後いろいろ原作と間違ってるところがあるかもしれませんが温かい目で無視してください。
誤字脱字があっても気にしないでください。
タイトルは、フェイト・ミスティションピースです。
意味は曖昧な駒か霧がかった駒です。
ある年、神秘学者ライバクルス・リュ―ゼンベルグは、かつて円卓の騎士たちが追い求め発見したイエスキリストの血を受けた、聖杯を発見した。
それは神秘を追い求める彼等にとって何よりも名誉で偉大な発見であった。
聖杯さえあれば、魔術師たちが目指す根源に到達する事すら容易なことだ。
だが、彼は根源を目指そうとも、聖杯発見を公表し名誉を受けようともしなかった。
彼には夢があった。
いや、夢に見る世界があった。
それは遥か太古、決して見ることも至ることも出来ぬ場所。
かつて神々が世に居た時代。
彼は物心が付いて間もない頃から神代に魅入られていた。
その日から彼は準備を始めた。
かの時代に至る準備を。
三年後。
イギリス。クラウクローズ。
田舎としかいいようのないこの土地は、広大な土地に多くの森が生い茂る。
綺麗な満月の夜。
人が居ない荒野の隣にある森と夜の闇に隠れ、移動する集団があった。
彼らは全員が黒い神父服に身を包み、木々の間を人間を超越した速さですり抜け進んで行く。
その数はおよそ三十人。
そして彼等は皆、代行者と呼ばれる聖堂教会の者だ。
彼らは森を抜けるまで後少しの所で全員が立ち止まる。
そこは上から見ると森の中にぽっかりと穴が開いたように木々が無い場所だった。
彼らがそこで見たものは、夜に溶け込むような黒い武者鎧を着こみ、顔に目の場所だけ空いた鬼のようなマスクをした男だった。
彼の体からは濃密な剣気が溢れだしており、近づいただけで切れてしまいそうな気さえする。
代行者たちに言葉はない。
何者であろうと任務の邪魔をするのであれば断罪するのが彼等だ。
それに自分たちがいるこの森に偶然にこの武者がいる事などまずありえないだろう。
代行者のリーダー格である先頭の男が少し首を動かす。
それが合図だった。
三十人全ての代行者たちが即座に彼等の魔術礼装である黒鍵を投擲する。
一人が投擲した黒鍵は二本。合計六十本にも及ぶ魔力の刃は百八十度の方向全てから放たれる。
常人であるならば、いや、例え彼らの様に常人を逸した存在であっても、この無数の刃をかわすことは叶わなかっただろう。
だが、鎧武者は常人の領域にも、ましてや既に人の領域すらも脱した存在であった。
鎧武者は投擲された黒鍵全てを、その腰に提げた刀を抜き放った風圧だけで弾き飛ばしたのだ。
代行者たちはその光景を見て、すかさず近接戦闘に入る。
三人の代行者が彼ら全員が会得している八極拳で鎧武者に拳を放とうとしたが、踏み込んだ次の瞬間には彼らの下半身に上半身は載っていなかった。
鎧武者は刀一振りで彼らを切り裂いた後に周囲に散らばる代行者に向かって疾走する。
月光に鮮血が照らされる。
黒い鎧をその鮮血で赤く染めた鎧武者は、マスクから除く目で代行者たちを一瞥すると、この光景を見ているだろう者たちに向かって言葉を発す。
「半分にも満たん数で来るとは。我を倒したくば、最低でも百名は連れて参れ」
その目に睨まれた後、使い魔である蝙蝠の視界は半分に割れた。
聖堂教会本部。
「まさか、所在不明だったエルサレムの聖杯に聖杯戦争のシステムを組み込むとはな」
「しかも既に奴らはサーヴァントを呼び出している」
初老の男達が空中に映し出された映像を見て顔を顰める。
「三十人もの代行者たちが一分もしないで全滅させられた。こんなことが出来るのはサーヴァントくらいだろうな」
「ちっ。まさか同時期に聖杯戦争が二つ行われるとは」
「どうしますか? 既に奴らは七人のマスターを揃えたという情報が入ってきています。これではサーヴァントに太刀打ちできませんし、奴らだけで聖杯戦争は終結してしまいます」
「その心配はいらん。既にこちらも七人のマスターを選び出している」
「……どういう事ですか?」
「此度の聖杯戦争、顕現可能な英霊は十四騎だ」
「では?」
「うむ、よって我々聖堂教会は此度の聖杯戦争に参加し聖杯を回収する」
「おぉ!」
「既にジェノヴァ大聖堂の聖杯によりマスターは七人選び出された。七人のマスターは一人を除き上位の代行者から選び出されており、聖遺物の方も既に準備済みだ」
