白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~   作:星の屑鉄

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誤字報告をしてくださった方、まことにありがとうございます!

また、UA数五桁、1万に到達しました! 皆さまのご愛読に、心からの感謝を。

それでは、前書きも短めにして、本編をどうぞ。


第十三話 それが長の姿

 

 闢の力は非常に便利だ。『ひらく程度の能力』はどのような場所にも制限なく移動することが出来る。

 それ故に、相手の目的地さえ把握していれば先回りも容易である。

 

「びゃく、ありがとう」

 

 そこは大和の国に作られた隠れ家だ。主にルーミア、風見幽香、二ッ岩マミゾウが拠点としている場所で、白自身が訪れることは週に一度くらいしかない。

 

 山奥に建てたせいか、周辺はすっかり真っ暗だ。立ち並ぶ木々のせいで月の光さえ差し込まない。

 

 そんな中、白は急いで一番背の高い木に登る。早く、早くと自分を急かしながら、費やした時間はおよそ五分。木のてっぺんから見えたのは、星の煌めく夜空と、団子のように丸い満月、光を拒絶する表面だけ照らされた森の木々、そして遠方より雨雲を引き連れてやってくる大きな空飛ぶ大蛇のように細長い影だ。

 

「ちから、ぜんぶもらうね」

 

 一声かけて、白はその身に力を溜め込んだ。溜め込んだ力はその尻尾となり、一本、一本、また一本と霊力が彼の尾を創り上げていく。

 

 霊力は唸りを上げる。尻尾は左右に荒ぶる。大地は揺れ動き、空は振動して大気が渦を巻く。足場にしている大木は異音を発しながらもその機能を全うする。

 足場には両足両手を用いて手をついている。その姿はさながら、野生の獣の如し。

 

「みんな、うまくにげてね」

 

 強すぎる力は、必ず怖れを生み出す。それを知っている男の子は、この土地に住む全てを追い出すために、自らが科した戒めを解き放つ――!

 

「――ぼくは、おさ」

 

 自らが頂点に君臨する存在であることを理解している男の子は、自分が弱者を強者から守る存在であると定義した。それは遥か昔に決めた事であり、友だち、仲間、部下、神々、あらゆるものを見てきた経験に基づいた、彼なりの精一杯の答えであった。

 

 ――力を隠していたのはなぜか?

 決まっている。彼が全ての力を見せればみんなが恐怖する。だから、誰かを怖がらせたくないと思って、必要な場面以外では力を見せないことを決めていた。

 

 ――闢と黒とは何か?

 友だちである。例外なく、彼は友達と認識している。ただ、ちょっと身体の中で同居している存在(ともだち)に過ぎない。それ以上でも、それ以下でもない。

 

 ――その力は誰のものか?

 すべて彼のものである。少しの間、友だちにその力を貸し与えていたに過ぎない。

 

 ふと、雨雲の下に赤色の光が灯った。

 同時に、白もまたその十本の尻尾を天に突き上げ、その先に霊力を集中させる。出来るだけ一杯に、しかし小さく、一杯に、圧縮、圧縮、圧縮。膨大な霊力をただ一つの球体にまとめ上げる。穢れを知らぬ白い輝きが球体からは溢れ出る。まるで神の啓示した救いの光の如く神々しい。この光の前には、月の光でさえ霞んでしまう。

 

「――だからって、てかげんしない」

 

 直後、尻尾から球体が発射された。今宵の満月のように丸いそれは、まさに光速を以て、一直線に雨雲の光に向かっていった。

 

 ――ッ!

 

 そして、世界から音が消えた。向こうの光からは球体ではなく、線が射出されていた。その勢いは烈火よりも恐ろしく、太陽の爆発にも比肩する。直線状にある全てを燃やし尽くさんと、激突した球体を貫こうと周囲一帯を震動させる。

 

 激突した球体と極光。お互いがしのぎを削り合い、意地を張り、何者にも負けない力を以て相手を打ち負かそうとするが、両者衰えを全く見せず。

 

 ――その結果。

 押し合いを続けて停滞したエネルギーは引き分けを認める様に、その場で爆発し、疑似的な白と赤の太陽を創り上げた。

 

「もうっ!」

 

 いつもこうだ、と苛立たし気に白は息を吐き捨て、足場にしていた大木を縦に真っ二つに圧し折って、前方に思いっきり加速した。その速度は音速を優に超越して、弾丸の如く一直線に攻撃してきた相手に向けて飛んだ。

