造ってくヒーローアカデミア(リメイク前・凍結)   作:KEA

7 / 10
第7話

 

「ふっ……!!」

 

捕縛武器を用いて、あらゆる敵を捌いていく。

相手を絡めとり、連携を乱すようにそれを他の敵へと投げつけ

またその隙に他の個性を消し、確実に連携をさせない。

1対多数の戦闘は得意な部類に含まれる。

 

ただ、それは短期戦という限定的なものだ。

長期戦になってくれば瞬きの回数は増え、個性を消せない時間が増えていく。

戦闘において、たったの数秒が命取りになることがある。

 

敵は減ってきたが、少なくなってきたワケではない。

その中でも取り分け存在感を放つ、恐らくは主犯格の二人は傍観を決め込んでいると

来たものだ。

 

雑魚敵を使い体力を減らして後、本命で一気に摘みに来る。

恐らくはそういう作戦なのだろう。

それを周りの敵は知らない。自分が捨て駒などと気づいてすらいない。

 

その時、不意に主犯格の一人――体中に手を付けた男が走り出す。

その細い体に似合わない速度で相澤へと迫る。

 

「――本命か」

 

「24秒…………20秒」

 

男へと飛ばした捕縛武器は容易く捕まれ、今までの敵ではないと知る。

 

「ちっ!!」

 

明らかに他とはレベルが違う。

そう判断した相澤は、他の敵を置き男へと向かった。

武器を引き寄せると、掴んだままの男は無防備なままこちらへと引き寄せられる。

その腹に向かって渾身の肘を叩き込む。

 

「――動き回るのでわかり辛いけど、髪が下がる瞬間がある」

 

ズキン、と打ち込んだ肘に痛みが走る。

さっきの攻撃は簡単に手で抑え込まれていた。

その抑え込まれた場所からボロボロと皮が剥がれ落ちる。

 

「一アクションを終えるごとだ。そしてその間隔は段々短くなってる。

……無理をするなよイレイザーヘッド」

 

左手で殴りつけ、体制が崩れた隙に大きく距離を取る。

 

――肘が崩れた。恐らく触れたものを崩壊や分解させる個性。

防御が出来ない個性というものは総じて強い。

 

肘を庇いつつ、他の敵を相手取る。

そんなにダメージが通らなかったのか、男はゆっくりと立ち上がった。

 

「その個性じゃ……集団との長期決戦は向いてなくないか?

普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?

君が得意なのは、あくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか?

――それでも真正面から飛び込んできたのは、生徒達に安心を与える為か?」

 

狂気の瞳で相澤を見ながら、男は笑みを浮かべて相澤を褒める。

 

「かっこいいなあ……かっこいいなあ……ところでヒーロー。

――本命は俺じゃない」

 

男の視線は相澤の後ろを向いていた。

そして殺気――。

振り返れば、ついさっきまで誰もいなかった場所に脳がむき出しの男がいた。

岩のように刺々しい歯を見せ、焦点の合わない目で相澤の頭を掴む。

相澤の目は閉じていない。つまりコイツの個性は今消えている。

それなのに……。

 

凄まじい力で顔面を地面へ叩き込まれた。

意識が朦朧とするなか、馬乗りに男が乗り相澤を拘束した。

 

 

 

 

 

「緑谷、ダメだ……さすがに考え改めただろ……?」

 

「ケロ……」

 

「――――……!」

 

水辺から広場を見ていた僕らの前で、相澤先生がやられた。

僕はただそれを眺める事しかできない。

そんな時、僕たちをワープさせた黒い靄の敵が現れる。

 

「死柄木 弔」

 

「黒霧。13号はやったのか?」

 

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」

 

「…………は?」

 

ガリガリと、苛立ちを隠さすに首元を掻き毟る死柄木と呼ばれた男。

ただ、会話はうまくは聞き取れない。

 

靄と話した後、不意に呟いた一言が耳に届いた。

 

「――今回はゲームオーバーだ……帰ろっか」

 

「……帰る……? カエルっつったのか今??」

 

「そう聞こえたわ」

 

「やっ、やったあ! 助かるんだ俺たち!」

 

「ええ、でも……」

 

さり気なく胸に手を近づける峰田を容赦無く沈める蛙吹さん。

 

「気味が悪いわ、緑谷ちゃん」

 

「うん……これだけのことをしといて、あっさり引き下がるなんて……」

 

敵はオールマイトを殺したいんじゃないのか!?

