白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~   作:星の屑鉄

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趣味と欲望大爆発の話ではありますが、最後までお付き合いいただければと思います。

尚、週一更新を最低でも目標にしていきます。

それでは、本編をどうぞ。




第一章 古代に白い太陽を
第一話 白狐ショタ現る


 それは噂話程度に過ぎなかった。

 ――白い狐の尾を生やした男児が目の前に現れると、幸福が必ず訪れる。

 

 当然、このような噂を、人間の都で天才と呼ばれる彼女、八意永琳は信じていなかった。油揚げが好物という噂が広まるなり、立派な庭先に巧妙に油揚げを仕掛けているからといって、決して信じてはないない。信じていないったら信じていない。

 

「この前は確か、タヂカラオのところに出たって話だったわね……」

 

 神妙な顔で、彼女は地図に印をつける。地図は北西部から南東部の方へと印が順番に付けられている。もうそろそろ、この家を通過する頃合なのだが、件の白狐の男児は一向に現れない。しかし、彼女は余裕の笑みを浮かべる。

 

「まぁ、私のところには来ないでしょうね。見たところ、男神のもとにしか現れないみたいだし。それに、とっても美少年だって聞くわ。今のご時世、男児と知ればペロッと食べようとする女共がいけないのよ」

 

 一応、この白狐の男児は侵入する相手は弁えているらしい。その点で言えば、その白狐の男児が性的に食べられないことを喜ぶべきだが、だからといって風評被害によって自分がその子を見られないことには、納得がいかない。

 

 だから、彼女は策を練った。天才と呼ばれる彼女の頭脳が導き出した答えは、ずばり釣りである。庭には最高級の油揚げはもちろん、いなり寿司、きつねうどん、油揚げの生姜焼き、油揚げのテリヤキ……などなど、とにかく油揚げを使った料理を片っ端から並べて、件の彼が釣られるのを待っている。天才の彼女にとって、料理をするなど造作もないのだ。

 

 ちなみに、これは彼女にとっては実験なのである。油揚げで本当に狐が釣れるかどうか、という疑問に答えを導き出すためにやっているに過ぎない。断じて、白狐の男児を一本釣りするために餌を撒いたわけではない。

 

「はぁ。何をやっているのかしら、私は」

 

 庭先を見つめて冷静に考えると、改めて自分のしていることがどれだけ馬鹿なことか自覚してしまう。考えないようにしていたが、庭先を確認するたびに、彼女の心は研磨機にかけられた金属の如く音を立てて削られる。そもそも、立派な池と整地された土の庭に、料理が並べられていることがおかしい。宴会の準備といえば誤魔化せるかもしれないが、それでも本人の心を削るには十分過ぎる武器となる。

 

 いっそのこと、不貞寝してしまおうか、と彼女はとうとう頭に手を当ててため息をつく。庭はもう見たくない、とばかりに背を向けて、いざ自室に足を運ぼうとした時だった。

 

「ねー、これ、たべていい?」

 

 とうとう幻聴が聞こえ始めたか、と彼女の気持ちは一気に青色に染まった。

 

「どうぞ」

 

「わーい!」

 

 投げやりに返事をすると、無邪気に喜ぶ声がした。中性的な声だ。男児特有のやんちゃな色を含んでいた気がするが、彼女はもう知らない、とばかりに自室に引っ込んで、そのまま布団の中で不貞寝した。

 

 

 

 

 

「はぐはぐ」

 

 八意家の庭では、一匹の白い狐の尾を持つ妖怪が、そこに並べられた料理を食べていた。白と藍色を基調とした立派な着物を身に着け、顔は現実離れするほど整っている美少年だ。さらに、性別は男ときたものだ。見つかれば、女性たちに群がられること待ったなしの彼ではあるが、今は警戒した様子もなく、無防備に食事を楽しんでいる。

 

「んー!」

 

 最高! と今にも叫び出しそうなほど、彼は満面の笑みを浮かべていた。漫画に例えれば、頭の上にいくつもの四分音符が浮き出していることだろう。右手を頬に当てて幸せそうにしていて、さらに綺麗な白い狐の尻尾をブンブンと千切れんばかりに振るっているオプション付きである。この現場を女性が見れば鼻血を吹き出して倒れるか、記録されるか、速攻お持ち帰り待ったなしである。

 

「――はう?」

 

 あれ、と彼は最後のひと皿、油揚げの生姜焼きの最後の一口に手を付ける前に気がついた。食事を提供してくれた女性がこの場に居なくなっていることに。そして、今残っているそれが最後の一口であることに。

 

「うー……」

 

 しばし、彼は最後の一口と睨めっこした。葛藤していたのだ。最後の一口を食べるか、それとも提供者に分けるか。彼は食事を貰う手前、一緒に食べることに喜びを感じていた。また、一緒に食べることが最低限の礼儀であると思い込んでいた。

 

 彼は最後の一口の乗った皿を手に持ち、立ち上がった。そして、彼女の家に行儀よく、時代遅れな木製の下駄を脱いで上がり込み、長い銀髪と赤と青の奇抜な服を着た彼女を探した。

 

「あー、うー?」

 

