ある日の夜、郷は椚ヶ丘から離れた東名高速上をライドマッハーで駆けていた。その視線の先には前方を高速で走る黒いマントを纏った影があった。
「良い加減に…止まれっー!」
「ヘッヘ〜だ〜れが止まるかよ〜」
影が時折撃ってくる光弾を躱し少しづつ距離を詰めながら郷も反撃に転ずる。
ライドマッハー前部の砲撃装置[サドゥンイレイザー]から放たれたビームが背中に命中した影は走っていた勢いのまま高速道路を火花を散らしながら転がった。数十メートル転がり影が止まったのを確認した郷はライドマッハーから降りゼンリンシューターを構えながらゆっくりと近付く。
「たっく、こんな夜中に手間とらせんなッ!?」
郷が近づいた瞬間、影は勢いよく起き上がると郷に飛びかかった。咄嗟に横に転がり影の攻撃を躱した郷だったが相手の攻撃は郷の腰に巻かれたマッハドライバーを掠った。だが郷も負けじと相手のマントを掴みマントを奪い取る。マントが外れ影はその正体を晒すスパイダー型ロイミュード027だった。
「やっぱロイミュードだったな。明日も学校なんでね、マッハで片付けさせてもらうぜ」
「ヘッや〜だね」
郷はシグナルマッハを構えるが027はそのまま高速道路から飛び降りてしまった。
「ハッ!?おい待て……!」
「はっはっは〜バ〜イビ〜〜!」
すぐに後を追おうとした郷だったが027は挑発的な捨て台詞を残しその姿を闇夜に消していた。
「っあぁぁぁ!こんなとこまで追いかけたのに逃げられんのかよっ!」
郷の悔しそうな叫びが深夜の高速道路に響く。
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「あっ…ああ〜〜……寝みぃ〜〜」
翌日、郷は顔に酷い隈を作った状態で教室に向かっていた。結局その後登校時間に間に合うギリギリまで027を探し続けたが発見する事は出来ず寝不足のまま登校していたのだった。フラフラな状態で廊下を歩くその様はさながら洋館を漂うゾンビの様であった。そんな郷の姿を見つけた殺せんせーが笑顔で声を掛けてきた。
「おや郷君、おはようございます」
「ふぁ?…はぁ〜…殺せんせー……おふぁざぁ〜ッす」
欠伸をしながらも返事をする郷の姿に殺せんせーは微笑ましく感じていた。2人は雑談をしながら一緒に教室へと向かった。
郷も次第に頭が起きて来たがそれでも時折まだ眠気が襲って来る。
「今日は随分と眠そうですねぇ〜若いとはいえ睡眠はしっかりと取らないといけませんよ〜」
殺せんせーは顔面に✖️マークを浮かべ注意すると郷は思わず苦笑いする。
「いや、昨日の夜中に急にロイミュードが見つかってさぁ〜県を跨いで追跡したんすッけど見事に逃げられたんッすよ…」
「おや、そうでしたか…ですが郷君は仮面ライダーである前に1人の学生です。さぁ今日も親しみの目を私に向ける生徒たちと一緒に…」
教室の扉を開く殺せんせー。教室にいる可愛い生徒たちから向けられるその視線は……
「「「「……………………」」」」
「汚物を見る目ぇぇぇぇ!?」
とても教師を見る様な目ではなかった。
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生徒たちが持っていた新聞、そのとある記事を見た殺せんせーは愕然と震えた。
[多発する巨乳専門下着泥棒][犯人は黄色い頭の大男][ヌルフフ…と笑い謎の粘液を現場に残す」等、記事の内容はどれも殺せんせーを連想させる様なものばかりだった。
「これって完全に殺せんせーのことよね?」「正直がっかりだよ」「こんな事してたなんて…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!先生にはまったく身に覚えがありませんよ!!」
片岡や三村、岡野の軽蔑の言葉に弁解しようとする殺せんせーだったがその肩に郷が手を置いた。
「殺せんせー…」
「ごっ郷君……」
「遂にやっちまったッすね」
「にゃ〜!違いますよぉ〜〜!!私じゃありませんよぉ〜〜!!」
「いや、ちょっとくっつかないで貰えやす?誰か手伝って…?」
分かってくれる。そう思った殺せんせーだったが郷は笑顔で哀れみの視線を向けるだけだった。殺せんせーは弁解するように郷に縋り付くが郷は巻き込むなと言わんばかりに殺せんせーを引き剥がそうとし手伝ってもらおうと周りを見るがそこであることに気付く。
生徒たちの軽蔑の目、それは殺せんせーだけでなく自分にも向けられているモノだった。
「えっ…な、何だよ…みんな……」
「郷くん…コレ見てくれ…」
周りのその視線に郷も焦りだすが片岡が新聞記事のある部分を見せる。先程の下着泥棒の記事の隣には[連続盗撮事件発生][現場に轟くバイクの音][白いヘルメットを被った人影の目撃情報多数]といった内容が書かれていた。
「コレって郷君の事じゃないの?」
「イヤ…イヤイヤイヤ!!」
殺せんせーと同じ様に周りから詰めかけられる様な視線を受けながらも郷は首を高速で振りながら否定をする。
「白いヘルメットのライダーなんて幾らでも居るだろ!?そんだけで人を盗撮班扱いすんなよッ!」