「それでは?」
「うむ、二週間後、七体のサーヴァントの一斉召喚を執り行う」
だが、その朗報が聞かされると同時に神父服の男が部屋に入って来た。
「非常事態です。バレンシア大聖堂に保管されている聖杯が強奪されました」
聖杯戦争。
それは七人のマスターがサーヴァントと呼ばれる使い魔を使役し、聖杯を巡って争う魔術儀式。
昔、アインツベルン、遠坂、マキリの御三家が作り出したシステムによって五度、聖杯戦争は執り行われた。
そのどれも聖杯には届かず、聖杯戦争は聖杯が破壊されることによって永久に執り行われる事は無くなった。
だが、その聖杯戦争が再び執り行われると聞き、御三家の一つが今度こそ聖杯をこの手に収めようと考えたのだ。
アインツベルン城。
そこの地下で未だに夢をあきらめきれず、実に400歳を超える老人が苦悩していた。
「駄目だ、もう一歩足りぬ。かの最高傑作と同等のホムンクルスは届かぬか」
横には同じ顔をした若い執事とメイドが控えている。
この執事とメイドは今までで最も、かの傑作イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに近いホムンクルスではあったが、あと一歩届かぬ。
老人、ユーブスタクファイト・フォン・アインツベルンは、バレンシア大聖堂から聖杯を強奪した張本人だ。
そして彼は迷っていた。
このままもう少し粘りホムンクルスを作り続けるか、もうこの二人をあの英雄のマスターとして準備を整えるか。
「くそっ」
ユーブスタクファイトは机の上にある物を手で薙ぐ。
辺りに薬品がばら撒かれ、その中の一つが失敗したホムンクルスを破棄するプールに零れ落ちる。
すると、プールの一部が強く青い光を発し始めた。
「な、何だ……」
そしてプールから一人の少年が上がってくる。
その少年は十一、二歳の様な見た目で肌は処女雪のように白く、銀髪の髪はギラギラと輝いており真紅の瞳は人を見下しているかのようだった。
「お、おお。なんという……事だ」
一目見ただけで、ユーブスタクファイトはこのホムンクルスがかのイリアスフィールよりも上回っている事に気づいた。
なんという事だ。
正に聖杯が我がアインツベルンに手に入れられる事を望んでいるようだ。
「ふ、ふははははは。勝った! 勝ったぞこの聖杯戦争っ! 我がアインツベルンに勝」
その言葉を言いきる前にユーブスタクファイトは口から大量の血を吐いて倒れ、息絶えた。
「うる……さいなー、でかい声で喋るんじゃないよ、爺」
少年は髪をかき上げながら血に沈むユーブスタクファイトを見やり欠伸をこぼす。
「あー、怠い」
少年はプールを出ようと水面を歩きユーブスタクファイトの所へと向かう。
少年はユーブスタクファイトの頭に触り、誰に習ったわけでもない魔術を発動する。
「へー、聖杯戦争か。なかなかおもしろそうじゃないか」
少年は記憶を奪いもう用済みになったユーブスタクファイトの元を通り過ぎると、執事とメイドの元に向かって歩き出した。
「お前ら、アインツベルンのホムンクルスだろ? 今から僕が主人だ」
少年がそう言うと、メイドと執事は迷う事なく少年の前で膝を着く。
「分かりました、貴方様に忠誠を誓います……なんとお呼びすればよろしいでしょうか」
「うーん、そうだなー。じゃあ、かの機会仕掛の神の名を少し拝借してデウスエクトだ。そう、僕の名前は今から……」
少年、デウスエクトは子供には似合わない酷く歪んだ笑みで。
「デウスエクト・フォン・アインツベルンだ」
史上最高のマスターは高らかに産声を上げた。
ロード。
それは魔術教会の魔術師の貴族の中でも十二人にしか与えられない称号である。
魔術は一子相伝であり、長男か長女が必ず受け継がなければばらない。
十三のロードの一つ、フォーロード・エルニクス家は今までにない天才を生んだ。
彼の名はデュオル・フォーロード・エルニクス。
膨大な魔力を宿し時計塔でも今期の主席は彼で確実と言われる程に、彼は他の誰よりも頭一つも二つも跳びぬけた天才であった。
だが彼は次男であった。
いくら魔術が使えようが、彼はエルニクス家を継げないのだ。
それはデュオルにとって耐えがたいものだった。
デュオルは自分が天才だと分かっていて、周りの者たちが自分に比べ劣っていると分かっていた。