 

「ちょっかい――」

 

 白はその小さな拳を握り、またそこに圧縮した霊力を込めて極光を宿した。十の尾は蜘蛛の足のように広がり、いつどんな動きにも対応できるようになっている。

 

「――かけないでよっ!」

 

 怒りのままに、拳は対象の頭に振り下ろされた。

 グチャ、と肉を潰したような不快な音が鳴ると、あっという間に対象は木々を圧し折りながら地面に撃墜して、月面にあるようなクレーターを生み出した。

 

「ぜったいに」

 

 しかし、攻撃はそれだけに終わらない。

 白は体を反転させて大地の方に垂直に向けると、全ての尻尾を対象に向けて槍のように尖らせ、宙を蹴り大気に津波のような振動を起こしながら突撃した。

 

「ゆるさない」

 

 刹那、夥しい魔の絶叫が空を打ち鳴らす。血潮は飛び散り、対象の体を貫いた十の尻尾は返り血に濡れている。白の着物にも返り血は飛び散り、所々に赤い斑点が浮かび上がっている。

 対象には鱗があった。その鱗は一部が尻尾に砕かれて、表面は血に濡れている。しかしそれを気にした様子もなく、白は鱗の上に座り、尻尾を刺したまま、相手の顔向けて睨み付けた。

 

「りゅうじん、しつこいよ」

 

 舌足らずな声は相変わらずだった。しかし、その双眸は月の光によって怪しく輝き、口元は暗闇によって隠されている。その姿は恐ろしく、魅力的で、非常に危険な香りがした。いつもの可愛らしさは微塵もなく、その姿は絶対的強者の威厳に満ち溢れている。

 

 しかし、それもすぐに暗闇に閉ざされる。月は雨雲に隠れてしまい、更にはこの一帯に滝のような豪雨がザァ! と降り注ぐ。

 

「ねぇ、なんどじゃますればいいの? なんどこわせばきがすむの? いいかげん、じゃまをしないでよ」

 

 冷酷に白は龍神に言葉を投げ掛けた。いつもの優しさなんて欠片も無い。その言葉は受け取った者の心を凍死させるほど冷たい。当事者でなくとも、その声を聞けば肝を冷やし、あるいは鷲掴みされたような気持ちになる。

 

「やまちーはまだいいよ。いっかいだけだから。それからは、ちゃんとやくそく、まもってくれるから。でも、りゅうじんはだめ。むちつじょ――」

 

 ふと、大地が波打った。そのせいで白の言葉は遮られる。

 

 ひゅう、と白の体が宙に投げ出されて風を切る。直後に大地が悲鳴を上げた。一体、どれだけの力で投げ出されたというのか。少なくとも、身体能力に特化した大妖怪の全力以上の力はあった。

 その証拠に、この土地の地盤はいとも簡単に陥没していく。まるで世界の終わりの様な絵図が出来上がっていた。

 

「もう……」

 

 宙に放り出された白は溜息を吐いて、ただ霊力の暴力に任せて重力に逆らって宙に足を着いた。すると、目の前に映るのは空飛ぶ蛇のような龍神の姿だった。

 

「白、貴様の在り方を、私は認めないぞ!」

 

 龍神が吠えた。怒りに任せた咆哮のような声は星を揺るがし、神力の波動を撒き散らした。ゴゴゴ、と大地が崩れる音は未だに止まない。

 

「おなじことばかり。ちからをもってからずっとそう。うるさいよ」

 

 そんな姿の龍神を見て、白はうんざりとした様子で拒絶の言葉を乱暴に投げ返す。

 

 これは異常事態である。

 龍神とは、即ち最上位の神である。ある地域では創造神とまで謳われるほど高位の存在だ。自然現象そのものと同意義の力を持ち合わせ、その実力は世界各国の最高神と同列に位置に、あるいはそれ以上のものを有している。

 一度咆哮すれば、天が割れんばかりの雷鳴と、水没するかと思われるほどの豪雨が世界を包み込む。体をうねらすだけで山をも崩す。

 単純な比較をすれば、ルーミア、風見幽香、二ッ岩マミゾウなどの大妖怪が束になっても傷一つ与えられれば良い方だ。月に行った綿月依姫と綿月豊姫であっても、勝つことは不可能な位置に存在する。八意永琳も同様に、単純なパワーゲームでは万に一つも勝ち目がないほどの相手だ。

