造ってくヒーローアカデミア(リメイク前・凍結)   作:KEA

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第8話

「衰えた? 嘘だろ……完全に気圧されたよ。

よくも俺の脳無を……チートがぁ……!!」

 

首元を何度も何度も掻き毟る死柄木。

爪で首元が傷つき、出血し首元は赤く染まる。

それを気にしないで掻き毟り続ける死柄木の姿は異様そのものだった。

 

「全っ然弱ってないじゃないか!! あいつ……俺に嘘教えたのか!?」

 

脳無は対オールマイトの兵器。最強の存在だった筈だ。

脳無さえいればアイツの100%に耐え、尚且つ黒霧との連携で

確実にオールマイトを――平和の象徴をこの世から消し去れたはずなのに。

 

「――どうした? 来ないのかな!?」

 

オールマイトの声に死柄木の肩がビクリと震える。

個性でアイツを崩壊させる前に、一発で自分の体など吹き飛ばされる。

あの脳無のように。

 

「クリアとかなんとか言ってたが……出来るものならしてみろよ!!」

 

青い瞳で睨み付けるオールマイトに背筋が凍る。

体が、本能が奴に立ち向かうなと告げる。

こんな精神状態では勝てるものにも勝てはしない。

 

 

 

そんな様子を、離れた距離から見ていた5人の生徒。

 

「さすがだ。俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな……」

 

「緑谷! ここは退いたほうがいいぜ、もう。却って人質とかにされたら

やべェし……」

 

ここまで離れていても、オールマイトの気迫や威圧を感じる。

それを真正面から向けられている二人はたまったものではないだろう。

この場はもうオールマイトに任せても問題はない。

そう判断した轟が踵を返し、切島も少しずつ下がっていく。

 

それに、他の場所ではまだ生徒と敵が戦っているかもしれない。

自分たちはその相手をしたほうがいいだろう。

 

「緑谷、神薙」

 

呼びかけても動かない緑谷と神薙に轟は振り返った。

緑谷の表情は相変わらず浮かない。

何かブツブツと呟いているが、ここまでは声も届かない。

 

二人は同時に顔を見合わせ――オールマイトへ……正確には、オールメイトに

向かう死柄木と黒霧へと向かっていった。

緑谷の速度は目視できるレベルのものではなく、跳躍で

黒霧へと飛ぶ。

 

驚きの声をあげる切島を置いて、緑谷は拳を握りしめる。

両足が折れた……! それでも、黒霧に届いた!!

情報通りなら、隠している体部分! そこを狙えば人1人くらい吹き飛ばせる!!

 

「オールマイトから、離れろ!!」

 

「――二度目はありませんよ!!」

 

死柄木が黒霧の中へと腕を突っ込む。すると、緑谷の目前へとワープしてきた。

このままなら、確実に顔を触れられ崩壊を起こすだろう。

でも――

 

「それはこっちの台詞だっつの!!」

 

地面からポール状で構成された土が突き出し、死柄木の腕を跳ね除ける。

相澤先生と戦ってた時の戦闘は見ているんだ。アイツの個性は五指が触れて発動するタイプだ。

五指は大きく上にズレ緑谷に触れることはなかった。

 

「SMASH!!」

 

衝撃と爆風が巻き起こり、黒霧と死柄木が後方へと突き飛ばされた。

両足が折れた緑谷はそのまま地面へと受け身の取れないまま落ちていく。

 

「うわっ!?」

 

「のわっ!!」

 

ズザザ、と落ちる直前に緑谷のクッションとなり衝撃を和らげる。

顎が地面に強打してめちゃくちゃ痛い。

足が折れ立ち上がれない緑谷に、顎を抑えてのた打ち回る神薙。

その二人を殺さんと死柄木が標的を二人に変えた時、四肢に激痛が走る。

 

一瞬の事だ。

銃声がしたと同時に、四肢を何かが通り抜ける異物の感触。

見る余裕はないが恐らく四肢にそれぞれ丸い貫通穴が出来上がっているだろう。

倒れこむ死柄木を庇うように黒霧が包み込み、銃弾の嵐から守り抜く。

 

「1-A、クラス委員長飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

オールマイト級とは行かないものの、凄まじい威圧感を出入り口から感じる。

顔を上げてみれば、飯田が大勢のプロヒーローを連れて立っていた。

 

「くそっ、くそっ……! ゲームオーバーだ……!!