何時も何故彼奴らはあんなに簡単な事に頭を悩ませているのだろうと不思議に思ってならなかった。
そんなデュオルが自分より明らかに劣っている兄が家を継ぐ事に不満があるのは当然と言えた。
デュオルは何度も両親に後継者を自分にするように進言したが、全てしきたりだの一言であしらわれてしまった。
デュオルは十六になった頃には既に当主の座は諦めかけていた。
だが、そんな彼の元に聖杯戦争の事が耳に入ってきた。
デュオルはこれを神の天啓だと思った。
古くからあるしきたりは自分がどうあがいてもどうする事もできない。
だが聖杯ならば、かの万能の願望器ならば、この可笑しなしきたりを変え、自分は尊敬する我が家の当主へとなる事が出来るだろう。
そればかりか聖杯の魔力と自分の知能さえあれば、魔法にだって至る事が出来るかも知れない。
聖杯戦争の知らせは、半ば諦めかけていたデュオルの夢を再び開花させた。
デュオルはそうとわかると、時計塔で聖杯戦争について調べ始めた。
聖杯戦争は七人のマスターが七つのクラス、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの何れかを触媒を以て召喚し、使い魔・サーヴァントとして他のマスターと殺し合いをする魔術儀式らしい。
マスターにはサーヴァントへの絶対命令権、令呪が三角与えられる。
などといった基本的なルールから前の聖杯戦争がどうなったのかや、どんなサーヴァントが召喚され、どのサーヴァントが勝ち残ったかといった事も聖杯戦争の事ならどんなに小さい事でも調べ尽くした。
そして。
「ああ、此奴だ。此奴こそ正にこの俺に相応しいサーヴァントだ」
デュオルは第四次と第五次聖杯戦争に参加したサーヴァントに目を付けた。
「英雄王ギルガメッシュ。天才のこの俺にピッタリなサーヴァントじゃないか」
これを自分のサーヴァントにすると決めたデュオルは早速触媒となる聖遺物を手に入れるために動き始めた。
イギリスのクラウクローズには、周りを森で囲まれた大きな屋敷がある。
その屋敷の周囲を囲む森には幾重にも結界が張り巡らされており、たどり着くのは一流の魔術師でも困難を極めるだろう。
日が落ちようとしている時間帯に、赤髪の青少年ラインハルト・リュ―ゼンベルグは、中庭へと続く階段を急ぎ足で下りていた。
特に急がなくても良いとは思うのだが、あのサーヴァントの性格上、何をするか全く想像が付かないので不安でならないのだ。
まったく、何故自分のサーヴァントではないのに僕が面倒を見なければならないのか。
心の中でそんな愚痴を叩きつつ、面倒見のいいラインハルトは中庭へと飛び出す。
「キャスター、探したよ。全く君は色々不便なんだからあまりあちこちうろつかれると困るよ」
ラインハルトはキャスターを見つけた使い魔の鼠を回収し、再びキャスターの方へと顔を向けるがキャスターは全く反応を示さず本のページをめくっていた。
「……ああ、そうか。此処からじゃ聞こえないのか」
ラインハルトはキャスターの傍まで赴き肩をポンポンと叩く。
「キャスター」
そこでようやくキャスターはこちらに気づいたようだった。
「ああ、セイバーのマスター様ですか」
本を閉じたキャスターは疲れたような目で此方を見上げる。
キャスターは二十代前半で白髪の目力の強い青い瞳をしているが、今はその目はクマが酷く虚ろだ。
「う……大丈夫キャスター?」
ラインハルトはキャスターを見て思わず心配してしまう。
「はい。私は大丈夫です。セイバーのマスター様。皆様に迷惑など懸けませんよ」
「あ、うん。そうなんだ」
全然大丈夫そうには見えないけど。
「じゃあ、部屋に戻ろうか」
そう言ってラインハルトはキャスターを立たせ、部屋に連れて行こうとする。
「マスター、それは私が承りましょうか?」
白い騎士甲冑を纏い、二本の騎士剣を腰に提げる優しそうな青年がラインハルトの元へ歩いてくる。
その甲冑には所々泥が付着していて、青年の横には黒い鎧武者が無言で付いてくる。
「ああ、セイバーとアサシンじゃないか。また訓練してたの?」
アサシンを見て正直鎧をガシャガシャならしながら突っ込んっで来る暗殺のあの字もない暗殺者ってどうなの? とは思うが口には出すまい。
「はい、マスター。全く彼が仲間で私は心強いかぎりです」
「我はお主が敵の方がよかったがな」