 そのような規格外の相手に対して、白は平然と言葉を投げ返し、またそれを露骨に邪見にするほど接する態度は悪く、あまつさえ攻撃して傷さえも負わせてみせた。当の本人はさらに無傷である。これを、異常事態と呼ばずに何という。

 

「強者は常に弱者の上に立たなければならない! 強者が弱者を囲う楽園を作ってはならない! 強者は常に、弱者の恐怖を呼び起こさせ、その生命に衝撃を与えなければならない! 時に、その命を散らして証明もしなければならない。全ては堕落させないために! 何故、貴様にはそれが分からない!?」

 

 しかし、言ってしまえば――

 

「だまってよ。おしつけるなんて、じぶんかって。かんがえなし」

 

 ――それが白なのだ。この姿こそが、本来の彼である。

 

「おさはみんなのちょうてん。だから、みんなをまもる。きにいったから、ともだちだから、ぶかだから、まもる。それだけだよ」

 

 龍神はいつも白に突っかかってくる。お互いの考えが相違していると認知した時から、友であった関係は瞬く間に崩れ去った。

 

 龍神は白に理解させようと迫り、時に結果を提示してみせる。

 白は自分の他の友だちや部下に手を出す龍神を荒々しく追い払う。

 

 そんな関係が、ずっと昔から続いている。

 

 それはとても悲しいことだと、二人は気づかないまま。

 ずっと、この関係は続いてきた。

 

「ッ! 今日こそ、その甘え切った根性を叩き直してやるッ! 弱者には、恐怖と命を刺激することがどれだけ重要か、その目でしっかり確かめろ!」

 

「うるさい! ともだちにてだしするやつなんて、かえりうちにしてやる!」

 

 二人は悠久の時の中で忘れてしまったのだろうか。

 ――笑顔を分かち合った日々の事を。

 

 

 

 霊力と神力はぶつかり合い、その土地を確実に変形させていく。歪なほど穴が開き、歪なほどでこぼこになって、木々はすっかり皆圧し折れて、消し飛んで、それを豪雨が流し去る。木々が消え去ることで地盤は緩み、大地は次々と陥没していく。土砂は流される。

 

 大きすぎる力の衝突は、周囲に大きな影響をもたらした。森の全域を泥沼に変質させるだけに飽き足らず、近隣の村を水没させるほどの雨を撒き散らした。

 

 天を裂くような雷鳴は三日三晩鳴り止まず、実際に空が割れたことは数知れず。

 血潮と雫に濡れた戦いは、災禍を残して幕を閉じた。

 

 ――その後、理想郷に役者が集うまで、白の姿を見た者は居ないという。少なくとも、彼のとある身内一人を除いて、知り合いが彼を見たという報告は無いのであった。

 

 




次回でこの章も終わりとなります。第二章終了まで一週間です!

相手は龍神。果たして、どちらが勝つのか!?
……いつも通りのパターンです。はい。

それと、次回の第二章終了をもちまして、この物語の核心に迫る最低限のピースが揃うことを宣言いたします。
どこに何が隠されているのか、今の時点では明らかにはしません。最低限のピースだけで、他はノーヒントです。
章を進めるごとに核心に迫る情報を付け加えます。あとがき、物語中で何度もばら撒くので、物語が進めば進むだけ、核心に迫ることが容易になります(それが当たり前なのですが)

ちなみに、第三章の作成の方は、あと一話と半分を執筆して終了となります。こちらは主に、私の知識と様々な文献から、当時の時代背景をもとにあべこべ要素を微力ですが押し出した作風になっております。尚、一部キャラには適用されていませんが……(汗)


あと、どのみち戦闘描写書く予定の無いキャラを参考に、白の強さを簡単に示させていただきます。

へカーティア<白
白<ゆかりん+藍+霊夢+龍神
白<へカーティア+四季映姫・ヤマザナドゥ
妖忌=白(尚、基準として不適切の模様)
永琳≠白

……はい、まったく参考になりませんね。下手に強弱を表わそうとするとこういうことになるので、皆様も気を付けましょう(苦笑)

あ、ちなみに嘘を吐いているつもりは無いです、はい。



さて、字数も稼いだので、今回はこれにて。

感想、コメント、評価、ご指摘、などなど心よりお待ちしております。

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