昼休み明け、教師陣を含めたE組全員はグラウンドに集まっていた。
「では!これよりフリーランニングを使ったE組ケイドロを始めます!」
朝からのアメリカンボリス姿のままの殺せんせーがグラウンドに書かれた円の中心で叫んだ。
「殺せんせ~~ケイドロってなんスっか~?」
郷が手を挙げると隣に居た速水や千葉を中心に「えっ!?」と信じられない様に郷を見た。
「えっ!?何か変なこと聞いた?」
郷も自身に集まる視線に困惑し隣に居た千葉に聞くが千葉も困惑気味だった。
「ケイドロは簡単言えば警察と泥棒に分かれたチーム対抗の鬼ごっこだけど…小さい頃とかにやったことないのか?」
「小さい頃なぁ……フッ、ロイミュードとなら毎日文字通り命掛けの鬼ごっこをしてたなぁ……」
((((おっ…重い……))))
自虐的な笑みを浮かべる郷にどう反応すれば良いのか微妙な空気が流れた。
「でっでは!ルールを説明します!!」
重くなった空気を変える為殺せんせーが声を上げる。
「範囲は裏山全体です。皆さんが逃げ出してから5分後に鬼が行動を開始しますので1時間逃げ切る様に頑張って下さい!そして、肝心の鬼は……」
そこで殺せんせーはニヤリと笑い2人の人物に触手を伸ばす。
「烏間先生と郷君、そして先生が務めます。」「なっ!?」「ワッツ!?」
いきなりの指名に呆然としている郷と烏間を触手で手繰り寄せ自身を真ん中に肩を組む様にする殺せんせー
「見事1人でも逃げ切ることが出来れば……烏間先生が駅前のスイーツ店のケーキを皆さんにご馳走します!」
「おい!何を勝手に!」「ただし!全員捕まってしまった場合は今日の宿題を二倍にしますので」
「「「「ハァ〜〜〜!!?」」」」
「イヤ、烏間先生や郷だけじゃなくて殺せんせーから逃げるなんてムリだろ!!」
「殺せんせー相手じゃ外国に逃げたって捕まっちゃうよ!!」
前原や倉橋の言葉に殺せんせーはウンウンと頷きながらも優しく微笑む。
「もちろん、皆さんに幾つかのハンデは与えます。まず…」
殺せんせーは鬼役の郷と烏間の手足にリストバンドを付け更に郷の懐に向け触手を伸ばすとマッハドライバーを取り出した。
「烏間先生と郷君には両手足に合計4キロの重りを付けてもらいます。勿論、郷君は変身を禁じますし最初に追うのは2人だけ、先生はラスト1分までこの牢屋から離れません。皆さんは訓練で身に付けた技術を使って思いっきり裏山を逃げて下さい」
「そっか、それなら何とかなるかも…」
殺せんせーの提示したがハンデに矢田が納得したようにつぶやくと周りもどうにかなるかもといった雰囲気になる。
「よっし!やってみるか皆!!」
「「「おーーーう!!」」」
磯貝の言葉に全員が気合の入った返事をしE組によるケイドロが始まった。
――――――――――――――――――――――――――――
逃げる泥棒役の生徒たちとイリーナが裏山へと走り出すと警察役の殺せんせーと郷、烏間に審判であるクリムがその場に残った。
「まったく、なぜ俺がこんな事を…」
「良いじゃないっスか烏間先生、俺は結構楽しみっスよ」
まだ不満がある様子の烏間の横では郷が笑いながら準備運動をしていた。郷からすれば思いっきり走ることが出来るこの勝負はまさに十八番であり思いっきり楽しもうとしており烏間も緊張感を持ちつつ生徒達も楽しめるならそれはそれで理想的だと思う事にした。
「ちなみに殺せんせー、別に俺たち二人で終わらしてもいいんっスよね?」
「もちろんそれでも構いませんが…では、時間内に全員を捕まえることが出来なかったら郷君の宿題を二倍にしましょうか?」
「ハッ上等!!」
丁度スタートの時間になり郷は瞬く間に裏山の中へと消えていった。それを追う様に烏間も走り出し残った殺せんせーは楽しそうに笑う。