そう呟くアサシンの目は冗談ではなく剣気が辺りに充満する。
「まあまあ、今回は仲間なんですから」
そんな剣気を物ともせず、セイバーは爽やかに笑う。
「まあ、そうだな。我は門に戻る」
そう言ってアサシンは中庭を出て行った。
アサシンには屋敷の門の守備と森に入る者の抹殺が彼のマスターのブライアス・メルトシュテルによって命令されている。
「さあ、キャスター戻ろう、か……」
キャスターの方に振り向くと、キャスターは剣気に当てられて気絶していた。
このサーヴァント選んだ奴誰だよ。
「くふ、ふふふふふ」
デュオル・フォーロード・エルニクスは鉄製の箱を腕に抱きながら自分の天才さに酔いしれていた。
こうまで簡単に聖遺物が手に入るとは。
流石は俺。
デュオルはおよそ二週間かけて聖遺物を手に入れ、今はクラウクローズへと向かう飛行機の中に居た。
そろそろ着く頃か。
そう考えた瞬間、右手に痛みを感じた。
「てっ……」
右手を見ると、手の甲に痣の様なものが浮かんでいた。
「これが、令呪」
聖杯は、やはり自分をマスターの一人として選んだらしい。
分かっていた事とはいえ、いざ選ばれたと分かるとやはり嬉しいものだ。
デュオルは飛行機を降りると急いで調べておいた霊脈へと急いだ。
此処はもう敵地。
出来るだけ早くサーヴァントを召喚しておかなければ。
他の魔術師に自分が負けるなんて事はあり得ないがさすがにサーヴァントと戦って勝てる自信はない。
デュオルの属性は、ボイドという非常に珍しくまだ片手で数えられる数しか属性持ちが見つかっていない程、希少な魔術属性を持っていた。
しかもデュオルはボイドの中でも自分しか存在が確認されていないボイド・フィフス属性を持っている。
この特性は万能だ。
初めが無いので何にでも変化させることが出来る。
だからデュオルにとって霊脈の属性は割とどうでもいいのだ。
だが、一応最高のコンディションで挑まなくては。
デュオルは今回の聖杯戦争のために自分の属性を夜天とル・オルブンという属性に変えてきた。
聖杯戦争は基本的には人に見られてはいけない。
そのため戦闘などは夜にやる事がほとんどだ。
そのため夜に魔力が増す夜天に変えてきたのだ。
よって召喚は夜に行う事にしている。
「良い月だ」
デュオルは夜空に浮かぶ三日月を見て森の中を進む。
「ここにするか」
デュオルは正面に壁がある崖の下を選びリュックからフラスコを取り出す。
フラスコの中には金色の液体が入っている。
それを地面に垂らすと、液体は円を描きながら淵に流し込まれるように魔法陣の形を形成していく。
サーヴァント召喚用の魔法陣が出来上がると、デュオルは大事に抱えていた鉄製の箱を開けた。
中には黄金の塊が入っている。
一見ただの金の塊に見えるこれは、バビロンの破片だ。
メソポタミア神話の英雄などギルガメッシュとエルキドゥしかいない。
まあ賢者としてウトナビシュテムが入る可能性もあるが、エルキドゥもウトナビシュテムもバビロンに関わってはいない英雄だ。
よってこれなら確実にギルガメッシュを引き当てられる。
「始めようか」
デュオルはニヤリと笑い、詠唱を開始する。
「満たせ、満たせ、満たせ、満たせ、満たせ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる時を破却する」
詠唱を始めた瞬間、魔術回路が活性化し大気中の魔力を返還させていき、魔術刻印がそれをバックアップする。
全身が人でありながら人では無いものに変わる感覚。
奇跡を起こすための歯車にでもなったかのような感じだ。
デュオルは実感する。
今自分は……
奇跡を呼び起こしているのだと。
聖堂教会。
今宵、聖堂教会には五人の代行者たちが集まっていた。
誰もが代行者の中で上位五十名に入る者たちだ。
カーライム・デュペン。
この中で一番大きな体格をした四十代のスキンヘッド男で、魔術を拳法に特化した魔術拳士。
ルマイ・セル。リマイ・セル。
二十代前半といった見た目の双子で、連携技が得意な遠距離型と近距離型に分かれた代行者。
アルマヒルデ・フリエスタ。
女性最強の代行者で、捕縛型の魔術に特化した魔術師でもある。
クルゼレイ・アノルド。
名前と男である事以外何も分からない暗殺任務専門の代行者で今も深く黒いフードを被っていて顔は分からない。
間桐百合。