生徒共に邪魔されるなんて……! 出直すぞ、黒霧!!」

 

立ち上がれない死柄木を、黒霧が包み込んでいく。

このままじゃ逃げられる……!

 

「――この距離で捕獲可能な個性は――――……」

 

「僕だ……!!」

 

力の限り二人を吸い込まんと全力を尽くす13号。

背中には大きな裂傷があり、重傷は免れない傷だろうと言える。

それでも彼は全力を尽くして奴らを捕らえようとした。

 

「今度は失敗だったけど……今度は殺すぞ。

平和の象徴……オールマイト……」

 

絞るような声だったが、それはこの場にいたほとんどの人間に届いた。

奴からは途方もない憎しみ……恨みを感じることが出来た。

その目はオールマイトを睨み付けていたが、一瞬緑谷と神薙も睨み付け

二人は姿を消した。

 

ズキズキと痛む両足。立ち上がることすらままならないこの状況で緑谷は悔んだ。

 

「……何も、出来なかった……!」

 

下唇を噛んで、痛みを、悔しさを堪える。

プロが相手にしているもの……世界。それは、僕たちにはまだ早すぎる経験だった。

 

「――そんなことはないさ」

 

そんな緑谷を否定したオールマイト。

半身はやせ細り、歪な恰好へとなった彼は笑顔で緑谷に言葉を紡ぐ。

 

「あの時――君と神薙少年が作り出してくた数十秒。あれがなければ私は

やられていた……! また(たす)けられちゃったな」

 

その一言で、緑谷の涙腺が崩壊した。

涙が溢れて止まらず、鼻水も止まらない。

その一言に、緑谷もまた救けられた。

 

「無事で……良かったです……!」

 

そして、この襲撃を機に様々な事件に巻き込まれることを、この時の僕らは

知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「――16、17、18…………。

両足重傷の彼を除いて……ほぼ全員無事か」

 

USJを離れ、雄英高校に戻ってきた1-Aの生徒達。

そこには既に警察がおり、敵達を捕らえて送っているところだった。

多少汚れたり、傷がついた生徒はいるがあれほどの敵襲撃でこれだけの

傷で済むとは。

 

「とりあえず生徒らは教室へ戻ってもらおう。すぐに事情聴取ってわけにもいかんだろ」

 

「刑事さん、相澤先生は――」

 

梅雨ちゃんに聞かれた刑事は、携帯を取り出して電話を掛ける。

スピーカーをオンにし、全員に聞こえるように音声を流した。

 

『――両腕粉砕骨折、顔面に軽い打撲。幸い脳系の損傷は見受けられません。

意識もしっかりしているので、とりあえずは様子見です』

 

「――だそうだ……」

 

「ケロ……」

 

「よ、良かったぁ……」

 

医者の台詞にクラス全員がホッとしたような表情だった。

やはり心配していたのだろう。

 

「13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが、命に別状はなし。

オールマイトも同じく命に別状なし。彼に関してはリカバリーガールの治癒で

充分処置可能とのことで保健室へ」

 

つまり、今回の戦闘で死者は一人も出なかったという事になる。

これは奇跡と言えるだろう。あれだけの敵に襲われ、対処ができる高校一年生などそうはいない。

 

「デクくん……」

 

「緑谷くんは……!?」

 

「緑……ああ、彼も保健室で間に合うそうだ。私も保健室の方に用がある。

三茶、あと頼んだぞ」

 

そう言って刑事はここを離れ、生徒達も教室に戻るように指示がでる。

俺たちはそれに従い、ゾロゾロと教室へと向かった。

戻る中、言葉を発する生徒はいない。ほとんどが今回の騒動のことを考え、教室まで無言で歩く。

会話しはじめたのは、事情聴取も終わり帰るころ。

 