これで帰ったら雄英の危機意識が上がるだけだぞ!!

ゲームオーバー? 何だ……何考えてるんだ、こいつら!!

 

「けどもその前に、平和の象徴の矜持を少しでも――」

 

瞬きした瞬間、死柄木の姿が消え、峰田君と蛙吹さんの目の前へと移動していた。

 

「――へし折って帰ろう!」

 

二つの腕が二人の顔へと――あの先生の肘をボロボロにした腕が――伸びる。

 

「ぐっ……!!」

 

その指が蛙吹さんの顔に触れる事は無かった。

 

「――大切なクラスメイトに手ェ出してんじゃねぇよ、敵共」

 

死柄木の目の前に、長い棒のようなものが地面から突き出ていた。

先は尖っており、誰かの血が付着している。

死柄木が脇腹を抑えながら一歩下がり、声の主へと視線を向けた。

 

「――緑谷! ぶちかませ!!」

 

「っうん!」

 

死柄木の意識が彼に――神薙君に向いているうちに僕は拳を握りしめる。

 

「離れろ!!」

 

「――脳無」

 

全力を込めてコイツを――死柄木を突き放す。

 

「SMASSH!!!」

 

当たった感触はした! それに……折れてない!!?

力の調整がこんな時に……できた!?

上手くスマッシュ決まった!!

 

やった……。

 

煙が晴れれば、そこには真っ黒で脳が出た男が僕を見ていた。

 

「……え?

 

速っ……いつの間に……ていうか、効いて……ない……!?

蛙吹さんの言葉を僕は思い出した。水難エリアで彼女が言った言葉を。

 

『――殺せる算段が整ってるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?』

 

――まさか。

 

「良い動きするなあ……スマッシュって……オールマイトのフォロワーかい?

まあ、いいや君」

 

その言葉を合図に、殴りつけた腕を捕まれる。

再び死柄木が二人へと手を伸ばしたその時――出入り口が吹き飛んだ。

 

「――もう大丈夫」

 

いつもの笑顔じゃない……!

オールマイトが、ネクタイを引きちぎりながら宣言をした。

その気迫は凄まじく、僕たちには安心感を、敵には恐怖を植え付けた。

 

「私が来た」

 

「あーー……コンティニューだ」

 

 

 

 

 

やっと、やっと来てくれた……。

その場にへたり込むのを抑えながら、俺は一息ついた。

俺がここに着いたときには既に相澤先生はやられ、水辺にいた三人が

襲われそうな場面だった。咄嗟に槍をあの男に突き刺した事で僅かに

時間を稼ぐことが出来たが、あと一歩オールマイトが来るのが遅ければと思うとゾッとする。

 

階段の下のいた数人の敵を一瞬で片づけ、先生を肩に担ぐ。

そのあとは一瞬だった。俺を含めた生徒四人が一瞬で救い出され、敵から

離れた位置へと避難させてくれる。

 

「皆……入口へ、相澤くんを頼んだ。意識が朦朧としている、早く!!」

 

「え!? え!? あれ!? 速え……!!」

 

峰田がきょろきょろしながら辺りを確認していた。

オールマイトの顔に油断はない。ていうかこんなに怒ってる顔は初めてだ。

 

「オールマイト、だめです!! あの脳ミソ敵!!

ワン……ッ、僕の腕が折れないくらいの力だけど、ビクともしなかった!!

きっとアイツ……」

 

「――緑谷少年。大丈夫!」

 

ニカッと微笑みオールマイトの笑みに、助かったんだと俺は実感した。

そのままオールマイトは脳みそへと突っ込んで戦闘を始める。

緑谷が相澤先生の両腕を取り、峰田が両足を担ぐ。

梅雨ちゃんが先導し、俺が後ろについて戦闘の様子を眺めていた。

 

「何でバックドロップが爆発みてーになるんだろうな……!!

やっぱダンチだぜオールマイト!!」

 

「授業はカンペ見ながらの新米さんなのに」

 

明らかにオールマイトが優勢……それなのに緑谷の顔は浮かない。

オールマイトを心配している様子だった。

 

「すげえ!! 奴らオールマイトをナメすぎだぜ!!」

 

「あ! デクくんたち!!」

 

出入り口からも歓声が聞こえてくる。

全員が、オールマイトの勝利を信じている。信じていないのは、緑谷?