今回参加した者の中では最年少の十五歳の少女であり、まだ代行者ではない見習い。
それらの者たちは皆、手の甲に痣の様なもの・令呪を宿していた。
「なんか、俺が最後みたいだな」
腰に手を当てて遅刻しちゃったぜ☆的な笑顔をする少年。
赤みがかかった黒髪には銀のメッシュが入っており、かなりの童顔で年齢より若く見られるであろう少年は黒と白の神父服に身を包み、体は細いが筋肉はわりと付いている。
「どうも皆さん。遠坂です」
爽やかな笑顔で自己紹介を始める衛騎。
「歳は十6歳で趣味は弓道と宝石磨きです。好きな女性のタイプは胸が……」
「兄さん、一体何処で道草食べてたんですか
?」
「ごめんユリ」
そこに言葉を挿んできたのは紫色の髪を肩辺りまで伸ばした、身長はちょうど中学生の平均程度のセーラー服を着た少女だ。
「もう、やっぱり一緒に出たほうが良かったじゃないですか」
「あはは、ちょっと用事があってね」
「今度はちゃんと一緒に出ましょうね?」
「はいはい、分かったよ」
衛騎は百合の頭をポンポンとなでると、再び代行者たちに顔を向ける。
「では皆さん。俺は皆さんに今回の聖杯戦争の説明をしに参りました。本当は監督役になる予定だったのですが、ルーラーのサーヴァントが限界するようなのでマスターとして参加する事になりました」
衛騎は左手の甲にある令呪を見せる。
「これは皆さんも知っていると思いますが、今回は本物の聖杯に聖杯戦争のシステムを入れるという異例の事態のため、我々聖堂教会が聖杯の回収又は破壊のために動く事となりました」
百合以外の全員が頷くのを確認して衛騎は話を進める。
「今回はサーヴァントが二十一騎という異例の事態です。サーヴァントを区別するために敵のリュ―ゼンベルグの陣営は白。聖堂教会側は青の陣営ということになります。そしてまとまっていない他の七騎のサーヴァントは陰のサーヴァントと呼ぶことになりました」
まあ呼び方は良いとして、と衛騎は一拍おいて。
「この聖杯戦争は三つの聖杯がそれぞれサーヴァントを呼びだしており、全てが繋がっています。聖杯を完成させるには三つの内二つを破壊し聖杯を一つとするしかありません。つまりこの聖杯戦争は自分の陣営の聖杯を守り、相手の陣営の聖杯を破壊する、まあいうなれば……聖杯バトルロワイヤルですね」
それから……と言って衛騎は胸ポケットから真紅の大きな宝石の付いたペンダントを取り出す。
「これは聖堂教会が皆さんに配る魔石です。この中にはサーヴァントが一ヶ月戦闘可能な魔力が込められています。宝具などを使用すればその分減りますが、まあこの魔石があれば魔力供給する必要がないので何時もの実力が使えるということです。ついでに製作者は俺の母です」
衛騎は母のことを自慢して全員にペンダントを配る。
「では、皆さん。触媒となる聖遺物はお持ちですね?」
また百合以外が頷き、各自召喚魔法陣の準備に取り掛かる。
「兄さん。その、私はまだ聖遺物を持ってなくて」
「ああ、それなら心配いらないよ。今日の用事はユリへの聖遺物をイリヤ姉さんに借りる事だったからな」
そう言って衛騎は本を取り出し栞の様に挿んであった純白の羽を百合に手渡す。
「この羽根で呼び出されるサーヴァントならユリを任せても大丈夫そうだ」
衛騎は百合の手を握り目を見つめながら囁くように喋る。
「はい、兄さん……」
百合は頬を桜色に染め、うっとりとした表情で衛騎を見上げる。
「ユリ、じゃあ俺が教えた通りに召喚魔法陣を描いてごらん」
「はい」
百合は元気よく返事をして駆けて行った。
衛騎は自分も水銀で魔法陣を描く。
全員が召喚魔法陣を描き終わるのを確認し、ルーン文字の刻まれた石の欠片を中心へ置く。
カーライムは漆黒の鱗を、ルマイは矢を、リマイは金の指輪を、アルマヒルデは古い羊皮紙を、クルゼレイは白い骸骨の仮面を、百合は先ほど渡した純白の羽根をそれぞれ召喚陣の中心へ置いた。
「かつて、これほどの数の英霊が一斉に召喚されたことは無かっただろう」
打ち合わせ通りに七人の詠唱は同時に始まった。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。手向ける色は青。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