「ヌルフフ~~これは楽しくなりそうですねぇ~~」
――――――――――――――――――――――――――――
裏山に散ったE組は幾つかのグループに分かれて逃げていた。速水と千葉、不破、岡島の四人は木や岩を器用に飛び越えながら山の奥へと進んで行く。
「いくら郷や烏間先生でもこの広い裏山で1時間以内に俺たち全員を捕まえるのは無理だろう」
「だね、勝負はラスト1分の殺せんせーが動き出してからだね」
「…どうかしら」
岡島と不破の会話を聞いていた速水は周囲を警戒しながら呟いた。その後ろでは千葉も同様に周囲の警戒を怠っていなかった。
「たぶん郷の事だから殺せんせーが動く前に終わらせようとするわよ」
「だな、郷にとってこの山は庭も同じだからな…もう近くまで来ているかもしれないぞ」
「イヤイヤ、いくら郷と烏間先生でも普通に無理だろ?俺たちだって結構鍛えているんだからさ」
岡島は笑って否定するが4人から数十メートル離れた位置に既に鬼は近づいていた。
(折れた枝に真新しい4つの足跡…すぐそこだな)
郷は足下の僅かな痕跡、微かに聞こえてくる会話からターゲットの人数や位置を把握し身を屈めた。
(凛香達には悪いけどオレも宿題2倍はイヤだからな、本気で行かせてもらうか)
地面を勢い良く蹴った郷は山の中を風の様に駆け抜けて行く。乱雑に生える木々の間を抜けて行きあっという間に速水達の姿を捕らえそして・・・
「岡島「はっ!?」不破「えっ!?」千葉「なっ!?」そして…」
岡島の坊主頭、不破の右肩、千葉の左腕に何かが当たったと思えば速水の目の前には既に郷がおり速水の両頬を手で包むように触れた。
「凛香、ア〜ウト」
「…えっ?///」
速水が呆然と郷を見つめること数秒後、速水も千葉達も何が起こったのかようやく理解した。速水は両頬にある郷の手の感触に思わず顔を赤らめ後ずさった。
「おい郷!彼女相手に手加減無しかよ!!」
「ソレはソレ、コレはコレだ!オレだって宿題2倍が掛ってるんだからな!10分で終わらせてやるよ!」
高笑いしながら新たなターゲットを求めて森の奥へと消えていく郷の姿を見ながら岡島は慌ててスマホを取り出した。
「やばいぞコレ…他の奴に知らせないと!」
菅谷に連絡を取った岡島はすぐに今起こったことを伝えるが菅谷は信じられないといったリアクションだった。
「ウソじゃねーよ!実際俺ら今牢屋に向かってるんだから!!」
『イヤイヤ岡島よ〜タッチされるまで気付かないとかバトル漫画じゃねーんだぞ』
「とにかく気をつけろよ!もしかしたらもうお前の後ろに…」
『ぎゃあああーっ!!』
スマホの向こうから叫び声が聞こえたと思えばそのまま通話が切れてしまった。
「菅谷!?菅谷ァ!!……ダメだ殺《や》られた…」
惨劇の後かのような静けさの中、速水達は思った。
((((このケイドロ…思った以上にガチだ))))
菅谷も捕まり仕方なく牢屋へと向かう速水達、しばらくすると今度はイリーナが捕まったとの律からの通知が来た。
「こうなったら誰かに牢屋から助け出して貰うのに期待するしかないね」
不破は少しでも前向きに行こうと言うが速水は呆れたようにため息を吐き牢屋の近くへと来た。
「そう出来ればいいけど忘れてないわよね。牢屋に陣取っているのが誰なのか…」
速水の指差す先、牢屋の前にはクチャクチャとガムを噛み警棒を手にしたアメリカンポリス姿の殺せんせーが待っていた。
最速の生物に最速の大人、そして最速の中学生の無敵トリオがE組の宿題を倍にする為に襲い来る。
モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。
今後、過去の話を所々修正して行くかもしれません。中には大きく内容が変わるものもあるかもしれませんのでご承知下さい。