 しかし、その家には部屋が多すぎた。どれだけ進み、部屋を見てみても、彼女の姿は見当たらなかった。

 

とてとて、と健気に家の中を走り回る姿は実に愛くるしい。両手に大切に一枚の皿を持ちながら、転ばないように一生懸命走っている。

 

「いなーい?」

 

 部屋を見てみるが、やはり人影は見当たらない。

 

「いなーい?」

 

 また部屋を見てみるが、その部屋には誰もいない。怪しい設備ばかりが置いてあり、彼はすぐさまその部屋の扉を閉めて、次の扉に向かう。

 

「ばあーっ!」

 

 途中から探すこと自体が楽しくなり、彼はそんな風に戯れた。

 

「あ、いたー!」

 

 戯れた直後、食事の提供者が見つかった。彼はすぐに彼女に歩み寄ると、その顔を見てすぐに口をつぐんだ。

 

「うー、おひるねー」

 

 彼女は目をつむって、すやすやと安らかな寝息を立てている。彼は精神的に幼いが、昼寝を邪魔されるのは自分も嫌だと経験しており、無理に起こすのはいけないことだと分かっていた。

 

 しかし、彼女が起きるまで待っておくほど堪え性があるわけでもなく、立ち尽くしたまま五分もしないうちに頭をひねり始めた。

 

「ふぁー、うぅ」

 

 大きな欠伸が出た。目元に涙をためて、瞼を蕩けさせ始めた。それから一分もしないうちに、彼は彼女の枕より少し離れた場所に皿を置き、その布団に潜り込んだ。

 

「ねむねむ……」

 

 そして彼は、彼女の腰に抱きついて、自由気ままに暖かい布団の中で眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 ふと目が覚めると、部屋の窓から見える外はすっかり真っ暗になっていた。もうこんな時間なのね、と八意永琳は庭に行こうと思い立ち上がろうとして、腰に誰かが引っ付いていることに気がついた。

 

「あの子かしら」

 

 おそらく、弟子の綿月依姫か綿月豊姫だろうとあたりをつける。自分がこれ以上身動き出来なければ困ると思い至り、彼女は布団を捲って、抱きついている者の頭に手を置いた。

 

「ほら、そろそろ起き…な、さ……い……?」

 

 不覚にも、彼女の声は徐々に弱くなっていった。しかし、それもその筈で、彼女の布団の中に入っていたのは、予想していた二人ではない。立派な白と藍色の着物を着けた、年の頃は十歳頃の男児だ。綺麗な白髪のショートカットが特徴的だ。これだけならば、彼女の子どもと言っても違和感がないほど似通っているのだが、その頭には狐の耳とお尻のあたりから生えている一本の白色の狐の尻尾が、彼が人間ということを否定している。

 

「まさか、噂の白狐、なの……?」

 

 あどけない寝顔はいつまでも見ていたいと思うほど強い癒し効果が含まれていた。彼が呼吸するたびに、彼女の心には暖かいものが溢れてくる。思わず表情筋が緩み、頭を撫でる手が進む。

 

「うにゃ……ぁ」

 

 一昔前の西部劇の如く、音を立てて彼女の心臓が撃ち抜かれた。思わず口から飛び出しそうになるほどの衝撃を受けた。天使よりもよっぽど天使に思えるエンジェルボイスが、麻薬のごとく甘美な響きと余韻を残した。ただの声だというのに、天才の彼女は指先一本たりとも動かせなくなった。

 

「あぅ……あー、うー?」

 

 寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる。その瞬間、彼の着ていた着物が見事にはだけて、その美しい鎖骨のラインと肩から胸元までの淡雪のような柔らかそうな肌が露出する。その破壊力は、森をどれだけ粒子分解しても飽き足らないほどのものだった。かの天才は、思わず自分の鼻を押さえて、開放されかけた野生を何とか押さえ込む。

 

 もはや、都の最終兵器と言われても納得してしまうほどの精神攻撃は、天才たる八意永琳を後一歩で一撃必殺にするほどの威力だ。これを他の者が受けた日には、女性であれば理性のメルトダウンが起こり、その毛色がない男性であっても野生を開放させるには十分すぎた。

 

 ぺたん、とその場に座り込んだ彼は、未だ寝ぼけ眼の状態で彼女を見つけると、嬉しそうに天使顔負け、面目の「め」の字も立たないほどのエンジェルスマイルを浮かべて、両手を前に広げて、人形さえも超越する綺麗なてのひらを上に向けて、口を開いた。

 

「たべてー」

 

 もはや世界を破壊してもおかしくないほどの衝撃に、八意永琳はとうとう鼻血を吹き出し背中から倒れて再度、眠りにつくことになったのであった。

 

「うにゅ……?」

 

 彼はただ、いきなり気絶した彼女のことを不思議そうに見ていた。しかし、また眠ったのかと理解すると、それに追従するように彼女の腰にまた抱きついて、すやすやと寝息を立てるのであった。

 

 

 

 

 




最後のシーンは完全に趣味で、渾身の一撃だと思っている所存。

同志がいれば嬉しいな、と思いつつ、感想や評価の方をお待ちしております。

※白狐のショタは正義! これ絶対!

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