詠唱が一節終わる度に魔法陣の輝きは増していく。
「告げる。汝の身は我が下に、我が運命は年次の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
詠唱が、魔術回路を駆け巡る魔力が、座に存在する英霊を引き寄せる。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
七人がピタリと詠唱を止める。
ただ一人、カーライムのみがこの空白の時を見計らってその二節を告げる。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」
狂化するための追加詠唱。
これによりカーライムのサーヴァントは大なり小なり狂気に囚われることが確定した。
魔術回路が荒れ狂う痛みに耐えながらも七人は少しだけこの一瞬が惜しくなった。
それほどまでの高揚感がこの儀式にはある。だがそれでも告げる。
最高級の神秘をこの手で握りしめるために。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
言葉を告げると同時に荒れ狂う爆風が巻き起こり、極光が周囲を覆い尽くす。
百合は顔を手で覆った。
そして他の代行者たちは微風同然にそれを受け流す。
そうして彼らは地上に顕現した。
魔法陣から現れたのは幻想を肉体とする、人でありながら人ならざる域に達した英雄たち。
暴風は和らぎ、極光は弱まっていく。
そして魔法陣には七人の人影。
一人は、長身に黒い服を纏い、両肩から蛇の様な生き物が生えている男。
一人は、黒い肌に金の装飾がされた服を纏い、手には燃える弓を持っている男。
一人は、こちらも派手に金の装飾された服を着ている小柄な小麦色の肌をした少女。
一人は、白いドレスの様なものを着た背の高い美女。
一人は、しゃがんだ姿勢で顔をこちらに向けている黒装束に白い骸骨の仮面を着けた男。
一人は、片膝を着き平伏している鎌や盾といった武具を持つ美青年。
そして最後の一人が、手に赤い長槍を握っている黒紫色の美しい髪を風になびかせる美女。
「おお……」
誰かの歓喜。
此処にいる全員がこの光景に目を奪われる。かくしてサーヴァントたちは声を揃えて始まりの言葉を告げる。
総勢二十一騎の英霊が殺し合う聖杯戦争。その火蓋を切るために。
『召喚の招きに従い参上した。我ら青のサーヴァント。我らの運命はマスターと共にあり、我らの剣は貴方がたの剣である』
三日月の見える夜の森。
デュオル・フォーロード・エルニクスもまた、召喚に成功していた。
「問おう。貴様がを愚かにも呼び出したマスターか?」
デュオルの前に立つこの黄金の鎧に身を包む金髪赤眼の男こそ、歴史にその名を刻み、伝説となった英雄の王たる存在。
「ああ、そうだ。俺がお前のマスターだ。英雄王ギルガメッシュ」
そう言って手の甲ある令呪を見せた。
瞬間、デュオルは足を掛けられ転ばされる。
「ぐふっ」
いきなり転ばされて意味が分からないデュオルだったが、直ぐに起き上がるとギルガメッシュに指をさして。
「な、何すんだよ」
「雑種風情が俺と対等な目線でものを言うでない」
「は? ふざけんなよ。お前俺のサーヴァントだろ!」
「我が貴様に従うのではない。貴様が我に使えるのだ」
デュオルはサーヴァントの性格が記されていなかった事を思い出して書記を恨んだ。
「ラインハルト君。どうやら聖堂教会もたった今サーヴァントを七騎揃えたようだよ」
キャスターをセイバーに運んでもらってからテラスで本を読んでいたラインハルトにその知らせを届けたのは二十代後半くらいの眼鏡を掛けた男だ。
「そうですか、聖堂教会の事ですからかなり良いサーヴァント選んできているでしょうね。他の七騎はバラバラでもし数組が手を組んだとしても脅威にはなり得ませんし、やはり聖堂教会をどうやって倒すかですね。果たして作戦通りにいくかどうか」
「強いサーヴァントを揃えるならば自然と神性を持つサーヴァントが多くなるはずだよ。作戦通りならうちのランサーがいれば戦いはだいぶ楽になるよ」
「そうですね、あ、エリウスさん、ミュリノア知りませんか? あいつキャスターから目を放すなって言ったのに見当たらなくて」
この人はエリウス・シュハルツァー。
白の陣営のライダーのマスターだ。
