拝啓、ヴァレンティーノファミリー御一行様。
美味しい秋の味覚に暑さで疲れた体が元気を取り戻すこの頃。
首領並びにファミリーの皆様におかれましては、ますますお元気でご活躍のこととお喜び申し上げます。
・・・と言っても、これをみんなが読むことはないだろう。
だから、これは勝手な近況報告だ。
魔術師とサーヴァント入り乱れて行われた”聖杯戦争”から、もう三年の月日が流れようとしている。
舞台となった冬木市は”大火災”の影響で、街の一部が一時帰宅困難区域に指定される程の被害を招いた。
けれど奇跡的な事に人的被害はほとんどなく、時間がその傷を埋めていった。
ただ心の傷という方面では、未だに生々しさが残る。
・・・バーサーカーの・・・いや、”俺達”の放った一撃がこんな形で残った事は、とても残念で心苦しい。鉛のように重い罪悪感が心を覆う時が今でも度々ある。
でも彼女を・・・”桜”を救えたことが、俺のたった一つの救いである事にも変わりはなかった。
話は変わるが・・・聖杯戦争終結後、俺と桜は聖堂教会やその他の魔術結社から付け狙われる事になってしまった。
あれもこれも、あの『言峰 シロウ』とかいう胡散臭い野郎が”魔法を手に入れた男”とかいうネタを触れ回ったせいだ。
・・・今度会ったら、あの綺麗な顔面に拳をプレゼントしてやる・・・!
・・・という訳で、俺達はその情報を本気にした外道どもから逃げ回る羽目になってしまった。
皮肉なことに家がセイバーの聖剣で木端微塵となったおかげ(?)で保険金がおりていたのと、バーサーカーがアーチャーからかっぱらった宝具をいつの間にか首領が高値で売っぱらっていた事が幸いし、逃亡資金は確保。その資金で俺達は、ヤツらの目を掻い潜って国外に逃亡した。
だが、どっから情報を得たのか。どこに行ってもゴキブリの如く魔術師どもが現れた。
其れは時に武力行使で、時にハニトラで、ついには可愛い可愛い桜を人質にしようとする下郎まで出て来る始末。・・・勿論、そんな野郎はスープになるまで殴った。
その襲撃に次ぐ襲撃のせいで幼い桜に負担をかけてしまい、彼女に不憫な思いをさせてしまった。
そんな時にある人物に出会う。
名を『覇道 鋼造』。後から知ったのだが、結構その筋では有名な御仁だったらしい。
最初は、他の魔術師ども同様に魔法の秘密を知りたがっているただのイカレぽんちの糞ジジィだと思っていた。
けれど・・・・・・・・
・・・この話は長くなるのでよそう・・・。
理由は省くが俺達は覇道さんの庇護下に入る事になり、俺と桜は”アーカムシティ”に移住する事になった。
俺達が移住したこのアーカムシティという街は、科学と魔術をバランスよく扱って発展した場所で、其れに関連した多くの魔術師どもも住んでいる。
普通なら警戒する所だが、『木を隠すなら、森へ』と言うように魔力がほぼ充満しているこの街なら目立つこともなくなり、俺達は他の一般人と同じような生活をするような休息を手に入れられた。
桜は普通に小学校に上がる事が出来たし、俺は覇道さんの仕事を手伝うという名目で彼の財団に就職する事も出来た。
今のところは万々歳。
紆余曲折あったが・・・余命一か月を宣告され、体内を這いずり回る蟲の苦痛に耐えていたあの頃に比べれば、正反対だ。
これも首領との縁の御蔭だと思っている。ありがとう、ドン・ヴァレンティーノ。
そして、もうこのまま天外魔境の揉め事とは御免被りたいと願っている次第。
それではまた何処かで。
ヴァレンティーノファミリー魔術部隊隊長 ”間桐 雁夜”より。
追伸
今度、覇道財団の仕事でルーマニアに行くことになった。
20世紀を海外で終える事も、また縁なのかな。
チャンチャン・・・・・?