あんなに戦闘服に採用するぐらい好きなのに?

 

「やれええ!! 金的を狙ええーーー!!!」

 

「私たちの考えすぎだったかしら……すごいわ……」

 

「……緑谷」

 

戦闘から目を離さず、俺は緑谷へ声をかける。

 

「あ、うん。どうしたの?」

 

相変わらず顔に元気はない。

いつもの緑谷なら、顔を輝かせてオールマイトの戦闘を見ているだろう。

多分、推測にしかすぎないけれど――コイツはオールマイトの何かを知っている。

何かまでは分からない。だが、浮かない顔をしているのは可笑しい。

 

「――オールマイト、捕まったぞ」

 

「……あ」

 

黒い靄に捕らわれ、両脇を脳ミソ捕まえられているオールマイト。

緑谷の個性でもビクともしなかったあの脳ミソに捕まえられたら抜け出すのは

至極難しいだろう。オールマイトでも悪戦苦闘するレベル……。

だが、俺の個性なら助け出せるかもしれない。

試したことはないが――。

 

相澤先生を梅雨ちゃんと峰田に頼み、二人で広場へと駆ける。

近づいてみれば、オールマイトの両脇から血がダラダラと垂れている。

オールマイトに傷をつけ拘束する程度の力があるってことは、こいつ等は

平和の象徴を殺しに来たという事になる。

 

走りながら手を合わせ、錬成の準備をしておく。

気を付けるべきは黒いワープの奴だ。

死柄木は手に触れさえしなければ問題は――

 

瞬間、目前に靄が一気に広がる。

 

「浅はか」

 

また何処かに俺たちをワープさせる気か?

コイツに触れることはできるのか?

最悪一人でもオールマイトの傍にいければ、何かしら手伝えるはずだ。

緑谷を突き飛ばそうとしたその時――

 

 

「――どっけ邪魔だ!! デクモブ!!」

 

靄男の襟首辺りを掴みたたきつけた爆豪。

……マジナイスタイミングだ。たまにはヒーローらしいことするんだな。

台詞は完璧敵だけども。

 

爆豪の登場と同時に、轟の足元から氷が這ってゆく。

その氷はオールマイトを捕らえている脳みその半身を凍てつかせる。

 

「――てめェらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

「だあー!!」

 

硬化させた腕で切りかかりも、容易く避けられた切島。

中々に戦闘力の高い生徒が広場に集まってきた。

 

「くっそ!!! いいとこねー!」

 

「スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが!!」

 

「平和の象徴はてめェら如きに殺れねえよ」

 

脳みそが凍った隙をついて離れる事ができたオールマイト。

残すはアイツただ一人だ。

 

「出入り口を抑えられた……こりゃあピンチだなあ……」

 

淡々と口に出す死柄木。だが焦った様子は見られない。

その間にも、爆豪が靄の弱点を暴く。

靄になれる場所は限られており、その実態部分を靄で覆って隠している。

胴体は実態があるという事だ。そこを狙えばコイツにも攻撃は当たる。

 

「攻略された上に全員ほぼ無傷……すごいなぁ。最近の子供は……

恥ずかしくなってくるぜ、敵連合……! 脳無、爆発小僧をやっつけろ。

出入口の奪還だ」

 

死柄木の一言で、ピクリともしなかった脳ミソ――脳無が動きだす。

 

「――!?」

 

「体が割れてるのに……動いてる……!?」

 

半身が音を立てて割れても、痛みを感じないかのように立ち上がる脳無。

 

「皆、下がれ!! なんだ!? ショック吸収の個性じゃないのか!?」

 

割れて無くなったハズの右腕と右足が膨れ上がるようにして再生を起こす。

 

「別にそれだけとは言ってないだろう。これは超再生だな。

脳無はお前の100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバック人間さ」

 

何が起こったのか分からなかった。

脳無が消え、気づけば爆豪がいた位置に脳無がいて、腕を振り終わった動作で立っている。

 

「かっちゃん!!! かっちゃん!!?」

 

緑谷の隣には爆豪がいた。表情は茫然としており本人が避けたわけではないだろう。

同時に消えたオールマイト。それらが意味を成すことは……。

衝撃の終着点に目を向ければ、防御した体制のオールマイトが血を吐いて立っていた。

 

「加減を知らんのか……」

 

「仲間を助ける為さ。しかたないだろ? さっきだってホラそこの……黒の短髪と地味めなやつ。

アイツが俺の脇腹刺して、片方は殴りかかってきたぜ?  他が為に振るう暴力は美談になるんだ……そうだろ?