「さあ、私は先ほど帰還したばかりなので見ていませんね」
「そうですか、ご苦労様です」
そう言って本の世界へ戻ろうとした時、突然本を何者かに取り上げられる。
「ちょっと、何するんですか。バーサーカー」
「ちょっと、そのダサい呼び方辞めてくれない? テアにはテアっていう名前があるの」
本をぶらぶらさせながら僕の前に現れたのは水銀色の髪を伸ばした黒い瞳を持つ絶世の美少女。
まるで女神だ、いや、まあ実際女神だけど。
「いや、真名言っちゃだめですよ。バーサー」
「はいストップ。またハルト君テアの事バーサーカーって呼ぼうとした。テアの事はテアって呼ばないと今度からは怒っちゃうよ?」
可愛らしく言ってはいるが、顔が笑っていないので怖すぎる。
「あ、はい。テアさん」
「うん、よろしい」
テアは本をぽいっと投げて返してきたので、ラインハルトは慌ててキャッチする。
「あ、そうだ。門の前で武蔵君が退屈だって言ってたけど聖杯戦争っていつ始まるんだっけ?」
「あの、テアさん。せめて他のサーヴァントの真名は言わないでくれませんかね?」
これでは戦闘でこちらの情報がダダ漏れだ。
「うーん……分かった、気をつけるね」
テアが帰ろうとするとラインハルトはエリウスにした質問と同じ質問をテアにもする。
「あの、ミュリノア知りませんか? キャスターの所にいなくて」
「んー、ミュリちゃんならルードヴィヒ君の事ちょっと見てるの引き受けてから見かけないよ」
「テアさん、また真名言っちゃってます。あと引き受けたならちゃんとやってください」
「あ、ごめんごめん。テア忘れんぼさんだから、つい」
てへっと頭にコツンと手を当ててザ・ブリッコをやるテアに、もしそうなら貴女の頭は鶏以下だ、と言ってやりたかったが殺されそうなので辞めた。
彼女一応バーサーカーだし。
ああ、不安でならない。
なんでこのサーヴァントにしたんだよホントに。
おかげで感想がデジャヴっちゃったじゃないか。
ラインハルトは三日月の月光を浴びてキラキラと輝く水銀色の髪をしたテアを見ながらこれからの事を考え憂鬱になるのだった。
「セルヴェ、召喚陣の準備出来た?」
「はい、滞りなく」
デウスエクトは名前を付けた執事、セルヴェレスタ・フォン・アインツベルンに自分の生まれた地下室に下りながら質問する。
デウスエクトは他のホムンクルスよりも感情が旺盛なので質問しない限り何も答えないセルヴェレスタやメイドのロサリエと居ると退屈する。
「キャスター、部屋に篭るのが好きな君でも、英霊召喚は見たいの?」
巨大なプールがある地下室についた時デウスエクトは十日前に召喚したキャスターのサーヴァントがいる事に少し驚く。
「えーぇ! そーれはもう奇跡の具現化をこの目でぇ見る機会などそぉうそうあーりませんから」
奇怪な喋り方をするのは黒と紫の混じりあった髪をし、黄色と灰色のオッドアイをした飾りの多いローブを着た二十後半の見た目の男だ。
「……それと、僕の寿命は分かったか」
雰囲気を暗くして聞くデウスエクトに、キャスターは真剣に答える。
「はい、主様の余命は一月ほどです」
「……あっそ」
デウスエクトは膨大な魔力とそれを扱う才能を持って生まれた。
その力はイリヤスフィールの百倍以上。
だが、それにホムンクルスの体は耐えられず、常に魔術回路がいつ暴走してもおかしくはない状態なのだ。
今は何とか死霊術に長けたであるキャスターのおかげで押さえられてはいるが、それも一月が限界との事だ。
「まあいいよ、勝てばいいんだ。この聖杯戦争に」
デウスエクトが聖杯に託す望みは存命。
自我が強い彼は他のホムンクルスとは違い生への執着があった。
「僕はもう聖杯に選ばれてるし」
デウスエクトの左手には令呪が刻まれていた。
これだけ開催場所から離れているにもかかわらず、デウスエクトが選ばれたのは御三家は優先的に選ばれるという以前の聖杯戦争の名残からだろう。
そこからやはり本物の聖杯に入れられたのはアインツベルン作った聖杯戦争のシステムなのだろうと分かる。
そして、気になるのは右手に刻まれたもう一つの令呪。
「ま、これは後にしてさくっと召喚しちゃうか」
デウスエクトは八つの召喚陣を見やる。
今回召喚できるサーヴァントは二十一騎。既に十六騎のサーヴァントが召喚されている今の状況では最高で五騎が限界だ。