「じゃあコレはどうなんだよ!」
前原がさらに新聞に記載された写真を指差した。そこにはモノクロではあったがカメラを首にかけバイクで走り去る仮面ライダーマッハの姿がバッチリと写っていた。
「コレは言い逃れできないだろ!」
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!ほんっとにやってね〜って!」
「先生だって違いますよ!!」
「じゃあアリバイは?事件のあった昨日の深夜、2人ともどこで何してたの?」
あくまでも否定をする郷と殺せんせーだったが岡野が聞くと2人は昨日の行動を思い出し始める。
「何って…先生は高度1万〜3万メートルの間でシャカシャカポテトを振ってましたが…」
「オレは…マックスフレアが見つけたロイミュードを追って東名高速を400キロで突っ走ってたなぁ…」
「「「誰が証明できるんだよそれを!!」」」
2人のあまりに人間離れしたアリバイに誰も納得できなかった。
「そもそもアリバイなんて意味ねーよな」「どこに居ようと2人とも音速で移動できるんだしね」
アリバイを証明するどころか2人の人間ばした能力でますます疑いの目が向けられる事となってしまった。
「みんな待ってくれよ!」
その時、見かねた磯貝が2人を庇おうと前に出た。
「殺せんせーも郷も確かに小さな煩悩はいっぱいあるかも知れないけど、今までやった事なんてせいぜい…」
磯貝の頭の中に今まで見て来た2人の行動が浮かぶ。
カブトムシのコスプレをしてエロ本を拾い読みする殺せんせー・修学旅行の時、女子風呂を覗く計画を立てていた郷・ケイドロの時、水着写真で買収される殺せんせー・夏祭りの際、浴衣姿の女性達の写真を撮りまくる郷・休み時間にグラビア雑誌を読み欲望丸出しのハガキを出す殺せんせー・プールの際シグナルバイクを使い盗撮をしようとした郷等が浮かび上がった。
「……2人とも…自首して下さい……」
2人の今までの行動に磯貝も擁護が出来なくなってしまった。
「ちょっ磯貝!?そこで諦めるなよ!!」
「そうですよ!そこまで言うのなら先生の潔白を証明するために今から机の中のグラビアを全て捨てます!」
職員室に向かう殺せんせーに付いて行く生徒達の中で立ち竦んでいた郷の横を彼女である速水が通り過ぎる。その際、郷をチラリと見るその目は他の生徒と同様、イヤそれ以上に冷たいモノであった。
「り…凛香……」
「…最っ低………」
「ガッ!?………」
速水はそれだけ呟くと矢田や倉橋と共に職員室へと向かったが郷は速水からの拒絶の言葉にその場に崩れ落ちてしまったのだった。
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結局職員室でも疑いを晴らす事が出来なかった殺せんせーと速水から拒絶された郷はその日1日肩身の狭い時間を過ごし授業が終わると同時に2人揃ってトボトボと教室から出て行ったのだった。
みんなが下校の準備をする中で渚とカルマは事件のことについて話していた。
「本当に殺せんせーたちが犯人なのかな?いくら何でもこんなシャレにならない事するなんて…」
「まぁ地球爆破よりよっぽど可愛いもんでしょ」
笑って言うカルマであったがその眼には殺せんせーたちに対しての軽蔑の感情は無かった。
「でもさ、仮に2人が犯人だったとしても急にこんな証拠は残さないと思うけどね…こんな事して俺等からの信用が無くなることは殺せんせーにとっては暗殺される事と同じくらい避けたい事だろうしね。郷にしてもアレで結構一途なとこがあるから速水さんに本気で嫌われる様な事はしないだろうしね」
「うん…僕もそう思うよ。でもそれだと誰が…」
「決まってるじゃない」
渚の疑問に答えたのは腕を組み得意げな笑みを浮かべた不破であった。
「ヒーロー物の定番、偽物悪役の仕業に違いないわ!こんなお約束の展開を逃すなんて勿体無いわ。私たちで偽物の正体を暴いてあげましょう!」
マンガ大好きな不破が燃えて渚やカルマ、近くに居た寺坂やなぜか怒りに燃えている茅野と偽物を捕まえる計画を立てていると速水が気まずそうにその中に入って来た。
「それ、私も参加して良いかしら?」
「速水さん?」
「さっきはつい郷を疑っちゃたけどやっぱり郷はそんなことしないって私が一番に信じないとダメよね…だから郷の偽者がいるなら絶対許せないわ。それに…ちゃんと無実を証明して郷に謝らないといけないし」
こうして6人は郷と殺せんせーの偽物を捕まるため行動を開始した。
ちょうど同じ頃、E組全体から疑いの目を向けられ消沈していた郷と殺せんせーはと言うと……
「…殺せんせー…」
「…ええ、分かっていますよ郷君……」
2人は新聞やネット等から今回の事件の情報をかき集めていた。その目的はただ一つ
「「犯人を捕まえて」」「はっ倒す!」「隅々まで手入れしてあげます!」
濡れ衣を着せられた2人もまた無実を証明するために行動を開始したのだった。
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