「――んじゃ神薙、またな」

 

ゾロゾロと帰っていく中、俺も帰ろうと支度を始める。

正直眠くてしょうがない。それに、帰ってもっと個性について調べないと。

時刻は既に夕暮れ時。早めに帰らないと親に心配されてしまう。

 

「神薙ちゃん。ちょっといい?」

 

「ん?」

 

クラスは既に静かだった。もうこの場にいるのは二人――俺と梅雨ちゃんだけだ。

なにか用だろうかと首を傾げる。

 

「改めてお礼を言わなきゃと思って。あの時は助かったわ」

 

あの時……あぁ。死柄木に触れられそうになったときか。

字面だけ見るとなんか痴漢っぽいな。事実ではあるが。

 

「別に気にすんなよ。あの時は無我夢中だったし、友達を助けるぐらい当たり前だろ」

 

「……そうね、友達だものね」

 

何度か頷いた後、支度を整える梅雨ちゃん。

……? お礼が言いたかっただけってことでいいのか?

 

「それじゃあまたね、唯ちゃん」

 

「おう、また……うん?」

 

今明らかにおかしい単語が俺の耳に入ったんだけど。

問い返そうとしてもすでに梅雨ちゃんは教室を後にしていた。

 

……名前で呼ばれるのは恥ずかしいなぁ。

 

 

 

 

 

 

因みに翌日は臨時休校となった。

何でも、教師たちと刑事が一丸となって調べる……らしい。

その休日を利用して俺は錬金術について調べていた。

 

何故俺の個性が手を合わせるという一動作が必要なのか。

この動作を飛ばして個性を使うことはできないのか。という実験だった。

 

錬成の基本は円の力。

円は力の循環を示し、そこに構築式を描くことで力の発動が可能になる。

古代では、錬成陣と呼ばれるものを使用して錬金術を行っていた……らしい。

正直眉唾物だ。信じられるような話ではない。

 

昔は錬金術なんて存在したのか?

錬金術から科学が生まれたなんていう話も聞いたことはあるが。

実験は試してなんぼだ。昔は錬成陣なんてものを描いて錬成をしていた。

その錬成陣さえ分かってしまえば――いや、違う。

分からないのなら、自分で陣を造ってしまえばいい。

 

だとすると物質の構成、酸素濃度の変換式などを書き込めばいいわけだ。

それを円という物に書き記していく。

……誰かの個性を真似てやってみるか?

 

轟の氷や上鳴の雷。あれらを使えるようになれば戦闘能力は

大きく向上することになる。今日は徹夜して構成式を纏めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、神薙アイツどうしたんだ?」

 

「さぁ……朝からあんな感じだったぜ?」

 

机に突っ伏したまま微動だにしない神薙に切島と上鳴が顔を見合わせた。

口からはまるで魂が抜けたかのように生気が感じられない神薙。

原因は昨日の錬成陣の構築だ。思った以上にシンドイ……。

円の中に書き込まなくてはいけず、少しでもズレれば構築式や錬成式が合わなくなる。

書き込めるようになればサラサラといけるんだろうが……。

 

「皆ーー!! 朝のHRが始まる! 席につけー!!」

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

相変わらずフルスロットルな飯田に突っ込みを入れる瀬呂。

にしても相澤先生は来れるんだろうか。何日かは安静にしなければ――。

 

「お早う」

 

「相澤先生復帰早えええ!!!」

 

両腕には包帯が巻かれ、更に鼻から上も包帯がグルグル巻きな状態で先生が現れた。

飯田が無事だったのですねなんて言ってるけどあれを無事とは言わない。

今よろけたよ大丈夫?

 

「俺の安否はどうでもいい。何より戦いはまだ終わってねぇ」

 

……確かにそうだ。主犯格には逃げられ次いつ攻めてくるのかも分からない。

更に精鋭を揃えて平和の象徴を殺しにくるのかもしれない。

学校っぽい事なんてやる時間もなく、これから壮絶な特訓が――

 

「雄英体育祭が迫ってる」

 

「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

 

やるんですか。

 

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