既に何騎サーヴァントが召喚されたか知っているデウスエクトではあったが、この儀式を執り行った。
「ロサ、令呪盗れた?」
部屋の一角には四人の死体が積んである。素の真横に居るのはロサリエ・フォン・ア
インツベルン。
選ばれたマスターから令呪を盗る仕事を任されていた。
「はい」
ロサは右手に刻まれた令呪を見せてくる。セルヴェレスタも右手を出し令呪を見せる。
「よし、じゃあ呼ぼうか」
左手を召喚陣へと向け、デウスエクト、セルヴェレスタ、ロサリエの三人は詠唱を開始する。
「素に重と悪。礎に呪と盟約の大公。手向けるは影。舞い降りる光には闇を。天の門は閉じ、混沌より出で、帝国に至る覇道は矛盾せよ」
通常とは異なる詠唱を口にするデウスエクト。
そしてセルヴェレスタが次の詠唱を綴る。
「終われ、終われ、終われ、終われ、終われ。繰り返すつどに五度。ただ、滅亡の刻を破却する」
召喚陣が紫色に輝き、デウスエクトが再び紡ぐ。
「告げる。汝の憎悪は我が下に、我が復讐は汝の剣に。聖杯の抑止に抗い、この日、この時、我が悪意に従うのなら答えよ」
召喚陣はルールを破ろうとする者達に気づき周りに紫雷を迸らせるが、そんなものは意にかさずにロサリエも続く。
「誓いを此処に、我は常世総ての悪と成る者、我は常世総ての善を敷く者」
ここでデウスエクトはこの詠唱で一番大切な節を口にする。
「そして汝、その存在を抹消され、人に忘れ去られし英霊。我はその存在を暴き、導きし者」
召喚陣の紫雷により壁や床は苦だけ、世界が揺れる中、三人は最後の二節を告げる。
「汝その身に業を纏う化身。矛盾の輪廻より来たれ、もう一人の英霊よ!」
瞬間、召喚陣は弾けた。
周囲には黒い瘴気が渦巻き、そこに顕現する奇跡を冒涜せし人の望まぬ悪意の化身達。
その数。七騎。
「よく来た、たちよ!」
デウスエクトは両手を広げ半英霊たちを歓迎する。
彼らは一斉に禁忌者の始まりの言葉を紡ぐ。
『マスターたちよ、これより我らが憎悪、汝に剣として捧ぐ。願わくば汝らと共に滅亡の時を見られん事を』
それを聞いたデウスエクトは満足したが、何も出現していない召喚陣を一つ見つけて。
「やっぱり二騎のアーチャーは無理だったか」
触媒として置かれた聖遺物を持ち呟くと。
「もう一人の英雄たちよ。、早速だが向かおうじゃない。もう一つの聖杯戦争の地に」
デウスエクトは一拍置き。
「スノーフィールドに行こうか」
聖杯を掛けた運命の歯車が今、狂い出す。
遠坂衛騎は召喚された七騎のサーヴァントを見て思う。
「父さんや母さんが出た聖杯戦争に俺やユリが出るなんてな」
いや、違う違うと首を横に振る。
「今回は聖杯戦線だったな」
父さんのサーヴァントだった騎士王とかにも会えるかもしれないな、それに父さん自身にも。
「何とも宿命的な運命だ」
衛騎はそう呟き、右腕に隠した十画の令呪を摩った。
白のアサシン。
【マスター】ブライアス・メルトシュム。
【真名】宮本武蔵
【性別】男
【身長】185㎝
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力B・耐久C・敏捷A・、魔力E・幸運C・宝具D
【クラス別スキル】気配遮断E―
【保有スキル】心眼(真)B・武芸百般B・透化B+
【宝具】不明
白のキャスター
【マスター】ミュリノア・クランツェスタ
【真名】ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
【性別】男
【身長】172㎝
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力E・耐久D・敏捷D・魔力B+・幸運D・宝具B+
【クラス別スキル】陣地作成B・道具作成E
【保有スキル】芸術審美C+・作曲A++・難聴C
【宝具】不明
白のバーサーカー
【マスター】ライドアヴァン・リューゼンベルグ
【真名】テア
【性別】女
【身長】164㎝
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力C・耐久E・敏捷C・魔力A+++・宝具A
【クラス別スキル】狂化A++
【保有スキル】神性A+++・精神汚染EⅩ
【宝具】不明
文句と書かないでね。中学生精神が持たないので。
あと真名予想とか書いてくれると嬉しいです。