 ヒーロー?」

 

脇腹には、少ない量の血が流れていた。

刺したといっても多少切っ先が食い込んだ程度……すぐに錬成したものを

避けられるほど、アイツは反射神経がいい。

 

「俺はなオールマイト! 怒ってるんだ! 同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ

善し悪しが決まるこの世の中に! 何が平和の象徴!! 所詮抑圧の為の暴力装置だ、お前は!

暴力は暴力しか生まないのだと、おまえを殺すことで世に知らしめるのさ!」

 

口元を拭いながらオールマイトは否定した。

 

「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ嘘吐きめ」

 

死柄木の瞳が歪み、恐らくは笑みの表情を取る。

 

「バレるの早……」

 

「……3体6だ」

 

「靄の弱点はかっちゃんが暴いた……!!」

 

「とんでもねえ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ……撃退できる!!」

 

確かにこの状況はこちらに分がある。

だが、大丈夫か? オールマイトは傷を負い緑谷は片腕を負傷している。

俺らが脳無に狙われればオールマイトに負担がかかるだろう。

 

「ダメだ!!!逃げなさい」

 

手で俺たちを静止するオールマイト。

 

「……さっきのは俺がサポート入らなきゃやばかったでしょう」

 

「それにオールマイト、血……それに時間だって無いはずじゃ……あ……」

 

しまった、と言わんばかりに口を抑える緑谷。

……やっぱりオールマイトの何かを知っている。

 

「それはそれだ轟少年!! ありがとな!! しかし大丈夫!!

プロの本気を見ていなさい!!」

 

それは俺らを安心させるための言葉なのか、それとも事実なのか。

 

「――脳無、黒霧やれ。俺は子どもをあしらう……クリアして帰ろう!」

 

一直線に突き進んでくる死柄木。

さっき言ってたように狙いは俺か。

 

「おい来てる! やるっきゃねぇって!!」

 

腕を硬化させ、襲撃に備える霧島。

仕方がない……やるしかない!

錬成をしようとしたその時――

 

全身に鳥肌が立ち、体が強張る。

今のは……オールマイト?

 

それぞれの腕を打ち付けるオールマイトと脳無。

 

「ショック吸収って……さっき自分で言ってたじゃんか」

 

同じように寒気がしたのか、距離を取った死柄木。

俺たちを狙うことをやめて戦いを見ることにした、のか?

 

「――そうだな!」

 

そして始まる激しい真正面からの殴り合い。

暴風や衝撃が巻き起こり、近づくことすら許されない。

現に風で黒霧は近づくことが出来ていなかった。

 

「無効ではなく吸収ならば!! 限度があるんじゃないか!?

私対策!? 私の100%を耐えるなら!! さらに上からねじふせよう!!」

 

血を吐きながら連打を繰り返すオールマイト。

ビリビリと痺れるような感覚。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの! 敵よ、こんな言葉を知っているか!!?」

 

衝撃が吸収しきれず、動きが鈍い脳無の胴体にその重い一撃が入る。

 

「――Plus Ultra!!」

 

脳無が目に見えない速度で吹き飛び、USJの壁すらぶち壊して吹き飛んでいく。

……脳無は星になったのだ。

 

「……漫画かよ。ショック吸収をないことにしちまった……究極の脳筋だぜ。

デタラメな力だ……。再生もまにあわねえ程のラッシュってことか」

 

頭おかしいと言わんばかりの切島の分析に、俺は乾いた笑みしか浮かべられない。

No1ヒーローを心配なんて烏滸がましい事をしたな。

 

「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに」

 

いつもの笑みを浮かべたオールマイトだが、体はボロボロ。

口からは更に血が溢れてしまっている。

未だに土煙が収まらないその中心に彼は立っていた。

 

「300発以上も撃ってしまった。

さてと敵……お互い早めに決着つけたいね」

 

「チートが……!」

 

首元に手を這わせる死柄木ながら腹立ちげに言った言葉は的を射ていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。