
お昼ご飯を食べるため大食堂へ向かう途中、校舎内の掲示板にビラを貼っている
掲示板に貼られたビラを見る。「
「ああ、明日の告知ですか」
「うひゃっ!」
隣で声を発したためか、彼女は驚いて一歩横に飛び引いた。
「なんだ、生徒さんでしたか」
先生だと思ったみたいですね。彼女は気を取り直して、手に持っていたライブ告知ビラの一枚を、私に差し出した。
「これ、どうぞっ。明日の19時スタートです!」
「精が出ますね」
「はいっ。あたしは下っ端ですから、こんな事しか出来ませんけど、ガルデモのタメなら!」
右拳を胸の前でグッと力強く握る。
「ガルデモ、好きなんですね」
「はいっ! 女の子だけで、あの演奏力! ボーカル&ギターの
止まりそうにありません。まるで、誰かさんみたいです。「
「あなたも、ギターを弾いて歌ってますよね。駐車場で」
「えっ、知ってるんですかっ?」
「以前、見かけました。ゆくゆくは、ガルデモのメンバーに?」
「いえっ、あたしなんて全然まだまだで!
ユイさんは、はっきりと答えた。
「そうですか、頑張ってください」
エールを送り、本来の目的であるお昼ご飯を食べるため大食堂へ歩みを進める。途中で一度足を止めて振り返ると、ユイさんは再びビラ貼りをしていた。
「あ、そうだ。あなたの歌、気持ちがこもっていていいと思います」
「......ありがとーっ!」
笑顔で私に答えたあと、
「あっ、あなたですか」
「ん? 俺の事――」
背中から、二人の話し声が聞こえる。
男子の声は、前に聴いたことのある声だった。
* * *
「明日のライブ行く?」
「もちろんっ、新曲も演奏するんだって!」
「えっ? マジ!?」
大食堂も、朝の教室と同じ様子。
「う~ん、うまっ!」
カツもサクサクで、カレーも絶品っすね。美味しいお昼を堪能しながらスプーンを進めていると、真後ろの席に誰かが座った。
「このまま話すぞ」
「ん? ああ......はい、どうぞ」
視線を窓ガラスへ向ける。ガラスに反射して見えた男子が着ている制服は、天上学園指定の物。視線を戻して、止まっていたスプーンを再び進める。
「今日は、
「ああ。あの服で下に居ると、悪目立ちするからな。それより昨夜の
「あっ、わかりましたか?」
「
彼の言うことは、まさしく正論。教師に目をつけられると、動き辛くなる。この学園秘密を探る私たちにとっては、特に学園側の敵を増やすことは得策ではない。
「大丈夫っすよ。
「そうか。ならいい」
「先日伝えた通り、
「いずれ話すことになるだろうが、折りを見てだな。さて......」
「もう、行くんですか?」
「着替えないといけないからな」
「そうですか。たまには、報道部にも顔出してください。みんな、あなたに会いたがってますよ?」
「そのうちな」と、小さく鼻で笑い。コップだけがのったトレイを持って、返却口の方へ歩いて行った。さて、私も食べちゃいましょう。お昼を食べ終え、食器を返却して食堂を出る。
校舎の廊下を歩いているとふと、違和感を感じた。掲示板に貼ってあったはずの「
「あの生徒会長、ひでぇよな」
「ホントだよ。みんな、ガルデモのライブ楽しみにしてるのに......」
「これぐらい見逃してくれたっていいのにな!」
彼らの話からすると、
* * *
部活動を終えて、食堂で夕食を済ませ寮に戻る。
「さてと、お風呂いきますかー」
課題を片付けて。バスタオルとパジャマ、下着の替えを持って、女子寮の大浴場へ向かう。いつもと同じように脱衣所で上着を脱いで髪をひとつにまとめてから、スカートと下着を畳んでカゴに仕舞い、タオルを持って浴室に入る。
あの日以来、
けど今日は、ちょうど話しをしたいと思っていた別の人が、先に入っていた。広い湯船に大勢の生徒が居る中、その人の周りだけ不自然に空いている。
『隣、いいですか?』
『うん? どうぞ、ご自由に』
声をかけた人、
『気持ちいいですね』
『ええ、気持ちいいわ』
『
『いろいろ。忙しいともっと遅い時間になるし、何もなければ早くなるわ』
『そうなんすね。今日は、ビラの件で大変だったみたいですね』
私は、さっそく本題を切り出した。すると
『まったく、困ったものだわ』
『生徒会長としては、黙認する訳には行きませんもんね』
『ええ。ちゃんと許可を取れば問題ないに。あの人たちは......』
またひとつ、タメ息をついた。
『あたしの時みたいに、ですよね?』
『正式に要請があれば、私たちも出来る限りの協力するわ。生徒会は、生徒の為にあるんだから』
額から流れる汗をタオルで拭いながら、はっきりと答えた。
私は、この時思い出した。
『
『......うん。知ってる』
――この人は......どこか、私と似ているんだ。
* * *
告知ライブ当日。
報道部のみんなには先に行ってもらって、私は
開演まであと三十分。宣伝と、ユイさんのビラ貼りの効果があったのか、体育館は既に満員だった。入り口付近の壁に寄りかかるようにして、開演の時を待つ。
そして、体育館の証明が全て落ちた。観客から、どよめきが起きる。舞台上に、スポットライトが照らされた。ステージ上に突如、現れた四つの影と楽器。
今日の主役、「
『みんな、いくぜっ!』
演奏を聴きながら、腕時計に目を落とす。そろそろ、本命が始まった頃。このライブの目的は、生徒会長の
「お前ら! 大人しく寮へ戻れッ!」
「やだよっ! ぜってぇ見てえもん! 邪魔すんな!」
「そうだ! お前たちこそ、帰れー!」
生徒と教師の言い合いが始まった。
私は、
「離してやれよ、俺たちの為なんだよ!」
「今までは、多目に見てやっていただけだ! 学園祭でも無しに、もう二度とこんな真似はさせんぞ!」
体育会系の生徒指導を担当する教師が、ステージの奥に置かれていたアコースティックギターに手を伸ばした。
「これは、捨てていいな!」
「――な......」
「ん? なんだって?」
「それに触るなぁーッ!」
大声を上げた
「くっ......」
「それを渡せっ」
教師たちが、
彼女は奪い返したギターを弾き、歌い始めた。編集作業中、私に歌ってくれた曲「My Song」。
歌の途中で突然、音声が切り替わる。全校に流れるような、大きな音声に。
最後の歌詞を歌い終えた
次の瞬間、彼女の身体が薄くなっていった。
「
まるで私の声が届いたのかのように、前を向いた
「んっだよ。そんな所に居たのかよ、探したじゃねぇーか!」
そう、大声で言った
そして、抵抗する事もなく、教師に捕まってしまった。